アジア動向年報
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2012年の中国 政権移行期の激しい権力闘争と経済成長の減速
松本 はる香寳劔 久俊
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2013 年 2013 巻 p. 99-136

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2012年の中国 政権移行期の激しい権力闘争と経済成長の減速

概況

2012年の中国は,中国共産党第18回全国代表大会(第18回党大会)を節目とする政権移行期を迎えて,人事をめぐる激しい権力闘争が繰り広げられた。

国内政治は,第18回党大会で新指導部の中央政治局常務委員会委員(常務委員)には習近平,李克強ら7人が選出された。中央軍事委員会主席からは胡錦濤が退き,習近平が就任するという異例の人事となった。中国国内には汚職腐敗問題,社会格差,集団抗議行動の頻発など,取り組むべき社会問題は依然として山積している。

国内経済は,前年末から続く外需の低迷と国内投資・消費の減速のため,7.8%の成長にとどまり,13年ぶりにGDP成長率が8%を下回った。工業部門では販売価格の低迷と在庫の増大,労働賃金の上昇を受け,第3四半期まで厳しい経営状況が続いたが,地方政府による大規模な公共投資の推進と外需の回復によって,第4四半期には景気の上向き傾向もみられた。その一方で,中国の欧米向け貿易黒字の増大を背景に,中国製の通信機器や太陽電池,中国産のレアアースなどをめぐって欧米との経済摩擦が続発し,中国企業の経営にも影を落としはじめている。

対外関係は,国連安保理において対シリア非難決議にロシアとともに拒否権を行使して,独自の立場を貫いた。また,領有権問題をめぐる周辺諸国との摩擦は南シナ海にとどまらず,尖閣諸島にも及んだ。とくに日本が尖閣諸島の国有化を宣言した後,中国国内各地で反日デモが続発して日中関係が極めて悪化した。

国内政治

全人代の政策調整と軍事力の拡大

3月の第11期全国人民代表大会(全人代)第5回会議の温家宝総理の政府活動報告では,2012年の国内総生産(GDP)の成長率の目標値は従来の8%から7.5%へと引き下げられた。その一方で,温家宝総理は全人代閉会後の記者会見で所得格差解消の必要性について言及し,最低賃金水準の引き上げや,国有企業や国有金融企業幹部の高所得者の収入を抑制して,中所得者の割合を引き上げる方針も示した。

中国では近年,一部の富裕層と大多数を占める低所得層との間の深刻な経済格差が大きな政治問題となりつつあり,現状では中国政府が目標として掲げる「小康社会」(経済的に多少ゆとりのある社会)や「和諧社会」(調和の取れた社会)の実現が困難な状況にある。実際,2012年12月には西南財経大学中国家庭金融調査研究センターが,全国25省(直轄市,自治区)の家計調査(8438世帯)に基づき,2010年の世帯所得ジニ係数は0.61であることを発表し,大きな注目を集めた。ジニ係数とは,社会における所得分配の不平等度を測る指標で,0.5を超えると慢性的に暴動が発生しやすい危険水域の状態になると考えられている。そのため,0.61という非常に高いジニ係数の値に対しては,中国政府も危機感を募らせている。なお,11月の第18回党大会では,2020年までにGDPと国民1人当たりの所得を2010年の2倍にするという「所得倍増計画」も打ち出された。

また,全人代を通じて明らかにされた2012年度の国防予算は,前年実績比11.2%増の約6702億7400万元(約8兆7000億円)に上ることになった。これは2年連続の2桁の伸びとなった。2012年の1年間で中国は軍事開発を通じて国威を発揚する場面が際立った。たとえば,9月には初の空母「遼寧艦」が就航するとともに,10月には小型の次世代ステルス戦闘機「殲31」の試験飛行や,11月にはステルス戦闘機「殲15」の空母への着艦訓練に成功を収めた。これらは周辺諸国の間で「中国脅威論」を高める一因となっている。しかし,全人代の李肇星報道官は「中国は平和的発展の道を確固として歩み,防御的な国防政策を実施しており,限られた軍事力は国の主権,安全,領土保全のためのものであり,他国の脅威とは全くならない」として,国防費増額の正当性を強調するとともに,「中国脅威論」を払拭しようとした。

遅れた第18回党大会の開幕

2012年の中国は,秋の党大会における新指導部の誕生を前に,人事をめぐる激しい権力闘争が水面下で繰り広げられた。第18回党大会を間近に控えて人事は混迷を極め,9月に入っても日程が確定せず,前回に比べて1カ月余り遅い11月の開催となった。このことは,直前まで人事をめぐる権力闘争が繰り広げられていたことを意味する。11月8日,第18回党大会の開幕式の壇上に胡錦濤総書記とともに登場したのが江沢民前総書記であった。香港系メディアを通じて死亡説が流れたこともあった86歳の江は公の場で健在ぶりを示した。また,それは長老の江沢民が第18回党大会の新指導部人事に対して少なからず影響力を及ぼしたことをも物語っていた。

胡錦濤総書記は党大会開幕式で政治報告を行い,大会主題として「中国の特色ある社会主義の偉大な旗印を高く掲げ,鄧小平理論,『三つの代表』の重要な思想,『科学的発展観』を導きとして,思想を解放し,改革開放を進め,力を結集し,難関の突破にしっかりと取り組んだうえ,確固として中国の社会主義の道に沿って前進し,小康社会の全面的な実現に向けて戦っていく」ことを掲げた。とりわけ,中国の歴代指導者が掲げてきた「中国の特色ある社会主義」の功績が称えられることによって,中国共産党統治の正当性が強調された。また,鄧小平理論と「三つの代表」の重要な思想とともに,並列して「科学的発展観」が掲げられたことは,それが党の活動方針として格上げされたことを意味する。「科学的発展観」とは,胡錦濤が従来から掲げてきた政治理念であり,従来の改革開放や市場経済化による高度経済成長によって生じてきた歪みを是正して,持続可能な経済発展へと導き,「小康社会」や「和諧社会」の実現を目指すことを意味する。

薄熙来の失脚事件

第18回党大会に先立って起こった大物政治家の失脚劇が国内外を震撼させた。それは,党大会で党中央政治局常務委員入りが有力視されてきた中央政治局委員で重慶市党委員会書記の薄熙来の失脚事件であった。薄熙来は「太子党」(中国共産党の高級幹部の子弟)の豪腕政治家として知られ,大連市党委員会書記を経て,重慶市党委書記時代には「唱紅打黒」(革命歌の歌唱とマフィア取り締まり)の活動や,低所得者向け住宅の建設などで大衆の支持を集めてきた。事件の発端は,2月6日,薄の腹心で重慶市副市長の王立軍が在成都アメリカ総領事館へ亡命したことであった。だが,習近平国家副主席の訪米を間近に控えたアメリカ政府は亡命受け入れを拒否した。国家安全部に連行された王立軍の供述からは,薄熙来の妻である谷開来が直接関与したイギリス人投資家殺害事件をはじめとして,薄が関与した疑いの強い盗聴,不当逮捕,賄賂,女性問題などの職権を乱用したスキャンダルが次々と明るみに出た。これを問題視した党中央は,3月15日に薄熙来を同市党委書記から解任するとともに,4月10日には重大な規律違反容疑によって中央政治局委員,中央委員の職務を停止して,中央規律検査委員会が立件調査することを決定した。9月28日にはもっとも重い処分の党籍剥奪が下され,公職からも完全に追放された。

薄熙来は,強引な政治的手法が,胡錦濤から警戒されていたことに加えて,江沢民の信望が厚かったことから,失脚事件を胡錦濤の「共産主義青年団」(共青団)派と江沢民の「上海閥」,あるいは薄と思想的に近い一部の左派勢力との権力闘争の文脈で解釈する見方もある。いずれにせよ,党の要職にある政治家が権力を思いのままに操り,親族ぐるみで莫大な財産を築き上げて国内外で蓄財を重ね,権力の頂点の一歩手前で失脚したという劇的な事件であった。それは極端な例とはいえ,薄の手法は高官の腐敗体質そのものを体現しているようにもみえる。

汚職腐敗問題をめぐる党内の綱紀粛正

党大会報告では,党幹部や官僚の汚職腐敗問題にも焦点が当てられた。政治体制改革に関しては「いかなる組織,または個人も憲法ならびに法律を超える特権を持ってはならないし,自らの言葉を法に変えたり,権力を持って法に圧力を加えたり,私情によって法を曲げたりすることは絶対に許されない」として,公職者の権力乱用に警告を発した。汚職腐敗対策に関しては「厳しく自らを律するだけでなく,その親族と側近に対する教育と制約を強めなければならず,特権を振り回すことは決して許されない」として,党幹部や官僚の親族の汚職腐敗も許されないことも強調された。これらは,前述の大物政治家の失脚事件をはじめとして,党幹部や官僚の汚職腐敗問題が最近よりいっそう深刻化していることから,党内の綱紀粛正を図る狙いがあるとみられる。

第18回党大会閉幕後の11月15日,中国共産党第18期中央委第1回全体会議(第18期1中全会)において,新総書記に就任した習近平は「一部の党幹部のなかで起きている汚職腐敗,大衆からの乖離,形式主義,官僚主義などの問題は必ずや大きな力をかけて解決しなければならない」として汚職腐敗問題への対策強化の必要性を改めて強調した。中国政府の発表によれば,2012年に汚職腐敗などの規律違反や違法行為によって処分を受けた党幹部や官僚は,前年比12.5%増の16万18人に上る。また,不正蓄財の処分で2012年に国が取り戻した金額は78億3000万元(約1100億円)となった。これらの数字からも,党末端組織から中央政府まで汚職腐敗が蔓延していることがうかがえる。また,最近では同問題に対する一般民衆の視線が厳しくなっており,党幹部や官僚による不正がインターネットの投稿を通じて暴露されて検挙に至るという動きが急増している。このような最近の状況からは,汚職腐敗問題を放置すれば,民衆の不満が噴出して中国共産党政府の存亡問題にも発展しかねない状況になりつつあることがうかがえる。今後,新政権が汚職腐敗問題にどこまで真剣に取り組むことができるかが注目されるが,自らの身体にメスを入れるような大胆な措置をとるのは困難であろう。

第18回党大会後に判明した新指導部人事

第18期1中全会では新指導部の人事が発表され,中央政治局常務委員には習近平,李克強,張徳江,兪正声,劉雲山,王岐山,張高麗の7人が選出された。序列1位の習近平,2位の李克強を除く5人は,年齢規定によれば今期5年限りで引退する予定である。習近平は「太子党」の出身で,李克強は胡錦濤の「共青団」派の出身である。張徳江,兪正声,劉雲山,張高麗は,江沢民の「上海閥」の出身であることから,中央政治局常務委員人事をめぐり長老の江沢民が強い影響力を発揮したことを物語っている。また,胡錦濤の腹心である李源潮(政治局委員に留任)と令計画(中央弁公室主任を辞任)は常務委員の座を逃した。

中央政治局委員には,上述の常務委員の7人に加えて,馬凱,王滬寧,劉延東,劉奇葆,許其亮,孫春蘭,孫政才,李建国,李源潮,汪洋,張春賢,笵長龍,孟建柱,趙楽際,胡春華,栗戦書,郭金龍,韓正の18人が選出された。このうちの胡錦濤人脈は,劉延東,劉奇葆,李源潮,胡春華,郭金龍であり,江沢民人脈は張春賢,孟建柱,栗戦書,韓正である。また,そのうちの劉奇葆,李源潮,胡春華,さらには張春賢,栗戦書,韓正の6人が年齢規定だけでいえば,5年後の常務委員昇格レースに参入する資格を有しており,胡と江の勢力は同数で拮抗している。

もっとも注目を集めた中央軍事委員会主席のポストからは胡錦濤が退き,新たに習近平が就任した。江沢民が総書記退任後に中央軍事委員会主席に留任して,胡錦濤が総書記就任の後に同主席就任までに2年間を要した前例からすれば,異例の人事となった。胡錦濤がすべてのポストから身を引いた理由には諸説あるが,政権移行期の渦中にあって,元来,政治的基盤が強固ではない胡錦濤が江沢民との権力闘争に敗北したという見方が強まる一方,胡錦濤が指導者交代後の「院政」の慣習に終止符を打つという条件の下で,江沢民の影響力を排除する代わりに自らも中央軍事委員会主席の職を辞したという見方も有力である。また,胡錦濤の権力に執着しない姿勢を称賛する声があがる一方で,指導部のポストからは退いたものの,共青団派の次期常務委員昇格を見据えて,中央政治局や軍部の各要職に側近を配置して影響力を残したといえよう。

社会の不安定要因に対する国内の治安維持強化

中国国内における民衆の集団抗議行動(群体性事件)は,インターネットの普及という要因も加わって,この10年で4倍にも増加している。その原因は土地収用問題をはじめとして,警察・軍・城管(都市部の治安管理人)とのトラブル,労使問題,新疆ウイグル自治区やチベット自治区の民族問題など多岐にわたる。これに関連して,国内の治安を維持するための2012年度の予算は約7017億元(約8兆9000億円)に上り,公式発表の国防予算約6702億元をも上回る。

3月14日,全人代では「中華人民共和国刑事訴訟法」が15年ぶりに改正された。同改正法では,拘束を受けた容疑者の自白強要の禁止や弁護士との接見の許可などが定められ,国際社会の批判の目を意識して,人権状況の改善を内外に示す内容となっている。だが,例外として「国家の安全保障やテロ,重大な汚職」に関わる容疑者に対して,公安当局の判断による拘束を合法的に認めるという新たな規定が設けられた。同規定は,従来,秘密裏に行われてきた反体制派や人権活動家の拘束を合法化するものとして,強い懸念の声もあがっている。

中国当局の反体制派や人権活動家に対する弾圧は依然として非常に厳しく,中国版ジャスミン革命の動向が注目を集めた2011年以降も取り締まりが強化された。2010年にノーベル平和賞を受賞した民主活動家の劉暁波は「国家政権転覆騒動罪」で服役中であるうえに,妻の劉霞も依然として自宅軟禁状態に置かれている。また,2012年5月には米中当局間の調整が難航した末,人権活動家の陳光誠がアメリカに亡命した。中国では,2012年1月からわずか3カ月の間に中国全土で約1万人,北京だけでも7000~8000人余りが秘密裏に収監され,大部分は家族にさえ通知されていないといわれている(『亜洲週刊』2012年第12期)。第18回党大会の直前には,複数の反体制派や人権活動家が,中国当局によって自宅軟禁や一時追放などの行動制限を受け,北京五輪当時の3倍にあたる140万人の市民が治安維持活動のボランティアとして動員された。また,党大会前後の期間にはインターネットの検閲がよりいっそう強化された。

(松本)

経済

13年ぶりに8%を下回ったGDP実質成長率

2012年の中国経済は,国内総生産51兆9322億元(名目,約657兆円),前年比7.8%(実質)の伸びとなった。四半期別のGDP実質成長率でみると,第1四半期の8.1%から第2・第3四半期にはそれぞれ7.6%,7.4%と低迷したが,第4四半期には7.9%に回復してきた。その結果,2012年3月の全人代で掲げられた目標(7.5%)を達成したものの,13年ぶりに8%を下回る成長にとどまった。また,2012年は不動産価格の抑制政策が継続されたことに加え,豚肉を含む食料品価格も安定化したことなどから,消費者物価指数は前年を2.8ポイント下回る2.6%の伸びとなり,食料品物価指数は7.0ポイント減の4.8%,工業生産者出荷価格指数は7.6ポイント減の-1.7%となるなど,インフレ傾向は沈静化してきている。

2010年に発生した欧州ソブリン危機による欧州経済の低迷は,2012年も引き続き中国経済に大きな影響を与えた。輸出・輸入額では3月以降の月別増加率(前年同月比)が1桁台にとどまる月が多く,10カ月中,輸出は6カ月,輸入は9カ月が10%を下回った。そのため,2012年の輸出入総額は3兆8668億ドル(前年比6.2%増),輸出額は2兆489億ドル(同7.9%増),輸入額は1兆8178億ドル(同4.3%増)で,20%以上の伸びを示した前年の輸出・輸入額の増加率を大幅に下回り,全人代の目標(10%増)を達成することはできなかった。

景気の後押しをするため,中央銀行である中国人民銀行(人民銀行)は2月と5月に人民元預金準備率を各0.5ポイント引き下げ,6月と7月には人民元貸出基準金利(1年物)をそれぞれ0.25ポイント,0.31ポイント引き下げるなど,金融緩和を進めてきた。その結果,マネーサプライ(M2)の伸びは前年を0.2ポイント上回る13.8%となったが,金融機関人民元貸出額残高の伸びは前年を0.8ポイント下回る15.0%にとどまった。

国際収支の構造変化と対外直接投資の展開

先進国経済の低迷と中国経済の高度化のなか,中国の貿易・投資にも着実な変化がみられる。国家外匯管理局(外国為替管理局)の報告書(2012年9月12日)によると,2012年上半期の中国の経常収支黒字は前年同期比12%減の772億ドル,資本・金融収支は同92%減の149億ドルとなった。経常収支のうち,貿易収支は前年同期比29%増の1128億ドルの黒字であったのに対し,サービス貿易収支赤字は前年同期比104%増の403億ドルであった。したがって,サービス貿易収支赤字の増大が経常収支の黒字を押し下げていたことがわかる。

この経常収支と資本・金融収支の黒字額の減少を受け,上半期の準備資産額の純増は前年同期比78.0%減の629億ドルとなり,うち外貨準備の純増も636億ドルで,前年同期と比較して77.3%の大幅減となった。そのため,6月末までの外貨準備高は前年同期と比べ,わずか1.3%増の3兆2400億ドルにとどまり,2012年末の外貨準備高も前年比4.1%増の3兆3116億ドルとなった。したがって,経常収支黒字の増大による外貨準備の積み上げと流動性への対応という,2007年頃から続いてきたマクロ経済運営の構図にも明確な変化が起こってきたといえる。

このことは,香港の人民元NDF(Non-Deliverable Forward)レートの動向にも示されている。NDFレートは,1~2月まではおおむね大陸の人民元レートを上回っていた。しかし3月半ばから大陸の人民元レートを下回りはじめ,12月末までその傾向が続いた。したがって,人民元に対する切り上げ圧力は弱まっていると考えられる。実際,2012年の年平均の人民元対ドルレートは1ドル=6.312元で,前年と比べて0.2%の減価となった。

直接投資でも,海外からの中国向け投資が減少する一方で,中国企業による企業買収を通じた「走出去」(対外進出)や,サービス業や娯楽産業,不動産開発など幅広い分野での投資が進められている。商務部の発表(2013年1月16日)によると,2012年の対中直接投資(銀行,証券,保険分野を含まず)は,実行ベースで前年比3.7%減となる1117億ドルにとどまり,対中投資ブームにも陰りがみえはじめている。その一方で,中国企業による対外直接投資は前年比28.6%増の772億ドルで,過去最高額となった。地域別ではロシア向け投資が前年比117.8%増と増加率が高く,アメリカ向け,ASEAN向け,日本向けもそれぞれ同66.4%,同52.0%,同47.8%と高い伸びを示している。また,清科研究センター(Zero2IPO Research Center)によると,2012年の中国企業による海外でのM&A総額は,前年比6.1%増の298億ドルで,過去最高額を更新した。

実物経済――内陸部の投資活性化

2011年末から2012年にかけて,それまでの経済過熱は沈静化し,2012年の一定規模以上(年間売上高500万元以上)の工業企業の付加価値生産額(「工業増加値」)の伸び(実質)は10.0%となり,前年を3.9ポイント下回った。四半期別にみると,工業付加価値生産額の実質成長率は,第1四半期の11.6%から,第2四半期と第3四半期はそれぞれ9.5%,9.1%と伸び悩んでいたが,第4四半期には10.0%と多少回復した。

このような傾向は景況指標である「製造業購買担当者景気指数」(PMI)にも示されている(図1)。中国物流購入連合会と国家統計局が公表するPMIによると,3月と4月の総合指数はそれぞれ53.1と53.3で,基準値である50を上回っていた。しかし,新規受注の指数が5月から50を下回りはじめたことを受け,総合指数も8~9月には49.2,49.8となり,景気減速が明らかとなってきた。だが10月以降は総合指標と新規受注の指数ともに50を上回るなど,景気の回復傾向もみられる。

図1  製造業購買担当者景気指数(PMI)の推移

(出所) 国家統計局HPおよび『中国経済景気月報』(各月版)より筆者作成。

他方,工業企業の実質生産額の増加率を地域別にみると,東部地区が8.8%であるのに対して,中部地区と西部地区はそれぞれ11.3%と12.6%となった。これは,沿海部の輸出企業の低迷と賃金水準の急速な上昇によって,内陸部の工業生産が活性化してきたことを示唆している。工業のなかで,とくに厳しい状況に直面したのは鉄鋼業であった。国内の不動産市場の低迷と,鉄鋼業の生産設備増強に起因する供給過剰のため,鋼材価格は低迷し,鉄鋼関連の生産も伸び悩んだ。銑鉄,粗鋼,鋼材の生産量増加率はそれぞれ3.7%,3.1%,7.7%で,前年の増加率(8.4%,8.9%,12.3%)を大きく下回る結果となった。また,中国鋼鉄工業協会の発表によると,1~9月までの鉄鋼企業(大中型)の営業利益は前年同期の836億9200万元の黒字から55億2800万元の赤字に転落した。しかしながら,9月以降は鉄鉱石価格の下落によるコスト低下と鉄鋼需要の回復によって,鉄鋼企業の業績は回復傾向を示し,2012年全体としての営業利益は15億8100万元の黒字となった。もっともこれは前年(875億3000万元)を大幅に下回っている。

次に,固定資産投資をみていくと,投資額は前年比20.6%増の36兆4835億元であったが,前年の成長率を3.4ポイント下回った。地区別の投資増加率は,東部地区が17.8%であるのに対し,中部・西部地区はそれぞれ25.8%,24.2%を記録するなど,固定資産投資面でも内陸部が活性化していることがわかる。消費面では,社会消費財小売額は20兆7167億元で,名目ベースで前年比14.3%増(実質増加率は12.1%)であったが,前年と比べると2.8ポイントの低下となった。

農業生産は気候条件に恵まれ,大規模な干ばつや水害は発生しなかったことから,全般的に豊作となり,食料(穀物,イモ類,豆類)生産量は前年比3.2%増の5億8957万トンで,9年連続の食料増産を実現した。食料増産にもかかわらず,飼料用・工業加工用食料の需要増大と海外市場の穀物価格上昇の影響を受け,中国国内の食料価格全般が軒並み上昇をみせ,とくに小麦と大豆価格の上昇は顕著であった。そのため,海外からの穀物輸入は大幅に増加し,穀物全体の輸入量は前年比157%増の1398万トンに達し,そのうち小麦,コメ,トウモロコシの輸入量はそれぞれ370万トン(同194%増),237万トン(同296%増),521万トン(同197%増)となった。

また,肉類の生産量は前年比5.4%増の8221万トンで,畜産物の輸入額も前年比11.2%増の149億ドルに達した。肉類のなかで生産量がもっとも多い豚肉について,2012年の生産量は前年比5.6%増であったが,前年と異なり,豚肉価格の変動は相対的に小さかった。商務部のデータによると,豚肉価格は2011年末から価格下落が続き,豚肉の卸売価格は年初の1キログラム当たり23.86元から7~8月には同20元を下回ったが,11月頃から上昇に転じ,12月末には同22.11元にまで回復している。

頻発する労働争議と需給逼迫による賃金上昇

労働面では労働争議・暴動事件が相次ぐとともに,労働需給逼迫による賃金上昇も続いている。

パナソニックのデバイス部門の生産拠点として再編された広東省深圳市の三洋電機(蛇口)有限公司では1月14日,パナソニック名義の社員証への切り替えを行う際,従業員が「会社側は慣例に従って補償金を支払うべき」と主張し,3000人規模のストライキに発展したが,15日には終息した。また,第一汽車集団と雲南紅塔集団の合弁会社である一汽通用(GM)紅塔汽車公司でも5月7日,会社の待遇に不満をもつ約3000人の従業員が賃金の引き上げや福利厚生の改善を求め,2日間にわたるストライキを行った(『広州日報』2012年1月17日,『日本経済新聞』2012年1月20日)。

一方,富士康科技集団(フォックスコン)では,6月には成都工場の宿舎で従業員による暴動が起こり,太原工場では9月に従業員と保安員とのいざこざから,従業員2000人前後の暴動に発展し,生産ラインが1日停止する事態となった。さらに,フォックスコンの鄭州工場では10月5日,品質検査でのトラブルを契機に,長時間にわたる残業や少ない休暇日数など過酷な労働条件に不満をもつ従業員が3000~4000人規模のストライキを起こす事態となった(『21世紀経済報道』2012年9月24日,『経済観察報』2012年10月16日,『日本経済新聞』2012年10月7日)。

このような労働問題に対処するため,広東省深圳市では従業員1000人以上の163社の企業を対象に,労働組合(「工会」)の代表者を従業員による民主選挙で選出することを義務づけるなど,労働紛争解決のために民主的な労働組合を利用するといった改革を進めている(『中国新聞周刊』第556期)。また,中央レベルでは,派遣労働者の乱用抑制と「同一労働・同一賃金」に基づく労働者の権利保護の強化を主たる目的とした労働契約法の修正案が,12月28日に全人代常務委員会で可決された。7月に公表された労働契約法の草案に対しては,派遣労働者を多く雇用する中央・地方の大型国有企業などからの反対で年内の成立が危ぶまれていたが(『経済観察報』2012年10月27日),年内の可決に至った。

前述の内陸経済の活性化を受け,地元で就業する「農民工」(農村出身の非農業労働者)が相対的に増えている。2012年の「外出農民工数」(地元の郷鎮外で6カ月以上就業する農民工)は前年比3.0%増の1億6336万人であるのに対し,地元の非農業部門に就業する農村労働者(「本地農民工」)は同5.4%増の9925万人となった。この農村部からの労働供給の頭打ち傾向は,都市部の労働需給に影響を与えている。中国人力資源市場信息監測センターの調査によると,都市部の有効求人倍率(図2)は2012年も1倍を上回る水準を維持し,とりわけ商業・サービス業や製造業といった分野で労働需給の逼迫が目立つ。

図2  都市部の有効求人倍率の推移

(出所) 中国人力資源市場信息監測センター(http://www.chinajob.gov.cn/)の調査データより筆者作成。

そのため,都市就業者の平均賃金(2012年第1四半期~第3四半期)は,前年同期の上昇率を2.9ポイント下回るものの,前年比で12.0%の上昇となった。2012年の外出農民工の平均月収は前年の増加率(21.2%)を下回ったが,前年比で11.8%の上昇となった。また,地方政府による法定最低賃金の引き上げも相次いでいる。人力資源・社会保障部の記者会見(2013年1月25日)では,2012年には25の省(直轄市,自治区)で最低賃金水準が引き上げられ,平均増加率は20.2%であることが示された。

地方投資の活性化と資金調達プラットフォーム問題

2008年に実施された4兆元の公共投資によって,2009年の中国経済はV字回復を実現する一方で,大規模な設備投資による過剰在庫の発生や融資の焦げ付き,国有企業傘下の資金調達プラットフォーム(「融資平台」)への融資増大による不動産価格の高騰,食料品を中心とした消費者物価指数の上昇など,負の遺産が数多く残された。そのため,中央政府は3月の全人代において「積極的な財政政策」を掲げつつも,実際には大規模な公共投資に消極的であった。

また中央政府は前年に引き続き,地方政府が実質的に運営するプラットフォームに対して管理強化を図っている。2月には,国務院国有資産監督管理委員会が「地方国有資産監督管理委員会が管理・監督する資金調達プラットフォーム公司のリスク防止をよりいっそう強化することに関する通知」,3月には中国銀行業監督管理委員会が「2012年地方資金調達プラットフォーム向け融資リスクの監督・管理を強化することに関する指導意見」を公表し,プラットフォームのリスク状況の把握を強化するとともに,プラットフォームに対する既存融資の信用枠の厳守・削減と新規融資の抑制を明確にしてきた。

しかしながら,第2四半期からのマクロ経済の低迷を受け,地方政府は7月頃から,インフラ建設を中心とした大型プロジェクトを次々とスタートさせている。四川省では投資強化による内需拡大が提唱され,計2万6184件のプロジェクトに対し,2013年8月末までに3兆6700億元の投資を行うことが決定された。その他,陝西省,貴州省,黒龍江省,福建省,山西省,広東省,浙江省,重慶市,天津市など省レベルに加え,寧波市,南京市,長沙市,広州市,長春市などの大都市でも,インフラ建設や産業振興などを目的とした大規模な投資プロジェクトが進められ,その総額は10兆元を上回るという(『新世紀周刊』2012年第35期,ウェブサイト「和訊網」[特集:地方投資急行軍]2013年3月22日アクセス)。

銀行による資金調達プラットフォームへの新規融資の規制が強化されるなか,地方政府は大規模投資向けの資金を賄うため,信託や債券を通じた資金調達を急速に推し進めている。そのなかで,とくに重要性を高めているのが「城投債」(都市投資債券)と呼ばれる企業債である。城投債の主要な発行元は資金調達プラットフォームで,集められた資金は地方のインフラ建設や公益性の高いプロジェクトなどに利用されている。中央国債登記結算有限公司の調査報告によると,銀行間債券市場で発行された城投債の発行額は,2011年の2562億元から2012年には6368億元(前年比148%増)へと大幅に増加した。

そして,この「城投債」の需要者として,信託業が急速な拡大をみせている。2012年9月末の中国信託業協会の統計によると,運用資金残高5兆9637億元のうち,インフラ産業向けの運用残高は1兆3918億元で,前年同期に比べると4174億元の大幅増となった。このように,信託業を通じて個人投資家などから集められた資金がプラットフォームに流れる仕組みが強化されてきたのである。表1では,中国人民銀行が公表した「社会融資規模」(金融から実体経済へ供給される資金の総額)を示したが,2012年には社会融資規模に占める人民元建て貸出純増の割合が低下する一方,信託の組成による資金調達純増額と企業債の正味発行額の割合が顕著に上昇していることがわかる。

表1  社会融資規模の推移(単位:億元,%)

(出所) 中国人民銀行貨幣政策分析小組『中国貨幣政策執行報告』2012年第4四半期より筆者作成。

信託業の発展には,株式相場の低迷と不動産価格の下落の影響も大きい。2012年の株式相場は,景気沈静化が顕著になった6月頃から下落傾向が続き,11月には上海総合指数が4年ぶりに2000を下回った。また,2011年1月から実施された不動産に関する価格抑制政策が2012年も継続されたため,不動産価格にも下落傾向がみられた。全国70大中都市における新築物件の価格指数をみると,価格指数が前年同期を下回った都市数は増加していて,とりわけ5~9月に価格指数が下落した都市数は50を超えている。その結果,投資資金が信託業に流れてきたと考えられる。

ただし,城投債発行の急増を受け,地方政府が一般市民や政府部門,事業単位の職員から違法に資金を募り,プラットフォーム向けの金融商品を販売したり,地方政府がプラットフォームを優遇する形で出資や担保提供を行ったりする行為も,一部で広がり始めた。このような状況を受け,財政部,国家発展改革委員会,人民銀行,中国銀行業監督管理委員会は12月31日に連名で「地方政府による違法な融資行為を制止することに関する通知」を打ち出し,地方政府による違法な手段による資金調達の抑制を図る姿勢を示している。

金融改革――自由化・国際化に向けた取り組み

2012年は金融・為替の自由化や人民元の国際化に向け,中国政府から積極的な政策が打ち出された年であった。

1月6~7日に北京で開催された第4回全国金融工作会議では,資本取引の自由化や人民元為替相場の形成メカニズムの改善,地方政府による債務リスクの防止・解消などが提唱された。金融工作会議の終了後,周小川・人民銀行総裁は新華社のインタビューに対して,金利自由化の推進や為替相場の変動幅拡大といった方針を明確にした。さらに,中国人民銀行調査統計司課題組は,『財経』(第6期,2012年2月27日)のなかで,3段階(短期・中期・長期)による資本勘定の自由化案を提示している。

金融改革の具体的な施策としては,まず3月2日に人民銀行など6部門の連名で,輸出入経営資格を保有するすべての企業に対して,人民元建て輸出貨物貿易決済の実施を認めることが発表された。ただしリスクの高い企業に対しては,決済手続き時に審査を強化するなど一定の制約も設けている。さらに人民銀行は4月14日,外国為替市場での人民元・ドル取引の価格変動幅を現行の「±0.5%」から「±1.0%」に拡大することを決定し,4月16日から実施した。人民元の価格変動幅が拡大されたのは2007年5月以来で,ほぼ5年ぶりのこととなる。

5月3~4日に開催された米中戦略・経済対話では,中国の輸出企業が政府系金融機関から低利の融資を受けている状況を見直すほか,中国での証券会社および商品・金融先物会社における外資の出資上限を33%から49%に引き上げることが決定された。その一方,ガイトナー米財務長官は前月に決定された人民元レートの変動幅拡大を評価して,人民元レートについては注文を付けなかった(『朝日新聞』2012年5月5日)。

他方,金利自由化に向けた試みも着実に行われている。中国経済の景気低迷を受け,人民銀行は6月8日から1年物預金基準金利を0.25ポイント(3.50%→3.25%),1年物貸出基準金利を0.25ポイント(6.56%→6.31%)引き下げることを決定した。その際,金融機関の預金金利の変動上限を基準金利の1.1倍とすること,貸出金利の変動下限を基準金利の0.9倍から0.8倍とすることを決めた。さらに7月6日から再び人民元預金貸出基準金利の引き下げを行い,1年物預金基準金利を0.25ポイント(3.25%→3.00%),1年物貸出基準金利を0.31ポイント(6.31%→6.00%)引き下げることを決定し,貸出金利の変動下限も0.7倍まで認めることとなった。

そして,海外からの証券投資と資本移動の国際化を促進するため,投資枠の大幅な緩和も実施された。中国証券監督管理委員会(証監会)は4月3日,適格国外機関投資家(QFII)の投資枠を300億ドルから800億ドル,人民元適格国外機関投資家(RQFII)の投資枠を200億元から700億元に拡大することを発表した。さらに11月14日にはRQFIIの投資枠を700億ドルから2700億ドルへと大幅に引き上げることを決めた。国家外匯管理局の統計(2012年末)によると,QFIIとして認定された企業数は169社,投資枠合計は374億4300ドル,RQFIIとして認定された投資枠合計は670億元(基金系企業が570億元,証券系企業が100億元)で,12月に新たに認可された投資枠は190億元に達している(『金融投資報』2013年1月15日)。

また,金融自由化を推し進める窓口として,金融関連の特区新設が認可された。3月28日の国務院常務会議は,「浙江省温州市金融総合改革試験区域に関する総合プラン」を承認し,温州市金融総合改革特区の設置を決定した。そして11月23日には,「総合プラン」をより具体化させた「浙江省温州市金融総合改革試験区域の実施方案」を温州市政府が公表した。ただし「実施方案」には,期待されていた金利自由化や民間出資による郷村銀行の設立について,明確な記述がなく,「実施プラン」の公表自体も度重ねて延期されたことから,温州市金融総合改革特区の行方を危ぶむ論調も広がっている(『財経』2012年第30期,『21世紀経済報道』2012年11月24日)。

他方,広東省深圳市でも新たな特区設立が決まった。国家発展改革委員会の張暁強副主任は6月29日,深圳市の前海地区に金融を中心とする「サービス業特区」の新設を国務院が承認したことを発表した。前海特区では,海外人民元資金の還流ルートの拡大や,香港の人民元オフショア業務の発展など,人民元のクロスボーダー取引を試験的に実施することが提起された。そして12月27日,人民銀行は「前海クロスボーダー人民元融資管理暫定規定」を定め,前海特区の企業に対する香港の金融機関による人民元融資を正式に認可した。

欧米との経済摩擦と中国企業の経営

中国の欧米向けの貿易黒字の増大とともに,欧米と中国の間で経済摩擦が広がり,中国企業の経営にも大きな影響をもたらしている。欧州連合(EU)は5月末,デフフト欧州委員(通商担当)が記者会見で,中国製ハイテク製品の貿易に問題があるとの認識を示し,中国政府に対応を迫った。同委員は問題視する企業や内容を明言しなかったが,欧州メディアは中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ),中興通訊(ZTE)のダンピングや中国政府の不当な補助金が焦点だと報じた。それに対して中国商務部の沈丹陽報道官は記者会見で,EUが問題視する中国政府から2社への多額の補助金を真っ向から否定し,EUが世界貿易機関(WTO)提訴などに踏み切る場合には,何らかの対抗措置をとる構えをみせた(『日本経済新聞』2012年7月4日)。

また,アメリカ下院情報特別委員会は10月8日,両社の中国共産党や人民解放軍との関係を問題視し,安全保障上の脅威だとして,両社の製品をアメリカ政府機関の通信システムから排除することなどを求める調査報告書を発表した。同委員会は,華為技術と中興通訊のインフラ製品を導入しないようアメリカの民間部門と政府部門に提案し,アメリカにおける華為技術と中興通訊による企業買収を阻止するよう,アメリカの対米外国投資委員会(CFIUS)に提案している。それに対して,中国商務部の沈丹陽報道官は10月9日,「調査報告書は主観的憶測に依拠したもので,国の安全保障を理由としたいわれのない非難である」と強い反対を表明した。

他方,中国建機大手の三一集団は10月18日,アメリカでの風力発電計画が不当な中止命令を受けたとして,オバマ大統領を提訴したと発表した。オバマ大統領は9月28日,三一集団の関連会社であるロールズ・コーポレーションに対して,国家安全保障上の理由から,オレゴン州で実施予定の同社の風力発電プロジェクトを中止する命令を下していた。三一集団の向文波・総裁は10月18日の記者会見で,「アメリカの安全を損なう行為はしておらず,大統領令はわれわれの財産を不当に奪うもので,受け入れることはできない」と主張し,対立する姿勢を明確にしている。

さらに,レアアース(希土類)に関する中国の輸出規制に関しても,経済摩擦が起こっている。日本,アメリカ,EUは3月13日,中国によるレアアースを含む資源輸出規制について,WTOに対して仲裁を要請した。4月25~26日には当事者間での協議が開催されたが見解は一致せず,中国の対応が不十分として,6月27日,日本・アメリカ・EUはWTOに紛争解決小委員会(パネル)の設置を要請し,7月23日に小委員会が設置された。提訴の対象はレアアースのほか,タングステン,モリブデンの3品目で,WTOは原則半年以内に報告書を提出することになった。それに対して中国商務部は8月22日,レアアースの輸出枠を前年比2.7%増の3万996トンに設定したことを明らかにした。中国政府は近年,レアアースの輸出枠を絞り込んでいたが,前年を上回るのは3年ぶりとなる。レアアースに関するWTO提訴を踏まえ,不当な輸出規制との国際批判をかわす狙いとみられる。

他方,太陽電池と多結晶シリコンをめぐる中国とアメリカ・EUとの間の貿易摩擦も深刻化している。2011年にアメリカが輸入した中国製太陽電池の総額は31億ドルで,2010年の約2倍に上ったことがその背景にある。アメリカ商務省は3月20日,中国製の太陽電池セルとモジュールの輸出に対するダンピング問題で,補助金相殺関税に関する予備裁定を発表した。さらにアメリカ商務省は5月17日に,多結晶シリコン太陽電池を対象にアンチダンピング関税を課す仮決定を決め,11月8日にはアメリカ国際貿易委員会(ITC)がアンチダンピング関税と補助金相殺関税を課す最終決定を下した。補助金相殺関税は14.78~15.97%,アンチダンピング関税は18.32~249.96%に設定されている。この決定に対して,中国機電産品輸出入商会は同日,「中国太陽電池産業と太陽電池製品の対米輸出の現状を著しく歪めており,かつ世界のグリーンエネルギー産業の持続可能な発展と消費者の利益を著しく損ねる」として,強い反対を表明した。

さらに欧州委員会は9月6日,中国製の太陽電池およびモジュールに対してアンチダンピング調査を開始することを決定した。2011年の中国の太陽光発電製品の輸出額は358億ドルであるが,EU向け輸出はそのうちの約6割を占める。それに対して,中国商務部は11月1日,EUから輸入される多結晶シリコン製品に対してアンチダンピング調査を決定するなど,太陽電池をめぐる貿易摩擦はいっそうの高まりをみせている。

このような貿易摩擦に加え,EUにおける太陽光発電に対する政策見直しとギリシャの信用不安などによって太陽電池に対する需要は低迷してきた。そのため,民間企業を中心に急速な発展を続けてきた中国の多結晶シリコンメーカーと太陽電池メーカーは過剰供給による価格低下で,深刻な経営難に陥っている。2012年上半期には世界的な多結晶シリコンの生産過剰を受け,中国国内の5割以上の多結晶シリコンメーカーが生産停止の状況に追い込まれた(『第一財経日報』2013年1月4日)。江西賽維LDK太陽能高科技(LDKソーラー)は5月に全従業員の2割に相当する約5500人を削減し,尚徳電力(サンテックパワー)も9月,1500人の削減に踏み切り再建を目指してきた。LDKソーラーは10月21日に4億元の社債の償還期限を迎えることから,自主経営を断念し,発行済み株式のうち,自社が保有していた19.9%を地元(新余市)の国有資産管理会社と民営携帯電話会社が出資する江西恒瑞新能源に売却することを決めた。そしてサンテックパワーも2013年3月に5億7000万ドルの転換社債の償還期を迎え,2012年第3四半期には負債総額が35億8200万ドル(負債率81.8%)に達するため,地元の無錫市は転換社債の購入やサンテックパワーの国有化を提案するなど,協議を進めている(『南方都市報』2012年10月23日,『日本経済新聞』2012年10月31日,『21世紀経済報道』2013年1月15日)。

日中経済関係――反日デモの日系企業への影響

2012年の日中経済は政治動向に大きく揺さぶられた1年となった。日系企業は反日デモの標的となり,物理的な被害に加え,日本製品の不買運動や忌避感によって深刻な影響を被っている。

8月から中国全土に広がり始めた反日デモは,9月に入ると各地でいっそうの先鋭化をみせ,9月15日には日系スーパー・ジャスコ黄島店は大規模なデモによる破壊活動で,総額2億元(約25億円)に上る被害を受けた。そのため,柳条湖事件発生日である9月18日には,大規模デモを回避するため,自動車メーカーなどは一時操業停止を決めたり,臨時休業や自宅待機といった措置を講じた。

しかし9月19日になると,北京公安局が日本大使館前の反日デモを禁止するなど,各地で事態沈静化の兆しが出てきたことから,日系企業の工場では操業を再開する動きが広まり,小売各社も各地の店舗を相次ぎ通常営業に戻しはじめた。イオンは中国国内の総合スーパーとショッピングセンター36店のうち,19日は33店で営業した。セブン&アイ・ホールディングスは北京市と成都市のイトーヨーカ堂15店,セブン-イレブン約200店のすべての営業を19日午後までに再開した(『日本経済新聞』2012年9月18日,20日,23日)。

その後,消費関連の日系企業の売り上げは,スーパーや外食店を中心に,10~11月頃から回復傾向がみられた。イオンでは既存店の売上高について10月は前年同月比で2割減収であったが,11月はプラスに転じ,イトーヨーカ堂も既存店の3割減であった9月の売上高が,10月にはプラスに戻った。コンビニエンスストアも堅調で,セブン-イレブンの既存店の売り上げは11月から前年同月比でプラスとなり,ミニストップも既存店の売上高は9月には前年割れする一方で,10~11月には10%以上の伸びをみせている(『日本経済新聞』2012年12月13日)。

他方,反日デモの標的となった日系自動車メーカーでは,日系自動車に対する不買運動や買い控えが急速に広がったため,本格的な減産体制への移行を余儀なくされ,9月の自動車販売台数は軒並み大幅に減少した。トヨタ,日産,ホンダの中国における9月の自動車販売台数は各48.9%,35.3%,40.5%の大幅減となった。10月も日系自動車の販売不振が続き,トヨタ,日産,ホンダはそれぞれ前年同月比で44.1%,40.7%,53.5%のマイナスであったが,11月から販売台数のマイナス幅は減少傾向をみせ,11・12月の販売台数は前年同月比で,トヨタについて22.1%減と15.9%減,日産については29.8%減と24.0%減,ホンダについては29.2%減と19.2%減であった。なお,2012年の中国における自動車販売台数は,前年比4.3%増の1930万6400台であったが,日系メーカーの販売台数は,トヨタが前年比4.9%減の84万500台,日産は同5.3%減の118万1500台,ホンダは同3.1%減の59万8577台となるなど,いずれも通年で前年の販売台数を下回った。

反日デモは日中貿易にも影響を及ぼしている。中国海関総署の発表した貿易統計によると,日中間の輸出入合計額は前年比3.9%減の3295億ドルで,3年ぶりのマイナスとなった。中国から日本への輸出額は1516億ドル(前年比2.3%増),日本からの輸入額は1778億ドル(同8.6%減)で,反日デモが広がりはじめた8月以降,中国の日本からの月別輸入額は前年同月比で5カ月連続のマイナスとなった。とりわけ,機械類,自動車部品,鉄鋼の輸入額の落ち込みが大きい。

また,中国からの観光客数は,2011年の東日本大震災による大幅な減少から急速な回復をみせていた。しかし,尖閣諸島領有権をめぐる日中関係の悪化や反日デモの発生によって,日本への観光客は,国慶節を迎えた10月から再び前年を大きく割り込んだ。日本政府観光局(JNTO)のデータによると,10~12月の中国からの訪日外客数は前年同期比でそれぞれ-33.4%,-43.7%,-34.3%の大幅減となった。ただし通年では,過去最高であった2010年を1万7000人程度上回る143万人を記録した。

他方,日本円と人民元の直接取引が,6月1日午前,東京と上海の両外国為替市場で始まった。この直接取引は,2011年12月25日,野田佳彦総理(当時)が初訪中した際,温家宝総理との間で,「日中両国の金融市場の発展に向けた相互協力の強化」が合意されたことを受けたものである。また,日中首脳会談では,日本政府による中国国債購入についても合意に至り,2012年3月13日に安住淳財務相(当時)は,3月8日に中国当局が650億元(103億ドル相当)の購入枠を認可したと発表した。6月1日の東京市場では取引に参加する銀行が円・元の交換レートを提示し合い,それに基づいて取引が行われ,東京市場の初値は1元=12円33銭,上海市場では最初の取引が100円=8.1160元(1元=12円32銭)で成立した。直接取引は9月以降も東京市場では1日に100億円前後が取引され,日中摩擦の影響をほとんど受けていない(『日本経済新聞』2012年6月1日,10月20日)。

食品安全問題と食品メーカーの対応

2012年は粉ミルクへのメラミン混入事件(2008年)のような,健康への深刻な被害を引き起こす食品事件は発生しなかった。だが,中国人の生活水準の向上とともに,食品に対する基準値を超える添加物の混入や家畜に対する過剰な薬品の投入など,食の安心・安全をめぐる問題が社会的な注目を集めている。そのため,食品メーカーは生産管理や品質管理の向上はもとより,企業として社会的責任を認識したうえで,適切な対応に取り組むことがいっそう求められている。

11月19日,大手酒造メーカーである酒鬼酒公司が製造した白酒から,基準値を260%上回る,1キログラム当たり1.08ミリグラムの可塑剤DBP(フタル酸ジブチル)が検出されたことがメディアで大きく報道された。それに対して酒鬼酒公司は21日,今回の騒動に対して消費者や投資家に謝罪を表明する一方で,国際機関や中国の法律では酒類に含まれる可塑剤類の残留基準の定めはなく,同社製品は中国国内の食品安全基準を満たしていることを強調した。そして22日には,輸送・包装の各段階での厳しい検査を行うことや,可塑剤残留の原因究明に努めることも公表した。しかし,公司とメディアの主張する残留基準の食い違いや商品回収の有無,可塑剤摂取の健康への影響などの面で,酒鬼酒公司に対する消費者やメディアからの批判は収まらず,酒鬼酒公司の株価は一時,大幅に下落し,その影響は白酒メーカー全体に波及していった(『21世紀経済報道』2012年11月19日,『上海証券報』2012年11月23日,『新京報』2012年11月27日)。

また,中国国内のファストフード業界で最多の店舗数を誇るケンタッキー・フライド・チキン(KFC)も食の安心・安全をめぐって,消費者からの厳しい批判にさらされた。11月下旬,KFCに鶏肉を提供する粟海集団が「速生鶏」(過密飼育と抗生物質使用によって短期間で育成される鶏のこと)の育成をしていることをメディアが報じ,大きな注目を集めた。それに対してKFCは,鶏肉サプライヤーに対して厳しい食品管理を実施しており,粟海集団の食品安全記録にも問題がないと公表していた。

だが,KFCが上海市食品薬品検験所に依頼して実施していた鶏肉の自主検査で,大手サプライヤーである六和集団から供給された鶏肉サンプルについて,2010~2011年の19回のうちの8回で基準値を超える抗生物質が検出されたことが12月20日に明らかにされた。さらに,KFCが六和集団のサプライヤーとしての資格を剥奪したのは2012年8月で,これらの事実がそれまで一切公表されていなかったこともKFCに対する消費者の批判をいっそう高める結果となった。そのため,KFCは今回の問題に対して,年末にホームページで公式な謝罪を表明することとなった。

(寳劔)

対外関係

南シナ海の領有権問題と「海洋強国の建設」の行方

南シナ海の領有権問題をめぐって,中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国との外交関係が悪化している。とくにフィリピンやベトナムとの対立が深まっている。2012年7月にカンボジアで開催されたASEAN外相会議では,中国とASEANの一部加盟国との南シナ海の領有権問題をめぐる利害対立,とりわけ中国から多額の経済援助を受けている議長国カンボジアと,南シナ海の領有権を主張する国々の間の意見の相違によって共同声明の発表が見送られた。共同声明発表が見送られたのは,ASEAN設立以来初の出来事であった。また,それに伴って南シナ海をめぐる「行動規範」の策定も延期された。2002年に中国とASEANが署名した南シナ海をめぐる「行動宣言」は実効性に乏しいため,法的拘束力のある規範の策定を求める声が強まっている。9月4日には,米中外相会談が行われ,クリントン米国務長官が「中国とASEANが行動規範策定に取り組むことが,すべての国の利益にかなう」と述べて,南シナ海の領有権問題に関与する姿勢を示すとともに,平和的な解決を促す立場を示した。

11月の第18回党大会報告における対外政策に関しては「中国は首尾一貫して平和的発展の道を歩み続け,独立自主の平和外交政策を断固実行する」として,新政権が従来の「平和的発展」路線を継承していくことが改めて提唱された。また,同報告の「生態文明建設」の項目においては「海洋権益を断固擁護し,海洋強国を建設する」という立場が表明された。また,「海洋強国」の建設を掲げたことによって,中国が海洋進出と海洋権益の追求を加速させる見通しが強まっている。

習近平政権の対外政策が強硬路線となるかを見定めるのには時期尚早であるが,最近の情勢をみるかぎり,「平和的発展」路線とは程遠く,むしろ強硬な姿勢を先鋭化させているようにもみえる。また,それに伴って中国当局の関係者が主権問題などに対して「核心的利益」であると言明する機会も以前と比べて増加している。その一方で,政権移行期にある中国は,対外政策で妥協的な姿勢を示すことは国内的には難しい状況にある。新政権の対外政策が「弱腰外交」として,国内の批判を浴びれば,政権基盤を揺るがすことになりかねないという事情もある。いずれにせよ,中国の領有権をめぐる周辺諸国との摩擦は南シナ海にとどまらず,東シナ海における日本との間の尖閣諸島にも及んだ。

尖閣諸島問題をめぐる日中関係の悪化

2010年9月の尖閣諸島周辺海域における中国漁船衝突事件の発生以降,日中両国の間には領土問題の火種がくすぶり続けてきた。尖閣諸島の周辺海域における度重なる中国の挑発的な行動は,日本国民の強い懸念を喚起し,日本国内の「対中強硬論」が勢いを増した。2012年4月には,石原慎太郎東京都知事が尖閣諸島の都購入計画を公表した。

8月15日,尖閣諸島に上陸した香港の活動家らを日本政府が逮捕したことに反発して反日デモが中国各地で起こった。8月27日には北京において日本大使の乗った公用車の国旗が奪われるという事件も起きた。9月上旬には,日本政府が尖閣諸島(魚釣島,北小島,南小島)の国有化の決定を公式発表した直後から再び中国各地で大規模な反日デモが発生して,日系企業の店舗や工場の破壊や略奪行為などが繰り広げられた。日本政府の尖閣諸島国有化の発表は,毎年反日感情が高まる満州事変の端緒となった9月18日の柳条湖事件直前の時期と重なったこともあって,中国の100箇所を超える都市に反日デモが拡大した。

中国は情報統制が厳しく,言論の自由が制限された社会であり,事前の申請と許可なしに民衆が集会を行うことは公に認められていない。それにもかかわらず,中国の全国各地で反日デモが発生したことは,中国政府が明らかに容認していたことを意味している。デモの中心的存在には若者が多く,さまざまな国内問題に対する不満分子も多く含まれている。だが,予想以上に拡大して暴徒化した場合には「反政府デモ」に転じてしまう危険性をはらんでいることから,中国政府にも慎重な対応が求められている。

2012年の1年間に尖閣諸島周辺の日本領海における中国の領海侵犯は20回を超えた。2012年は日中国交正常化40周年の年であったにもかかわらず,両国関係は決定的に悪化し,政治と経済の両面において停滞を余儀なくされた。尖閣諸島の領有権問題をめぐっては日中両国の間にはいまだ解決の糸口を見出すことは非常に難しく,日中関係の改善にはいましばらくの時間を要するであろう。

政権移行期にある米中両国の探り合い

2月13日には次期最高指導者となる習近平国家副主席がアメリカを訪問した。オバマ米大統領との会談をはじめとして,アメリカ政府の主要関係閣僚総力をあげての国賓級の歓迎となった。また,中国側の希望によって,習近平は27年前の地方幹部時代に滞在したアイオワ州を再訪し,アメリカ市民との交流を通じて親しみやすさを最大限に演出した。14日,習近平国家副主席は,オバマ大統領との会談の冒頭,胡錦濤国家主席からの親書を手渡して今回の訪問目的について「胡錦濤主席がオバマ大統領とともに築いた米中パートナーシップが正しい方向に沿って両国関係の発展を引き続き促進することにある」と従来の米中関係を発展させていくことを強調した。これに対してオバマ大統領は,中国の「平和的台頭」を歓迎するとしたうえで「国力の拡大と繁栄には責任の増大が伴う」と述べて,中国に「大国」の自覚を促すとともに,国際規範の遵守や貿易不均衡,人権問題の改善などの必要性を示唆した。また,朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)やイランの核問題には米中の連携が不可欠という認識を示すとともに,国連安全保障理事会(国連安保理)の対シリア非難決議案で中国が拒否権を発動したことに対する失望感を表明した。オバマ大統領は11月に大統領選挙を,中国は党大会を控えるという,いわば米中双方が政権移行期を迎えていたことから,相互の立場を探り合うにとどまった。

なお,尖閣諸島問題をめぐる日中間の対立については,アメリカはあくまでも中立の立場をとってきている。日本政府が尖閣諸島の国有化を宣言した直後の9月17日,中国を訪問したパネッタ米国防長官は,尖閣諸島が日米安保条約の適用対象であるとしつつも,尖閣をめぐる「領土問題で特定の立場をとらない」という立場を表明した。9月28日にはキャンベル米国務次官補が「二国間の外交上の問題であり,アメリカが仲介するつもりはない」と述べた。

12月21日には,習近平体制発足後,最高指導部の中央政治局常務委員の王岐山副総理が訪米して,オバマ大統領と会談を行った。王副総理は「中国共産党と政府はアメリカとの関係を非常に重視している」と伝えたうえで,「新しい大国関係」を築くべきであると強調した。また,今後も米中戦略・経済対話をはじめとする米中間の対話を強化したい考えを示したと伝えられている。

歩み寄りをみせる中国とロシア

中東シリア情勢をめぐっては,中国とロシアが共同歩調をとってきている。2月4日,国連安保理は,シリア政府の市民弾圧が続いていることを問題視して,対シリア非難決議案を採決したが,ロシアと中国の拒否権行使によって廃案に追い込まれた。これは2011年10月に次ぐ対シリア非難決議案に対する両国の拒否権発動であった。ロシアにとってシリアは主要な友好国であり,かつ中東最大の武器輸出相手国でもある。このためシリアをアサド政権の崩壊という形で喪失することはロシアにとって大きな痛手となる。また,中国は自国内にチベット自治区や新疆ウイグル自治区での独立問題を抱えていることから,第三国に対する内政干渉には基本的に反対の立場をとっている。それに加えて,中国にとってシリアは主要な輸出相手先であるとともに,投資や油田開発を推進してきたことから,ロシアと同様にシリアの現政権崩壊には後ろ向きの立場である。

4月22日から6日間にわたって,中ロ海軍合同演習「海上連合2012」が青島沖の黄海海域において行われた。中国は合同軍事演習の目的を排他的経済水域(EEZ)における海洋権益の確保としているが,北東アジアにおける存在感の拡大を目指すロシアと利害が一致した。演習では,潜水艦からの攻撃を想定した実弾訓練など実戦を想定したような内容が目立った。

6月5日には,中国を訪問していたプーチン大統領と胡錦濤国家主席が会談して,貿易・投資協力などの両国の戦略的協力関係を強める共同声明に署名した。また,7日には,習近平国家副主席と李克強副総理がプーチン大統領と相次いで会談を行った。最近のアメリカの「アジア回帰」で戦略的重点をアジア太平洋に移行しようとする動きに対して,アメリカの影響力の拡大に対する牽制という文脈からも,中ロ両国の協調関係の重要性が再び高まっている。

さらに6月6~7日には上海協力機構(SCO)首脳会議が北京において行われ,地域の安全保障問題,とくにシリア情勢やイランの核問題,経済協力などについての協議が行われた。胡錦濤国家主席は,金融やエネルギー,食糧分野における協力強化の必要性を示した。同会議には,中国,ロシア,中央アジア4カ国の加盟国をはじめとして,イラン,モンゴル,パキスタン,インド,さらにはアフガニスタンやトルクメニスタンがオブザーバーとして参加した。最近のSCOの勢力圏は中央アジア地域にとどまらず,西方への拡大傾向があらわれてきている。

北朝鮮の新指導部の挑発的姿勢に苦慮する中国

2011年12月に金正日総書記が死去した後,北朝鮮では三男の金正恩が最高指導者の地位を継承し,2012年4月に新指導部体制を始動させた。新体制発足を目前に控えて,4月13日には北朝鮮が「人工衛星」の打ち上げと称して,事実上の長距離弾道ミサイルを発射したが,空中で爆発,洋上に落下して失敗に終わった。同日,国連安保理は緊急協議を開催したが,北朝鮮の後ろ盾となってきた中国の立場に国際社会の注目が集まった。中国は北朝鮮による「人工衛星」の打ち上げを憂慮する立場を示した。だが,結果的には,制裁には消極的な中国の立場が反映されて,国連安保理の対北朝鮮制裁決議は回避されることになり,代わって北朝鮮を非難する議長声明が全会一致で採択された。

11月30日には,中国の新しい政治局委員の李建国全人代副委員長が北朝鮮を訪問して,金正恩第一書記と会談を行い,「人工衛星」の打ち上げの動きに対して,自制を強く求めた。だが,それにもかかわらず北朝鮮は,金正日総書記の死去1周年に先立って,12月13日に再び「人工衛星」の打ち上げと称して長距離弾道ミサイルの発射を敢行し,成功を収めた。北朝鮮の挑発的姿勢に対する批判が強まるなかで,国連安保理は北朝鮮に対する制裁決議の採択に向けて本格的に乗り出した。中国では金正恩体制の権力基盤がいまだ固まっていないという見方が強く,制裁発動による北朝鮮の体制の混乱を危惧しているものとみられる。だが,中国が北朝鮮に対して譲歩の姿勢を続けることは次第に困難な状況になりつつある。

馬英九政権再選と尖閣諸島問題をめぐる台湾の立場

1月14日,台湾では第13代総統選挙が行われ,現職の馬英九が民進党の蔡英文候補を破って再選を果たした。国民党政権の続投によって,経済分野を中心とする両岸関係の促進が継続される見通しが強まった。

8月から9月にかけて尖閣諸島周辺海域における日本と中国の対立が深まりつつあるなかで,馬英九総統が「東シナ海平和イニシアティブ」を提唱して,同地域における紛争の平和的な解決と多国間での協議,共同開発を各国に呼びかけた。なお,台湾は日本との間に国交がなく,領有権問題についての外交交渉は現実的には不可能であるが,漁業権確保には交渉の余地がある。

9月25日には,台湾の漁船と巡視船が大挙して尖閣諸島の日本領海内に侵入した。台湾の船団による同海域侵入としては過去最大規模となった。また,中国大陸を主要な市場とする台湾の旺旺集団が船団に高額の燃料代を寄付したことが内外の注目を集めた。尖閣諸島の領有権問題に関しては,中国と「共闘」することは必ずしも台湾の総意ではなく,台湾当局は中国政府とは一線を画す立場を表明してきた。だが,馬英九総統が台湾の船団の領海侵犯を事実上容認したことは,「東シナ海平和イニシアティブ」の内容にも反するとも受け取れるため,最近の尖閣情勢をめぐる台湾当局の対応はいまひとつ判然としないものとなっている。

10月4日には,中国は,台湾の民進党の謝長廷元行政院長の私的訪問を異例の厚遇で迎え入れ,国務委員の戴秉国や国務院台湾事務弁公室主任の王毅が相次いで会談を行った。そこには,近い将来,台湾における政権交代の可能性をも視野に入れ,敵対関係にあった民進党の懐柔と両岸関係の交流のチャンネルの多様化を図ろうとする中国側の思惑がにじんでいる。

(松本)

2013年の課題

2013年は,第18回党大会後,政権移行期にある習近平新体制がいかに政権基盤の強化を図れるかが,中国共産党政府にとっての最大の課題である。

国内政治は,5年後の党大会を見据えた中央政治局常務委員への昇格人事をめぐって,新たな権力闘争が水面下で展開されるであろう。また,新任の習近平の政治的手腕もさることながら,今後の胡錦濤の動向も注目される。さらに,最近の党幹部や官僚による汚職腐敗問題は一党支配の正統性を揺るがすほどに深刻化しているため,腐敗一掃のために最大限の注力が必要となる。取り組むべき国内問題は依然として山積しているのが実状である。対外政策は,自らの「大国」としての自覚の下で,時には強硬路線ともいえる外交を展開していくことが予想される。とりわけ,「海洋強国の建設」の旗印の下,海洋進出や海洋権益を追求する動きが加速し,東シナ海や南シナ海などにおいて周辺諸国との摩擦や軋轢を生む危険性がさらに高まるであろう。

経済では,内陸部の工業生産と地方政府による公共投資が2012年の経済成長を下支えしてきた。しかし,インフラ投資の収益性低下と不動産価格の下落が,地方の投資を支える資金調達プラットフォームの経営状況を悪化させ,プラットフォーム向け銀行融資の不良債権化と城投債のデフォルトを引き起こす危険もはらんでいる。ゆえに,地方政府に対する財政規律の健全化とプラットフォームの選別・整理を推し進めていくとともに,より競争的な金融市場の整備と民間資本の国家独占事業への参入強化を通じて,効率的な企業経営とイノベーションを促進していくことが,当面の大きな政策課題となるであろう。

(松本:地域研究センター)

(寳劔:開発研究センター)

重要日誌 中国 2012年
  1月
3日 外交部,石垣市議の尖閣諸島上陸に対して抗議。
6日 全国金融工作会議(~7日),温家宝総理が重要講話。
8日 中央規律検査委員会第7回全体会議(~10日),胡錦濤総書記が重要講話。
9日 国務院,「西部大開発第12次5カ年計画」,「東北振興第12次5カ年計画」採択。
9日 李明博韓国大統領,中韓国交20周年で来訪(~11日)。中韓FTA交渉開始で合意。
17日 国家統計局,2012年統計公報を発表。GDP成長率は9.2%。
23日 四川省アバ・チベット族チャン族自治州でチベット族住民が警察と衝突,住民多数が死亡(~26日)。
31日 日本政府,東シナ海ガス田「樫」の採掘施設の炎を確認,外交部に抗議。
  2月
1日 2012年中央1号政策文書,「農業科学技術革新の推進に関する決定」を公布。
4日 楊潔篪外交部長,ラブロフ・ロシア外相と電話会談,国連安保理のシリア非難決議案採択で中ロ両国が拒否権行使を決定。
6日 王立軍重慶市副市長,在成都アメリカ総領事館に亡命,アメリカ政府が拒否。
7日 習近平国家副主席,訪米に先立ってバイデン米副大統領と電話会談。
13日 習国家副主席,アメリカを訪問(~23日),オバマ米大統領と会談。
15日 国務院常務会議,経済体制改革深化の重点工作について決定。
16日 日中国民交流友好年開幕式,賈慶林全国人民政治協商会議主席が日中友好7団体と会見。
18日 人民銀行,人民元預金準備率を24日から0.5㌽引き下げを発表。
22日 国務院常務会議,医療衛生体制改革の深化に関する工作について検討。
27日 全国人民代表大会常務委員会第25会議(~29日),大気汚染対策を検討。
28日 沖縄県久米島の周辺海域で中国の艦船「海監66」と日本の海上保安庁の測量船が接近。
  3月
3日 中国人民政治協商会議第11期全国委員会第5回会議(~13日)。
3日 国家海洋局,尖閣諸島に属する71島嶼の「標準名称」の命名を発表。
5日 第11期全人代第5回会議(~14日),温総理,政府活動報告。
14日 全人代,「中華人民共和国刑事訴訟法」の改正を採択。
14日 胡錦濤国家主席,ロシア大統領当選のプーチンに祝電,電話会談。
15日 党中央,薄熙来を重慶市党委書記から解任して,張徳江中央政治局委員が同書記を兼任することを決定。
16日 中国の艦船「海艦50」と「海艦66」が尖閣周辺海域の接続水域内を航行,日本外務省が抗議。
19日 6カ国協議の李容浩北朝鮮代表団長,北京で武大偉朝鮮半島問題特別代表と会見。
21日 国務院常務会議,「総合交通輸送システム第12次5カ年計画」,「全国農村飲料水安全プロジェクト第12次5カ年計画」を採択。
22日 胡総書記,台湾の呉伯雄国民党名誉主席と北京で会見。
25日 香港特別行政区の第4期行政長官選挙,梁振英が当選。
25日 胡国家主席,韓国,インド,カンボジアを訪問(~4月2日)。
28日 国務院常務会議,温州市金融総合改革特区の設置を決定。
  4月
1日 李克強副総理,ボアオ・アジア・フォーラムで台湾の呉敦義次期副総統と会見。
10日 党中央,重大な規律違反容疑で薄熙来の中央政治局委員,中央委員の職務停止を発表。
13日 国務院常務会議,経済工作を検討。
14日 人民銀行,16日から人民元・米ドル取引の変動幅の±1.0%への拡大を決定。
16日 石原慎太郎東京都知事,ワシントンで尖閣諸島の都購入計画を公表。
18日 国務院常務会議,「省エネ・新エネルギー自動車産業発展計画」を採択。
20日 温総理,アイスランド,スウェーデン,ポーランド,ドイツを訪問(~28日)。
22日 中ロ海軍合同演習「海上連合2012」,青島沖の黄海で実施(~27日)。
24日 第11期全人代常務委員会第26回会議(~27日)。
24日 上海協力機構(SCO)国防相会議。
  5月
3日 第4回米中戦略・経済対話,北京で開催(~4日)。
4日 中国共産主義青年団創設90周年大会,胡総書記が重要講話。
12日 人民銀行,人民元預金準備率を18日から0.5㌽引き下げを発表。
13日 第5回日中韓首脳会談,北京で開催。FTA交渉の年内開始で合意。
13日 日中首脳会談,尖閣諸島問題で対立。
14日 中国外交部,東京で開催された「世界ウイグル会議」第4回代表大会に抗議。
19日 人権活動家の陳光誠,アメリカに亡命。
28日 中央規律委員会,前鉄道部長の劉志軍を規律違反で党籍剥奪の処分決定。
  6月
1日 中国外貨交易センター,日本円と人民元の直接取引を開始。
5日 プーチン・ロシア大統領,来訪(~7日)。胡国家主席と会談。
6日 SCO加盟国首脳理事会第12回会議,北京で開催(~7日)。
7日 人民銀行,8日から金融機関の1年物預金・貸出基準金利0.25㌽引き下げを発表。
7日 SCO加盟国軍,合同反テロ軍事演習「平和の使命2012」(~14日)。
11日 国務院新聞弁公室,「国家人権行動計画(2012~2015)」発表。
18日 胡国家主席,メキシコを訪問(~19日),G20サミットに出席。
18日 有人宇宙船「神舟9号」,宇宙実験室「天宮1号」とのドッキングに成功。
19日 温総理,ブラジルを訪問(~22日),国連持続可能な開発会議(リオ+20)に出席。
21日 中国銀行の台湾支店が初の開業。
26日 第11期全人代常務委第27回会議(~30日)。
29日 張暁強国家発展改革委員会副主任,深圳市前海地区のサービス業特区新設を国務院が承認したと発表。
29日 新疆ウイグル自治区ホータン上空で旅客機のハイジャック未遂事件発生。
29日 胡国家主席,香港を訪問(~7月1日)。復帰15周年,新行政長官就任式に出席。
  7月
5日 人民銀行,6日から金融機関の1年物預金基準金利0.25㌽,1年物貸出基準金利0.31㌽の引き下げを発表。
7日 外交部,日本政府の尖閣諸島国有化の意向に抗議を表明。
11日 国務院常務会議,「省エネ・排出削減に関する第12次5カ年計画」採択。
11日 中国の漁業監視船3隻が尖閣諸島周辺の領海に侵入。
11日 楊外交部長,カンボジアを訪問(~12日)。ASEAN+日中韓外相会議,ASEAN+中国外相会議,東アジアサミット外相会議,ASEAN地域フォーラム(ARF)外相会議に出席。
13日 国家統計局,2012年上半期のGDP成長率は7.8%と発表。
19日 中国・アフリカ協力フォーラム第5回閣僚級会議,北京で開催(~20日)。胡主席が重要講話,大規模借款の供与を発表。
25日 北京市人民代表大会,代理市長に王安順を任命。
26日 安徽省合肥市人民検察院,薄熙来の妻の谷開来と張暁軍を殺人容疑で起訴。
  8月
4日 王家瑞中央対外連絡部長,金正恩朝鮮労働党第一書記と平壌で会談。
8日 陳雲林海峡両岸関係協会会長,台湾の江丙坤海峡交流基金会(海基会)理事長と台北で会談。
9日 合肥市中級人民法院,谷開来に執行猶予2年付死刑,張暁軍に懲役9年の判決。
15日 香港の抗議船が尖閣諸島に上陸,沖縄県警が香港の活動家14人を逮捕。
16日 北京日本大使館,上海領事館前で香港の活動家の釈放を求める反日デモ発生。
17日 張成沢朝鮮労働党中央行政部長,北京で胡総書記と温総理と会見。
19日 中国国内25都市以上で大規模な反日デモが発生,18日,22日,25日,26日にも中国各地で相次いで反日デモ発生。
20日 第7回中ロ戦略安全保障協議。
27日 第11期全人代常務委第28回会議(~31日)。
27日 交通運輸部長に楊伝堂が任命。
27日 丹羽宇一郎中国大使の公用車が襲撃される。
  9月
1日 党中央,中央弁公庁主任の令計画の辞任と栗戦書の新任を決定。
4日 クリントン米国務長官来訪(~5日)。胡国家主席,楊外交部長と会談。習国家副主席が会見をキャンセル。
6日 胡国家主席,ロシアでの第20回アジア太平洋経済協力会議(APEC)に参加(~9日)。
9日 胡国家主席,野田首相に尖閣諸島の国有化に不満を表明。
11日 日本政府,尖閣諸島購入の正式な契約に調印。北京と上海で反日デモ発生。
15日 中国国内50都市以上で大規模な反日デモが発生。日系店舗や工場が襲撃される。
17日 パネッタ米国防長官,来訪(~20日)。習国家副主席,梁光烈国防部長と会談。
18日 柳条湖事件81周年記念日,中国の100都市以上で反日デモが発生。
23日 日中友好協会,日中国交正常化40周年公式記念式典延期,事実上の中止を発表。
24日 四川省成都市中級人民法院,王元重慶市副市長に懲役15年の判決。
25日 初の空母「遼寧艦」就航記念式典,胡総書記,温総理が出席。
25日 国務院新聞弁公室,『釣魚島は中国固有の領土』白書を発表。
25日 張志軍外交部副部長,河相周夫外務事務次官と尖閣諸島問題について北京で協議。
27日 楊外交部長,国連総会での野田首相の尖閣諸島問題に関する演説を非難。
28日 党中央政治局会議,薄熙来の党籍剥奪,公職追放を決定。
  10月
4日 台湾の民進党の謝長廷元行政院長,来訪(~8日)。戴秉国国務委員と会見。
8日 アメリカ下院情報特別委員会,華為と中興のアメリカ政府の通信インフラからの排除を求める調査報告書を発表。
9日 国務院新聞弁公室,初の『中国の司法改革』白書を発表。
12日 周小川中国人民銀行総裁,東京でのIMF・世界銀行年次総会欠席。
16日 林中森海基会理事長,来訪(~21日)。
18日 三一集団,アメリカでの風力発電事業の中止に対し,オバマ大統領を提訴。
23日 第11期全人代常務委第29回会議(~26日)。
24日 国務院常務会議,「原子力発電安全計画」,「原子力発電中長期計画」を採択。
24日 国務院新聞弁公室,『中国のエネルギー政策』白書を発表。
25日 解放軍四総部のトップ交代が判明。
25日 アメリカ『ニューヨーク・タイムズ』,温家宝一族の資産が約27憶㌦以上と報道。
25日 全人代常務委,薄熙来の全人代代表資格停止を発表。
31日 次世代ステルス戦闘機「殲31」,試験飛行に成功。
  11月
1日 党第17期中央委員会第7回全体会議(~4日)。薄熙来の党籍剥奪を決定。
3日 中国政府,ダライ・ラマ14世の日本訪問(~14日)に対して反発を表明。
4日 温総理,ラオスでの第9回アジア欧州会合(ASEM)首脳会議出席。
8日 中国共産党第18回全国代表大会(~14日),胡総書記が政治報告。
15日 党第18期中央委員会第1回全体会議。習近平が重要講話。中央政治局常務委員7人,政治局委員25人選出。胡錦濤が中央軍事委員会主席を退任,習近平が就任。
15日 中央規律検査委員会第1回全体会議。
18日 温総理,カンボジアとタイを訪問,第15回中国ASEAN首脳会議,ASEAN日中韓協力15周年記念サミット,第7回東アジアサミット出席(~21日)。
18日 アメリカ国際貿易委員会(ITC),中国製多結晶シリコン太陽電池へのアンチダンピング関税と補助金相殺関税の課税を最終決定。
20日 温総理,オバマ大統領と会見。
20日 日中韓自由貿易協定(FTA)交渉。
25日 戦闘機「殲15」が空母「遼寧艦」への着艦訓練に成功したことが判明。
28日 国務院常務会議,「土地管理法修正案」を採択。
30日 李建国中央政治局員,北朝鮮を訪問。金正恩朝鮮労働党第一書記と会談。
  12月
4日 温総理,キルギスとロシアを訪問(~6日)。
5日 温総理,第11回SCO加盟国首相会議に出席。
6日 第17回中ロ首脳定期会談,温総理,メドベージェフ首相と会談。
7日 習近平総書記,広東省を訪問(~11日)。解放軍を視察。
7日 楊外交部長,クリントン米国務長官と北朝鮮問題について電話会談。
11日 林海基会理事長,来訪(~21日)。
12日 外交部,北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射に遺憾の意を表明。
13日 第13回米中国防相会議。
14日 貴州省人民代表大会,陳敏爾を代理省長に任命。
15日 中央経済工作会議,習近平,温家宝,李克強が重要講話(~16日)。
19日 山西省人民代表大会,李小鵬を代理省長に任命。
19日 吉林省人民代表大会,巴音朝魯を代理省長に任命。
21日 浙江人民代表大会,李強を代理省長に任命。
21日 陜西人民代表大会,娄勤倹を代理省長に任命。
21日 王岐山副首相,アメリカを訪問,オバマ大統領と会談。
24日 全人代常務委第30回会議(~24日)。公安部長に郭声琨を任命。
26日 上海市人民代表大会,楊雄を代理市長に任命。

参考資料 中国 2012年
①  国家機構図(2012年末現在)
②  中国共産党・国家指導者名簿(2012年末現在)
②  中国共産党・国家指導者名簿(2012年末現在)(続き)
③  各省,自治区,直轄市首脳名簿(2012年末現在)

主要統計 中国 2012年
1  基礎統計
2  国内総支出(名目価格)
3  産業別国内総生産(名目価格)
4  産業別国内総生産成長率(実質価格)
5  国・地域別貿易
6  国際収支
7  国家財政
 
© 2013 日本貿易振興機構 アジア経済研究所
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