抄録
猫でも人に於けると同様に筆尖の上衣下層に筆尖核 (小松) が証明される. 其横断像は猫脳幹の特異形態に一致して人の場合と可なり異る. 人では閂の高さで前後に延びた卵円形をなすが, 猫では横に延びた円錐形をなし, その先端を正中線に向け, その大きさは人の場合よりも稍々大きい. 閂よりも高位に進むに従って外側方に移動し, 菱形窩の幅が人の場合よりも3倍も外側方に来て消失する. 又閂よりも下方に来ると急激に弱体化し, 左右融合の後消失する.
本核はグリア組織 (余田) 丈ではなく, その中に多数の小神経細胞を含む. 1条の軸索突起は小束に集って後述の円核と小細胞性背核を通って孤束内に進む. 尚お本核内には人で見られる色素細胞は証明されない.
背核は閂の高さで人では舌下神経核の背部に見られるが, 猫では背外方に当り挿間核を距てて発見され, 挿間核に外接する大細胞性背核とその背方に拡がる小細胞性背核とに分けられる.
大細胞性背核の閂の高さでの横断像は横に延びた卵円形で, その面積はこの高さで同じ形の舌下神経核のそれに匹敵する. 本核内の大細胞の数はこの高さで人の場合の約3.5倍を示す. 然し閂より下方に来ると急激な減少を示し舌下神経核の消失の高さで消失する. 閂よりも高位に来ると細胞数は多少増加の後, 徐々に減少し, 舌下神経核の消失の高さより稍々高位で消失する.
本核内には小細胞も少量に見られるが, 色素細胞は証明されない. 大細胞は人に於けると異って部位的に大きさを異にする事なく, 多極性であるが, 舌下神経核の運動神経細胞の1/2-1/3であり, 運動細胞と異なり円みのある輪廓を示す. 樹状突起には網様体からの植物線維が終る様である. 軸索突起は小束をなし, 小細胞性背核を経て孤束に進む. 小細胞も大細胞と同一性状を示す. 従って両種細胞は何れも植物性である. 尚お本核内には強染性の太い線維の走行を見る. 恐らく反射作用に役立つ知覚線維であろう. 本核と挿間核との線維交流は認められない.
小細胞性背核は閂の高さで発達最も良好, 背核の1/2領を占める. 下方及び上方に於ける消失の高さは大細胞性背核のそれに一致する. 本核は筆尖核, 大細胞性背核及び円核からの軸索突起の通路をなす. 本核を知覚性の孤束核となす学者が多いが, 然し本核内の小細胞は何れも植物性であり, その軸索突起は何れも孤束内に進む.
小細胞性背核と筆尖核との間には横断像で円形を示す円核が証明される. 本核は従来灰白翼核と名付けられ, 之を知覚核とする学者も多かったが, 然しその組織像は植物性を示す. 即ち神経細胞は小細胞性背核に於けると同様小さな多極細胞であり, 之より出る細い軸索突起は小細胞性背核を通り孤束内に入る.