抄録
目的: 性教育と性行動の関連の研究に用いる質問票の性行動項目について, 回答の信頼性を検討する.
方法: テストー再テスト法を用いた. 対象者は, A短期大学とB看護学校の女子学生176名とした. 質問票は, 主質問32, 付問20で構成され, 内容は, エイズ/性感染症関連知識, 性行動等を含む8セクションとし, 同一個人に対し1週間間隔で2回, 調査を実施した. 対象者には, 調査目的と必要性, 調査は強制ではなく, 拒否しても不利益を被らないこと等を説明した. 信頼性の検討には, 相関係数, 全一致率, κ (カッパ) 係数, 重み付きκ係数を用いた.
結果: 参加率は, 平均90%を超え, テストー再テストにはほぼ完全なリンクが得られた. κ係数は, 性経験の有無0.97, 初交年齢0.93, 過去6ヵ月間のコンドーム使用状況0.88であり, エイズ/性感染症関連知識項目の相関係数は平均0.83で, 海外の先行研究とほぼ同等の高い信頼性係数が得られた. 脱落例は少数で, かつ性行動に偏りは見られず, 結果に影響を与えた可能性は小さい. 本調査の結果は, 対象者の特性や, 調査間隔が1週間と短いことから, 他集団にそのまま適用可能とは限らないが, わが国の若者においても信頼性の高い性行動調査が行い得る可能性を最初に示した成績となった.
結論: 性行動項目について高い信頼性係数が得られたことにより, 若者の性行動動を質問票によって信頼性高く測定できる可能性が示唆された.