Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
膠原線維発現過程の電子顕微鏡的研究
西川 光彦
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1958 年 14 巻 4 号 p. 463-483

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抄録
主としてアカガエルの尾芽期初期胚から変態期を経て成蛙に至るまでの真皮原基, ならびに真皮の膜状標本, 乃至はすりつぶし標本を用い, 電子顕微鏡的に膠原線維の発生, 形成過程を追求した.
1. 尾芽期初期胚に於てすでに表皮層と中胚葉層の間に極く薄い透明な膜状基質の存在を認め, この層が成蛙の真皮へと発達する.
2. この薄膜中に細胞と形態的に直接の関係なく, 70-100Åの微細顆粒が多数出現し, やがて一定方向に約210Åの間隔で2列に格子状に排列することをもって, 前膠原線維の形成がはじまる.
3. 顆粒が2列に格子状の排列をとっているこの原線維は隣接の原線維と, 同一格子排列をとるように接着, 重合をくりかえし, また顆粒の大きさの増加もあり, 太い線維へ発達して来るが, 格子間隔は210Åである.
4. これは比較的弱い拡大では210Åの間隔の横紋として認められる.
5. 外鰓末期から内鰓初期にかけて線維形成は特徴的変化を示し, 重合により太さを増した線維の一部に530-640Åの太い横紋の発現を認める. この太い横紋は顆粒の増大とこの顆粒間をつらねる比較的小顆粒の発現などにより, 一定部位の蛋白分子間の結合が特に密になるために生ずるもののようである.
6. 顆粒を重合, 接着せしめる材料は想像の域を出ないが, glycoprotein, tyrosine, hyaluronic acid 等が考えられる. また分子間の荷電の問題もあるであろう.
7. 成蛙の線維は完全に膠原の特色を示す640Åの横紋と, その間に約5本の細い縞を認めるが, さらに一部に明らかに格子排列を見ることができた. この所見は, 初期の線維出現のときから各時期を通じて一貫したものであり, 線維蛋白分子の性質とその重合, 発達過程を電子顕微鏡的に示したものといえる.
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© 国際組織細胞学会
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