Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
哺乳動物膵ラ氏島の電顕的研究に対する微解剖の応用
横尾 定美青地 脩吉田 秀雄
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1965 年 25 巻 4 号 p. 423-434

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抄録
膵臓ラ氏島ホルモンの生成, 貯蔵及び分泌の機序を解明することは, 糖尿病の病態生理を初めとして, 種々の生体内外因子や抗糖尿病剤の作用点を知ることに直接的関係をもつ重要な課題である. この機序を解明するための最も新しい方法としては現在のところ, 膵ラ氏島の酵素学的研究を中心としたラ氏島細胞内代謝へのアプローチと, ラ氏島細胞の超微細構造からする形態学的方法とであろう. この両者の方法は何れも哺乳動物では, 膵外分泌組織中に島状に埋没している純粋なラ氏島組織そのものを対象とせざるを得ないため, 多くの困難を伴うことは衆知のことである. 従って先人の多くの努力にも拘らず, ラ氏島の上記機序に関する未開拓の分野は他の組織に比して遙かに多い現状である. 著者らはこの点に鑑み, 最近注目されている微解剖 (microdissection) をラ氏島の電顕的研究に導入し, 極めて容易に電顕下にラ氏島細胞をとらえうることを見出した. すなわち細切した膵組織を1%オスミウム酸溶液または6%グルタルアルデヒド溶液中で, 実体顕微鏡下にラ氏島の微解剖を行ない, ほぼ純粋なラ氏島組織を得, これについて電顕的操作を加え, ラ氏島を観察した. 本論文では本法によって得た正常家兎膵ラ氏島の電顕所見について記述した.
又, オスミウム酸溶液中で微解剖する場合は, 膵組織の黒化度が外分泌部と内分泌部では異なるので, 他の種々の生理的溶液或はグルタルアルデヒド溶液中において行なうよりも遙かに鮮明なラ氏島を実体顕微鏡下にとらえることができ, 従って他溶液中では不鮮明なラット, 家兎, 或は食餌摂取後のラ氏島も明瞭に見える点が甚だ好都合である.
本法は各種哺乳動物ラ氏島の電顕的観察に適用出来る可能性があるものと考えられる.
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© 国際組織細胞学会
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