アジア動向年報
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各国・地域の動向
2010年のASEAN 連結性強化と米ロの東アジアサミット参加
鈴木 早苗
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2011 年 2011 巻 p. 183-196

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2010年のASEAN 連結性強化と米ロの東アジアサミット参加

概況

2010年のASEANについては,2つの動きが重要である。第1に,域内の経済統合を進める取り組みとして,「連結性(connectivity)強化」のためのマスタープランが発表された。連結性強化とは,ASEAN諸国間での物や人の移動を円滑にするため,道路整備などを通じた地理的なつながりや,国境手続きの簡素化など手続き面での連携を強化することである。

第2に,ASEAN諸国と日本,中国,韓国,オーストラリア,ニュージーランド,インドの16カ国で構成される東アジアサミット(EAS)に,アメリカとロシアが参加することになった。この動きと関連して,上記諸国の国防大臣が参加して,拡大ASEAN国防大臣会議(ADMMプラス)が初めて開催された。ASEAN地域フォーラム(ARF)のほかに,アジアにおいて安全保障を話し合う場が新たに設置されたといえる。

政治・安全保障協力

組織運営手続きの整備

ASEAN憲章(2008年発効)の規定にもとづいて,組織運営手続きの策定作業が2009年から進められている。2010年は主に4つの手続きが策定された。第1に,ASEAN事務総長(以下,事務総長)および事務局が不動産取得などの法的取引を行うための手続きが採択された。これはASEANが法人格を有するとする憲章の規定に沿ったものである。

第2に,ASEAN大使の認定手続きが明文化された。ASEAN大使は,10月の首脳会議時点で,44の域外国や政府間組織から任命および認定されている。

第3に,東南アジア友好協力条約(TAC)の第三議定書が署名された。この議定書は,地域機構など国家以外の主体によるTAC締結を可能にするものである。これにより,かねてから意思を表明していたEUのTAC締結準備が整ったことになる。7月には,新たにトルコとカナダがTACを締結した。

第4に,憲章の規定やASEANの諸協定をめぐる紛争を解決する手続きが策定された。4月の首脳会議で採択された「紛争解決メカニズムに関する議定書」によれば,憲章の規定やASEANの諸協定をめぐる紛争解決には4つの手段がある。すなわち,(1)ASEAN議長国(以下,議長国)あるいは事務総長による斡旋(good office)を通じた解決,(2)紛争当事国,あるいは事務局が準備したリストから選ばれた第三者が仲介(mediation)や調停(conciliation)を行う方法(調停の場合は,和解案の提示が可能),(3)紛争当事国,あるいは事務局が準備したリストから選ばれた3人の仲裁人が裁定を下す仲裁(arbitration)という方法,(4)以上3つの方法で解決できない場合に首脳会議へ決定を委ねる方法,である。

紛争解決の最終手段としての首脳会議の役割をどう捉えるかについてはASEAN諸国間で意見の対立があり,第4の手段についてのルール策定は10月の首脳会議まで持ち越された。結果として,首脳会議に委ねる前にASEAN諸国外相から構成される調整評議会の判断を仰ぐこと,紛争当事国はいつでも案件を取り下げることができることを盛り込むことで決着した。

このように,憲章の規定にもとづいて,さまざまな手続きが明文化され,あるいは法的なルールとして捉えられるようになっている。今後は,加盟国がこれらの手続きを活用できるかどうかが試される。たとえば,紛争解決手続きの活用には紛争当事国の同意が前提である。この点は,カンボジアとタイの国境画定をめぐる紛争において確認された。カンボジアは8月,紛争の仲介をASEANに依頼する書簡を議長国のベトナムに送り,ベトナムはこの問題でASEAN外相会議を開催する意思を表明した。しかし,タイはあくまで二国間での解決を希望すると表明し,当事国の同意なしにASEANが関与することは許されないと反発した。

2010年末までにこの問題でASEANの関与はみられなかった。しかし,その後,2011年の議長国であるインドネシアが2011年2月にカンボジア・タイ外相と会談し,両国の合意を得て緊急のASEAN外相会議を招集した。この会議では両国国境付近に停戦監視団を派遣することが合意された。ただし,紛争当事国であるカンボジア・タイの二国間の話し合いは今後も続けられる見込みで,両国がどのような形のASEANの関与を望んでいるのかはまだ分かっていない。

加盟国の国内問題に対する控えめな干渉

近年のミャンマーに対するASEANの声明に象徴されるように,ASEAN諸国が加盟国の政治状況に口を差しはさむ場面がみられるようになった。ただし,その方法は,ほかの地域機構に比べてきわめて控えめである。この点は,2010年に起きたいくつかの事例でも顕著にみられた。4月に発生したタイの政治暴動に対しては,議長国ベトナムが,法秩序の回復と国民和解を求めるASEAN議長声明を発表しただけである。また,11月に実施されたミャンマーの総選挙については,選挙制度や実施方法などに対して国際的な批判が多く浴びせられたが,ASEANは選挙実施を評価し,民主化の進展を期待するという議長声明を発表したにとどまった。こうしたASEANの姿勢は,内政不干渉原則を重視するベトナムなどの加盟国の意向を反映している。

また,人権の保障に関しても控えめな関与が目立った。すなわち,各国の内政問題のなかでも,政治的自由の保障などではなく,加盟国が一致しやすい社会開発の分野で協力を進めることで人権保障に取り組む方向性が示された。4月に発足した女性・児童の人権保障に関するASEAN委員会は,女性の雇用支援や児童労働の禁止などに取り組み,2009年に設置されたASEAN政府間人権委員会(AICHR)と連携して活動することが期待されている。AICHRでも女性や児童,外国人労働者の人権を重点的に取り上げる方針が打ち出された。

人権侵害を監視する権限がないAICHRに対しては,フィリピンやインドネシアのNGOや市民団体,インドネシア政府やタイ政府からも権限強化を求める声が寄せられたが,それがAICHRで取り上げられた形跡はない。また,市民社会団体やミャンマーの国連特別大使がAICHR委員との対話を求めたが,AICHR議長であるベトナムが拒否したために,実現しなかった。さらに,市民団体は,2009年2月の首脳会議に実現した市民団体とASEAN諸国首脳との会合が,2010年4月の首脳会議では開催されなかったことにも不満を表明した。

アメリカとロシアのEAS参加決定

域外関係で注目されるのは,16カ国で構成されるEASにアメリカとロシアの参加が決定した点である。10月に開催されたEASには,アメリカ国務長官とロシア外相が議長国ゲストとして招かれ,両国の参加が正式に承認された。

アメリカがEAS参加の意思を表明したのは,オバマ政権下で積極的に推進されている対ASEAN外交の一環だと考えられる。ASEANとの関係強化の一環として,アメリカは南シナ海の問題に積極的に関与することやメコン川流域の開発にも力を入れることを表明し,中国を牽制する構えをみせている。ロシアは,EASが設置された2005年時点で参加の意向を表明していた。2005年の第1回EASには,議長国マレーシアの招聘を受け,議長国ゲストとして参加している。しかし,この時点ではインドネシアやシンガポールがEAS加盟国の拡大に消極的であり,ロシアの正式参加は見送られた。

アメリカとロシアの参加にASEAN内で合意が得られたのは,EAS加盟国拡大に消極的だったインドネシアとシンガポールが反対を表明しなくなったからである。両国の姿勢が変化した背景には,2009年にオーストラリアが提案した「アジア太平洋共同体構想」の代替案としてEASを捉えるようになったことにある。オーストラリアの提案ではインドネシアのみが単独で参加することになっているため,シンガポールはASEANの存在意義が薄れると反発した。また,インドネシアもASEAN内の反発に配慮するとともに,アメリカとロシアという二大国が参加することで単一の大国がこの地域を支配することは避けられるとし,EAS加盟国拡大に同意したと考えられる。

EASの参加条件は3つある。第1に,TACの締約国または締結の意思があること,第2に,ASEANの域外対話国であること,第3に,ASEANと実質的な関係があることである。2010年末現在,ASEANの域外対話国でEAS加盟国(アメリカとロシアを含む)でないのは,EUとカナダである。このうち7月にTACに加入したカナダは参加条件を満たしているため,EAS加盟国の拡大は今後もありうる。

EASでは,金融やエネルギー,教育,鳥インフルエンザ,災害管理などの分野で協力が進められている。しかしEASは,もともと首脳会議に端を発しており,政治対話の側面が強い。そのため,EASの機能や協力分野はアメリカとロシアの参加で変化する可能性がある。

域外国との新たな国防対話

アメリカとロシアのEAS参加決定と関連して注目されるのが,ADMMプラスの初開催である。ADMMプラスとは,ASEAN諸国間の国防大臣会議であるADMMに日本や中国などのEAS加盟6カ国,そしてアメリカとロシアの代表が参加した会議である。10月に開催されたこの会議では,第2回を2013年にブルネイで開催することが合意された。外相中心のARFに加え,国防大臣レベルの対話の枠組みが新たに始動したといえる。

ADMMは2006年から年次開催されている。東南アジア地域の戦略的重要性から,この地域に利害を有する域外国との対話の必要性はADMM開始当初から認識されていた。2007年には,ADMMプラスの設置に向けてコンセプトペーパーを策定し,ADMMプラスへの参加条件や方法などに合意した。参加国の条件として,(1)ASEANの域外対話国であること,(2)ASEAN諸国とすでに緊密な国防対話があること,(3)ASEAN諸国とともに地域の安全保障の向上に寄与できることが挙げられている。また,参加の方法としては,ASEAN側が招聘するか,参加を希望する国が議長国に申請するものとされた。EASと同様に今後,ADMMプラスの参加国数は増える可能性がある。

今回の会議で,ADMMプラスは災害支援やテロ対策,海上安全保障などを話し合う場とすることが合意された。海上安全保障と関連した議題として注目を集めたのが,一部のASEAN加盟国や中国が当事国となっている南シナ海の領有権争いである。ASEAN諸国は国連海洋法条約などのもとで国際的な解決を希望しているが,中国は二国間解決を望んでいる。2002年にASEAN諸国と中国は,「南シナ海の当事国に関する宣言」を発表し,平和的紛争解決の重要性を謳った。しかし,南シナ海では中国軍によるベトナム漁船の拿捕などの事件が断続的に起き,紛争解決の糸口はみえていない。

ADMMプラスでは,2002年の宣言でも謳われたように南シナ海における行動規範の策定を急ぐことが合意された。中国の反発を避ける必要から,ASEAN諸国はこの問題におけるアメリカの関与に慎重である。9月の第2回ASEAN・米首脳会議では中国に強硬姿勢で臨むべきだとするアメリカの主張を退け,共同声明で「南シナ海問題」に言及することを回避した。ASEAN諸国にとってADMMプラスは,この問題の解決のために中国の柔軟姿勢を引き出す場であると考えられる。

経済協力

ASEAN経済共同体の実現に向けた連結性の強化

ASEAN諸国は,2015年までにASEAN共同体を構築することを目指している。ASEAN共同体は,政治・安全保障共同体,経済共同体および社会・文化共同体から構成される。このなかで実現に向けた取り組みがもっとも進展しているのが,「単一の市場と生産基地」を目指す経済共同体である。経済共同体実現に向けて,10月の首脳会議では,「連結性強化のためのマスタープラン」が発表された。

マスタープランでは,3つの分野においてASEAN諸国間の連結性を強化するための具体策が提示された(表1)。第1は物理的連結性(physical connectivity)で,道路や鉄道,電力網の整備などが主眼となっている。第2は制度的連結性(institutional connectivity)で,国境手続きや物流サービスの効率化などを対象とする。第3は人的連結性(people-to-people connectivity)で,ビザ手続きの緩和などが含まれる。

この計画の実施メカニズムには3つの特徴がある。第1の特徴は,ジャカルタ駐在のASEAN常駐代表による「連結性に関する調整委員会」が設置されたことである。常駐代表は月2回のペースで会合を開いており,常駐代表の間の緊密な連携が実施の効率化に寄与することが期待されている。

第2の特徴は,東南アジアに関係するサブリージョナルな協力との連携が図られていることである(表2)。これらの協力は,メコン川流域など局地的な領域を対象としており,これまでASEANにおける協力との関係性が十分に明確ではなかった(ただしAMBDCはASEANの局地経済圏協力として認知されている)。マスタープランでは,既存のサブリージョナルな協力のもとで進められているプロジェクトの実施を後押しすることで連結性を強化する方向性がみてとれる。とくに,東南アジア大陸部におけるサブリージョナルな協力は,複数の枠組みで進展しており,マスタープランでも中心的に取り上げられている。たとえば,カンボジア,ラオス,ミャンマー,ベトナム(CLMV)の4カ国は,首脳会議を隔年開催しており,8月には経済大臣会議を初めて開催した。したがって,島嶼部に位置する加盟国に一定の配慮がなされているものの,マスタープランの中核は大陸部における連結性の強化であるといえよう。

第3の特徴として,資金調達の重要性が触れられていることである。資金調達の方法として,域外国や国際機関から受けている既存の基金を活用することに加え,民間セクターの投資や官民協力など新規資金源を開拓することも検討されている。プロジェクト実施には加盟国政府からの資金だけでは足りず,域外国や民間セクターとの連携が不可欠である点が強調されている。

表1  連結性強化マスタープランの概要

(出所) Master Plan on ASEAN Connectivityにもとづき筆者作成。

表2  東南アジアに関係するサブリージョナルな協力枠組み

(出所) Master Plan on ASEAN Connectivity,各協力枠組みの公式ウェブサイトにもとづいて筆者作成。

ASEAN自由貿易地域(AFTA)の実現と貿易円滑化

2010年1月,CLMV以外の先行6カ国においてほぼ全品目の関税が撤廃され,AFTAが実現した。CLMV諸国においても,全品目の98%以上で関税が0~5%に引き下げられた。また,AFTAに関する措置や義務などを包括的に統合したASEAN物品協定(ATIGA)が5月に発効した。

AFTAの実現で加盟国の国内ではさまざまな反応がみられた。このうち,タイでは自動車など製造業を中心に輸出の拡大など期待感が広がった。一方,2009年から続いていたコメの関税引き下げをめぐるタイとフィリピンの対立がようやく決着した。AFTAにおいて,加盟国は,関税引き下げスケジュールが遅く,一定程度の最終関税率を維持できる高度センシティブ品目(HSL)を指定することができる。フィリピンは,この品目に指定しているコメの関税引き下げ時期を延期してもらう代わりに,5万トンのコメ無税枠をタイに提示したが,タイ側は40万トンを要求するなど対立していた。2月,フィリピンはタイに対し,上質米5万トンを含む年間36万トンの無税枠を設定することで合意した。

貿易の円滑化措置として,2010年では2つの取り組みが注目される。第1に,自己証明制度を試験的に導入することが合意された。自己証明制度とは,AFTAの特恵関税の適用を受けたい輸出業者が,認定輸出番号が付いた許可証の発行を受け,その番号をインボイスなどの書類に記入することで輸出品が原産品であることを申告する制度である。この制度の導入により,原産地証明書発行手続きの効率化と簡素化が期待できる。同制度の本格導入を前に,11月にはブルネイとマレーシア,シンガポールが参加する1年間のパイロットプロジェクトが始動した。第2に,2015年の航空自由化に向けて,2009年に締結された貨物輸送自由化協定に続いて,旅客運送自由化協定が11月に締結された。

一方で実施が遅れている措置もある。たとえば,通関手続きの簡素化を目指したナショナル・シングル・ウインドウ(NSW)は,タイやインドネシア,フィリピンなど多くの加盟国でその導入が遅れている。

ASEAN+1FTAの進展とASEAN+3の協力深化

2010年1月,ASEANとインド,およびオーストラリア・ニュージーランドとの自由貿易協定(FTA)が発効し,合意したスケジュールに沿って順次関税の撤廃が実施される。同じく1月に,ASEANと中国および韓国とのFTAが実現し,適用品目の90%以上で関税が撤廃された。このうち,韓国とのFTAの利用率は低い水準にとどまっているため,民間セクターの認知度を高める仕組みを構築する必要性がASEAN・韓国経済大臣会議において指摘された。

ASEAN・中国FTAについては,インドネシアの企業から関税撤廃延期を求める声が上がった。要請を受けインドネシア政府は,複数品目の関税撤廃時期を2011年あるいは2012年に延期することを中国に提案した。しかし,提案は受け入れられず,両国は関税撤廃を当初のスケジュール通りとし,バランスのとれた貿易関係を維持することで合意した。したがって,インドネシア国内企業の要求は満たされなかったといえる。インドネシアで反発が起きた原因は,政府がFTA締結時に民間セクターへの説明を十分に行わなかったからであると考えられる。ほかの加盟国も同様の問題に直面していると考えられるため,このような事態は今後も発生する可能性がある。

ASEAN加盟各国とFTAを締結することになったEUは,シンガポール,ベトナムおよびマレーシアと交渉開始で合意した。EUとのFTAにはタイも関心を示している。ほかの域外対話国との関係では,EASに参加することになったロシアとASEAN諸国との経済大臣会議が初めて開催された。また,日本との関係では,2009年と同様,首脳,外相および経済大臣レベルで日メコン会議が開催され,協力の進展が確認された。

ASEAN+3(日本,中国,韓国)では,2つの分野において進展がみられた。第1に,チェンマイ・イニシアティブの多国間化契約(1200億ドル)が3月発効した。二国間スワップ協定に比べ,多国間化契約は危機の際により円滑な資金支援を可能にする。また,資金支援を実施するための意思決定を迅速に行うため,地域経済の監視や分析を行うマクロ経済リサーチ・オフィスがシンガポールに設置される準備が整った。このオフィスには,リスクを早期に発見するための監視機能を果たすことが期待されている。

第2に,10月のASEAN+3農林大臣会議で,「ASEAN+3緊急コメ備蓄制度」を恒久的に創設することが合意された。緊急コメ備蓄制度とは食糧不足に陥った国を支援するメカニズムである。恒久的な制度を創設する合意は,2004年からタイの事務局(運営資金は日本が拠出)を中心に実施されてきた「東アジア緊急コメ備蓄パイロットプロジェクト」が2月で終了したことを受けたものである。

2011年の課題

2010年のASEAN諸国間の域内関係では,経済共同体の構築に主眼が置かれた。2011年の経済分野における課題は,連結性強化のためのマスタープランで計画されたプロジェクトを着実に実施することである。また,AFTAに続き,ASEANが参加するFTAは基本的に締結時の約束どおりに実施されている。今後は民間セクターがFTAを積極的に活用できるように,ガイドラインを策定し,活用の手続きを簡素化していくことが肝要となる。

域外関係では,政治・安全保障分野における取り組みが注目される。アメリカやロシアが参加するADMMプラスやEASなど,ASEANを基盤として設置された枠組みをASEAN諸国がどのように活用していくかが試される。

2011年の議長国はインドネシアである。加盟国(英語表記)のアルファベット順にもとづく輪番制という憲章の規定によれば,次期議長国はブルネイのはずであった。2010年4月に開催された首脳会議で,2011年の議長国の担当を変更することが合意された。これは,2013年に担当する予定のインドネシアが,同年にAPEC議長国も担当するため,ブルネイとの交替を提案したためである。この議長国変更については,2010年4月の首脳会議で今回の変更が先例とならないことを確認し,了承された。

2011年の議長国であるインドネシアは,人権の保障や外国人労働者の支援に積極的に取り組む意向を表明した。同国外相は,2010年12月に解放されたアウンサン・スーチーと会談し,国民対話に向けて協力することで一致した。また,カンボジアとタイの国境紛争解決に向けた仲介にも意欲的である。このようなことから,2011年は政治・安全保障共同体の構築に向けた取り組みが進展する可能性がある。

(地域研究センター)

参考資料 ASEAN 2010年
①  ASEANの組織図(2010年12月末現在)

(出所) ASEAN Charterをもとに筆者作成。

②  ASEAN主要会議・関連会議の開催日程(2010年)
③  ASEAN常駐代表(2010年12月末現在)
④  事務局名簿(2010年12月末現在)
 
© 2011 日本貿易振興機構 アジア経済研究所
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