Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
松果体細胞はパラニューロンか
Manfred UECK和気 健二郎
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1977 年 40 巻 Supplement 号 p. 261-278

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抄録

松果体は間脳の第三脳室上壁が管状に膨出して発生した器官で, その主たる構成細胞である松果体細胞 (pinealocyte) はニューロンではないが, 神経性上皮に由来する.
松果体細胞は, 下等脊椎動物では, 網膜の視細胞と同様な外節を持ち, 光を直接受容する. 外節構造は系統発生の過程において次第に退化し, 哺乳類ではもはや存在しない. 光受容性の松果体細胞は僅かに内分泌機能を保有するが, は虫類から鳥類, 哺乳類へと移行するに従い, 内分泌機能は増強し, ゴルジ装置由来の分泌果粒が毛細血管に相対する細胞突起の終末に蓄積している. 光受容性の松果体細胞は松果体に分布する知覚性ニューロンとの間にリボンシナプスを形成する. 知覚性ニューロンは哺乳類松果体にはもはや存在しない. 一方 自律神経線維は光受容性松果体にはわずかに認められるに過ぎないが, 鳥類, 哺乳類には密に分布している. 環境の光の影響下にある交感神経支配によって松果体細胞のホルモン合成に関与する酵素の活性が調節される. メラトニンのようなインドール誘導体の合成が証明され, ペプチドホルモンの存在が議論されている.
以上のように, 松果体は神経-化学, 神経-内分泌変換器, あるいは光入力 (下等脊椎動物においては直接的に, 哺乳類においては交感神経を介して) をホルモン出力に変換する光-神経-内分泌器官として機能する. 松果体は光環境の歯車と噛み合った“生物時計”の役割を演じ, 生体のいくつかの機能の調節器 (または調節器の調節器) でもある. 哺乳類では生殖機能との相関がよく知られている. 松果体細胞は脳脊髄液接触ニューロンと神経分泌細胞とのそれぞれの特徴を兼ね備えている. また藤田恒夫 (1976) の定義に従えばパラニューロンの一つであるとも云える.

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© 国際組織細胞学会
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