Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
犬胎生後期の陰核の神経分布に関する組織学的研究
太田 進
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1958 年 14 巻 3 号 p. 349-362

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抄録
犬胎生後期の陰核体は近位部と雖も成犬に於けると異って脂肪組織から構成される事なく, 密に配列する結合織細胞から成る. 陰核亀頭と包皮との間には共通性上皮の形成を見るから, この胎生期では成犬に見られる陰核窩は未だ形成されない. 共通性上皮は包皮に向って強力な多数の花卉様突起を出す. 尚お亀頭海綿体も既に良好な発達を示す.
両側の陰部背神経は陰核体の近位部では正中線に接して走る陰核背静脉の外側を陰核背動脉と共に前進するが, 軈て背静脉は外側方に転位し背動脉と共に背神経小束間に入る. 背神経は途上白膜に小枝を出す. 神経及び血管は亀頭底部に達すると更に外方に転じ, 血管は陰核海綿体と密接な関係を示し, 背神経は1部包皮に分枝を出し, 更に小枝に岐れて亀頭内を前進, 多数の微細枝は亀頭表層に向って放線状に拡散する.
犬胎児に於ても成犬に於ける様に背神経の経過途上 Pacini 氏小体の形成は見られない. 白膜内には非分岐性及び単純性分岐性終末の形成は見られるが, 陰部神経小体は未だ証明されない.
包皮外板内の知覚終末形成は甚だ劣勢, 包皮内板及び亀頭内の知覚線維の分布は略ぼ同様に行われる. そしてここでも陰部神経小体や複雑な分岐性終末は未だ形成されず, 知覚終末は非分岐性及び単純性分岐性終末で表わされるに過ぎない. 唯然し共通性上皮内には特有な上皮内線維の形成を見る. 之はI型とII型とに区別され, I型は人の場合と同様複雑性係蹄状終末で表わされるが, II型は長く延びた非分岐性線維から成る. 尚お上皮内線維には既に退行変性の発生を見, ために上皮内線維の量は比較的少ない.
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© 国際組織細胞学会
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