農業気象
Online ISSN : 1881-0136
Print ISSN : 0021-8588
ISSN-L : 0021-8588
C3植物とC4植物に関する農業気候学的研究
(2) 生長と光合成におよぼす湛水の影響
長谷川 史郎奥田 明男
著者情報
ジャーナル フリー

1977 年 32 巻 4 号 p. 185-190

詳細
抄録

湛水下でのC3, C4植物の生育特性を実験的に明らかにするため, C3植物35種, C4植物22種の幼植物を供試し, 湛水ならびに畑状態における25日間の草丈の増加量を測定した。さらに, C3植物15種, C4植物9種を供試して, 湛水ならびに畑状態における温度 (12~48℃) と光合成速度との関係を求めた。得られた結果をまとめると次のとおりである。
1. C3冬植物は, ネギを除くすべてが, 湛水状態で枯死した。一方, C4植物は湛水状態で枯死するものはなく, 畑状態に比し, 比較的生長量の大なるものが多い。C3夏植物は両者の中間的特性を示し, 湛水状態で少数が枯死し, 枯死しないものも, 畑状態に比し, 比較的生長量の少なるものが多い。
2. 光合成速度は, 湛水処理を行なうと, C3冬植物はすべて, 畑状態に比し低下し, かつ低下率の大なるものが多い。一方, C4植物は増加するものと, 低下率の低いものが多い。C3夏植物は両者の中間的特性を示す。
3. 光合成速度から高温適応性と耐湿性をみると, C4植物は高温適応性を示し, 耐湿性も比較的強い。一方, C3植物は比較的低温に適しており, 耐湿性の大なるものから小なるものまでほぼ均等に分布している。
さらに, 以上の結果を用いて, イネ (Oryza sativa L.) の起原について考察した。

著者関連情報
© 日本農業気象学会
前の記事 次の記事
feedback
Top