Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
下垂体 chromophobe 腺腫の微細構造
黒松 千春
著者情報
ジャーナル フリー

1968 年 29 巻 1 号 p. 41-61

詳細
抄録
ヒトの下垂体 chromophobe 腺腫19例について, 電子顕微鏡的観察を行ない, その分泌機能を検索した.
全例において分泌顆粒の存在が認められた. その顆粒の大きさと形態的特徴にもとづき, 腫瘍は2種類に分類することができる. 一つは直径約250mμの solid な顆粒を有する腫瘍群であり, 他の一つは直径約150mμの, solid な顆粒, 芯を有する空胞状顆粒および完全な空胞状の顆粒等, さまざまな形態を示す顆粒が混在している腫瘍群である. 動物下垂体前葉細胞との比較により, 前者の分泌顆粒は好酸性顆粒, 後者のそれはACTH顆粒に相当するものと思われる.
腫瘍細胞の微細構造は, 正常下垂体の色素好性細胞のそれに極めてよく似ているが, 細胞体の不規則性と核の多形性のほか, 有窓層板, 線毛, 微細小管およびグリコゲン顆粒を伴い, 特異な配列を示す滑面小胞体など, いくつかの特異的細胞器官がまれならず認められた.
粗面小胞体やゴルジ器官の良好な発達, ゴルジ野内の顆粒形成像などの所見は, chromophobe 腺腫においても, 正常下垂体におけると同様の機構で, 活溌な分泌物産生が行なわれていることを示すものである.
分泌顆粒が merocrine 分泌によつて, 細胞外に放出される点も全く正常下垂体前葉と同様である.
著者関連情報
© 国際組織細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top