Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
篩骨板の構造と透過性について
関 正次
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1963 年 24 巻 2 号 p. 141-153

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抄録
二十日鼠では, 篩骨板の孔を通る嗅糸の周りに細胞や結織線維が殆んどなく, 大鼠ではそれ等が少しあり, 天竺鼠, 家兎, 犬ではそこに網状の組織ができており, 猿では硬膜の続きのやや厚い結織層が網状の組織を囲むのが目立ち, 人になると, この硬膜鞘がなお厚く, 従って嗅糸の周りの網状の組織と腔が甚だ狭くなっている.
二十日鼠でクモ膜下腔に入れられた墨やトリパン青はいずれも甚だやすく篩板を通って鼻に行き, 鼻腔壁に大いに広がる. 墨は, 大鼠では一部が篩骨板の孔のところに止められ, 天竺鼠, 家兎, 犬では約半量が止められるが, 通過した墨はやはりよく鼻腔壁に広がる. 猿では墨の少量が鼻粘膜の深層に達するだけである. 人では篩骨板の透過性はなお少ないと想像される.
逆に墨を二十日鼠の鼻粘膜に注入するとき, その仕方があまり粗暴でなければ篩骨板に行かない. トリパン青は行くことがある. トリパン青を深く篩骨板に近いところに注入すると, 篩骨板の上に出て, クモ膜下組織まで染める. 故意にすれば, こんなことも起きるが, 平生は液がただ一方向に, 頭蓋腔から鼻内へ流れている.
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© 国際組織細胞学会
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