熱帯産の雌ヒメウミガメを用い, 特異的に発達した食道を光顕ならびに走査電顕により観察した. 食道は, 著しく角化した重層扁平上皮よりなり, その大部分は多数の突起 (別名 咽頭歯) となっている. 食道上皮は3層すなわち胚芽層, 有棘層 および角質層からなる. 突起の表面は, 鱗片状に剥離していく角化細胞によっておおわれており, 角質層が極めて厚く, 100μに達する. これは, 他の食道粘膜上皮角質層の3∼7倍の厚さである.
顎歯を欠くウミガメにみられた これら特異な形状の突起は, 飲みこんだ食物を 細片にくだくのに役立っているらしい.