2013 年 2013 巻 p. 19-48
国内政治は総選挙と大統領選挙の「ダブル選挙」を中心に推移した。与党セヌリ党は朴槿恵非常対策委員長を中心に年初から体制立て直しに努め,4月の総選挙で勝利を収めた。この過程で朴委員長は与党と李明博大統領をうまく差別化し,保守勢力結集に成功した。満を持した与党は朴槿恵を候補に据えて安定感ある戦いぶりをみせ,最終的に勝利を収めた。一方,野党は迷走が目立った。前年から続く「安哲秀旋風」の取り込みを果たせずに,勢力の統一にも失敗した。このため,総選挙,大統領選挙ともに苦戦を強いられ,結局どちらも敗北を喫した。
経済は,ヨーロッパの債務問題や中国経済の減速などの影響による外需不振,そして年後半から顕在化したウォン高傾向によって牽引役の輸出が大きく減速し,設備投資の抑制傾向も重なって景気後退がいっそう深化した。建設や不動産市況の長期的な低迷は個人消費や建設投資など内需を冷え込ますとともに,中小金融機関の経営不安や家計負債の膨張にもつながっていった。企業業績では一部の大企業グループの飛躍が目立つ一方で,その他は低迷や悪化に苦しむという二極化傾向が露わとなった。大統領選挙では「経済民主化」が重要争点となり,与野党ともに「親庶民」的なポピュリズム公約が乱立した。
対外関係では,南北関係が好転しないまま推移した。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による2度にわたるミサイル発射は金正恩新体制に対する淡い期待を打ち砕いた。対日関係は8月の李大統領による竹島上陸や慰安婦問題の提起などによって関係が悪化した。天皇への謝罪要求とも取れる李大統領の発言などもあり,日本の対韓世論は硬化した。北朝鮮の不安定な動きを背景に,対米関係は防衛面を中心に引き続き緊密な連携が保たれた。対中関係は,韓国人人権活動家に対する拷問疑惑や離於島管轄権を巡る問題など個別案件での摩擦が続いたが,韓中FTAの政府間交渉開始など,関係の深まりもみられた。
2012年には総選挙と大統領選挙という2つの重要な国政選挙が行われた。年初の韓国国内政治は,ダブル選挙モードのなかでの幕開けとなった。
与党ハンナラ党は,2011年秋のソウル市長選での敗北や中央選管サイトへの攻撃などの党内不祥事で負った痛手から立ち直るため,2012年年初より朴槿恵非常対策委員長を中心に再編が進められ,李明博大統領からの決別を目論んだ。
当初,集団指導体制の導入など抜本的な改革を求める声もあったが,4月の総選挙までに対処しえないために先送りとなった。代わりに浮上したのが党名の変更であった。党付設の汝矣島研究所が支部長(党協委員長)を対象に実施したアンケートの結果,党名変更に関して賛成50%,反対38%であった。これを受け,ハンナラ党は1月26日に党名変更を決定し,2月13日には「セヌリ党」(「新しい世の中の党」の意)として再出発した。
これと並行して,与党はそれまでの新自由主義的な政策基調を修正,南北対話や普遍的福祉の重視を打ち出し,総選挙向け政策の柱に据えた。具体的には,旧綱領中の「北朝鮮の自由民主主義体制転換」という北朝鮮にとって刺激的な表現を削除するとともに,普遍的福祉を前面に掲げる野党民主統合党に先んじて0~5歳児の無償保育を打ち出した。
3月に入ると,公認候補選びが本格化した。この過程で,党内の李大統領に近い勢力(親李派)の多くが公認から漏れた。3月5日の段階で,公認審査脱落者の73.9%が親李派であった(『朝鮮日報』3月6日付)。これにより,セヌリ党内では,朴委員長に近い勢力(親朴派)が幅を利かせるようになった。
「野圏連帯」で総選挙に臨んだ野党野党第1党の民主統合党は,2011年末の党再編をきっかけに幅広い支持を集めるのに成功し,2012年年初には与党と拮抗するほどまでにその支持率が回復した。一方,より左派色の強い統合進歩党は最大の支持基盤である民主労総との関係悪化や,与党への対抗軸としての期待が高まった民主統合党に支持が流れたことが響き,年初から危機的な状況に陥った。こうした状況の下,総選挙に向けて野党勢力を統一し,与党に対抗しようとの機運が高まった。3月10日には民主統合党と統合進歩党との間で選挙協力を内容とする「野圏連帯」が合意された。
野党は,従前から主張してきた普遍的福祉の拡充を掲げたほか,韓米FTAの再交渉あるいは廃棄,済州島海軍基地建設の中止など,与党の主張とは一線を画する左派的色彩の濃い主張を繰り広げた。また,さしたる経済的実績を上げないまま政権末期を迎えた李政権の経済政策を批判し,総選挙で与党を追い落とそうという李明博審判論を展開した。
1月15日には民主統合党代表に故盧武鉉大統領に近かった韓明淑元首相が選出されるなど,野党では親盧派の台頭が目立つようになっていたが,公認候補選定過程でこれがさらに鮮明となった。3月5日時点で,民主統合党の公認候補のうち,親盧派または旧ウリ党系が73.1%を占めた。
4月の総選挙で与党が勝利4月11日,12月の大統領選の前哨戦と位置づけられる第19代総選挙が実施された。野党への支持が高水準で推移し,与党は苦戦が予想されていたが,結果的には152議席を獲得し,単独過半数を維持した。選挙1週間前の4月4日の段階で民主統合党の「第1党確保は視野に入った」(『中央日報』4月5日付)とされたが,結果として獲得議席数は過半数を大きく下回る127議席にとどまった。この数字は党首脳部の事前の期待を裏切るもので,第1党奪取にも失敗した(表1)。
(注) 改選前には欠員が生じており,合計議席数は300とならない。
(出所) 韓国中央選管ウェブサイト,韓国国会ウェブサイト。
野党の敗因として第1にあげられるのが,公認審査の甘さである。民主統合党は,ネット放送「ナヌンコムスダ」の人気コメンテーターである金容敏を戦略候補として擁立したが,金候補が女性や高齢者,キリスト教会などを揶揄する発言を頻繁に行ったのを同党が公認過程で見過ごしたことに批判が集まった。また,野党統一の選挙区候補選定過程での不正が発覚し,統合進歩党の李正姫代表が立候補を辞退する一幕もあった。
第2に,親盧派で固められた野党候補の顔ぶれが改革に不熱心との印象を与え,有権者を遠ざけた点である。親盧派の復活と福祉拡大の組み合わせは,政権公約だった分配重視政策において,めぼしい成果を上げられなかった盧政権への先祖帰りを連想させてしまった点も痛かった。
第3に,野党側が民意を読み違えた点である。韓米FTAや済州島海軍基地建設への反対などはもとより有権者たちの関心に沿ったものとは言い難く,財源構想が示されないなかでの巨額の福祉拡大(5年間の総額165兆ウォン)も好評とはいえなかった。政策のディテールが示されず,論争に明け暮れる印象を与えてしまった感は否めない。
「選挙の女王」が与党に奇跡の勝利をもたらす一時は議会第1党の座まで追われることも覚悟した与党であったが,結果的には過半数を制する「大逆転」(『朝鮮日報』4月13日付)を収めた。この背景としては,上述のような野党の失策のほか,朴委員長の優れた選挙運営があげられる。
第1に,与党が年初来推進した李大統領からの決別が功を奏し,野党の李明博審判論を封じた。今回の総選挙で親李派の多くがふるい落とされたのは,前回総選挙で親朴派が大挙脱落したことと対照的である。前回総選挙での動きは党内有力派閥の追い落としという権力闘争の様相を呈していたが,今回の親李派脱落は,新味の薄れた既存政権からの決別という民意に沿う行動を演出したという点がプラスの評価につながった。
第2に,ミサイル発射など不安定な動きをみせる北朝鮮情勢への言及を避けたことである。2011年4月の再・補欠選では,北朝鮮との対決を前面に出した与党の主張に不安を感じた有権者も多く,与党は苦戦を強いられた。この苦い経験が今回の選挙では生かされた。
第3に,福祉拡大策の提示で野党の戦略を封じた。与党が福祉拡大の規模を小さく設定したこともプラスに作用した。与党の福祉公約の規模は75兆ウォンと野党の半分以下だが,その分実現の可能性を大きくみせることができた。
内紛と安哲秀の優柔不断に翻弄され大統領選対応が遅れた野党総選挙に敗北し,野党陣営は総選挙の責任追及や党内の主導権争い,選挙中の不祥事の後処理などが絡み合って混乱の様相を呈した。
3月の段階で一部明らかになっていた統合進歩党の末端組織による選挙区候補選出過程での不正工作のほか,比例代表候補の選出過程でも不正工作が大々的に行われていたことが同党の内部調査によって5月2日までに明らかになった。不正の有無を巡り主流派と非主流派が非難しあうこととなり,党は事実上の分裂状態に陥った。統合進歩党での不正工作とそれに続く内紛は,同じく盧武鉉系政治家を多く抱える民主統合党のイメージダウンにつながった。同月には,民主統合党においても同様の不正工作疑惑が浮上し,野党勢力全体の失速が懸念される状況となった。民主統合党は6月29日,与党と共同で統合進歩党の候補選出不正への関与が疑われる2議員の資格審査案を共同発議することで合意し,大統領選に向けた野圏連帯は推進力を大きく削がれることとなった。
旧態依然とした主導権争いに明け暮れる既存野党の状況に失望した支持者は多かったが,こうした人たちの格好の受け皿となったのが,無所属の安哲秀ソウル大融合科学技術大学院長であった。安院長は前年来大統領候補としてとくに若年層から高い支持を受けており,与党の朴委員長に次ぐ2番手の位置を確かなものとしていた。年央における各種世論調査では,野党系大統領候補の支持率の合計は与党を凌ぐことを示していた。野党としては安院長を巻き込んだ形での大統領統一候補の選定を急ぐことで野党票をまとめあげ,与党に対抗する力を蓄えたいところであった。しかし,安院長は既存野党との連携や自身の大統領選出馬に関する考えをなかなか明かさなかった。ようやく,安院長は7月19日に自著で事実上の出馬表明を行って支持率を上げ,彼を野党統一候補と想定した場合の支持率調査では,一時トップの座を占めた。しかし,野党との連携や候補一本化についてはなおも語らなかった。各党の大統領候補選出の時期が迫り,民主統合党は9月16日に親盧派で盧武鉉政権時代の秘書室長を務めた文在寅常任顧問を単独で大統領候補に選出した。安院長も19日に無所属での大統領選出馬を正式に表明した。これにより,野党は候補一本化をひとまず断念し,足並み不揃いのまま大統領選に突入した。各種世論調査によれば,民主統合党の文在寅候補は,9月時点の支持率では安,朴両候補に次ぐ3番手であり,野党には不安の残る選挙戦開幕となった。
総選挙勝利で勢いに乗る与党総選挙でセヌリ党を勝利に導いた朴委員長は,与党内での影響力を確立するとともに,保守勢力の新たなリーダーとしてのブランド確立に成功した。与党はさっそく,大統領選挙をにらんだ体制固めを始めた。5月15日には親朴派の黄祐呂議員を党代表に選出した。朴委員長は事実上の党代表(非常対策委員長)の職を離れ,与党が大統領選で彼女をバックアップする態勢を整えた。足並みの乱れる野党を尻目に,朴前委員長は大統領候補としての支持率でも有利な位置についた。
世論調査会社のリアルメーターの調査では,朴委員長の大統領候補としての支持率はほぼ1位を維持したものの,安院長との二者対決構図でみると朴委員長が後塵を拝するという図式が年初来続いていた。しかし,総選挙勝利を機に,朴委員長は安院長を抑えるようになった。総選挙終了直後の4月第2週の調査では,安・朴二者対決構図で安支持44.8%に対し,朴支持が47.9%と,年初来初めて朴委員長が優位に立った。与党は総選挙を通じて保守層の結束を図ったが,総選挙勝利によって新規の支持を得た形である。
与党セヌリ党は8月20日,満を持して朴前委員長を同党大統領候補に選出した。7月に安院長が事実上の出馬表明を行ったことで,朴前委員長と安院長の支持率は拮抗するようになったが,朴前委員長が大統領候補として有力であることには変わりなかった。
大統領候補一本化で迷走した野党と保守結集に成功した与党9月下旬までに有力な大統領候補がほぼ出揃った。この時点で,選挙戦は与党の朴候補,野党民主統合党の文候補,そして無所属の安候補の三つ巴の争いとなった。保守層が朴候補支持で早々にまとまったのに対して,野党支持者は文・安両候補に分散したままだった。候補の一本化は引き続き野党の最重要課題であった。各分野における3者の政策をみると,概して,朴候補がもっとも穏健で,文候補はやや改革志向が強く,この両者の主張が今回の大統領選挙における政策論争の対立軸を形成した。安候補はそれらの中間というところであった。朴候補と文候補が掲げる政策は,4月の総選挙の際に与野党が掲げたのとほぼ同じであった。両者の差が比較的明瞭なのはFTAへの姿勢ぐらいであり,福祉拡充や南北対決ムードの緩和,経済民主化の推進などの主要政策では,両者の主張に細部では差異があったものの,基本的な方向性には大差がなかった。総じて,与党が野党の伝統的主張に追随する構図となり,野党としては政策面での差別化が難しい戦いとなった。また,文候補は家計負債の増大など民生悪化が李政権下で進行したとし,その責任を朴候補不支持によって問う政権審判論を展開した。
与党の朴候補には,父である朴正熙元大統領の過去の行いに対する批判,たとえば過酷な独裁政治や親日傾向が指摘されることもあった。これと関連し,9月21日には朴候補が朴正熙政権下での弾圧被害者への謝罪を行っている。テレビ討論会などでもこれらと関連した発言を浴びる場面もあった。だが,選挙戦を振り返れば,その間の主張のぶれは少なく,安定感のある戦いぶりをみせたといえる。
野党は中央選管への候補者登録が始まる11月に入っても候補一本化に手間取っていた。6日にようやく文・安両候補が野党候補一本化に合意したが,安候補側は,文候補側の「安哲秀譲歩論」やこれに基づく圧力を理由に14日に交渉中断を宣言,両候補間の協議は途絶えた。そして,23日にはついに安候補が大統領選出馬を取り止めることを発表した。
安候補の辞退で野党の大統領候補一本化はようやく達成されたが,その実態は安候補の退出にすぎず,かえって野党に安候補支持票を取りこぼすリスクをもたらしたのであった。朝鮮日報の調査によれば,安候補の支持者のうち,同候補の辞退後に文候補支持に切り替える意向を持つと回答したのは56.9%にすぎず,21.4%は支持なし,20.5%は与党の朴候補支持に切り替えると回答した。
安候補の辞退により,期せずして保革一騎打ちの構図となった大統領選の行方はいっそう混沌となった。三つ巴構図の下では,朴候補の優位はほぼ動かぬものと思われ,完全な合意のうえでの野党候補一本化の場合には野党候補が優勢とみられていたが,このように不完全な野党候補一本化により,与野党候補への支持は拮抗するに至ったためである。12月6日,安院長は支持者に対し,自身の文候補に対する全面的支持と,支持者の同候補への投票を呼び掛けた。しかし,時すでに遅く,文候補への支持かさ上げはとくにみられなかった。朴・文両候補は,がっぷり四つに組んだまま19日の投票日を迎えることになった。
朴候補勝利の背景に根深い世代対立と高齢化の構図12月19日,第18代大統領選が行われ即日開票された。その結果,与党の朴候補が51.6%の票を得て勝利し,韓国初の女性大統領が誕生することになった。野党の文候補は48.0%の票を得たが,一歩及ばなかった。
文候補敗戦の背景には,投票前から指摘されていた候補一本化の失敗や,朴候補が李大統領からの決別を着々と進めるなかで打ち出した政権審判論の不発などのほか,投票後に改めて浮き彫りとなった世代対立と人口高齢化が指摘される。
20~30歳代の若年層は変化を求めて文候補を支持し,支持率は60%台後半に達した。アジア通貨危機後に激化した受験戦争,日本よりも厳しい就職難,就職後もその半分以上が非正規雇用という現実がある。こうした彼らの苦境は,結婚,出産・育児にまで悪影響を与えている。若年層は厳しい現状を打開する変化を求めており,好業績の下でも賃金抑制を続ける財閥への規制(経済民主化)のほか,大学の学費半額化,兵役期間短縮,非正規雇用者対策など,若年層にとってより直接的な公約を多く打ち出した文候補に支持が集まる結果となった。
一方,50代以上の高齢層は「朴正煕・盧武鉉」対決の様相を呈した今回の選挙を通じ,変化を避ける選択をした。
高齢層には,故朴正煕大統領治下での輝かしい産業建設の記憶が残る。彼らは朴候補に父の栄光の残影をみたのであった。保守政治家としての実績を積み,現実的な政策判断を得意とする朴候補自身の特性も高齢層にアピールした。60代以上の朴候補支持率がとくに高く,70%を超える(図1)。
一方,文候補に対しては,総選挙時の野党に対するのと同様に,彼が秘書室長として仕えた故盧大統領の姿を重ね合わせていた。盧政権の分配重視の経済政策や北朝鮮に対する「太陽政策」が実効をもたらさなかった記憶が高齢層の間にはいまだ鮮明である。文候補の政策は盧政権の再来を思わせるものであり,高齢者にとっては文候補当選に伴う変化を避けようとする傾向が強まっていった。
世代間対立が鮮明となるなか,少子高齢化の進行は,高齢層の支持が高い朴候補に有利に作用した。今回同様,保革候補伯仲の構図となった2002年選挙では,20~30代有権者の比率48.3%に対して50歳以上の比率は29.3%にとどまっていた。これが2012年になると逆転し,20~30代の38.2%に対して50歳以上は40.0%となった。有権者の保守化は選挙前から指摘されていたがその大きな要因が有権者の高齢化にあるとみられる。また,高齢層の高い投票率も朴候補に有利に作用した。とくに,50代では90%に肉薄する驚異的な投票率を記録した。
(注) サンプル調査の結果であり,実際の数値とは一致しない。
(出所) 韓国地上波放送3社の出口調査(SBS提供)。
(奥田)
2012年の韓国経済は,ヨーロッパにおける信用不安の長期化や中国の成長減速などの外需不振,年後半から顕在化したウォン高基調などによって牽引役である輸出が大きく減速し,それに伴い設備投資の抑制傾向も高まったことで景気後退がいっそう深化した。足元の物価上昇は落ち着きを取り戻したものの,不動産市況の低迷が続くなか,逆資産効果によって個人消費や建設投資などの内需も冷え込む格好となった。
2013年年初に韓国銀行が発表した国内総生産(GDP)の速報値によれば,2012年の実質GDP成長率は2.0%にとどまり,伸び率は2年連続で鈍化した。四半期別にみても,前年度より7期連続で前期比1%増に届かない低成長が続いている。支出項目別では,輸出が一般機械や自動車,石油化学製品などでの増加を受けてもっとも高い伸び率(前年比3.7%)を示したが,前年の9.5%増から大幅に鈍化した。輸出不振から企業には設備増強や更新を控える動きが目立ち,設備投資(前年比1.8%減)は成長の大きな足かせ要因となった。また,2010年来続く不動産景気の沈滞を受けて,建設投資(同1.5%減)も3年連続のマイナスを記録した。民間消費は前年比1.8%の小幅の増加にとどまったが,これは不動産取引の低迷や家計負債の膨張,実質賃金の伸び悩みなどが消費意欲の萎縮を招いた結果である。一方で,社会保障支出や公共投資(住宅購入の融資支援など)といった財政投入が景気を下支えした面が強く,それを裏付けるように政府消費(前年比3.6%増)は輸出に次ぐ高い伸び率を示した。
経済活動別には,輸出の底堅い伸びを反映して製造業が前年比2.2%増を記録したが,前年の伸び率(7.2%)と比較すると大きく減少した。サービス業では保健・社会福祉事業や情報通信業,金融保険業などが比較的堅調な伸びを示したため,製造業よりも高い前年比2.4%増となった。しかし,建設業は建設投資の長引く不振などから,前年比1.3%減と3年連続のマイナスとなった。国内総所得(GDI)の成長率は,原油や穀物などの輸入価格の下落とウォン安修正などによって貿易損失規模が縮小し,交易条件が小幅に改善されたことでGDP成長率を上回る2.3%を記録した。また,1人当たりの実質GDPは,3年連続で2万ドル台を維持する見通しである。
2012年の消費者物価および生産者物価の上昇率はそれぞれ2.2%と0.7%で,資源価格や農産物価格の急騰に苦しめられた前年の4.0%と6.7%を大きく下回り,国内物価は安定を取り戻した。インフレ懸念が緩和されつつあるなか,輸出や設備投資の減少基調によって景気下降リスクが高まったと判断した韓国銀行は,7月と10月に政策金利を0.25ポイントずつ引き下げた。2度にわたる利下げには,債務が膨れ上がる家計の利払い負担を軽減するとともに,ウォン相場を下押しすることで輸出競争力を維持したいという政府の思惑がうかがえる。
景気減速にもかかわらず,雇用情勢は若干改善された。統計庁の発表によれば,2012年の失業率は3.2%と,前年比0.2ポイントの改善をみたほか,全体の就業者数は2468万人で,前年度の増加幅(41万5000人)を上回る43万7000人増加した。部門別には,小売卸・宿泊・飲食業(10万3000人増)や保健・社会福祉サービス業(8万8000人増)などのサービス部門で堅調な伸びがみられたものの,不振の製造業では1万4000人の増加にとどまった。しかし,こうした変化は非正規職雇用や自営業者の拡大による部分が大きく,一方で青年層(15~29歳)の失業率は7.5%と高止まりを続けたままで,20代の失業率はむしろ悪化している。
(注) 数値はすべて暫定値。四半期別数値は季節調整後の値。在庫増減はGDP に対する成長寄与度を表す。
(出所) 韓国銀行「2012年第4 四半期および年間国内総生産(速報)」2013年1 月24日。
外需の低迷にもかかわらず,2012年の貿易総額は2年連続で1兆ドル超えを達成し,貿易規模は世界8位に浮上した。関税庁の発表(2013年1月)によれば,2012年の通関基準の輸出額は5481億ドル(前年比1.3%減),輸入額は5196億ドル(同0.9%減)で,貿易黒字は285億ドルを記録したが,前年実績(308億ドル)には及ばなかった。輸出の内訳を品目別にみると,石油製品(前年比9.0%増)や乗用車(同3.6%増),自動車部品(同6.6%増)などが史上最高実績を上げたが,メモリー製品の減少が響いた半導体(同0.1%増)はほぼ横ばいであった。一方で,業界不況のあおりを受けた船舶(同30.1%減)や年初の減少幅が大きかった情報通信機器(同14.6%減),液晶デバイス(同0.3%減),家電製品(同11.0%減)などは不振にあえいだ。
地域別には,EU向け輸出が前年に発効されたFTAの効果もむなしく,債務危機の影響から前年比11.4%の大幅な減少をみたほか,最大の輸出先である中国向けは前年比0.1%増のほぼ横ばいであった。前年に大幅増を記録した対日輸出は一転して前年比2.1%減少したが,貿易収支は255億ドルの赤字(大部分は部品や素材)にとどまり,前年比31億ドルの改善をみた。しかし,ほかのFTA締結国向けの輸出は,その効果が鮮明に表れた。とりわけ,3月にFTAが発効されたアメリカ向け輸出は,自動車関連や鉄鋼製品の顕著な伸びによって前年比4.1%増加したほか,ASEANやシンガポール向け輸出もそれぞれ前年比で10.4%増と9.9%増を記録した。FTA締結国との貿易額は,全体の実に3割以上を占める。
輸入では,IT関連機器の製造装置などの資本財が市況悪化を受けて前年比4.2%減少したが,乗用車や衣類,穀物などの輸入増によって消費財は前年比2.0%増加した。さらに,原油やガスなどの原材料輸入も小幅に増加したことで,中東の資源国との貿易赤字は拡大した。また,貿易収支とともに経常収支の一部を構成するサービス収支では,外国人観光客の増加によって旅行収支の赤字幅が改善したり,運送・建設部門の黒字幅が拡大したことで収支全体は黒字転換した。その結果,経常黒字は過去最高水準の433億ドルを記録し,前年実績(261億ドル)から大きく増大した。
韓国輸出入銀行によれば,2012年の海外直接投資額は177億ドル(前年比31.0%減)にとどまり,欧米や中国などアジア向けがともに落ち込んだ。一方で知識経済部の発表では,外国人直接投資(申告ベース)は163億ドル(同18.9%増)の史上最大規模を記録した。なかでも日本からの直接投資が45億ドルと前年比でほぼ倍増し,アメリカ(37億ドル)やEU(27億ドル)を抜いてトップとなった。日本の対韓投資が増大した要因には,素材や部品,製造装置などの分野で納入先としての韓国企業の存在感が増していることや,韓国のFTAネットワークの積極的な活用などがあげられる。また,国内の消費市場をターゲットとして,小売りや外食などサービス部門での日本企業の韓国進出も増えている。
国際収支のその他の項目では,証券投資が日米欧の金融緩和による豊富な流動性を受けて,前年に引き続き101億ドルの入超を記録した。ムーディーズやフィッチなどによる韓国国債の信用格上げにみられるように,世界経済が不安定ななかでも金融・財政が安定している韓国経済に対する海外投資家の評価の高さがうかがえる。証券市場では,韓国総合株価指数(KOSPI)が年央にかけて1700台に割り込む場面もみられたが,外国人投資家の押し上げによって底堅く推移し,年末には1997.05まで回復した。
海外資本の流出入に翻弄されやすい外国為替市場では,こうした海外投資資金の流入拡大や経常収支の黒字基調などを受けて,年後半にかけてウォン相場の漸進的な上昇が続いた。対ドルレートでは,5月25日に年最安値となる1ドル=1185.5ウォンをつけて以降,年末の最高値1ドル=1070.6ウォンまで増価した(前年末比7.6%のウォン高)。それに対して,対円レートでは6月4日に年最安値の100円=1512.3ウォンをつけて以降,年末の最高値100円=1238.3ウォンまで切り上がり,対ドル以上の上げ幅となった(同19.6%のウォン高)。こうしたウォンの上昇基調と円高の修正傾向は,海外市場で日本製品と競合する輸出企業の採算悪化に直結している。ウォン高の進行を受けて政府は,2013年年初から銀行の為替先物ポジションの上限比率を引き下げることを11月に決め,資本流入の急増によるウォン上昇に抑制をかけようとしている。
主要企業業績国内主要企業の2012年の業績は,サムスングループと現代自動車グループの好調ぶりが際立つ反面,その他は低迷や悪化に苦しむという二極化傾向が鮮明となった。韓国最大企業で外国人の選好度も高いサムスン電子は,2012年連結決算で売上高201兆1036億ウォン,営業利益29兆493億ウォンを記録し,いずれも過去最高を更新した。「ギャラクシー」シリーズで有名なスマートフォンやタブレット端末の多機種展開による販売拡大,従来のPC用からモバイル機器やサーバー向けに重点を切り換えた半導体部門の回復が大きかった。また,業績悪化が続くLCD(液晶ディスプレイ)事業の分社化や,自社生産が軌道に乗り始めた中小型有機ELパネルの浸透も増益に一役買ったとみられる。同じサムスングループで,リチウムイオン電池など小型二次電池市場でトップシェアを誇るサムスンSDIも,モバイル機器需要の拡大を受けて急成長を遂げた。
同じく韓国の代表的な企業である現代自動車は,前年に引き続き欧州など海外市場での売り上げを着実に伸ばして,2012年連結決算が売上高84兆4697億ウォン,営業利益8兆4369億ウォンといずれも過去最高を記録した。しかし,第4四半期に入って以降はウォン高の進行やアメリカで発生した燃費の過大表示問題の影響により,成長の勢いに陰りがみえ始めている。同グループの起亜自動車や大手部品メーカーの現代モービスもまた,過去最高収益を更新している。
一方,LGグループでは事業構造の再編を行ったLG電子が,2012年連結決算で売上高50兆9600億ウォン,営業利益1兆1360億ウォンを確保した。売上高こそ減収となったものの,営業利益は前年の約4倍に増加して2009年以来の高水準となった。これには携帯電話事業が3年ぶりに黒字転換したことや,薄型テレビや家電事業が収益を下支えしたことが大きい。しかし,二次電池や偏光板事業などを手がけるLG化学は,過去最高実績を記録した前年から一転して減益に陥った。
国土海洋部によると,2012年の海外建設受注額は中東やアジアを中心に649億ドル(前年比9.7%増)を記録し,主に海洋や発電・淡水化の分野でのプラント建設で好況を呈している。しかし,造船や鉄鋼,石油化学などの基幹産業では受注減や供給過剰・価格下落といった不況の影響を免れず,現代重工業やポスコ,GSカルテックス,ハンファケミカルなど主要企業が軒並み業績悪化に陥り,一部では人員削減などの構造調整を強いられた。また,資産総額で財界39位の熊津グループでは,持ち株会社の熊津ホールディングスと系列会社の極東建設が,資金繰りの悪化を理由に9月に法廷管理を申請した。中堅財閥の事実上の経営破綻は,建設不況の深刻さをあらためて示したといえる。
不動産不況の長期化と家計負債問題前年に引き続き2012年にも,建設や不動産市況の低迷が個人消費や建設投資の足を引っ張るとともに,中小金融機関の経営不安や家計負債の膨張につながっていった。プロジェクト・ファイナンスとよばれる,建設会社向けの不動産開発融資の不良債権化が中小の貯蓄銀行ではかねてから問題となっていたが,5月には新たにソロモン貯蓄銀行や未来貯蓄銀行など4行が不良金融機関として,金融委員会から6カ月間の営業停止措置を受けた。建設会社や貯蓄銀行の連鎖的な経営悪化が,システミック・リスクなどの金融システム全体の不安定化に波及する可能性は低いとされている。しかし,これまでに営業停止処分を下された貯蓄銀行の多くが国際決済銀行(BIS)基準の自己資本比率1%未満であることが明らかとなり,金融当局は公的資金投入による不良債権の買い入れなどの経営健全化策を実施している。
国土海洋部の発表によれば,2012年の住宅取引件数は73万5400件で,全国的に対前年比20%台の減少となった。マンションの売買価格は地方では比較的堅調な上昇率を保ったが,ソウルや首都圏では前年以上に下落が続いた。不動産市場低迷の長期化を受けて,政府はソウルの江南3区(江南区,瑞草区,松坡区)を投機指定地域から解除したり,住宅担保融資に適用される限度額規制を一部緩和するなどの取引活性化策を講じている。また,9月には年末までの時限措置として自動車や大型家電に対する特別消費税の引き下げのほかに,不動産購入に対しても取得税や譲渡所得税の減免といった減税策を打ち出したが,需要喚起効果は限定的にならざるをえない。
たとえ政府の諸対策によって住宅取引が復調し,価格下落に反転の兆しがみられたとしても,それと表裏の関係にあるのが住宅ローンを含めた借入増加によって膨らみ続ける家計負債の問題である。12月末現在の家計債務残高は959兆4000億ウォンで,初めて900兆ウォン台に達した前年末からさらに増え続けている。また,実需および運用目的で購入した不動産を転売するにできず,ローンの元利金返済負担が家計を圧迫して生活苦に陥る「ハウスプア」の増大が社会問題化した。金融当局はハウスプア世帯に対して,借入返済の繰り延べや利払い減免などを許容する債務調整策を検討しているが,その効果は不透明である。
大統領選挙で争点となった「経済民主化」年末に行われた大統領選挙において最大の争点となったのが,「経済民主化」の実現に向けた政策の違いであった。「経済民主化」とは,一般的に大企業偏重の市場・経済構造を是正することによって富の公正な分配や格差の解消を図ることを意味するが,端的には財閥の規制改革と中小零細企業の保護・育成を指すものとされた。李政権下で実施された総額出資制限制度の廃止などの規制緩和が,財閥の系列企業数の増加や小売卸・不動産など非製造業分野への事業領域の拡大を促し,従来そうした部門を担ってきた中小零細事業者の生存を脅かしているとして,しばしば問題視されてきた。政府はそうした声を受けて,これまで大型量販店・スーパーに出店規制や営業時間制限をかけたり,財閥に対してベーカリー事業からの撤退を要請するなどしてきた。
大統領選挙では財閥改革を巡って,野党の文候補は総額出資制限制度の再導入やオーナー一族が少ない持ち株で多数のグループ企業を支配する循環出資構造の解消(3年以内)などを公約に掲げていた。それに対して与党の朴候補は,総額出資制限の復活に否定的な立場をとるとともに,循環出資についても新規分のみ禁止するという穏健な姿勢を示した。その他公正取引関連法については,財閥と下請け中小企業間の取引価格の是正や中小企業協同組合への納品単価調整協議権の付与,財閥犯罪や不公正取引に対する懲罰強化などを朴候補は明言している。
雇用対策では朴候補は,「ヌルジオ」政策(雇用の拡大・維持・質の向上)のなかでIT・文化コンテンツ産業への投資拡大や青年層への創業支援による雇用創出,公共部門での非正規職から正規職雇用への転換,企業の定年引き上げ(60歳)の義務化や解雇要件の強化などを公約に掲げた。また,福祉や教育分野では,基礎老齢年金の給付額引き上げや4大重症疾患の治療費に対する健康保険負担の拡大といった社会保険改革,満5歳までの乳幼児への無償保育・養育の実施,高校教育の無償化と所得に応じた大学授業料の援助(25~100%)などを新政権の重要公約として打ち出している。そうした福祉拡充志向を受けて,2013年度の予算総額(342兆ウォン)に占める福祉関連予算は97兆ウォンと,全体の約30%に達する過去最大規模となった。中長期的な福祉財源の調達方法や財政の健全化を巡って早くも疑念や批判が出ており,新政権の今後の対応が注目される。
(渡邉)
南北関係は,韓国側の基本姿勢に大きな変化がみられなかったなかで,北朝鮮が韓国のダブル選挙など,政治・社会情勢をみながら折々に揺さぶりをかけるという形で推移した。両者の関係は没交渉に近く,行き詰まりの様相を呈したが,韓国大統領選で程度の差はあれ,南北対話促進の方向を各候補が打ち出したのを受け,北朝鮮は韓国側の動きを慎重に見守る姿勢に転じた。
金正日総書記の死後,北朝鮮はその息子の金正恩第一書記の指導するところとなった。若い指導者の南北関係における柔軟な対応に期待する向きもあった。しかし,総選挙や大統領選にタイミングを合わせたかのような2度にわたるミサイルの発射は故金正日総書記の遺訓に依拠したとみられ,金正恩新体制の対南姿勢も,韓国の李明博政権の対北対決姿勢に反発して対南攻勢を強めた父金正日の前体制の対南姿勢をそのまま維持するとの見方が強まった。
北朝鮮は新年共同社説において,4月の総選挙を意識して「(韓国の)執権勢力は人民の厳しい審判対象になっている」とし,対南姿勢が依然として批判的であることを示した。また,北朝鮮に厳しい姿勢をとる李大統領個人に対し,北朝鮮は揶揄を交えながら引き続き激しい敵意をみせたほか,総選挙を控えた3月から4月にかけては,与党の朴槿恵非常対策委員長に対し,「維新独裁の血統」「(総選挙で)保守の逆賊一味に審判を下すべき」などと,非難した。
総選挙後,北朝鮮の揺さぶりが続いた。与党が勝利した総選挙の直後,北朝鮮は内外の強い批判のなか,この年の第1回目となるミサイル発射を行った。李政権に対する非難も続いた。6月には,朴槿恵をはじめとする韓国側政治家らが2002年に北朝鮮を訪問した際の言動の暴露を示唆した。しかし,朴槿恵に対する北朝鮮の非難は次第に影をひそめるようになり,彼女の出方を見守るようになる。朴槿恵が率いる与党は2011年の国会議員再・補欠選挙で北朝鮮との対決姿勢を前面に立てて予想外の敗北を喫したのを教訓に,今回の総選挙では北朝鮮の脅威にあえて言及しないようにした。また,朴槿恵は南北関係が今よりも良好であった2002年に金正日総書記と会い,歓談したという経緯がある。
10月には,対北経済交流チャンネルとして唯一残されている開城工業団地の入居企業に対して課税を通告したり,韓国側が申し出た北朝鮮の水害に対する人道支援の受け入れを拒んだりといったことが起きた。しかし,その後の大統領選の過程では北朝鮮による朴候補をはじめとする各候補への誹謗中傷の類いはあまり目立たなくなった。選挙戦でほぼ終始優勢であった朴候補は,南北間の信頼醸成と北朝鮮の非核化を条件に大規模な経済協力を実施するという「朝鮮半島の信頼プロセス」を打ち出したが,北朝鮮は12月1日に公開質問状を発してその対北姿勢を改めて尋ねている。北朝鮮も韓国新政権の対北政策の方向に多大な関心を寄せていることがわかる。大統領選前の12月12日に北朝鮮はこの年2回目となるミサイル発射を行ったが,大統領選への直接的な影響はみられなかった。
対日関係2012年の日韓関係は,韓国側による領土問題と過去の歴史問題の提起などもあって悪化した。2011年12月の日韓首脳会談で李大統領が従軍慰安婦問題の解決に向けた踏み込んだ対応を日本に求めたのに対し,逆に野田首相がソウルの日本大使館前に設置された慰安婦を象徴する少女像の撤去を要求して以来,両国間の関係は冷却し,2012年にも両国関係が冷えたまま推移した。3月1日の独立記念日の演説で李大統領は日本に対し,慰安婦問題の早期解決を求めた。
5月の日中韓サミットの際に行われた日韓首脳会談では,李大統領からの慰安婦問題の提起はなく,両国関係は小康状態に入ったかにみえたが,6月から8月にかけて両国関係の悪化を強く印象付ける出来事が相次いだ。6月には日韓軍事情報包括保護協定の署名が直前になって韓国側の申し出によって延期され,その後も署名されなかった。8月10日には李大統領が突如として竹島に上陸し,竹島が韓国領であると改めてアピールした。この上陸について李大統領は,「歴史に対する日本の消極的態度が動機となった」と語っている。同時期には,李大統領が「天皇が訪韓したいならば,独立運動で亡くなった方たちに心から謝罪するというのならよい」と発言した。李大統領の竹島上陸以後の一連の言動は日本国内で大きな反発を呼び,対韓経済報復の論調さえ出る事態となった。一方,韓国各紙は,従軍慰安婦問題などの過去史に対する日本の取り組みを問題視して対日非難を繰り広げた。李大統領も8月15日の光復節演説で慰安婦問題をはじめとする過去史に再度言及した。9月から10月にかけては,現状における日韓経済の深い結びつきや,朝鮮半島における安全保障上のパートナーとしての重要性などが再認識されるようになり,強い調子での対日非難は影をひそめていった。それでも,ここまでの出来事で過去史や領土問題が引き続き両国間の懸案事項であることが改めて認識されるようになった。10月には,日韓通貨スワップの拡大部分570億ドルの契約不更改が決まり,日韓関係の悪化が経済協力にまで及んだことが印象付けられた。5月の首脳会談以後,日韓間の首脳会談はもたれなかった。
朴次期大統領は,選挙期間中に親日的との指摘を受けたこともあったが,過去の日本による朝鮮支配に関しては被害者・加害者の立場を明確にすべきとの立場であり,過去史について原則的立場を堅持することを選挙戦の過程でも表明している。竹島については国益の核心と位置づけ,引かない構えをみせている。一方,12月に誕生した安倍政権について,韓国内では「右派的性向」やデフレ脱却に向けた大々的金融緩和策とそれに伴う円安・ウォン高への警戒感が高まった。安倍政権自身は,日韓関係を重視し,従軍慰安婦に関する河野談話の見直しや「竹島の日」式典の格上げなどについては保留する意向を示している。
対米関係北朝鮮の政権移行と相次ぐミサイル発射など,その不安定な動きが北東アジア情勢の流動化を引き起こしかねないとの状況認識の下,韓米両国は同盟の重要性についての価値を共有し,とくに軍事面での協力関係が自国と地域の安全保障に重要であることでは引き続き意見が一致している。
2月と8月に韓米両軍が定例的に行っている合同軍事演習「キーリゾルブ」「乙支フリーダムガーディアン」のほか,6月にも済州島南方での日韓米合同の海上封鎖・捜索・救助など人道支援的軍事演習と,黄海での韓米合同海上軍事演習の定例的軍事演習が実施された。
北朝鮮のミサイル脅威の増大を受け,韓米の国防関係者の間では,韓国のミサイル防衛について集中的な議論が行われた。6月14日に開催された韓米外務・国防相会議(2プラス2)では,北朝鮮のミサイルの脅威に対する包括的な連合防衛態勢を強化するとの共同声明が発表され,10月24日の韓米安保協議(SCM)では,北朝鮮のミサイルを発射前に打撃する「キル・チェーン」システム構築のほか,ミサイルを上空で迎撃する韓国型ミサイル防衛体制(KAMD)の推進で合意した。懸案となっていた韓国保有の弾道ミサイルの射程距離については,10月7日に韓米ミサイル交渉が妥結し,射程を800キロメートルに延長することで合意した。 また,2015年12月に戦時作戦統制権が韓国に渡された後には,現在の韓米連合司令部に代わる新たな機構を設置し,韓米両軍の緊密な連携を保てるようにした。
韓米FTAは,政府間交渉の妥結以来約5年の歳月を経て,3月15日に発効した。韓米FTAは総選挙と大統領選で与野党間の争点となったが,どちらも同FTAの存続を基本方針とする与党が勝利している(国内政治の項を参照)。対米輸出における活用率は74.8%(4~12月,アメリカ貿易統計より筆者計算)と,相当高い。
対中国関係地理的な近さや両国間の人やモノの往来の頻繁化ゆえのトラブルが続いたが,2012年は首脳の往来も多く,総じて韓国の中国に対する傾斜が目立つ年となった。
1月9日,李大統領は北京を訪問し,韓中首脳会談が開かれた。この席上,李大統領と中国の胡錦濤国家主席は,数年間にわたって両国間の懸案となっていた韓中FTAの交渉開始に合意した。中国の漁船員が韓国の海洋警察官を殺害する事件が発生して間もない時期の合意で,韓国側の柔軟な姿勢が目を引いた。李大統領の北京訪問では,中国の国家主席と首相による晩餐会がそれぞれ設定されるなど,中国側は異例の歓待ぶりをみせた。このほか首脳会談は3月,5月と11月にも行われた。3月の首脳会談は核安全保障サミットの機会に行われたものだが,両首脳ともに北朝鮮のミサイル発射に反対した。11月にはASEAN関連首脳会議で日韓中を含む各国首脳が集まる機会を利用して韓中首脳会談がもたれた。この首脳会談では,北朝鮮が改革・開放を進めるべきとの認識で一致し,日本の右傾化への懸念も示された。この時日韓首脳会談は実現せず,韓中両国の接近ぶりが強く印象付けられた。
4月の北朝鮮によるミサイル発射と関連し,李大統領は中国指導部の対応について「信頼に足る」と評価した。これは,3月の首脳会談の内容や,北朝鮮のミサイル発射を非難する国連安保理の議長声明採択に中国が積極的に協力したことなどによるものとみられる。2010年の哨戒艇沈没や延坪島砲撃などの事件に際し,中国が北朝鮮に対する影響力を行使せず,韓国側の失望を買ったことに比べると,中国が姿勢を若干変化させたようにみえる。
一方,両国間関係に水を差しかねない事件もいくつか起こった。ひとつは,済州島南方約150キロメートルの沖合にある水中岩礁の離於島に対して中国が海洋調査船や航空機による定期パトロールの対象に含める方針を明らかにしたことである。離於島は中国と韓国の経済水域が重なるところに存在するが,中間線よりは韓国寄りに位置するため,韓国側の管轄であるというのが韓国の主張である。中国による離於島管轄主張に対し,李大統領は3月12日同様の反論をしている。もうひとつは,韓国人人権活動家拘束と拷問疑惑である。北朝鮮の人権問題に関する活動家の金永煥ら4人は3月末に中国公安当局に逮捕され,身柄を114日間にわたって拘束された。帰国後の7月27日,韓国各紙は金永煥らが電気拷問などの過酷な取り扱いを受けていたと一斉に報道した。謝罪や真相究明などがなされないまま,9月までに事実上の幕引きとなったが,中国の冷淡な反応とともに,中国に対して強硬な申し入れをしない韓国の外交当局に対しても批判が集まった。
FTAFTAは,2012年にも積極的に推進された。すでに言及した韓米FTAのほか,5月2日には韓中FTAの政府間交渉が開始された。11月20日には日中韓FTAの交渉開始が正式に宣言された。日韓および日中関係が冷え込むなかで開始されたFTA案件であり,北東アジアにおける経済協力を前進させるためのチャンネルとして注目される。このほか,11月22日に韓トルコFTAが批准され,8月31日に韓コロンビアFTAが仮署名された。すでに多国間協定が締結済みのASEANとは二国間FTAも締結しようとの機運が高まっている。3月28日にインドネシアとの包括的経済連携協定(CEPA)の交渉が,9月3日には韓ベトナムFTA交渉も開始された。TPPなど,アジア太平洋における広域FTAへの参加も徐々にではあるが議論され始めている。このうち,域内包括的パートナーシップ協定(RCEP)については日中韓FTAと同じく11月20日に交渉開始が宣言され,韓国も交渉に加わることとなった。日韓EPAについては,6月25日に第3回課長級実務協議が行われたが,交渉再開には至らなかった。
(奥田)
国内政治では,最大の注目点は2月25日に発足する朴新政権の人事と政策方向である。閣僚など主要人事の方向については,野党系人材を含め全方位的に選考する旨を選挙期間中から表明していたが,首相人事でもたつくなど,人選の遅れがやや目立つ。しかし,それぞれの分野の専門家を適宜選ぶ傾向はあり,手堅さもみえる。政策面では,選挙公約の経済民主化や福祉拡大をどう具体化し,実現していくかが問われよう。
朴新政権の成長戦略は,ITと科学技術の復興による産業の高度化にあるが,輸出減速による製造業の業績悪化につながるウォン高傾向への対応にも注目が集まる。2013年年初に韓国銀行の金仲秀総裁は「為替相場の急激な変動にはスムージングオペレーションなどで積極的に対応する」と発言し,政府は外為取引課税など資本流入規制の強化策を検討しているとされる。不動産市場の動向にも引き続き注視が必要だが,家計負債問題では新政権は18兆ウォン規模の「国民幸福基金」を創設して,債務延滞者や学資ローンを組む学生の返済負担の軽減を目指しており,その行方が注目される。また,分配を重視した大衆迎合的な福祉拡張によって悪化の兆しがみられる財政の規律をいかに維持していくかも焦点となろう。
外交においては,不安定な北朝鮮の動きへの対応と,こじれた日本との関係をどう立て直すかが問われる。このことは,北東アジア情勢全般ともかかわり,対中,対米関係をどのように位置づけるかという問題と密接に絡んでいる。これと関連し,朴新政権は青瓦台に国家安全保障室を設置,難しさを増す外交安保政策の司令塔の役割を担わせる。米中両国との距離の取り方,南北対話再開のやり方などは模索が続こう。対日関係では混乱を望まないとみられるが,竹島,慰安婦などの重要問題では原則的態度をとるとみられ,短期での好転は難しいだろう。
(奥田:国内客員研究員・亜細亜大学教授)
(渡邉:地域研究センター)
1月 | |
2日 | 李大統領,新年国政演説で北朝鮮との対話姿勢や物価抑制,若年失業問題解決の重要性などを強調。 |
2日 | 政府,韓米FTA対策として農漁業への増額支援策を発表。 |
5日 | 検察,SKグループの崔泰源会長を資金流用容疑で在宅起訴。 |
9日 | 李大統領,中国の胡錦濤国家主席と会談。韓中FTAの交渉開始に合意。 |
12日 | 公正取引委員会,価格談合でサムスン電子とLG電子に課徴金支払い命令。 |
15日 | 民主統合党,党大会で韓明淑元首相を代表に選出。 |
15日 | 中央選挙管理委員会,公職選挙法の新運用基準で選挙運動でのSNS利用を認定。 |
25日 | サムスン電子,ソニーとの液晶パネル合弁の完全子会社化を発表。 |
27日 | 金融委員会,ハナ金融の韓国外換銀行買収を承認。 |
2月 | |
1日 | LG電子,水処理事業で日立と合弁会社を設立。 |
2日 | ハンナラ党,未来希望連帯(旧親朴連帯)と統合。 |
9日 | 朴熺太国会議長,2008年のハンナラ党代表選挙での買収事件と関連し,辞任。 |
10日 | KT,スマートTVのネット接続をサムスン機器に限り遮断(14日に回復)。 |
13日 | ハンナラ党,名称をセヌリ党に変更。 |
14日 | 李孟熙元CJグループ会長,弟の李健熙サムスン電子会長を遺産相続争いで提訴(28日には姉の李淑熙氏も提訴)。 |
17日 | 韓国チェーンストア協会,大型量販店やスーパーの営業制限条例に対して違憲立法審査を請求。 |
24日 | 韓国取引所,金升淵ハンファグループ会長の横領・背任容疑での起訴を受けてハンファ株の売買を終日停止。 |
27日 | 韓米合同軍事演習「キーリゾルブ」,開始。 |
3月 | |
1日 | 李大統領,独立運動記念日の記念演説で,日本政府に対して慰安婦問題の人道的解決を訴える。 |
2日 | 農協金融持ち株会社,資産規模450兆㌆で発足。 |
6日 | 朝鮮日報,セヌリ党の総選挙候補者公認過程での脱落・保留者の73.9%が親李明博系と報道。また,民主統合党の公認候補の73%が親盧武鉉・旧ウリ党系と報道。 |
10日 | 民主統合党と統合進歩党,総選挙での選挙協力(野圏連帯)に合意。 |
12日 | 李大統領,中国の離於島への管轄権主張に反論,韓国の管轄権を強調。 |
14日 | 検察,プロスポーツ界の八百長事件で計31人の起訴を発表。 |
15日 | 韓米FTA,発効。 |
16日 | サムスン電機,HDDモーターメーカーのアルファナテクノロジーの買収を発表。 |
20日 | ソウル市,大型スーパーに月2回の休業義務を勧告。 |
24日 | 統合進歩党の李正姫代表,ソウル市冠岳区乙選挙区の野党統一候補を選出過程での不正と関連し,立候補を辞退。 |
26日 | 韓トルコFTA,交渉妥結。 |
26日 | ハイニックス半導体,社名をSKハイニックスに変更。 |
26日 | 2012ソウル核安全保障サミット,開催。北朝鮮によるミサイル発射の中止を求める。 |
28日 | 総選挙における史上初の在外国民投票,開始。 |
4月 | |
1日 | サムスン電子の液晶パネル子会社,サムスンディスプレーとして発足。 |
2日 | 現代重工業,加マグナ社との合弁で車載用電池事業への新規参入を発表。 |
6日 | 北朝鮮の民族和解協議会,与党の朴槿恵非常対策委員長について,総選挙で「保守の逆賊一味に審判を下すべき」と非難。 |
11日 | 第19代総選挙,投開票を実施。与党セヌリ党が過半数の152議席を獲得。 |
13日 | 政府,北朝鮮のミサイル発射と関連して声明発表。朝鮮半島と北東アジアの平和・安全を脅かす挑発行為と批判。 |
13日 | 韓明淑民主統合党代表,総選挙敗北の責任をとって辞任。 |
16日 | 国連安全保障理事会,北朝鮮のミサイル発射を非難する議長声明を採択。 |
19日 | 新日本製鉄,方向性電磁鋼板の製造技術を巡る特許侵害でポスコを提訴。 |
25日 | KT,NTTと非常災害時の通信衛星の相互使用で協約締結。 |
28日 | 北朝鮮・開城付近からの妨害電波により大規模なGPS障害が発生(~5月13日)。 |
30日 | 大検察庁,ソウル良才洞の複合流通団地の許認可を巡る不正疑惑事件で崔時仲前放送通信委員会委員長を斡旋収賄容疑で逮捕。 |
5月 | |
2日 | 韓中両国,韓中FTAの政府間交渉開始を宣言。 |
4日 | 蔚珍原発で新1・2号機を着工。 |
6日 | 金融委員会,貯蓄銀行4行に対して6カ月間の営業停止命令。 |
7日 | 韓米両国,過去最大級の空中戦闘訓練「12-1次マックスサンダー訓練」を実施。 |
12日 | 麗水国際博覧会,開幕(~8月12日)。 |
12日 | 統合進歩党の中央委員会で暴行事件発生。非主流派の柳時敏代表らが主流派から殴る蹴るの暴行を受ける。 |
14日 | 日中韓3カ国,首脳会談後の共同宣言文採択。日中韓FTA交渉の年内開始合意。 |
15日 | セヌリ党,全党大会を開催。黄祐呂議員を代表に選出。 |
17日 | 韓国輸出入銀行,総額1000億円規模の円建て外債(サムライ債)を発行。 |
22日 | LGディスプレー,中国広州に液晶パネル新工場を着工。 |
29日 | ポスコ,インドでの高級鋼板工場の竣工を発表。 |
6月 | |
4日 | 国際原子力機関(IAEA),電源喪失事故の隠蔽で問題になった古里原発の特別点検を開始。 |
14日 | GSカルテックス,GSパワー株式全量のKB国民銀行コンソーシアムへの売却を完了。 |
14日 | 韓米外務・国防相会議(2プラス2),開催。北朝鮮のミサイル脅威に対する包括的な連合防衛態勢を強化するとの共同声明を発表。 |
20日 | タクシー運転手らが燃料価格高騰などに抗議してストライキを実施。 |
20日 | SKハイニックス,米LAMD社の買収を発表。 |
22日 | ソウル行政裁判所,大型スーパーの休業義務は違法であると判決。 |
23日 | 推定人口,5000万人を突破。 |
25日 | 運送産業労組・貨物連帯,ストライキに突入(~29日)。 |
25日 | 韓コロンビアFTA,交渉妥結。 |
29日 | 政府,日韓軍事情報包括保護協定への署名を延期。 |
29日 | セヌリ党と統合進歩党,統合進歩党の比例代表候補選出の不正に関連し,2議員の資格審査案を共同発議することで合意。 |
7月 | |
1日 | 行政中心複合都市の世宗特別自治市,誕生。 |
1日 | サムスンディスプレー,サムスンモバイルディスプレーと統合。 |
5日 | 大法院,済州海軍基地の建設は適法と判決。 |
8日 | 公正取引委員会,系列企業間の相互発注でSKグループに課徴金支払い命令。 |
10日 | 大検察庁,李大統領の実兄の李相得前議員を斡旋収賄容疑などで逮捕。 |
12日 | 韓国銀行,基準金利を3.25%から3.00%に引き下げ。 |
13日 | 現代自動車労組,4年ぶりにストライキに突入(20日に2回目のスト)。 |
16日 | セヌリ党の朴槿恵前委員長,朴正熙元大統領による1961年の5.16軍事クーデタについて「やむをえない最善の選択だった」と発言。 |
17日 | サムスン電子,英CSR社のモバイル事業の買収を発表。 |
19日 | 安哲秀ソウル大融合科学技術大学院長,『安哲秀の考え――私たちが望む大韓民国の未来地図』を出版。このなかで大統領選出馬を事実上表明。 |
27日 | 韓国各紙,人権運動家の金永煥氏らが3月に中国公安当局に拘束された後,電気拷問を受けていたと報道。 |
8月 | |
1日 | 韓トルコFTA,正式署名。 |
6日 | 韓国電力公社,電気料金を平均4.9%値上げ(産業用は6%値上げ)。 |
10日 | 李大統領,竹島に上陸。 |
11日 | IOC,ロンドン五輪男子サッカーの日韓戦で「独島(竹島)は我々の領土」と書かれた紙を持ってグラウンドを走り回った朴鍾佑選手の表彰式参加を禁止。 |
11日 | 李大統領,自身の竹島上陸について,歴史に対する日本の消極的態度のためと説明。 |
14日 | 李大統領,天皇訪韓と関連し「訪韓したいのであれば,独立運動で亡くなった方たちに心から謝罪するというのならよい」と発言。 |
15日 | 李大統領,光復節演説で慰安婦問題に関し,戦時の女性人権問題であり日本政府の責任ある措置を促すと発言。 |
16日 | ソウル西部地裁,金升淵ハンファグループ会長に懲役4年,罰金51億㌆の実刑判決。 |
20日 | セヌリ党,朴槿恵前委員長を大統領候補に選出。 |
20日 | 韓米合同軍事演習「乙支フリーダムガーディアン」(UFG),開始。 |
23日 | 憲法裁判所,インターネット実名制に違憲判決。 |
24日 | 米連邦地裁,サムスン電子が米アップル社の一部特許を侵害したと陪審評決。 |
27日 | ムーディーズ,韓国の国債格付けを引き上げ。 |
27日 | 松原国家公安委員長,河野談話の見直しに意欲を表明。 |
28日 | 現代自動車,中国に商用車部門の合弁会社の四川現代を設立。 |
9月 | |
6日 | フィッチ,韓国の国債格付けを引き上げ。 |
8日 | 李大統領,ロシアのプーチン大統領と会談。北朝鮮を経由するガスパイプライン事業で緊密に協力することで合意。 |
10日 | 企画財政部,「第2次財政支援強化対策」を発表。 |
12日 | サムスン電子,中国西安にNAND型フラッシュメモリーの新工場を着工。 |
12日 | 北朝鮮,10日に受け入れ方針を表明した韓国政府の水害支援を断る。 |
14日 | 世宗市への官庁移転,開始。第1陣として国務総理室が同日午後より移転開始。 |
14日 | S&P,韓国の国債格付けを引き上げ。 |
14日 | 統一部,北朝鮮の中央特区開発指導総局が開城工業団地管理委員会に対し,不正な会計操作に200倍の罰金を科すことなどを記した「税金規定施行細則」を通告した,と発表。 |
16日 | 民主統合党,文在寅常任顧問を大統領候補に選出。 |
19日 | 安哲秀,大統領選への出馬を公式に宣言。 |
21日 | 朴槿恵候補,朴正熙元大統領の軍事クーデタや独裁体制下での被害者とその家族に対して公式に謝罪。 |
26日 | 熊津グループの熊津ホールディングスと極東建設,資金繰り悪化でソウル中央地裁に法廷管理申請。 |
10月 | |
7日 | 韓米ミサイル交渉,妥結。韓国の弾道ミサイルの射程を800㎞に延長。 |
9日 | 金融当局,570億㌦規模の日韓通貨スワップ拡大措置について,契約延長をしない方針を表明。 |
11日 | 韓国銀行,基準金利を3.00%から2.75%に引き下げ。 |
16日 | 李大統領の私邸用地不正購入疑惑事件の特別捜査チーム,李大統領の長男の李始炯など10余人に対し,出国禁止措置。 |
16日 | 現代重工業,サウジアラビア電力公社から石油火力発電所の建設受注を発表。 |
16日 | 南西部海上で不法操業中の中国漁船員,海洋警察が撃ったゴム弾で死亡。 |
18日 | 国連安全保障理事会,韓国を非常任理事国に選出。 |
18日 | 趙泰永外交通商部報道官,安倍自民党総裁などの靖国神社参拝に対し,韓国の国民感情に配慮しない無責任な行為と批判。 |
24日 | 韓米安保協議(SCM)開催。北朝鮮のミサイル発射前の段階で打撃する「キル・チェーン」システムの構築,韓米連合司令部解体後の代替機構新設などで合意。 |
11月 | |
2日 | 米環境保護局,現代自動車と起亜自動車製品に燃費性能の過大表示があると発表。 |
5日 | 霊光原発2基,冷却装置部品の品質保証書偽造が発覚し,稼動中断。 |
5日 | 朴槿恵候補,南北関係発展のためなら北朝鮮の指導者にも会うと述べる。 |
6日 | 文在寅候補と安哲秀候補,野党候補の一本化に合意。 |
14日 | 文在寅候補と安哲秀候補間の野党候補一本化交渉が中断。 |
20日 | 朴泰鎬通商交渉本部長,枝野経済産業相,陳徳銘中国商務相,日中韓FTAの交渉開始を公式宣言。 |
23日 | 安哲秀候補,大統領選への不出馬を表明。 |
29日 | ソウル高裁,靖国神社への火炎瓶放火犯の中国人に関する日本への犯罪人引渡裁判の審理を開始。 |
30日 | 韓相大検事総長,ソウル高検検事の収賄,新人検事と女性容疑者の性的関係など,不祥事の責任を取って辞任を表明。 |
12月 | |
1日 | 北朝鮮の祖国平和統一委員会,朴槿恵候補が対北朝鮮政策を明確にするよう求める公開質問を発表。 |
4日 | 保健福祉部,一般飲食店での喫煙を全面禁止する国民健康増進改正法を施行。 |
5日 | サムスングループ,サムスン電子の李在鎔社長の副会長昇進を発表。 |
6日 | 安哲秀,民主統合党の文在寅候補への全面支援を宣言。 |
12日 | 政府,北朝鮮のミサイル発射と関連し,非難声明を発表。 |
19日 | 第18代大統領選挙,実施。与党セヌリ党の朴槿恵候補が得票率51.6%で当選。 |
27日 | 朴次期大統領,大統領職引き継ぎ委員長に金容俊元憲法裁判所長を任命。 |
27日 | 趙允旋大統領職引き継ぎ委員会報道官,朴次期大統領が翌年1月4日に安倍首相の特使団と会見すると発表。 |
31日 | 朴次期大統領,大統領職引き継ぎ委員会に9分科会を設置。 |
31日 | 国会,次年度予算案を可決せずに越年。 |
(出所) 大統領府ウェブサイト(http://www.president.go.kr)などから筆者作成。