アジア動向年報
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各国・地域の動向
2011年のマレーシア 政府主導の漸進的政治改革と高所得国家入りへの不確かな道程
鈴木 絢女
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2012 年 2012 巻 p. 321-346

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2011年のマレーシア 政府主導の漸進的政治改革と高所得国家入りへの不確かな道程

概況

ナジブ・ラザク首相の穏健アプローチへの期待と堅調な経済回復に支えられ,2011年前半は,補欠選挙や州議会選挙における与党国民戦線(BN)の勝利が続いた。しかし,7月にNGOによる選挙制度改革を求める大規模デモ(Bersih 2.0)が行われ,警察がこれを抑圧したことで,政権の支持率は低下する。これを受けて,ナジブ政権は国内治安法(Internal Security Act:ISA)や結社法などの制限的立法の撤廃を含む政治制度改革と選挙制度改革に着手した。

安定多数を逸した2008年選挙後に台頭した新たな党指導部の下,BN各党は,中道路線を堅持しつつ総選挙に向けて党組織の強化を進めている。他方で,野党連合人民連盟(Pakatan Rakyat:PR)内部では,ペナン州政府を担い,全国的にも華人からの安定した支持を集めている人民行動党(Democratic Action Party:DAP)と,2008年選挙以降失いつつあるムスリム票の奪還を目指す汎マレーシア・イスラーム党(Parti Islam SeMalaysia:PAS),人民公正党(Parti Keadilan Rakyat:PKR)との間で,イスラーム刑法実施などをめぐり,対立がみられた。

高所得経済への移行に向けた行政・経済構造改革は,2年目に入り,新経済モデル(New Economic Model:NEM)と経済刷新計画(Economic Transformation Programme:ETP)の下で,クアラルンプール再開発などが進められている。他方で,総選挙への考慮から,NEMの主要な目標のひとつである財政改革は後手に回っており,政府債務削減は持ち越しとなった。

外交分野では,ETPへの投資や,建設,エネルギー分野におけるマレーシア企業の投資先を求めて,中国や韓国,イスラーム諸国との関係が強化されたほか,ASEAN諸国との善隣外交が継続した。アジア太平洋への関与を強めるアメリカとは,環太平洋戦略的経済連携協定(Trans Pacific Partnership:TPP)や核拡散防止,東アジア地域の安定に向けた協力を進めている。

国内政治

1998年のアンワル・イブラヒム副首相(当時)の罷免・逮捕に反対した「レフォルマシ運動」以降,マレーシアでは,民族や宗教間の富や権力の分配をめぐる「古い政治」に対して,人権や平等を争点とする「新しい政治」が台頭したと言われている。2008年選挙では,アンワルを結節点としてPKR, DAP, PASが選挙協力を行い,BN政権の汚職や非民主的政治制度を争点として得票を拡大し,下院におけるBNの3分の2の安定多数を阻止した。

このような「新しい政治」への潮流は,首都クアラルンプールで2011年7月に行われた「Bersih」(クリーンで公正な選挙連合) によるデモにも典型的に表れた。しかし同時に,2011年の国内政治は,(1)政権主導の政治の自由化,(2)野党の「古い政治」への拘泥によっても特徴づけられるものとなった。

Bersih 2.0

Bersihは,野党,人権NGO,記者団体などによって2006年に結成された。2007年には5万人規模の集会を実施し,これが2008年選挙の結果に影響したといわれている。2011年6月,NGOによって主導された「Bersih 2.0」は,選挙委員会の独立性の確保,架空の有権者を含むともいわれる有権者リストの修正,投票時の改ざん防止インクの使用,不在者投票制度の充実,選挙キャンペーン期間の長期化などを要求し,10万人規模の集会を組織すると発表した。

内務省はこの集会を違法としたうえで,Bersihのシンボルである黄色いTシャツの着用を禁止し,協力団体であるマレーシア社会党党員を拘束,Bersihリーダーや野党幹部のクアラルンプール入りを禁止するなどの措置をとった。結局,7月9日の集会への参加者は,予定よりも小規模の1万~1万5000人にとどまったが,当局は,クアラルンプールの交通を封鎖するとともに,催涙ガスや放水車を備えた大量の警察官を配備し,Bersihや野党リーダー,赤シャツを着て対抗集会を決行した統一マレー人国民組織(UMNO)青年部リーダーらを含む1000人以上を逮捕した。

政治改革の担い手としてのナジブ

Bersih2.0への政府の対応は,世論の反発を招いた。8月下旬に公表されたムルデカ・センターの調査によれば,5月に68%に上ったナジブ首相の支持率は59%まで下がった。首相は,このような世論動向を逆転させる一手として,選挙制度改革のための議会特別委員会の設置を発表した。さらに,9月16日のマレーシア・デイ前夜の演説において,過去の非常事態宣言の撤回, ISAなどの市民的自由を制限する法の撤廃,集会,結社,言論の自由などの政治的自由を制限する法の修正を含む抜本的な政治制度の自由化を宣言した。

この発表を総選挙に向けたパフォーマンスにすぎないとした野党の予測に反し,政治の自由化は速いスピードで進んでいった。10月の国会では,居住制限法(Restricted Residence Act)や国外追放法(Banishment Act)が撤廃されたほか,1966年,1969年,1977年の非常事態宣言が撤回され,この宣言の下で警察に与えられていた予防拘禁権限が終了した。また,予定されているISAの撤廃に伴い,民族に基づく差別を禁止する民族関係法(Race Relations Act)などの新規立法の準備が進められている。政府は,新規立法の下では,政治的イデオロギーに基づく逮捕はありえないこと,拘留期間が短縮されること,拘留期間の延長は裁判所の命令によってのみ行われることなどを約束している。

11月には,5人以上を含む集会に際して警察からの許可取得を義務づけた警察法27条の撤廃が提案され,これに代わる平和集会法(Peaceful Assembly Law)が上程された。同法は,非指定地域における集会に際しては24時間前までに警察に通知すること,公会堂やスタジアムなどの指定地域においては10日前までに警察に通知し,許可を取得することを定めている。他方で,貯水池,発電所,橋,信仰の場,病院,空港,学校等の施設から50メートル以内は禁止地域とされ,いっさいの集会が禁止された。平和集会法が街頭での集会を禁止していることから,弁護士協会やBersihリーダーらの反対はあったが,法案はBN政党の支持を得て可決された。

また,学生の政党活動を禁止した大学・カレッジ法も自由化の対象となった。これは,補欠選挙で野党を支持したとして逮捕され,大学から処分を受けたマレーシア国民大学の学生4人が起こした裁判において,控訴院が,学生の政党活動を禁じた大学・カレッジ法15条(5)(a)を違憲としたことに対応したものである。この判決を受けて,15条を改正し,21歳以上の学生の政党所属を合法化するための修正準備が進められた。この他,印刷機・出版物法のうち,印刷・出版許可証を毎年取得することを定めた規定も削除されることが発表された。

市民的・政治的権利の自由化と並行して,選挙制度改革も進められた。10月,BN議員5人,DAP党首を含む野党議員3人,無所属議員1人からなる選挙改革のための議会特別委員会が設置された。委員会は,11月末に,複数回投票を防止するための改ざん防止インクの導入,在外投票および郵便投票の公務員以外への拡大,選挙人名簿の整理など10項目の改革を提案した中間報告書を全会一致で採択し,議会に提出した。議会による報告書採択を受けて,選挙管理委員会による検討が行われた結果,改ざん防止インクの使用,軍人や警察による郵便投票,選挙人名簿のアップデートと公開などが決定した。

現政権による政治の自由化や透明化は,行き過ぎれば政権内の保守派からの反発にあい,躊躇すれば反対派からの攻撃に遭うため,政権を脆弱な立場に追い込む可能性がある。しかし,ナジブは,2008年選挙後のBN各党の危機感,「アラブの春」の衝撃,自由化の旗手として党内での勢力拡大をもくろむBN各党青年部の支持を追い風に党員を説得し,漸進的ではあるが,自由化を進めることに成功しているといえよう。

「古い政治」にとらわれた野党

他方で,野党の側も「アラブの春」や「Bersih 2.0」を利用した。たとえば,PKRはマレーシア版「アラブの春」の可能性に言及し,中東の独裁政権と対比させることでナジブ政権のイメージ悪化を狙った。また「Bersih 2.0」では,2009年11月以降の補欠選挙で落選続きのPKRとPASが多数の党員を動員し,民主主義の擁護者としてのイメージ作りを図った。

しかし,ナジブ政権主導のスピード感ある自由化によって,「新しい政治」の騎手としてのPRのイメージはかすんでしまったようにみえる。これに加えて,現在でも政治のダイナミクスの源泉のひとつとなっている宗教や民族を争点とする「古い政治」のなかで,野党各党の支持獲得に向けた努力と野党間協力とが摩擦を起こした。

このような摩擦が端的に表れたのが,イスラーム国家建設とイスラーム刑法実施をめぐる野党間の不一致であった。そもそも,世俗主義のDAPとイスラーム政党であるPASの連合が可能となったひとつの要因は,PASが「イスラーム国家建設」に代わり,「福祉国家建設」を党マニフェストとしたことであった。

しかし,9月,PAS顧問でクランタン州知事のニック・アジズは従来の方針を覆し,クランタン州がイスラーム刑法を実施すべきときがきたと発言した。この発言については,イスラーム刑法と世俗法の刑罰の重さの違いや,刑法の立法および実施権限が連邦政府にあること,ムスリムと非ムスリム双方を当事者とする場合の適用の難しさなどから,BN各党,弁護士協会,華人団体からの反対が相次いだ。なかでもDAPは反対の最先鋒に立った。

このような足並みの乱れは,野党各党の支持獲得努力に由来している。4月に行われたサラワク州選挙で,野党は,30年にわたりサラワク州知事の座にあるタイブ・マハムードの汚職疑惑や,インドネシア製のマレーシア語聖書3万冊がクチン港において押収された事件を争点としながら,宗教の自由,グッド・ガバナンス,貧困の撲滅などを共通のマニフェストとして選挙に臨んだ。この選挙で,DAPは都市部華人からの支持を受け,候補者をたてた15選挙区のうち12の選挙区で当選し,前回選挙から獲得議席を倍増させることに成功した。これとは対照的に,49人の候補者を擁立したPKRは3議席,PASにいたっては0議席という結果であった(表1)。この他,3つの州議会補欠選挙では,UMNO候補者がPAS候補者に対して,前回選挙時よりも大きな得票差で勝利している(表2)。

表1  サラワク州議会選挙結果

(出所)マレーシア選挙委員会ウェブサイト。

表2  2008年総選挙結果/2011年補欠選挙結果

(出所) The Star, Malaysiakini, マレーシア選挙委員会ウェブサイト。

PASとPKRの勢力後退の原因は,ムスリム保守派からの支持低下とみられている。PASは2008年選挙以降,リベラル路線を堅持していた。6月の党選挙では,アンワルと近いと目されるリベラル派のマット・サブが,UMNOと近いといわれるウラマグループの候補者を下して副党首ポストに就任した。また,この大会では,党首ハディ・アワンが「イスラーム国家建設」を主張せず,PR協力を重視すると明言した。しかし,このような動きについて,党内のウラマグループは,PKRやDAPに過剰に譲歩し,イスラームの原理から乖離していると批判していた。

このような党内の対立は,8月に,スランゴール州イスラーム宗教局が,ムスリムに改宗を促したと疑われるメソジスト派教会に立ち入り捜査した事件への対応をめぐり噴出した。宗教の自由を擁護しようとするキリスト教団体や人権団体と,改宗に反対するイスラーム団体の間で国内世論が二分されるなか,PASがイスラーム系NGOによる反改宗デモに参加しないよう党員に呼びかけたことで,ウラマグループの不満はさらに高まった。これに加えて,同じ月に,マット・サブ副党首が,1950年に起きたブキッ・ケポンにおける共産党員による警察官殺害事件に関し,自由を擁護した「真の英雄」として共産党員を描写したことが報道され,マレー人を中心とした国内世論からの非難にさらされることとなった。

DAPとの協力や党内のリベラル派の台頭によって,党内のウラマグループの反発とムスリム保守層の離反に直面したPAS指導部は,イスラーム政党としての再定位によって巻き返しを図ろうとした。前述のニック・アジズによるイスラーム刑法実施発言は,このような意図に根ざしたものだった。

同じような思惑は,PKRも共有していた。PKRは,物価上昇や閣僚の汚職疑惑(後述)に焦点を当て,Bersih 2.0にも積極的に関与するなど,新しい政治の騎手として自らを位置づけていた。しかし,クランタン州のイスラーム刑法実施検討が発表されるや,アンワルはいち早くPASへの支持を表明する。もっとも,後にアンワルは,イスラーム刑法実施への支持は個人としての意見であり,PR構成政党間の合意と連邦憲法に鑑みて実施はありえないと言明したものの,PRのリーダーという地位に鑑みれば,イスラーム刑法実施の支持表明は不適切と言わざるをえない。

このようなアンワルの発言の背後には,党への支持と自身のイメージ回復への思惑が透けて見える。PKRは2008年選挙から2011年にかけて,役員ポストや州政府運営をめぐる対立から,下院議員6人を含む多数の離党者を出し,議会内最大野党の地位をDAPに譲った。党勢力の後退に追い打ちをかけるように,元私設秘書に対するアンワルの異常性行為容疑の公判が始まったほか,アンワルとおぼしき人物のわいせつビデオが流出し,アンワルのイメージは相当のダメージを受けた。これらに加えて,連邦政府より指名,スルタンより任命された州務長官をPKR主導のスランゴール政府が認めず,州行政府幹部の任命はスルタンと州知事の専権事項とする州憲法改正案を成立させようとしたことで,PKRはスルタンの権威に異議を唱える党というレッテルさえも貼られることになった。

このような動きのなかで,マレー人のPKR支持が縮小したと考えられる。アンワルは,野党3党の同盟を維持する必要と,離反してしまったマレー人票を取り戻す必要との間で揺れ動き,上のような発言につながった。

紛糾する事態を収拾するため,野党3党はイスラーム刑法問題に関する箝口令を出し,党首会談を繰り返し行った。結局PRの共通マニフェストにイスラーム刑法実施は含まないという結論に至ったものの,この問題をめぐる3党の立場の違いはBN各党からの格好の攻撃材料となった。

穏健で進歩的なBNに向けて

2008年選挙における失地回復をめざすBN各党は,開発の成果や各民族の利益の擁護者としての地位を強調したこれまでの戦略とはうって変わって,自由化を推し進め,さまざまな民族の利益を考慮する進歩的で穏健な政党として自らを位置づけようとした。たとえば,マレーシア華人協会(Malaysian Chinese Association:MCA)党首は,制限的法律の撤廃,メディアの自由化,経済の民主化,教育システムの自由化を骨子とする「ニュー・ディール」を全面に押し出し,今後は,華人利益だけでなく,マレー人,インド人の利益にも配慮すると言明している。

また,有権者の40%を占める若年層からの支持を狙い,BN各党は,年齢や在職年数にかかわらず,「選挙に勝てる」若い候補者の擁立を目指し,古株の退任を促した。このような呼びかけに応じ,前MCA党首や前州知事などが次回選挙での立候補を辞退しており,候補者の世代交代が進みつつある。2008年選挙後の危機感のなかで台頭したナジブやチュアMCA党首,パラニヴェルMIC党首のリーダーシップの下,BN主要3党は,選挙に向けた準備を進めている。

しかし,いくつかの不安要素もある。まず,「勝てる候補」という言葉自体はBNに浸透したものの,これが誰を意味するのかについて,合意があるわけではない。たとえば,若年層からの認知度が高い候補者という解釈もあれば,選挙区の問題を解決する能力を有する候補者という解釈もある。選び方についても,指導部レベルでは,各党の支部長が自動的に候補者になるこれまでの慣行を改め,首相や党首に候補者決定の権限を集中すべきであるという意見があるものの,これを州知事や支部長がすんなり受け入れるとは思えない。このような事情を反映してか,UMNO党大会では,ナジブが候補者レースに破れた党員による選挙活動の妨害の可能性に言及し,最終日には参加者全員がナジブへの「忠誠」を誓うという一幕もあった。

これに加え,シャハリザット女性・家族・コミュニティ開発大臣の家族が受注した公共事業,ナショナル・フィードロット社(National Feedlot Corporation:NFC)が,公的資金を濫用した疑いで汚職対策局による捜査を受けていることも,政権のリスク要因である。また,グラカン(マレー人民運動党)が党内の圧力にもかかわらず党首交代し損ねていることからも,2008年選挙まで同党が握っていたペナン州政権は,DAP主導のPR政権の下にとどまり続ける公算が高い。

さらに,UMNO内部では,ブミプトラへのアファーマティヴ・アクションの存続いかんに関する議論が水面下で続いている。積極的差別政策は存続するが,下層40%をターゲットとし,能力主義に基づくべきとしたナジブの方針は,党内やマレー人団体からは必ずしも歓迎されていない。このような意見に鑑み,ナジブはブミプトラの経済進出を保障するロードマップの公表や,ETPプロジェクトのブミプトラ企業への割り当て導入などの措置をとってはいるが,能力主義と民族という積極的差別政策の原理レベルでの緊張関係はいまだ残されたままであり,今後も火種として残り続けるだろう。

経済

マレーシア経済は,ヨーロッパの債務危機や先進国の経済回復の遅れに由来する外需の冷え込みから,昨年よりも遅いペースでの成長となった。7.1%の経済成長を遂げた2010年に対し,2011年のGDP成長率は,第1四半期5.2%,第2四半期4.3%,第3四半期5.8%,第4四半期5.2%と推移し,年平均では5.1%となった。失業率は,3.3%にとどまったが,食料品や原油価格の高騰によりインフレ率は3.2%となった。とりわけ,飲食品,エネルギー部門の上昇が著しかった。中央銀行は,世界経済の見通しの不透明さに伴う経済成長の弱さに配慮しつつも,インフレ緩和の必要に鑑み,政策金利を2.5ポイント上げ,3%とした。

サプライサイドをみると,5.7%のマイナス成長となった鉱工業をのぞき,すべてのセクターでプラス成長となった。もっとも好調だったサービスセクターの成長率は6.8%だった。なかでも堅調な個人消費に支えられた卸売・小売業とコミュニケーションが7.6%の成長,不動産価格高騰に後押しされる不動産とビジネス・サービスは6.3%,金融・保険が5.9%,運輸が5.3%だった。電子・電気機器,石油製品,運輸機器,飲食品を中心とする製造業は,昨年の11.4%から鈍化して4.5%の成長となった。なかでも,外需に依存した電子・電気機器は,マイナス3.6%となった。パーム油と穀物の生産が堅調さをみせた農業は,5.6%の成長となった。建設の伸びは,大規模公共事業に牽引された昨年の5.1%から3.5%へと鈍化した。

国内需要は,昨年の6.3%からさらに伸び,8.2%の増加となった。都市部・地方部双方での所得拡大によって民間消費は6.9%の成長となった。公共セクターによる消費は,6.0%増加した。総資本形成は,民間企業と政府系企業による投資によって,8.5%の成長となった。民間企業では,国内外向け製造業の設備投資,公共セクターでは,政府系企業による石油・ガス,運輸分野での資本支出がみられた。

先進国における経済回復の遅れにもかかわらず,貿易額は,過去最高となった。輸出は8.7%増の6946億リンギ,輸入は8.6%増の5742億リンギとなり,貿易黒字は9.4%上昇し,1203億リンギとなった。

主な輸出品目は,電子・電気機器および部品(輸出総額の37.5%),パーム油(8.7%),液化天然ガス(7.2%),化学製品(4.8%),原油(4.6%)で,主な輸出相手国は,中国(13.1%),シンガポール(12.7%),日本(11.5%),EU(10.4%),アメリカ(8.3%),タイ(5.1%)だった。輸入品目では,電子・電気機器(輸入総額の39.7%),化学製品(11.4%),機械・器具・部品(10.5%)で,輸入のうち,67.1%が中間財,14.1%が資本財関連品だった。主な輸入相手国は,中国(13.7%),シンガポール(12.7%),日本(11.4%),EU(10.4%),アメリカ(9.7%),インドネシア(6.1%)だった。

外国人直接投資(FDI)認可額は,2010年の291億リンギから,342億リンギへと増加した。国別に見ると,電子・電気機器の製造基盤強化などを進めた日本が最大の投資国となり,韓国,アメリカ,シンガポールが続いた。

経済構造改革と選挙予算

「国家改革政策:国民福祉,国家の福利」と題された2012年度予算は,昨年度より9%増の2328億リンギで,財政赤字は,歳入増加に伴い,2011年度の5.4%から4.7%に縮小すると見込まれている。重要項目としては,ハイブリッドカーの免税措置の継続に加え,私立病院,エンジニアリング,テレコミュニケーション,法律サービス,空輸など17の分野における外資100%参入を認める自由化措置があった。他方で,地方部インフラストラクチャーの改善などを含む特別緊急経済対策,低所得世帯への500リンギの給付金,砂糖,コメ,パーム油,ガスなどの日用品への補助金の継続,小学校と中学校の授業料無料化,1300万人の公務員の給与引き上げや定年の延長,新規住宅購入者への援助など,総選挙を意識したポピュリスティックな項目が目立った。とりわけ,公務員や地方など,UMNOの伝統的な支持基盤に対して手厚い分配が用意されている。この他,ETPの下ではじまったクアラルンプール第2国際空港の建設やクアラルンプール再開発事業,高速鉄道敷設などの建設プロジェクトへの支出も継続している。

NEMの発表以降,対GDP比54%に上る連邦政府累積債務の削減を目指す財政改革が政策目標のひとつとなっていたが,物価上昇に加え,総選挙が近づいていることから,5月の燃料・砂糖補助金の削減と電気料金の値上げを最後に,補助金削減は棚上げとなった。しかし,54%という数字はASEAN諸国のなかでも大きいうえに,連邦政府の債務はGDP比55%を超えてはならないと規定する政府投資法に抵触する可能性もある。政府の試算では,2012年度には5~6%の経済成長が見込まれ,財政赤字は4.7%に抑えられる予定だが,ヨーロッパの経済危機に鑑みれば,政府によるGDP成長率の見込みが高すぎるという声もあり,世界経済の動向によっては財政再建への道が遠のく可能性もある。

高所得国家入りに向けた問題点

2010年に発表されたNEMは,民間セクターの活性化,熟練労働者の拡大,知的インフラの整備,環境と財政両面での持続可能な成長を通じて,2020年までに国民総所得を倍増させ,高所得国家入りすることを目指している。この目標実現のための具体的戦略であるETPは,石油・ガス,パーム油,首都再開発など12の重点分野で,総投資規模1.4兆リンギの131プロジェクトを政府が特定し,民間が主要実施主体となる。2011年には,ETPの131のプロジェクトのうち,石油,原子力発電を含むエネルギー,医療,観光,電気・電子機器,大量高速輸送機関,KL再開発など,64のプロジェクトが新たに発表された。

ETPのほかにも,いくつかの計画が発表された。国内企業の大半を占める中小企業への技術支援,操業支援などを盛り込んだ「中小企業マスタープラン」は,2020年までに,中小企業のGDPに占める割合が現在の32%から41%,貿易に占める割合は19%から35%へと拡大することを目指している。また,製造業や天然資源に依存した経済からサービスに牽引される経済への転換に向けた試みのひとつとして,中央銀行が発表した2011年から2020年までの「金融セクター・ブループリント」は,金融システムの安定化,金融サービスへのアクセス拡大,金融の漸進的自由化,地域・国際金融との統合,企業年金の充実,イスラーム金融の国際化などを通じて,金融セクターの8~11%の成長を目指している。

このように,ナジブ首相就任以降,矢継ぎ早に新しい計画やプログラムが策定されてきたものの,これらが即座に高所得国家入りを後押しすると判断するのは楽観的すぎるかもしれない。まず,ETPのプロジェクトは,民間が資金の9割を負担することが目標とされているが,実際には民間の参加率はさほど高くない。ETPプロジェクトを一瞥すると,東芝による東南アジアのサプライ・ハブおよびR&Dセンター建設やIBMによるITサービスセンター,グーグルによる中小企業のIT化などのグローバル企業によるプロジェクト,エア・アジアによる航空機導入,YTLによるリゾート開発などの国内大企業によるプロジェクトがある一方で,国営石油会社ペトロナスによる石油開発や精錬,サイム・ダービー社の医療センター構築,連邦・州政府機関による中小企業支援,人材育成・開発をはじめとする多くのプロジェクトが,政府や政府系企業を実施主体としている。また,分野別にみても,石油を中心としたエネルギー分野の比重が大きく,ETPでどのように経済構造を転換していくのかは必ずしもはっきりしない。

また,熟練労働者を創出する試みも前途多難である。世界銀行のレポートによれば,マレーシア人の国外移住者は少なく見積もっても100万人で,そのうち3分の1が高い技術と知識をもった熟練労働者である。移住者の9割が華人という民族分布が示唆するように,民族的基準に基づく教育,雇用,ビジネス機会の分配が,頭脳流出を引き起こしていると言われている。この結果,国内では熟練労働者が不足する一方で,非熟練労働者が供給過剰となっている。このような需給不均衡は,7月に設置された最低賃金審議会(National Minimum Wage Consultative Council)による最低賃金導入にも影響するだろう。実際,生産性の低い労働者への最低賃金保障に反対する経済団体が少なくない。

さらに,すでに述べたように,財政の持続可能性というNEMの目標は,少なくとも短期的には棚上げになっている。また,環境面での持続可能性を実現するものとして,1月にマレーシア原子力公社(Malaysia Nuclear Power Corporation)によるETPプロジェクトが発表されたが,日本の原発事故に加え,オーストラリアのライナス社によるパハン州におけるレアアース開発に対して,放射性物質の漏洩を恐れた住民が反対運動を展開したこともあり,政府は原子力発電所プロジェクトに二の足を踏んでいる状態である。

対外関係

2010年以降の高所得経済への移行に向けた積極的な経済外交は,2011年も継続した。とりわけ,ASEAN諸国との善隣外交,東アジア地域との貿易や地域的問題への取り組み強化,イスラーム諸国との経済関係の強化,アメリカとの経済・安全保障分野における二国間関係の維持が軸となった。

ASEAN諸国との善隣外交

シンガポールとは,マレーシア国営マレー鉄道所有地の移転に関する2010年9月の合意に基づき,マレーシアの政府系投資会社カザナ・ナショナル(60%)とシンガポールのテマセク・ホールディングス(40%)による合弁会社M+S Pte社が,ジョホール=シンガポール間の高速鉄道建設事業を請け負うことが決まった。また,安全保障分野でも,オーストラリア,ニュージーランド,イギリス,シンガポール,マレーシアの5カ国防衛取り決めが再確認された。

インドネシアとは,両国の漁師による領海侵犯事件があった。さらに,インドネシア民主党議員が,マレーシアがカリマンタンのインドネシア領を侵犯していると発言したのを受け,ジャカルタのマレーシア大使館前でデモが起きた。このような事態に対して,ナジブ首相とユドヨノ・インドネシア大統領の年次会合では,領域確定のための協力を続行すること,両国船籍の漁船による領海侵犯問題に共同で対処することが合意された。また,同じ年次会合の後,マレーシア国内でのメイド虐待報道を受けて2009年6月に導入されていたインドネシア政府による自国民のマレーシア国内でのメイド就業禁止措置が,解除された。

地域レベルでは,5月のASEAN首脳会議で,教育,格安航空,エネルギー安全保障などの分野での協力を提言したほか,ナジブが2010年から促進してきた「世界穏健派運動」(Global Movement of Moderates:GMM)を共同宣言に組み込むことに成功した。さらに,9月には,マレーシア政府が推進し,最大の拠出国となるASEANインフラ基金も設立された。

東アジア諸国

オーストラリアとは,マレーシア・オーストラリアFTAの締結に向けた交渉に加え,難民問題が焦点となった。7月,両国は,4年間にわたり,オーストラリアに海路で到着した亡命希望者800人を難民認定のためにマレーシアへ移送し,代わりにマレーシア国内の難民4000人をオーストラリアへ移送する交換協定を結んだ。オーストラリアへ海路で向かう亡命希望者の多くはアフガニスタン,スリランカ,イラン,イラク出身で,マレーシアやインドネシアを中継地としている。この協定は,亡命希望者が中継地への後戻りを恐れ,密航を自粛することと,ヒューマン・トラフィッキングの阻止を目的としていた。

しかし,同協定は両国で野党や人権団体からの非難を浴びた。さらに,8月には,オーストラリア高等裁判所が,マレーシアが難民条約の締約国ではないために,亡命希望者に対する十分な法的保護を与えられないとして,同協定を違法とした。これを受けて両政府は,10月の首脳会談において協定の作り直しに合意し,国内立法などを進めた。

韓国とは,昨年12月の李明博大統領来訪を契機とする経済協力が進んだ。ナジブは,外務大臣,通産大臣など4人の大臣とともに,首相就任後初めて韓国を公式訪問し,マレーシア・韓国ビジネス会議の設立,両国高速道路公団の協力などについて合意した。 また,この訪問では,サービス,電気自動車,太陽光発電など戦略的分野への韓国からの投資についても話し合われたと見られる。

中国との関係としては,南沙諸島(スプラトリー諸島)問題,ASEAN・中国FTAのマレーシア企業への影響などが国内で議論されてきたが,外交レベルでは,経済協力の深化という従来の基本方針が踏襲された。4月に,温家宝首相が4人の閣僚とともにマレーシアを公式訪問した際には,二国間貿易の現地通貨での決済,マレーシア中央銀行の北京代表部設置のほか,情報通信,鉄鋼,都市交通,教育などの分野での協力などが合意された。さらに,10月には,広西チワン族自治区欽州に,2500ヘクタールの工業団地を共同で建設する覚書が署名された。

イスラーム諸国

ETPへの投資やマレーシア企業の投資先を求めて,イスラーム諸国とも積極的な首脳外交が展開した。1月には,アラブ首長国連邦,バーレーン,カタール,サウジアラビア,クウェート,オマーンからなる湾岸協力会議(Gulf Cooperation Council:GCC)と,経済,投資,技術協力のための枠組み協定が締結された。貿易に加え,マレーシア企業の湾岸地域における建設プロジェクトへの参加や,湾岸地域諸国からのマレーシアへの投資が拡大する見込みである。

実際,湾岸諸国は,ETP実施に不可欠な資金供給源となっている。たとえば,アラブ首長国連邦(UAE)アブダビのムバダラ・ディヴェロップメント社とマレーシア財務省100%所有の1 Malaysia開発公社による,不動産やアルミニウム製造におけるジョイントベンチャー設立,カタール投資機構(Qatar Investment Authority)による1Malaysia社のETPプロジェクトへの投資,カタール政府とマレーシア政府による共同投資基金設立などが進行中である。

トルコとは,年内のFTA妥結で合意したほか,両国国営企業による第三国における共同石油開発事業や,トルコからの装甲兵員輸送車のメインボディ購入について合意した。トルクメニスタンやカザフスタンとは,ペトロナスによる石油,ガス事業について話し合いがもたれている。

アメリカ

ナジブ首相就任以降のアメリカとの緊密な関係は,2011年も続いた。高所得国家という政権の存続をかけた目標達成に向けた投資と技術の供給者としての役割のほか,南シナ海における拡張傾向をみせる中国に対するバランサーとしての役割をアメリカに期待している。このような理由からナジブは,アメリカの東アジアサミットへの参加を後押ししたほか,戦略物資の取り締まりを通じてアメリカの核拡散防止への取り組みを支援することで,両国関係を発展させてきた。

マレーシアのこのようなアプローチは,アジアとのつながりを通じて自国経済を回復させようとするアメリカ政府にとっても,格好の機会となった。また,アジア太平洋重視の安全保障政策へのシフトという文脈でも,東南アジアの国家との緊密な関係は不可欠である。さらに,2010年以降ナジブが主張しているGMMは,テロとの戦いに拘泥するオバマ政権から好意的に受け止められてきた。このような背景から,バーンズ国務次官は,アメリカとマレーシアは,民主的で,貿易を促進し,過激主義を抑え,大量破壊兵器の保有が制限されるような世界をともに目指すうえでの「うってつけのパートナー」であり,両国関係を「東南アジアでもっとも頼もしい関係のひとつ」とさえ描写している。

アメリカとマレーシアの関係は,TPP交渉の相手国という側面ももっている。アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議と並行して行われたTPP加盟国会議では,2012年7月までに協定の概要を策定することが合意された。ただし,ナジブは,TPPが「柔軟」かつ「現実的」であり,経済発展の度合いや国内事情などを考慮したものとなるべきであると述べている。ドーハ開発ラウンドの停滞に鑑みて,今後マレーシアは,TPP交渉において,後発国のアジェンダが協定に反映されることを主張する可能性がある。アメリカがこれにどの程度譲歩するかは,未知数である。

2012年の課題

2013年4月の下院解散期限に先立ち,2012年中に総選挙が実施される可能性が高い。2012年1月に,アンワルPRリーダーの異常性行為裁判に無罪判決が出たことから,国内政治は,パーソナリティやイメージではなく,政策に基づいた政党間の競争に舵を切る必要がある。高所得国家入りのための国際競争力の強化,財政の健全化,頭脳流出の阻止,労働者の生産性拡大と最低賃金導入は,中所得国家からの脱却を図るうえで不可欠である。このような経済・財政改革を語るうえで,ブミプトラに対する積極的差別政策の是非に関する議論を避けて通ることはできないが,BN,PRのいずれも,多数派であるブミプトラ有権者の顔色をうかがい,明確な改革ビジョンを示せていない。また,政党間競争の激化のなかで,バラマキ型の財政が定着しているが,拡大する政府債務の規模に鑑みて,財政を引き締める必要がある。

経済の分野では,政府や政府系企業,外資系企業,国営石油会社によるETPプロジェクトの実施が,どう国内の経済構造を変えていくのかがいまだにはっきりしないという問題がある。ETPは,単に投資を呼び込み,雇用を創出する効果だけではなく,国内経済の担い手とその技術力を変えていくことにねらいがあるはずである。民間によって主導される高付加価値産業を中心とした経済への移行に向けた道程を,明確に示す必要があるだろう。

(福岡女子大学講師)

重要日誌 マレーシア 2011年
  1月
6日 スランゴール州スルタン,連邦政府指名の州務長官を任命。
9日 ムヒディン副首相,訪米。米副大統領と会談。
24日 州知事に州務長官任命権限を与えるスランゴール州憲法改正法案否決。
26日 スランゴール州議会議員秘書テオ・ベンホックの転落死に関する調査委員会設立。
28日 証券委員会と証券取引所,買収に関するルール改正。上場企業の買収には75%の株主の承認が必要。
29日 PKR下院議員,離党。
29日 IAEA,オーストラリア・ライナス社によるレアアース精製所は安全と公表。
30日 ジョホール州議会テナン選挙区補欠選挙。BN候補者当選。
30日 湾岸協力会議とFTA交渉開始などを盛り込んだ枠組み協定締結。
  2月
6日 ナジブ首相,エジプトで起きたような政権転覆の試みは国内では起こりえないと談。
8日 ブミプトラ問題局設置。
16日 スランゴール州知事,連邦政府指名の州務長官の就任を容認。
23日 ナジブ首相,トルコ訪問。年内のFTA妥結で合意。
23日 高速道路会社PLUSを,ユナイテッド・エンジニアリング・マレーシアと従業員積み立て基金が買収。
  3月
2日 ナジブ首相,オーストラリア訪問。
6日 パハン州議会マリマオ選挙区,マラッカ州議会クルダオ選挙区補欠選挙。ともにBN候補者当選。
8日 ナジブ首相,初めての住宅購入者に向けた融資プログラム発表。
11日 ムヒディン副首相,インド訪問。海賊問題への取り組みについて話し合い。
13日 MCA,党選挙延期を決定。
13日 内務大臣,インドネシア製聖書の押収は,穏便に解決されると談。
17日 警察,クラン港で,中国からイランへ向かうコンテナから,大量破壊兵器の部品と疑われる物品を押収。
18日 政府,国際司法裁判所ローマ規定への加盟を決定。
21日 アンワルPKR顧問と思われる人物のわいせつビデオが公開される。
23日 首相府省,インドネシア製聖書の押収を無条件で解くと約束。
  4月
1日 スランゴール州議会,情報公開法を可決。
1日 ナジブ首相,中国との貿易において,元決済を拡大すると談。
2日 政府,あらゆる言語での聖書の出版を許可。ただし,半島部では,「キリスト教出版物」と明示することが条件。
4日 ナジブ首相ほか4閣僚,韓国訪問。
6日 汚職特別裁判所設置。
9日 インドネシア当局,領海侵犯でマレーシア船籍の漁船を拘束。
10日 ナジブ首相,タイブ・サラワク州知事は,州議会選挙後に辞任すると談。
12日 ナジブ首相,高度な技術を有した在外マレーシア人に対する帰国後5年間の税金控除を発表。
12日 資本市場の拡大,イスラーム金融の国際化などを骨子とする第2次資本市場基本計画発表。
16日 サラワク州議会選挙。BNが3分の2の安定多数確保。
19日 サウジアラビアと犯罪容疑者引き渡しなどで合意。
22日 通産省,ライナスについての安全審査委員会を設置。
22日 政府系持ち株会社カザナ,Pos Malaysia社株の32.2%をDRB-HICOM社に売却。
26日 温中国首相,来訪。
27日 クランタン州オラン・アスリ,州政府の土地開発差し止め命令を求める裁判。
  5月
5日 中央銀行,政策金利を3%に引き上げ。
6日 SNAP,PRを脱退。
7日 オーストラリアと難民交換協定締結。
8日 ナジブ首相,ASEAN首脳会議出席。
14日 ナジブ首相,カタール訪問。
16日 高等裁判所,アンワルの異常性行為が立証されたと判断。弁護の準備を命令。
17日 ナジブ首相,アメリカ訪問。ビジネスリーダーと会合。
24日 ナジブ首相,日本訪問。シンポジウム出席。
29日 密入国斡旋で,ISAにより3人逮捕。
  6月
3日 PAS党大会。ハディ・アワン党首,「イスラーム国家」建設は追求しないと談。
5日 ナジブ首相,カザフスタン訪問。
7日 テロ容疑で,ISAにより1人逮捕。
14日 マレー人権利擁護団体Perkasa,Bersih 2.0への対抗デモ計画を発表。
16日 UMNO青年部,Bersih 2.0への対抗デモ計画を発表。
18日 アフリカ首脳来訪。ランカウィ・ダイアログ出席のため。
22日 外国人労働者登録開始。不法在留外国人も登録後は,契約期間内の就労が可能。
22日 低価格商品を扱う1 Malaysia ショップ開店。
24日 検察,わいせつビデオの人物は,アンワルにほぼ間違いないとの見解。公開した3人に有罪判決。
26日 ジェヤクマル下院議員を含む社会党メンバー,政府転覆の容疑で逮捕。
27日 マレーシア・シンガポール政府系投資会社によるジョホール=シンガポール間高速鉄道建設のための共同事業実施合意。
28日 政府,中間層向け住宅スキーム発表。
29日 警察,Bersih 2.0に中止命令。Bersih事務局を家宅捜査。
30日 通産省,IAEAの勧告に従わなければ,ライナス社の操業は許可しないと談。
30日 最低賃金審議会法可決。
  7月
1日 内務省,Bersih を違法団体と宣言。
9日 Bersih 2.0,内務省による違法団体宣言の無効化を求める裁判。
11日 ナジブ首相,トルクメニスタン訪問。
13日 ナジブ首相,イギリス訪問。NEM売り込みと,ハイテク技術分野への投資呼び込み。
18日 ナジブ首相,バチカン訪問。外交関係樹立で合意。
18日 政府,自動車業界からの要求を受け,分割払い法を修正。
21日 テオ・ベンホック転落死に関する調査委員会報告書提出。MACCの厳しい取り調べのために,自殺に追いやられたと結論。
21日 エア・アジア,ANAと共同で格安航空を運行。
25日 マレーシア・オーストラリア難民交換協定締結。
29日 社会党下院議員ジェヤクマル釈放。
30日 MIC党大会。ナジブ首相,パラニヴェル党首を首相府大臣に指名。
  8月
3日 スランゴール州イスラーム宗教局によるメソジスト派教会への立ち入り捜査。
9日 政府持ち株会社カザナ,エア・アジアとマレーシア航空の株式をスワップ。
16日 ナジブ首相,与野党からなる選挙改革のための委員会設立を発表。
21日 マット・サブPAS副党首,1950年にブキッ・ケポン警察署を襲撃した共産党員を,真の英雄と発言。遺族らが反発。
25日 テオ・ベンホックの家族,死因に関する調査委員会に対する司法審査を要求。
27日 政府,リビア暫定政府を承認。
29日 政府,物価上昇に鑑みて,補助金を継続すると談。
30日 ムルデカセンターによる世論調査。ナジブ首相の支持率が59%に低下。
31日 オーストラリア高等裁判所,マレーシアとの難民交換協定を違法と判断。
  9月
11日 ナジブ首相,ブルネイ訪問。両国間の橋梁建設などで合意。
13日 ナジブ首相,物品・サービス税(GST)導入は総選挙後と談。
15日 ナジブ首相,マレーシア・デイ前夜の演説で,ISAの撤廃,警察法,印刷機・出版物法の修正などを発表。
18日 マレーシア当局,領海侵犯した中国船籍を追跡。
19日 マレーシア当局,インドネシア船拘束。
20日 マット・サブ,ブキッ・ケポン事件に関する発言について,名誉毀損で有罪。
21日 PAS顧問ニック・アジズ,イスラーム国家建設についてPRと協議する,イスラーム刑法実施の準備はできていると談。
22日 アンワル,イスラーム刑法実施は非ムスリムには影響しないとして,クランタン政府によるイスラーム刑法実施提案を支持。
22日 マレーシア証券取引所に上場企業のCEO等変更を命ずる権限を与える新ルール。
23日 最低賃金導入に関する賃金審議委員会設置。
24日 ナジブ首相,連邦政府はイスラーム刑法を実施しないと談。
25日 リムDAP書記長,イスラーム刑法実施がPRの共通政策に含まれるのであれば,DAP指導部は総辞職すると談。
25日 外務大臣,マレーシアはパレスチナの国連入りを支持すると談。
25日 ASEANインフラ基金設立。マレーシアが最大の拠出国。
25日 メディア団体,国家機密法修正を要求。
26日 政府,民間セクターの定年が64歳まで引き上げられる予定と発表。
26日 PR党首会談。イスラーム刑法問題について箝口令。
26日 中央銀行,リンギの海外取引完全自由化は急がないと談。
28日 チュオン・タン・サン・ベトナム国家主席来訪。
28日 ナジブ首相,ブミプトラへの30%割当は有効でないかもしれないと談。
28日 サラワク州政府新閣僚名簿発表。知事の交代なし。
29日 マレー人商工会議所を含む団体からなるマレー人経済行動会議設立。
  10月
1日 ナジブ首相,ブミプトラへの割当は存続するが,能力主義を原則とすると談。
2日 MCA党大会。
3日 居住制限法,国外追放法撤廃法案上程。
4日 下院,選挙改革のための議会特別委員会を承認。
6日 GST法案上程延期。契約労働制の導入を定めた雇用法修正。MTUCからの反発。
7日 2012年度予算上程。
10日 スランゴール州スルタン,スランゴール州宗教局によるメソジスト派教会捜査について,関係者の訴追はないと声明。
14日 カンボジア政府,自国民のマレーシアにおけるメイドとしての就業を禁止。
16日 グラカン党大会。
17日 民間経済団体,民間セクターの退職年齢引き上げに反対。
20日 ユドヨノ・インドネシア大統領来訪。メイド派遣禁止措置を撤廃。
21日 ナジブ首相,中国訪問。温中国首相と マレーシア・中国工業団地建設に関する覚書に署名。
22日 ムスリムの改宗に反対する集会。
26日 会計検査院レポート公開。NFCの放漫経営が指摘される。
27日 ナジブ首相,ギラード・オーストラリア首相と会談。
  11月
1日 高等裁判所,大学・カレッジ法に違憲判決。
2日 マレーシア,南極条約加盟。
3日 内務省,同性愛者の権利に関する集会を禁止。
6日 政府,UNHCRと共同での移民登録実施を決定。
8日 アンワル,PRの政策としてイスラーム刑法を実施することはないと談。
9日 スランゴール州議会予算案上程。州営企業労働者に1500リンギの最低賃金。
14日 ナジブ首相,APEC首脳会議,TPP参加国首脳会議,オバマ米大統領と会談。
15日 中央銀行,クレジットカードの利用限度に関する新ルール導入。年収3万6000リンギ以下のクレジットカード所有者の貸し出し限度は,月収の2倍以内。
18日 サバ州で,テロ活動に加担したとされる13人,ISAにより逮捕。
22日 平和集会法,下院に上程される。
23日 中小企業マスタープラン発表。
24日 非常事態宣言(1966年,1969年,1977年)撤廃。
25日 PKR党大会。
26日 ブミプトラ経済刷新ロードマップ発表。
29日 UMNO党大会。
29日 平和集会法可決。弁護士協会による平和集会法抗議デモ。
30日 選挙改革のための議会特別委員会,中間報告書を議会に提出。改ざん防止インクの使用などを提言。
30日 修正住宅開発法成立。開発プロジェクトを放棄した業者に対して,罰金もしくは実刑。
30日 1 Malaysia国民住宅法可決。月収3000リンギ以下の若年層による住宅購入を援助。
  12月
1日 下院,選挙改革のための議会特別委員会による報告書を全会一致で承認。
5日 シェイク・ハマド・カタール首相来訪。
7日 グルバングルィ・トルクメニスタン大統領来訪。
11日 DAP党大会。幹部の資産公表へ。
13日 クダ州スルタン,国王就任。
16日 バーンズ米国務副長官来訪。
19日 選挙委員会,選挙改革のための議会特別委員会の提言を受け入れ。
21日 中央銀行,金融セクター・ブループリント公表。
22日 汚職対策局,NFCの特別対策チームを設立。
23日 高等裁判所,キル前スランゴール知事に対して職権乱用で有罪判決。
27日 精神的虐待も含む家庭内暴力法改正。

参考資料 マレーシア 2011年
①  国家機構図(2011年12月末現在)
②  政府要人名簿(2011年12月末現在)
②  政府要人名簿(2011年12月末現在)(続き)
③  州首相名簿
②③の注

主要統計 マレーシア 2011年
1  基礎統計
2  支出別国民総生産(名目価格)
3  産業別国内総生産(実質:2000年価格)
4  国・地域別貿易
5  連邦政府財政
6  国際収支
 
© 2012 日本貿易振興機構 アジア経済研究所
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