農業気象
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カンキツの寒害防除に関する研究 (第5報)
固形燃料による燃焼法の昇温効果
小中 原実渡辺 康夫中川 行夫
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1973 年 28 巻 4 号 p. 237-243

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抄録

カンキツ園を対象として開発された固形燃料を用い, その燃焼特性や燃焼量と昇温効果との関係などを明らかにするために実験を行なった。
(1) 固形燃料は20cm×8cm×6cmのレンガ状で, 1個の重量は750gであるが, これを2個重ねて1組として燃焼させる。燃料素材は石油コークスで, 発熱量は7,000Kcal/Kg, 燃焼盛期に達してからの燃焼時間は4~6時間程度である。
(2) 燃焼量を増すにしたがって昇温効果は増大するが, 燃焼量と樹冠内の昇温効果との間には次の回帰式が求められた。
Q=88.8T1.2+104.8
Q=100.7T0.5+29.7
ただしT1.2およびT0.5は, それぞれ樹冠中央部の高さ1.2mおよび0.5mにおける昇温効果であり, Qは10a当たりの燃焼量 (Kg) である。
また昇温効果は粗植園よりも密植ぎみで, 葉による密閉度の高い成木園のほうが昇温効果が大きい。さらに昇温効果は気温よりも葉温のほうが大きく, 燃焼量が3~4.5Kg/Treeのとき, 樹冠内1m付近で気温の2~6倍に達した。
(3) 燃焼量3Kg/Treeのときに放射量の分布をみると, 0.1Cal/cm2・minの強さの放射は0.5mにしか達しない。
(4) ha当たりの発熱量を一定にして固形燃料とリターンスタック型ヒーターの昇温効果を比較すると, 前者は後者の1.6~4倍の昇温効果がある。
(5) 固形燃料の燃焼ガス中に含まれる亜硫酸ガスの濃度は0.01~0.05ppmであり, 一酸化炭素は煉炭なみである。
(6) 10a当たりの防除労力をリターンスタック型ヒーターと比較すると固形燃料のほうが配置労力で3倍, 点労力では9倍の労力を必要とする。

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© 日本農業気象学会
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