抄録
日本産ウナギ (硬骨魚類) の視束前核を構成する細胞のうち, 第三脳室に突起を出しているペプチド作動性髄液接触ニューロンを, 半肉眼的, 光学顕微鏡的, 透過ならびに走査型電子顕微鏡的, 組織化学的に研究した.
ペプチド作動性髄液接触ニューロンは, 視束前核を構成する神経細胞の8-13%の割合で存在し, その細胞形質にはアルデヒドチオニンまたはクロムヘマトキシリンに濃染する分泌顆粒が多数認められた. このペプチド作動性髄液接触ニューロンは, 脳室面に対して極性を示し, 細胞内小器官は核上部に存在しており, 脳室に接する広さと形態から, 3型 (A, B, C) に分類できた. すなわち, A型細胞は細胞体が直接脳室に露出し, B型細胞は突起が脳室に接し, C型細胞は突起が脳室内に突出している細胞である. A型細胞は顆粒状を呈し (40-50×40-50μ2), 視束前核の腹側部に存在し, 3型のうち最も多い細胞である. B型細胞は双極状を呈し (60×30μ2), 視束前核の腹側部から背側部にかけて一様に分布し, 周囲の上衣細胞とは閉鎖帯で結合している. C型細胞は双極状を呈し (60×30μ2), 視束前核の背側部に分布し, 髄液中に小球状のふくらみを突出させ, 上衣細胞とは閉鎖帯で結合している.
ペプチド作動性髄液接触ニューロンは, アセチルコリンエステラーゼ反応には陽性を示したが, ATPアーゼ反応には陰性を示した. また視束前核の周囲には, きわめて豊富なアミン線維の分布が認められ, アミン線維によって統御されていることが示唆された.