Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
犬下歯槽の歯根膜, 歯髄及び骨膜の神経特に知覚神経分布に就て
徳光 義明
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1956 年 10 巻 1 号 p. 123-140

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抄録
犬歯根膜内に多数発見される知覚神経線維の分布状態は人に於けると多少異なり, 歯根膜の発達に比例する. 例えば門歯や犬歯等の発達良好な歯根膜では知覚終末も良好な発達を示すが, 臼歯を包む発達劣勢な歯根膜では知覚終末の発達も劣勢である.
歯根膜内に形成される知覚終末は他の場所には見られない特有な性状の終末で表わされ, 単純性及び複雑性分岐性終末に大別される. 其特徴として神経要素の急激な太さの変化, 終末枝の多様な終止状態, 全体的形態の甚だまちまちである事等が挙げられる. 此特異性は人の場合 (山崎) に一致する. 但し犬歯根膜では人に見られる糸毬状終末や特殊終末 (山崎) の様な高度の分化を示す終末は形成されない. 此事実は当教室の多くの業績に一致する. 即ち知覚終末の形成は人に於て最も完備している事を示す.
犬歯根膜内には知覚線維が髄鞘を失う事なく数回に及ぶ分岐を示す場合が屡々である. 之は1知覚線維が多数の終末に移行して広く拡散し得る事を証明する.
単純性分岐性終末の中には分枝の先端が更に2-3の甚だ細い短い終末枝に岐れるものがある. 又太さの変化に富んだ分枝と棍棒状, 紡錘状, 刷毛状等に終る終末枝から構成されるものも少くない. 然し全体的形態は不定である.
複雑性分岐性終末では単純型に於けるよりも形態的分類はより容易, 例えば樹枝状終末の如きも稀ならず発見される. 本終末では分枝は起始が細いが, 急に太さを増す事が多く, 終末枝は専ら微細線維から成り, 尖鋭状に終る. 又太さの変化に富んだ太い線維で構成される複雑型も屡々発見される. 其終末枝の先端は種々な形状に終り, 全体的形態は不定型を示す.
犬歯肉内には人に見られる様な糸毬状終末や血管を取巻く終末 (山崎) は認められず, 知覚線維は専ら造歯細胞層下に分岐性終末を作る. 其終末線維は人に於けると同様, 微細線維から成り, 尖鋭状に終る. 又終末枝の1部は更に造歯細胞層内に進む. 其他知覚線維の1部は髄鞘を失って直接造歯細胞層内に入り分岐性終末に終る場合もあり, 其終末枝は造歯細胞間及び内を通り, 本層の週辺に尖鋭状に終る. 然し更に前象牙質に入る事はない.
犬歯槽骨外周を取巻く骨膜に少量乍ら知覚終末が発見された. 之は骨膜を通して骨に出入する血管に附随する知覚線維に由来する分岐性終末で表わされる. 終末線維は余り太さの変化を示さない比較的太い線維から成り, 係蹄状走行を示すを以て特徴とする.
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© 国際組織細胞学会
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