抄録
山羊舌背後部即ち舌根部の神経分布に関する研究成績は次の様である.
山羊の有廓乳頭は舌根の外側部に2列に並び12-13ケを数える. 味蕾は外側上皮内には甚だ多量に, 然し壁上皮内にも僅少に発見される. 葉状乳頭は山羊舌では発見されない. 舌背中央の横走溝の後方に配列する巨大舌乳頭は後方に来ると上皮の表層に軽度の角化現象を見且つ小型となるが, 乳頭幹及び第2次乳頭の形成は尚お著明にされる. 舌根には人の場合と異つて舌小胞の形成は見られない.
山羊有廓乳頭基底部に形成される基底神経叢は人に於けるより発達劣勢であるが, 之に由来する知覚線維は尚お可なり強力である. その大多数は乳頭の外側壁に分布し, 上壁に向うものは僅少且つその終末も単純に構成され, 又ここでは上皮内線維も証明されない. 反之側壁の上皮下には可なり複雑な分岐性終末も見られ又著明な太さの変化を示す極めて太い線維から成る非分岐性及び単純性分岐性終末も発見される.
巨大舌乳頭の後方部のものでも尚お多くの知覚線碓の分布を見, その終末形成も良好, 屡々2-3の分岐性終末が同一場所に形成され, 全体として叢状終末の形態を示す事もある. 然し前方のより大きな巨大乳頭と異ってここには上皮内線維は形成されない. 尚お特殊終末棍は舌根部に於ても舌背, 舌下面等に於けると同様, 固有膜及び舌乳頭内の所々に発見される.