日本エイズ学会誌
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抗HIV薬により乳酸アシドーシス・ギランバレー様症候群を発症したHIV感染症の1例
江平 宣起橋野 聡山本 桂子米積 昌克千葉 広司近藤 健大野 稔子今村 雅寛浅香 正博
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2003 年 5 巻 3 号 p. 163-168

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抄録
目的: 抗HIV薬はその有効性により, 多くのHIV感染者に投与されているが, 時に重篤な副作用が見られる. 今回, 抗HIV薬投与中に乳酸アシドーシス・ギランバレー様症候群を呈したHIV感染者を経験したので, その臨床経過と治療効果に文献的考察を加えて報告する.
症例: 症例は2000年11月にAIDSを発症し, 抗HIV薬 (スタブジン, ラミブジン, エファビレンツ) を投与開始した55歳の男性である.抗HIV薬服用開始約1年後に, 消化器不定愁訴から始まる乳酸アシドーシス・ギランバレー様症候群を呈した.乳酸アシドーシスに対し炭酸水素ナトリウムとサイアミン, リボフラビンの投与を行った結果, アシドーシスは改善した. ギランバレー様症候群に対しては, 投与薬剤の中止と人工呼吸管理・γ-グロブリン製剤の投与を行い, 抜管後もリハビリを継続した結果, 全身の運動機能の回復を認めた.HIVの治療に関しては, 治療薬剤をロピナビル・リトナビル合剤とエファビレンツに変更して, 再度良好なコントロールとなった.
結論: ヌクレオチド系逆転写酵素阻害薬では乳酸アシドーシスを発症する可能性があり, さらにスタブジン投与の副作用としてギランバレー様症候群を呈する可能性がある. 今回の症例では早期診断, 原因薬剤の中止, 対症療法の重要性が示唆された.
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