Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
マウス松果体の電子顕微鏡的観察, とくにその分泌構造について
伊藤 隆松島 少二
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1968 年 30 巻 1 号 p. 1-15

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抄録
マウス松果体の微細構造を電子顕微鏡で観察し, とくに構造の上からこの器官に分泌能を考えうるか否かを検討した.
松果体の毛細血管の周囲腔に, 神経線維とともに, しばしば松果体細胞の突起が認められる。この細胞突起には, 量にかなりの変動はあるが, 種々の大きさと性状を示す小胞が含まれる. 小胞は大小2種類があり, 大型のものにはさらに顆粒 (有芯) 小胞と無顆粒 (明調) 小胞とがある. 顆粒小胞は平均直径1160Åである. 一方, 小型の小胞は内部に顆粒を欠き, その大きさと形状は神経軸索にみられるシナプス小胞に似る. 大型の顆粒小胞は松果体細胞の胞体内とくにゴルジ装置で形成され, ついで細胞突起に移動するものと考えられ, 神経分泌細胞における分泌小胞との形態学的類似性にもとづいて, 松果体細胞の分泌に関連する構造と考えられる.
血管周囲腔における神経軸索は多量の小型顆粒および無顆粒小胞 (直径約600Å) をもち, 交感神経に由来するアドレナリン作働性線維とみなされる. この神経線維は血管周囲腔に遊離して終り, 松果体細胞との間にシナプスはみられない.
松果体の毛細血管の内皮細胞には, その薄く伸展した胞体部に平均直径650Åの多数の小孔が認められる. この有窓性の内皮が, また松果体の内分泌機能を暗示するといえよう.
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© 国際組織細胞学会
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