抄録
目的: 当院は, 術前及び妊婦スクリーニング検査 (以下ST) としてHIV抗体検査を1994年から実施している. そこで, 陽性例の報告から告知にいたるまでに生じた医療者側および患者側の問題点とそれに対する対応および改善点を検討し, その結果作成されたマニュアルを提示することによってSTを実施する医療機関やそれを受ける患者の混乱低減に資することを目的とする.
対象および方法: 1994年4月から2003年3月までに, ST陽性は7症例であった. この7症例において, 結果判定から報告, 告知までの問題点について検討した.
結果: ST 16,739件中, EIA法陽性者は7例 (0.04%) で, このうち2例は偽陽性で, 真 の陽性者は5例 (0.03%) であった. 告知までの問題点を整理した結果, 陽性時の現場の混乱を避けるため, 結果の報告ルートを一本化し, 結果は必ずHIV担当医を介して主治医に連絡し, HIV担当医はHIV担当看護師に直接連携できるシステムとし, 作成したマニュアルを運用することで入院時の大きな混乱はなくなった.
結論: マニュアル作成は陽性例を認めた際には院内の混乱を防ぐために, 効果的であったが, その後の外来通院に継げるためには, 外国人の多い当院では言葉や経済面を考慮した社会資源活用や他職種連携の強化が必要と思われた.