Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
人気管の神経分布に関する組織学的研究
山形 健三
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1960 年 20 巻 4 号 p. 577-597

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抄録
人気管に於ける神経末梢の微細構造を鈴木鍍銀法により検索し下記の所見を得た.
1. 繊毛上皮内には良く発達した知覚神経自由終末が見られる. これらの終末の分枝は上行枝と水平枝とよりなり, 末端もしくは走行中にしばしば種々の原線維性膨隆を作る. 上行枝の一部は自由表面に違し閉鎖提の直下に終り, 他は種々の高さに終る. 水平枝は基底層にかなり広汎に拡がる.
2. 気管粘膜, 特に膜様部粘膜には, いわゆる扁平上皮島が散在する. 扁平上皮島も自由終末を有するが, その発達の程度は繊毛上皮の場合に比して一般にやや劣る.
3. 植物神経末梢は気管上皮内に侵入し, 主として基底層に分布する神経網を作る. この上皮内神経網に沿ってしばしば不規則な星芒状細胞が見られる. これらの細胞の大部分は, 胞体内に於ける神経原線維の通過および原線維網形成等の特徴により植物神経末梢に於ける介在要素と見做すことが出来る.
4. 気管腺には植物神経が上皮内に分布する. 腺房内に周囲の植物神経終網の分枝が浸入し, これが主に基底膜と腺上皮との境界および細胞間に分布する. 腺細胞間に見られるほぼ円錐形の細胞は, 細胞底から基底膜に沿って拡がる細胞質突起内を上記の線維が通過し, 腺神経に於ける介在細胞とも解せられる.
5. 気管筋層および粘膜筋板には, 小血管に近接またはこれを包む糸球状および迂曲性知覚神経終末と, 樹枝状の知覚終末とが多数見出される. 後者は従来 pressoreceptor 等と呼ばれるものにほぼ一致するが, 概してその構造の一部を以て局所の血管に分布するのが認められる. 従ってかかる終末は従来の pressoreceptor の機能のほかに局所血管とその周囲組織に対する内受容器をも兼ねると考えられる.
6. 平滑筋組織には植物神経終網が分布する. この終網は原形質性神経線維と介在細胞とから成る一種の合胞体網で, 両者に由来するベール状の原形質突起が平滑筋細胞の表面を被い, これに接触する.
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© 国際組織細胞学会
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