Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
イヌとネコの脳表層部の電子顕微鏡的研究
飯田 二昭
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1966 年 27 巻 1-5 号 p. 267-285

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抄録
イヌとネコの大脳と小脳を用いて, それぞれの表層部における脳軟膜や血管と中枢神経組織との形態学的な関係を電子顕徴鏡で観察し, 次の結果を得た.
1. 脳軟膜は重層する線維細胞とその突起が疎に接合し, その網眼に膠原原線維と多数の血管を入れた膜で, 光学顕微鏡で観察されたような, 閉鎖された1枚の緻密な膜ではない. また脳軟膜と脳表面の基底膜とは恒常的に密に接しているわけではなく, その間に脳脊髄液に満たされた粗な間隙をもつ場合が多い.
2. 大脳と小脳の表面は, 全面にわたって厚さ200-300Åの基底膜で間隙なくおおわれており, これによって脳軟膜と神経組織とが境されている.
3. 脳実質の最表層には, 基底膜に接して限界膜で境された Neuropil が充満している. これらは主として星状膠細胞の突起で構成され, しばしば基底膜の直下にそれらの細胞体が認められる. 表層に近くシナプスを認めることがあるが, 神経細胞の核周部は見られない. したがってこれら神経細胞性の要素が脳の最表面に, 直接接していることはない.
4. 脳軟膜の血管は内皮細胞, 基底膜, 平滑筋細胞および Perizyten からなり, 疎な脳軟膜組織の間に浮游した状態で存在しており, 血管壁が脳軟膜組織を介することなく, 脳皮質の表面に直接面していることもある.
5. 血管が脳軟膜から脳内に進入するにさいして, 一部脳軟膜組織を随伴することがある. この場合には血管周囲腔が存在する. しかしこの腔は光顕的に予測されたような, 漏斗状に進入する2枚の脳膜から規定されるような定型的構成を示すものではない. この血管周囲腔の壁は血管側と脳側に随伴する薄い閉鎖性の基底膜からなり, 軟膜組織はその間に浮游した状態で進入しているにすぎない. 血管が脳の深部に進入すると, 両側の基底膜は癒合し, 軟膜組織と脳脊髄液の脳内への進入を完全に遮断する
6. 脳皮質内の毛細血管領域では, 血管の周囲に脳軟膜に由来する組織は存在せず, 主として星状膠細胞の脈管周囲終足が血管外周の基底膜に接して存在し, 神経細胞を血管壁から隔てている.
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© 国際組織細胞学会
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