Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
酵素による作用阻害の面から見た胃壁ホルモン‘プロダクチン (藤江)’の本態について
II. ヒスチヂン分解酵素及びヒスタミン分解酵素等が‘プロダクチン’の作用に及ぼす影響
山村 英二
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1958 年 15 巻 2 号 p. 285-301

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抄録
Acetylcholin-Eserin 混合皮下注射により, 人工的に而も最も自然に胃壁ホルモン productin を血中に放出させうることを知った著者は, かくして分泌されたproductin の胃腺主細胞, 壁細胞及び膵細胞分泌機能に及ぼす効力がヒスチヂン分解酵素, ヒスタミン分解酵素或は抗ヒスタミン物質によって如何なる変化を受けるかを追究した.
1. ヒスチヂン分解酵素を注射すると, productin は胃腺主細胞に対しては殆んど効力を示さないが, 壁細胞に対しては放出機能を著しく促進し, 膵細胞に対してはかなり強い分泌顆粒新生を行わしめる. これらの結果は, ヒスチヂン分解酵素によって productin が分解されたものと仮定すると亙に矛盾する処が多い.
2. ヒスタミン分解酵素を注射すると productin は胃腺主細胞にて新生された分泌顆粒の空胞化 (放出段階) を促進し, 壁細胞に対してはかなり放出促進的に作用するが, 膵細胞に対しては低調な分泌顆粒新生を行わしめるに過ぎない.
3. 加熱したヒスタミン分解酵素を注射すると, 胃腺主細胞では2. に於けるよりも強い分泌顆粒新生と弱い空胞化が見られ, 壁細胞では先ず強い新生, 次で放出, 膵細胞ではかなり強い分泌顆粒新生が認められる.
4. 抗ヒスタミン剤たる Restamine を注射すると, productin の作用はヒスチヂン分解酵素を注射した時と類似する.
5. 藤江によって抗ヒスタミン作用の証明されたジャガ芋汁を胃内に注入しておくと, productin の作用はやはり抑制されるが, その傾向はヒスタミン分解酵素を注射した場合と相似する.
6. 藤江の productin 説, 清水のヒスタミンとヒスタミン分解酵素を混合して注射した実験成績, 及び東条のヒスタミンとヒスチヂンの作用的相違を明かにした成績等を参照すると, 著者の得た結果の中ヒスタミン分解酵素を注射した実験結果が最も整然で且つ最も矛盾がない. 依って Productin はヒスタミン分解酵素によって本来の作用が抑制される半面, その分解産物の作用が強く現われる物質であると信じられ, これより productin とヒスタミンの相似性が推察される.
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© 国際組織細胞学会
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