抄録
地球観測衛星ランドサットのTMデータを用いて夏季 (1990年8月6日) と冬季 (1988年12月6日) の日中における大阪市市街地の地表面熱収支の分布を推定した。顕熱・潜熱フラックスの推定には各々のバルク輸送式を用い, 必要なデータを内挿し画素ごとに計算した。解析に要するデータのうち, 土地被覆, 地表面アルベド, 表面温度, NDVIの分布については, TMデータから直接計算した。その他, 気温などについては, 気象台のデータを併用して推定した。潜熱フラックスの計算に必要な蒸発散効率βについては, 植生のない市街地に見たてた地点での実地観測結果によって求めた。
都心及び住宅密集地では, 市内でも顕熱フラックスは高く, 潜熱フラックスはほとんどない結果となった。一方, 特に夏季, 市内の都市公園では, 平均194Wm-2, また, 植生の多い住宅地でも, 77Wm-2程度の潜熱フラックスが評価された。こうした熱フラックスの土地被覆による違いは冬季よりも夏季で顕著だった。これは, 表面温度の市内における分布パターン, そして潜熱フラックスに限ればNDVIから見た植生量, 活性が評価結果に影響したことによる。