日本エイズ学会誌
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血液凝固因子製剤によるHIV感染者の健康調査, 和解手続きに関する全国調査成績
白幡 聡福武 勝幸瀧 正志立浪 忍三間屋 純一上田 良弘吉岡 章高田 昇厚生省HIV感染者発症予防・治療に関する研究班
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2000 年 2 巻 2 号 p. 96-102

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抄録

目的: 「血液製剤によるHIV感染者への救済制度」および「エイズ発症予防に資するための血液製剤によるHIV感染者の調査研究事業」 (以下, まとめて健康管理事業) への参加ならびに「HIV被害救済訴訟」の和解手続きの実施状況を明らかにする.
対象および方法: 平成8年度に「HIV感染者発症予防・治療に関する研究班」に所属していた医師に加えて, わが国で血液凝固因子製剤を製造もしくは販売している製薬企業ならびに日本赤十字社の協力を得て把握し得た1,386施設に調査用紙を送付した.
結果: 調査対象施設1,386施設中1,154施設 (83%) から回答が得られた. 重複を省いた結果1,465例の感染例の存在が確認され, そのうち1,257例 (86%, 生存例823例, 死亡例434例) から有効回答が得られた. AIDS発症生存例, 未発症例, 死亡例において健康管理事業への参加の有無については「あり」がそれぞれ8396, 75%, 40%,「なし」が5%, 5%, 2096, 「不明」が13%, 2096, 40%であった. 一方, 和解手続きの実施の有無については, 「あり」がそれぞれ83%, 76%, 53%, 「なし」が3%, 5%, 11%, 「不明」が14%, 20%, 36%であった.
結論: 健康管理事業に参加していない例が生存例の5%存在し, 和解手続きでは死亡例にとくに非実施例の割合が高かったが, これにはプライバシー保護への不安がその背景にある可能性もあり, さらなる情報提供の必要性が示唆された.

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