農業気象
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葉の光学的特性および解剖学的特性がその光質―光合成関係に及ぼす影響 (1)
葉の表裏両面を照射したときの光合成と光質との関係
高 博矢吹 万寿
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1974 年 29 巻 4 号 p. 229-237

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抄録

前報において, 単葉の光質一光合成関係は, 各波長の光が葉内でどのような減衰曲線をたどるかによって決まってくることを葉内の吸光係数の点から明らかにした。
本報では, 数種の作物について, 各種単色光を葉の表面から照射したときと表・裏両面から照射したときとの同化量を比較することによって, 葉の解剖学的特性が光質―光合成関係に及ぼす影響について検討した。
作物, あるいは照射した単色光によって, 表・裏両面から照射したときの同化量が表面から照射したときの同化量より多くなる場合もあり, 少なくなる場合もあった。また両者が等しくなる場合もあった。これらを葉に吸収された光エネルギーの利用収率であらわすと, 緑色光は, どの作物でも照射方法に関係なく一定であったが, 青色光, 赤色光は, 作物によって異なり, 表面より照射したときより表・裏両面から照射したときのほうが高くなるもの, 低くなるもの, あるいは変わらないものがあった。
この相異は, 葉の葉肉組織が一様であるか, あるいは柵状組織層と海綿状組織層とに分化しているかどうかによって決まってくる。すなわち, 葉肉組織が一様な葉では, 葉内のどの位置においても利用効率が等しいため, 光質―光合成関係は, 各波長の光が葉内でどのような減衰曲線をたどるかによって異なってくるが, 葉肉組織が柵状組織層と海綿状組織層とに分化した葉では, 光学的特性がそれぞれの組織層で異なり, それに応じて各組織層での利用効率が異なるため, 光質―光合成関係は, 葉内に入った光が各組織層にどのような割合で吸収されているかによっても異なってくる。

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