Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
山羊喉頭の知覚神経分布に就て
李 一善
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1959 年 16 巻 2 号 p. 279-298

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抄録

山羊喉頭粘膜に対する知覚神経分布は人及び他動物の場合と略ぼ同様, 喉頭蓋の喉頭側に於て甚だ強く, 其舌側では遙かに劣勢, 喉頭蓋以外の喉頭粘膜では喉頭蓋基底部から遠ざかるに従つて徐々に劣勢, そして声門から下方に来ると更に急激に劣勢を示す. 但し知覚神経終未は人の夫には比す可くも非ず, 又犬に於けるよりも稍々劣勢な然し兎に於けるよりは良好な発達を示す. 又其終末様式には多少動物差による特異性の見られる事は興味深い.
山羊喉頭に見られる知覚終末は専ら中等大線維に由来する上皮下及び上皮内分岐性終末によつて表わされる. 又非分岐性終末の外, 単純性糸毬終末も稀ならず発見される.
喉頭蓋の喉頭側では上皮下に多少複雑な分岐性終末も多数発見される. 其終末枝は屡々著明な太さの変化を示し且つ上皮内線維に移行する事もある. 又複雑性分岐性終末も稀ならず発見され, 其終末枝の先端には屡々小型の糸毬形成を見る. 上皮内線維の多くは単純性分岐型に属する.
喉頭蓋の舌側にも分岐性終末が見られるが, 量に於ても規模に於ても喉頭側に於けるよりは遙かに劣勢, 又ここでは上皮内線維も証明されない.
喉頭蓋以外の喉頭粘膜では声門よりも上方では稍々複雑な上皮下分岐性終末及び上皮内線維も見られるが, 声門では知覚終末は可なり劣勢となる. 但し声皺襞では犬や兎に於けるよりはより良好で, 単純性分岐性終末も上皮内線維も少量に発見される. 又声門軟骨間部では声皺襞に於けるよりも多量の且つより複雑な知覚終末を見る事が出来る.
山羊喉頭は犬に於けると略ぼ同様に喉頭蓋の喉頭側は勿論, 声門に至るまで概ね重層扁平上皮で蔽われる為か其上皮は人の場合よりも又犬の場合よりも多量の味蕾を含む. その神経分布は略ぼ犬に於けると同様, 人の場合の様に上方から下方に向って劣勢となる事なく, 其場所的優劣を示さない. 即ち山羊では知覚神経分布を受けない味蕾も又受ける味蕾も同一場所に入り乱れて発見される.

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© 国際組織細胞学会
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