Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
人胎生初期に於ける舌下腺, 顎下腺及び其周辺の神経分布に就て
高橋 輝男
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1956 年 10 巻 1 号 p. 19-35

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抄録
人3-4ケ月胎児の舌下腺及顎下腺は甚だ単純な分岐性管系で表わされ, 腺末端部の細胞は未分化の状態を示す. 但し舌下腺では小量の粘液性細胞の出現を見る. 之等腺の大導管は二列性細胞から成るが, 潤管も分泌管も未分化状態を示し1列性立方細胞から成る.
顎下神経節は既に強力に発達し舌下腺の方にまで伸びて所謂舌下神経節に移行する. 又小神経節は舌神経の所々に迷入する. 以上の神経節から顎下腺及び舌下腺内に伸びる神経束の中にも小神経節の形成を見る. 神経細胞は比較的高度に発達し, 3-5の神経突起を有し, 中に1つ時には2つの大核を有す. 此核は概ね中心外にあり, 核小体の形成は未だ見られない. 細胞内には既に原線維網が証明される.
神経細胞からの短突起は未だ非分岐性で尖鋭状に終る. 長突起は1細胞に1条時には2条発見される. 副細胞 plasmodium は発達甚だ劣勢, 細胞周囲に1-2核を有するに過ぎない. 此核は短突起の分化に伴い増殖するものであろう. 又 plasmodium 外の結合織嚢も発達劣勢である.
神経節内には外来植物線維による神経細胞周囲性終網の著明な形成を見る. 此終網は所々に太さの変化を示す微細線維の不規則な配列で表わされ, 神経細胞に対する直接的結合を示さない.
顎下腺及び舌下腺に対する神経線維の交感及び副交感性の組織学的判別は不可能である. 血管周囲神経叢も既に発達良好, 他の植物線維と各所で神経吻合を行う.
両唾液腺に拡散する植物線維も遂には終網 (Stöhr) に移行する. 之は神経細胞周囲性終網に於けるより遙かに微細な線維の規則正しい配列で構成され, 中に Schwann 氏核を含む. 終網は腺末端部や導管の周りに強力に形成される. 然し細胞体の中までは入らない. 又血管壁でも発達良好, 口腔基底粘膜内にも発見される.
舌神経からの知覚線維は未だ髄鞘を伴わないが, 植物線維よりは遙かに太く, 舌下腺の内外を通って, 多くは口腔基底粘膜の上皮下に終る. 然し経過途上大きな導管の周囲に終る事も稀でない.
人胎生初期の口腔基底では乳頭や味蕾の形成は未だ見られない. 従ってここには知覚線維の量も少く, 其終末も甚だ単純, 非分岐性及び単純性分岐性終末で表わされるに過ぎず, 成人に見られる複雑な終末 (大垣と堀田) の如きは未だ何処にも形成されない. 但し係蹄状走行又は太さの変化を示す終末枝の存在は屡々発見される. 尚お導管や口腔基底の上皮内にも上皮内線維は証明されない.
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© 国際組織細胞学会
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