Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
家兎胎兒の腱線維の發育初期に於ける微細構造變化
増田 正敏
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1951 年 3 巻 1 号 p. 53-57

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抄録

腱の最初の發生に關する文献は極めて少く, Häggqvist と Maximow の腱に關する記載には見當らず, 前世紀末から1914年までの Jber. Anat. u. Entw. と1923年から1941年までの Anat. Ber. を渉獵した結果, 僅に3の研究を見るに過ぎず, しかも發生最初の腱組織の微細構造の變化については全く述べるところがないと言つても過言でない. そこで私は家兎胎兒の前後脚を長軸の方向に切つてアツァン染色を施し, 腱線維の發育初期に於ける微細構造の變化を觀察した. それによると脚が生じてゐる胎生第5日には, すでに青染する單なる間充織と區別されて, 青染する腱の原基と思はれるものが認められ, その線維は間充織のものとは違つてほぼ縱に並んでゐるが, まだ細い. ところが10日後になると線維は太さを増すと共に縱方向に著しく規則的に走るやうになるが, まだ一部には線維の方向の亂れたものがある. このとき線維は著しく紫色調を増す. 更に20日後になると線維は太いが, 微細にほぐされて, 構造の疎化したことを示し, 實際純青に染り, ここに腱組織が完成される.
胎生腱の超構密度ははじめに最も低く, 途中一時高くなるが, 線維構成の分子が連鎖束を作り, 束間に間隙が廣くなると思はれる時期に又低くなるのである.

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© 国際組織細胞学会
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