農業気象
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大気中の二酸化炭素濃度倍増による気候変化が日本の浅い水体の熱収支に及ぼす影響
太田 俊二内嶋 善兵衛清野 豁
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キーワード: 気候変化, 熱収支, イネ, 水温
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1996 年 52 巻 1 号 p. 1-10

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抄録

21世紀後半に予想されている大気中の二酸化炭素濃度の上昇による気候の温暖化を通じて, 日本の水田の熱環境がどう変化するかをシミュレートした。日本の水田水温は一年を通して2~4℃上昇し, これにより稲作期間は25~40日延長する。一方, 夏期 (7・8月) の純放射は南西諸島を除いて現在気候下よりも1.0~1.5MJm-2day-1高くなる。このため, 日最高水温は35℃を容易に越えることが予想され, 西日本ではイネの高水温障害が生じる危険性がある。温暖化により, 気温・水温差は現在気候下よりも1~2℃縮まる。これにともない水面の飽和水蒸気圧が上昇し, 蒸発効率はかなり高まる。すなわち, 潜熱輸送量は0.8~1.0MJm-2day-1, とくに7・8月には2.0MJm-2day-1近くも現在よりも増加する。これを反映してボーエン比は耕作期間を通して約0.1の低下傾向になる。

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