長野県における代表的な人工林である落葉松林の物理環境の季節変化を, 森林の環境影響評価を念頭におきながら測定した。
この季節変化は着葉の状態と密接に関係している。すなわち, アルベドの最高値は黄葉を反映して十月下旬に18%を示し, 樹冠透過放射量の最高値は落葉した冬期に約45%となった。樹冠はこのように熱の観点からすれば, 林床に対してマルチの役割を果たしており, 結果として林床の土壌表面温度は裸地区のそれよりも, 盛夏において, 最高温で約30℃, 最低温で約3℃低下して振幅も減衰している。林内の気温はまた盛夏において裸地区のそれより7.5℃低下している。太陽エネルギーの主な吸収部分は開葉, 落葉の過程に従って垂直方向に移動し, これは林内の気温垂直分布の季節変化に反映されている。熱収支の結果によれば, 最も大きな森林影響の一つは潜熱フラックスによる熱輸送で, 落葉松林はボーエン比を調節することによって, 周辺へ冷涼な大気を送り出していることになる。このような熱交換は裸地や都市域のアスファルト及びコンクリート面では殆ど欠如していることが強調されるべきである。