抄録
成熟カイウサギの葉状乳頭を用い, 味蕾の構造について, 電顕用に樹脂包埋された組織の0.5∼1.0μ連続切片 (0.5%トルイジンブルー染色) による光顕的観察を行なつた. その結果は次の通りである.
1. 第1型細胞 (味細胞) 第2型細胞 (支持細胞) の分布と配列はかなり規則的である. すなわち味蕾に平等に分布する第2型細胞を比較的小さい第1型細胞の2ないし4個が囲むような配列を示す. 味管を通る味蕾の縦断あるいは斜断切片で観察すると, 味蕾の上半分においては明調 (第2型), 暗調 (第1型) 細胞の規則的な交互配列がよく認められる.
2. 味蕾には染色体の配列状態から anaphase と思われる有糸分裂細胞が認められる. この分裂細胞はその構造, 大きさ, 染色的特徴から第2型細胞に似ている.
3. そのほか二核細胞が第2型細胞だけに認められる. これは無糸分裂によつて生じたものと思われる.
4. 味蕾には最大幅径15∼60μにおよぶ大小がある. 大型味蕾の中には二孔性味蕾がまれに認められる. 味蕾細胞の分布, 配列関係の文献的比較考察および増殖の方法等について討議された.