抄録
標識実験が 毛細血管内皮における膜流動による物質輸送の証明になりうるかどうかを再検討するために, ラットとマウスの下肢をグルタールアルデヒド か オスミウム酸であらかじめ灌流固定してのち フェリチンを灌流し, 筋肉の毛細血管を 電子顕微鏡下に観察した.
この実験で, 固定された毛細血管壁でも 組織間隙, 基底膜のみならず, ほとんどすべての小窩と小胞もまた フェリチンにより標識されることがわかった.
このことより, 従来の標識実験では 標識物質が拡散により内皮細胞の膜構造を標識した可能性があり, 毛細血管内皮における膜流動による物質輸送が証明されたことにならないと結論された.