桑の開葉数による奥秩父の小気候の推定

抄録

奥秩父山地の流路約14kmの谷幅の狭い東西性河谷で桑の開葉数による小気候の推定を試みた。
(1)秩父・小鹿野の3月の気温観測値と, 桑の開葉数から3月の平均気温に逆算した値とを比較すると約±0.2℃の誤差の幅に入る。
(2) 桑の開葉数から逆算した場合, 南向斜面と北向斜面とでは約1.0℃の差がある。
(3)南北両斜面間における明らかな差に対して, 上から下流に向う場合には一定の傾向は認められない。
(4)上流から下流へ流路に沿つて現われる場所によるばらつきは1.0～1.2℃である。
(5) この場所による違いは, その地点における谷の横断面形の相違によると考えられる。
(6)一般に谷の横断面形の違いによる気温の相違は南向斜面・谷底・北向斜面の順に大きくなる。
擱筆するに当り, 観測上の便宜を与えられた三田川村福島幸八氏, 資料蒐集に多大の協力をされた三田川中学校・小鹿野高等学校の諸氏に深く感謝の意を表する次第である。