農業気象
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寒地に於ける南瓜の雄花着生促進に關する研究
田澤 博荒木 元紀
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1943 年 1 巻 1 号 p. 11-18

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抄録

(1) 樺太及び北海道の冷凉地方に於ける南瓜栽培には雄花着生遲延による不利に常に惱まされてゐるが, 授粉用雄花着生促進の方法として温床又は硝子箱を使用する保温栽培を採用して成功した。
(2) 温床によろ高温栽培では完全に雄花の着生のみに限られ雌花の着生を認めないが, 稍ゝ高温程度の劣る硝子箱内栽培では遲れて雌花の着生を認め得た。
(3) 樺太に於ける南瓜栽培の結果から觀ると, 南瓜の開花には直接に Photopetiodism の現象は認め難く温度の影響の方が強く窺知せられろが, 暖地の成績に就ても同樣な感が伴ふのを見逃し得ない。
(4) 樺太に於て水稻, 玉蜀黍, 菠薐草等の開花現象を南瓜の場合と比較考察すると獨特な1つの觀念に誘導される。即ち雌性器宮の發達は個體の營養生長と歩調を共にするが, 雄性器官の發達は一致を缺く場合が起り得るものであるといふ事である。寒地では雄性器宮の發達には個體の營養生長と可成り隔つて温度の影響が強く働くものである事を認める。馬鈴薯でも温度の影響が矢張同樣に考へられるが他の作物とは趣を異にしてゐる。
(5) 以上の現象は雌雄性器官の不同時成熟の原因が外界の環境に求められる例であるが, 特に雄性器官の發達が個體の營養生長から相當離れて單獨に温度の影響を強く受ける點に特徴がある。此の基礎觀念が正しいものであれば寒地に於ける需實用作物栽培上重大な示唆を與へるもので今後研究を重ねたいと思ふ。

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