農業気象
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温室内の日射量に関する研究 (2)
古在 豊樹杉 二郎
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1972 年 27 巻 3 号 p. 105-115

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抄録

温室の設計, 改良およびその効果的な環境調節を行なうに際しての, 温室内日射量に関する基礎資料を得るために, 温室内日射の透過機構を理論的に解析し, 3次元の上に凸な温室の床面における直達および天空日射量の各時刻および日の積算1日射量の平均値およびその分布を, 任意の季節, 建設方位および日射条件に対して, 与える計算モデルを示した。このモデルでは, 各ガラス面への直達および天空日射の入射角がそのガラス面の日射透過率に及ぼす影響およびフレーム等の不透明構造物による入射日射の減少等が考慮されている。但し, モデルの作成に際しては, 次のつ3の基本的な仮定がなされた。1. 直達日射は完全な平行光線とする。2. フレームの厚さは非常に薄い (ゼロ) とする。3. 温室内における日射の2次以上のガラス面での反射は無親する。
このようにして得られた計算モデルに基づいて, 今回は, 温室の建設方位, 季節等による温室内の日射特性の差異を比較検討するための幾つかの数値実験を電子計算機を利用して行なつた。その結果, 大略各, 次のような事が分つた。
1. 各時刻の温室の平均日射透過率はその建設方位の違によつてかなり異なり, その差はおよそ15%にもなることがある。
2. 温室内の日積算日射透過率は場所によつてかなり違いがあり, その最大と最小の差は約30%にも及ぶことがある。
3. 日積算日射透過率の場所による違いは, 温室の形態よりもむしろフレーム等の不明構造物の配置による影響が強い。
4. 現存する温室の一般的な形態は, 日射に関しては必ずしも好ましいとは云えず, 改良の余地が残されている。
5. 温室床面における天空日射透過率は中央で高く, 周辺で低いという分布になり, その差の最大は普通約10%内外である。
なお, 上に述べた仮定3を取り除いた計算モデルおよび実測値と計算値との比較は続報として引き続き取り扱う予定である。

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© 日本農業気象学会
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