2014 年 2014 巻 p. 413-442
2013年にニュースをもっとも賑わしたのは,またもや汚職事件であった。最大与党の民主主義者党と,それと連立を組む福祉正義党の党首がいずれも汚職事件で摘発された。さらに,憲法裁判所の長官までもが汚職で逮捕された。これらの2政党や憲法裁判所は,民主化後に新たに生まれた組織で,汚職の蔓延する政界にあって例外的にクリーンであると思われていた。そのトップが次々と汚職容疑で検挙されるというニュースは,国民を大きく失望させた。憲法裁判所長官の汚職摘発は,地方で政治経済を牛耳っていた一族の支配体制にメスを入れることにも繋がった。これら汚職事件の捜査を続ける汚職撲滅委員会が,唯一国民の信頼を繋ぎ止めている国家機関である。また,2014年の議会選と大統領選に向けた準備が進められるなかで,大統領候補擁立に向けた各党の動きも活発化した。
経済成長率は4年ぶりに6%を下回り,失業率と貧困者比率が増加に転じている。経常収支赤字と財政収支赤字という双子の赤字を抱えているという不安材料から,アメリカの量的金融緩和策の縮小案が発表されると,インドネシアからも資本が流出し,対ドル為替レートは大きく減価した。一時はアジア通貨危機の再来を心配する声もあがったが,8月以降,政府による経済政策パッケージ,中央銀行による金融引き締め策,また,日本などとの二国間通貨スワップ協定の延長・拡大といった政策が実施され,危機的状況に陥ることはなかった。政府はようやく財政赤字削減のため補助金付き石油燃料価格の引き上げに踏み切ったが,そこに過去の輸入規制策とルピア安の影響による大豆などの農産物価格の上昇が重なり,年間では2008年以来となる高いインフレ率を記録した。しかし,自動車の年間販売台数は120万台を超えて記録を更新するなど民間消費は堅調である。
2013年12月,汚職撲滅委員会(KPK)が設立10周年を迎えた。1998年の民主化後,公正な社会と清廉な政府の実現を求める国民の声に押されて設立された同委員会は,事件の捜査から,容疑者の逮捕,公訴までを含む強い権限と高い独立性を背景に,政府高官の関与する汚職事件を次々と摘発してきた。2004年に就任したスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領が汚職撲滅を政権公約の目玉に掲げたこともあり,独立以来ほぼ野放しだった政府部内での汚職が次々と暴かれるようになった。
この10年間に,汚職撲滅委員会によって公訴された汚職容疑者は396人にのぼる。このなかでもっとも多いのは公務員の114人であるが,それに次いで多いのが国会・地方議会議員の73人である。政治任命職である大臣・長官は11人が,地方の公選職である州知事,県知事,市長は45人が逮捕・起訴されている。汚職撲滅委員会の活動に対する国内外の評価も高い。同委員会が警察内部の汚職疑惑に切り込もうとして警察から組織潰しの圧力をかけられた際には,市民によるインターネットを通じた支援キャンペーンが展開され,世論の力で同委員会を守った。海外からも,汚職撲滅に継続的に取り組む姿勢に対して賞賛の声があがり,7月に汚職撲滅委員会は「アジアのノーベル賞」といわれるマグサイサイ賞を受賞した。
2013年も,63件の事件が汚職撲滅委員会の捜査によって摘発された。それらの事件で逮捕された容疑者は,行政府の高官や官僚だけでなく,立法府の政治家,司法府の裁判官,さらには地方自治体の首長など,あらゆる部門・レベルの公職者に広がっている。このことは,汚職対策が政権によって真剣に取り組まれている一方で,いまだに汚職行為が国家機構のなかに根深く組み込まれていることを物語っている。
政党党首の汚職摘発2013年に汚職容疑で訴追を受けた政治家は8人である。このうち2人は,政権を支えるべき最大与党と連立与党の党首であった。最大与党の民主主義者党では,青年・スポーツ担当国務相府が管轄する複数のプロジェクトをめぐって党幹部が贈収賄や公金横領などに関与していたことが2011年に発覚し,2012年12月にはユドヨノの後継候補と目されていたアンディ・マラランゲン同国務相が現役閣僚としては史上初めて汚職容疑者に指定された。この汚職事件に絡んだ資金は,アナス・ウルバニングルム同党党首にも流れていたことが捜査段階で明らかになりつつあったため,アナス党首にも捜査のメスが入るのは時間の問題だった。2月22日,汚職撲滅委員会は,22億ルピアを収賄したとしてアナスを汚職容疑者に指定した。これに対して,アナスは容疑を否認したが,党首は辞任せざるをえなかった。その後も捜査は続けられ,2014年1月10日,アナスはこのほかに2件の汚職事件に関与したとして汚職撲滅委員会に逮捕された。
アナスの容疑者指定と時を同じくして発覚したのが,ルトフィ・ハサン・イシャアク福祉正義党党首が関与した汚職事件である。農業省による輸入牛肉の割当量をめぐって便宜を図る見返りに輸入業者から金銭を受領していたとして,汚職撲滅委員会は1月31日にルトフィ党首を逮捕した。ルトフィは,牛肉輸入業者から計400億ルピアを受け取ることになっていたとされている。ルトフィ逮捕をうけ,福祉正義党は党首の交代を発表せざるをえなかった。
この2つの事件は,政権中枢で汚職が蔓延していることを白日の下にさらす結果となった。汚職撲滅を選挙公約の柱に掲げていたユドヨノ政権に対する国民の信頼は大きく揺らいだ。これら2つの政党は民主化後に新しく設立され,古い政治体質とは無縁のクリーンな政党として2004年,2009年の総選挙で有権者の支持を集めて躍進した政党だっただけに,国民の間では政党や政治家に対する不信感も高まった。福祉正義党の汚職事件の場合は,ルトフィ党首の友人で党と業者の間で資金のやり取りを行っていたアフマド・ファタナが,複数の女優やモデルなどに多額の収賄資金を渡していたことも明らかになっており,イスラームの「宣教政党」として有権者の信仰心に訴えていた福祉正義党のイメージも大きく傷つくことになった。
しかも,これらの汚職事件はさらなる広がりをみせる気配がある。2014年1月に逮捕された民主主義者党前党首のアナスは,ユドヨノ大統領の次男で同党幹事長のエディ・バスコロが汚職に関与していたことを匂わす発言をしている。汚職撲滅委員会も,アナス以外にも汚職に関与している公職者がいるとみて捜査を続けている。農業省の汚職事件も,ルトフィ福祉正義党前党首の逮捕では終わらない可能性がある。農業省では,2004年のユドヨノ政権発足時から福祉正義党出身の政治家が大臣を務めており,以前から農業省の予算や事業から同党が活動資金を調達していると噂されていた。ルトフィの逮捕を契機にほかの党幹部が関与した汚職事件が明るみに出る可能性もあり,すでに後任のアニス・マッタ党首やヒルミ・アミヌディン党最高顧問会議議長らの名前が取り沙汰されている。
憲法裁判所の危機――長官の汚職逮捕と国民の信頼低下――政党党首2人の汚職摘発だけでも十分に衝撃的なニュースであったが,10月にはそれをさらに上回るような汚職事件が明るみに出た。それが,アキル・モフタル憲法裁判所長官の収賄現場での現行犯逮捕である。
憲法裁判所は,1998年の民主化後に三権分立を確立すべく2003年に設置された新しい国家機関である。憲法裁判所は,一般の裁判所とは別に設置され,具体的な事件に関係なく法令の違憲性を直接判断する権限を有している。また,憲法裁判所は,違憲審査権だけでなく,国家機関の間で権限に関する争いがあった場合に司法判断を下したり(機関訴訟),選挙結果の有効性や政党の解散を決定したり,国会が可決した大統領弾劾提案の法的妥当性を審議したりするなど,高度に政治的な決定を行う権限を与えられている。憲法裁判所の判事は,大統領,国会,最高裁判所がそれぞれ3人ずつを任命することになっており,特定の国家機関の影響力が過大にならないよう配慮されている。判事の任期は5年で,1度のみ再任が可能である。長官は判事による互選で決定する。
この憲法裁判所は,2003年に設置されて以来,積極的にその権限を行使し,多くの法律に対して違憲判決を下してきた。それらのなかには,選挙制度に関する対立や混乱に対して画期的な解釈を示して問題を収束させたり,人権規定に不備がある旧法を破棄して基本的人権の保障や法の支配の確立に貢献したりした判決が多く含まれており,インドネシアの民主化において憲法裁判所が果たした役割は非常に大きかった。選挙結果の有効性や不服申立を審査する裁判においても,憲法裁判所が中立的な立場から判断を下し,選挙後の混乱を未然に防止してきた。憲法裁判所の判事も,一般裁判所のキャリア判事とは異なり,社会的に評価の高い,クリーンな人物が就任してきたことから,汚職問題とは無縁と考えられてきた。そのため,国民の憲法裁判所に対する信頼も,汚職撲滅委員会とならんで非常に高かった。
国民が強い信頼を寄せていた憲法裁判所で,しかも長官自身が汚職に直接関与していたということで,この事件は国民に強い衝撃を与えた。アキル長官に対する容疑は,地方首長直接選挙の結果をめぐってどの候補が当選したのかが争われた裁判で,有利な判決を引き出そうとした当事者から賄賂を受け取ったというものである。逮捕に直接つながったのは,2013年9月に行われた中カリマンタン州グヌン・マス県知事選挙の結果をめぐって,負けた候補者が不正行為を指摘して選挙のやり直しを求めた裁判での汚職疑惑である。この裁判を担当したアキルは,訴えを退けるよう個人的に求めてきた現職県知事ハンビット・ビンティに対して,自ら米ドル紙幣での賄賂を要求し,30億ルピア相当の現金を受け取ったとみられている。憲法裁判所長官と県知事を仲介したゴルカル党の国会議員ハイルン・ニサも,同時に逮捕されている。
これに対して憲法裁判所は,査問委員会にあたる名誉評議会を設置して独自にアキル長官の罪状を調査した。11月1日,名誉評議会はアキルに倫理規定に違反する行為があったことを認めて,アキルの懲戒免職処分を決定した。2014年総選挙を直前に控えて,司法の中立性が疑われるような事件が発生し,憲法裁判所に対する国民の信頼が失墜するという事態に対して,政府も何らかの対応を示すことが求められた。
今回の事件の背景には,アキルが2008年に憲法裁判所判事に就任するまでゴルカル党議員として国会で政治活動を行っていたことや,判事の選任がもっぱら各国家機関に委ねられているため判事の中立性や適格性が必ずしも保証されないこと,判事の日常的な行動を監視する仕組みがなかったことなどがあると指摘された。そこで,ユドヨノ大統領は,緊急の場合に大統領独自の権限によって,法律と同等の効力をもつ政令である法律代行政令を定めて,速やかに憲法裁判所の中立性と信頼性を回復しようとした。その法律代行政令(憲法裁判所に関する法律2003年第24号の第2次改正に関する法律代行政令2013年第1号)では,(1)過去7年間に政党の党員であった人物は憲法裁判所判事に就任できない,(2)司法委員会(最高裁判所の判事を選出・査問する憲法機関)が設置する専門家パネルが各国家機関から提出される判事候補者の適性を審査する,(3)憲法裁判所判事の行動を監視する名誉評議会を常設化する,ことなどが定められた。
法律代行政令は,制定後の会期中に国会で法律として承認されなければならないため,11月から国会での審議が開始された。法律代行政令を制定する緊急性があったかどうかや,司法委員会の設置する専門家パネルが判事選出で大きな役割を果たすことなどについては連立与党内からも異論が出された。しかし,連立を組む福祉正義党や開発統一党が反対にまわったものの,12月19日,国会の本会議は賛成多数で憲法裁判所に関する法律代行政令を法律化することに同意した。
ところが,同法案に対する弁護士らによる違憲審査請求を審議していた憲法裁判所は,2014年2月13日の判決で,全条文について憲法に反するとの判断を下した。そのため,アキル長官逮捕に端を発した憲法裁判所の信頼回復に向けた政府の努力は,憲法裁判所自身の判決によって無に帰してしまった。
バンテン州支配一族の汚職摘発収賄で現行犯逮捕されたアキル憲法裁判所長官には,地方首長選挙をめぐるもうひとつの裁判での収賄容疑があった。アキルが担当したバンテン州レバック県知事選挙をめぐる不服申立裁判では,敗者となったゴルカル党公認のアミル・ハムザ候補による選挙やり直し請求を認める判決が出されていた。アキルは,公判後にアミル側から10億ルピアを受け取ったとされているが,その現金授受を仲介したのがトゥバグス・ハエリ・ワルダナ(通称ワワン)という人物である。ワワンも,贈賄の容疑で10月2日に汚職撲滅委員会によって逮捕されている。
ワワンは,バンテン州知事ラトゥ・アトゥット・ホシヤの弟で,彼の妻は南タンゲラン市長を務めている。アトゥットとワワンの父親であるハサン・ソヒブ(2011年死去)は,地元暴力組織から建設企業を立ち上げて事業に成功し,政治権力と癒着しながら州内の政治・経済界に強い影響力を持つに至った地方ボスであった。民主化後の地方分権化の流れのなかでバンテン州新設の立役者として辣腕をふるったハサンは,州や県・市自治体の首長や地方議会議員に一族を就任させて州内の政治権力を掌握した。さらには,その政治権力を利用して,自治体の公共事業をハサン一族の経営する企業が落札するように仕向け,州経済をも独占していった。こうしてハサンは,バンテン州に「王朝」ともいわれる一族の支配体制を作り上げた。
ハサン一族は,政治経済権力の独占を通じて巨額の富を蓄積したが,多くの資産が不正行為によって獲得されていることが噂されていた。レバック県知事選挙をめぐる不服申立裁判でアキル憲法裁判所長官に賄賂を贈ったのも,自らの一族の影響下にある候補者を県知事として送り込むためであり,ワワンにアキル長官への贈賄工作を指示したのは,ハサン死去後に一族を束ねていた長女のアトゥット・バンテン州知事だとみられた。汚職撲滅委員会は,この事件を突破口として,バンテン州知事を頂点とするハサン一族による巨大な汚職構造に切り込もうとしたのである。
捜査を進めていた汚職撲滅委員会は,12月にアトゥットをアキル憲法裁判所長官への贈賄およびバンテン州政府の医療機器調達事業における公金横領の容疑で逮捕した。後者の汚職事件では,総額610億ルピアにのぼる予算の不正使用があっただけでなく,事業落札業者の多くもハサン一族が所有する企業だとみられている。人的な制約のあるなかで,汚職撲滅委員会がバンテン州のハサン一族支配を背景とする巨大な構造的汚職をどこまで解明できるのか,注目されている。
2014年総選挙に向けた各党の動き2013年は,2014年4月の議会選挙,7月の大統領選挙に向けた動きが本格化しはじめた年であった。1月8日には,総選挙参加を申請していた46政党の資格審査が終わり,総選挙委員会(KPU)から国会選挙に参加する10政党ならびにアチェ州地方議会選挙のみに参加する3地方政党を認可したことが発表された。その後,総選挙委員会の決定を不服として総選挙監視庁(Bawaslu),および高等行政裁判所に提訴した政党のうち,月星党と公正統一党の2政党については3月に追加で総選挙への参加が認められ,合計12政党が2014年総選挙で国会の議席を争うことになった(参考資料④参照)。これは,民主化後に実施された過去3回の選挙でもっとも少ない参加政党数である。この12政党のうち,2009〜2014年議会期の国会で議席を有しているのは9政党にのぼり,過去に一度も総選挙に参加したことのない新党は民主国民党のわずか1政党だけである。つまり,2014年総選挙は,小政党や新党にとっては参入障壁が非常に高かったといえる。
小政党や新党の参加が抑制され,総選挙参加政党数が減少したのは,政党の設立と選挙参加のための要件が厳格化されたためである。たとえば,改正政党法(法律2011年第2号)では,政党設立の条件が,「すべての州,および各州内の4分の3の県・市,および当該県・市内の半数の郡」に執行部が設置されていることが必要になり,前回選挙時の「60%の州,50%の県・市,25%の郡」という条件よりも厳しくなった。総選挙に参加できる政党の条件も厳格化され,総選挙法(法律2012年第8号)では,執行部が設置されている自治体の数が,前回選挙時の「3分の2の州および当該州内の3分の2の県・市,当該県・市内の3分の2の郡」から,政党設立条件と同等に引き上げられた。
総選挙法では,議席を獲得するために必要な最低得票率(いわゆる代表阻止条項)も2009年総選挙時の2.5%から3.5%に引き上げられている。これらの変更は,政党の数を削減して,安定した議会運営と執政府・立法府関係を可能にすることを目指したものである。インドネシアでは,民主化後に多数の政党が設立されて選挙に参加し,議席を獲得してきたため,議会が多党化した。その結果,法案の審議が長期化,複雑化した。また,安定政権を樹立するには多数の政党で連立を組まざるをえなかったため,大統領による政権運営も困難であった。そのため,選挙のたびに政党設立や選挙参加の要件が少しずつ厳格化されてきている。ただし,今回の制度変更がどの程度政党数の削減に効果があるかは不明である。
総選挙参加政党が決定したことを受け,各党の動きも本格化した。与党の民主主義者党は,次世代のリーダーと目されていたアナス党首を含む党幹部が汚職事件に関与していたことが次々と発覚したことで世論調査での支持率を大きく減らし,党内は混乱した。アナス辞任後の党首には,最高顧問会議議長だったユドヨノ自身が就任するほかなく,党内に有力な次期大統領候補もいない。窮した民主主義者党は,国民の関心を引くことをねらって,党内外から大統領選への立候補者を募り,党内予備選での勝者を正式な候補者とするという方式を採用することにした。9月には11人が予備選に参戦することを表明し,党の公認をめぐって2014年4月の議会選後まで争うことになった。
ゴルカル党のアブリザル・バクリ党首は,2012年7月に党の正式な大統領候補として擁立されることがすでに決まっている。しかし,世論調査における支持率は1桁台に低迷しており,党内からはバクリ党首では勝てないという不満が表出している。かわりにユドヨノ第1期政権で副大統領を務めたユスフ・カラ前党首を擁立しようという動きがあるなど,党内は必ずしも一枚岩ではない。
自らが設立したグリンドラ党からの立候補を目指すプラボウォ・スビアントも,豊富な資金力を活かした選挙運動を全国的に展開している。元陸軍高級将校ゆえの実行力・決断力の高さとポピュリスト的な政策をアピールして支持を集めつつあり,世論調査では支持率15%前後で常に2位の位置につけている。
しかし,これら旧来のエリートをおさえて突出した人気を誇っているのがジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)ジャカルタ首都特別州知事である。企業家出身のジョコウィは,中ジャワ州ソロ市長時代の市政改革が評価されて人気が高まり,2012年に市長を辞任して出馬したジャカルタ州知事選では,現職圧倒的有利という前評判を覆して当選した。既存のエリートとは異なり,貧困家庭の出身であるという親しみやすさや,市民の目線に立った政治運営,実行力の高さなどがさらにジョコウィの評判を高めており,いまやジョコウィ人気は全国規模に拡大している。世論調査でも,支持率20〜30%で常にトップの人気を維持している。
ところが,ジョコウィ自身は大統領選への出馬に関して何もコメントしていない。それというのも,彼の所属する闘争民主党が大統領候補を正式に決定していないためである。10年ぶりの政権奪還を目指す党内からは,過去2度の大統領選で敗れているメガワティ・スカルノプトゥリ党首ではなく人気の高いジョコウィを大統領候補に据えようという声があがっているが,党の最終決定権限を握るメガワティは明言を避けている。メガワティや古参幹部らは,あくまでも党首自身が出馬すべきだと考えているようである。ただし,メガワティに対する支持率はきわめて低く,大統領選で当選できる見込みは薄い。メガワティは,闘争民主党の大統領候補は4月議会選後に発表すると述べており,ジョコウィ人気に便乗して議会選で大勝し,その勢いで大統領選に臨むことを目指しているようである。
2013年の国内総生産(GDP)の実質成長率は4年ぶりに6%を下回り,5.78%成長となった。中央統計庁の速報値によれば,生産ベースでの成長率への寄与度をみると,卸売・小売・ホテル・飲食業の成長率が鈍化した影響が大きかった。支出ベースでみた実質成長率からは,輸出が前年同期比5.3%増,輸入は同1.2%増と純輸出が大きく増加している一方で,投資は前年同期比4.7%増と2012年の同9.8%増に遠く及ばなかったことが成長率の鈍化に大きく影響している。
2013年9月の貧困者比率は前年同月比で約0.2ポイント減少したものの,3月からは微増に転じて11.47%となった。また,失業率(8月)も2005年から続いていた減少傾向から上昇に転じて6.25%と悪化している。6月,インドネシアはミレニアム開発目標(MDGs)の第1目標(貧困・飢餓の撲滅)について国際的な目標を上回る成果を上げたとして,ほかの37カ国とともに国連食糧農業機関(FAO)により表彰されているが,2014年までに貧困者比率を10%以下にするという第2次ユドヨノ政権の中期開発目標の達成はきわめて困難な状況にある。
通関ベースでみた貿易収支は,2012年に1961年以来となる赤字を記録したが,2013年には赤字額が40億6370万ドルへと拡大した。通関ベースでみた輸出額(本船渡条件,FOB)の内訳によれば,総輸出額は前年比3.9%減の1826億ドルであった(石油ガス輸出は同11.8%減,非石油ガス輸出は同2.0%減)。非石油ガスの輸出額割合でみた上位4品目は鉱物性燃料,動植物性油脂,電子機器,ゴム・同製品と前年から変化はないが,いずれも前年比マイナス成長となっている。これに対して,5番目に入った鉱石・スラグ・灰は前年比28.7%増と2桁成長を記録している。これは2014年1月からの未加工鉱石の輸出規制策を控えて,駆け込み輸出が生じた影響と思われる。一方で,通関ベースでみた輸入額(運賃・保険料込み条件,CIF)の内訳をみると,総輸入額は前年比2.6%減の1866億ドル(石油ガス輸入は同6.4%増,非石油ガス輸入は同5.2%減)であった。非石油ガスの輸入額割合でみた上位4品目(一般機械,電子機器,鉄鋼,輸送機器)は軒並み前年比マイナスの伸び率を記録している。なお,国別の輸出入総額をみると,2013年にはついに中国が日本を抜いて最大の貿易相手国となっている。
国際収支をみると経常収支は2年連続の赤字となった。(通関ベースとは異なり,輸出入ともFOBで計上されている)国際収支上の貿易収支は黒字の縮小傾向が続き,経常収支赤字は第2四半期にGDP比4.4%にまで拡大したが,通年では3.3%にとどまった。外貨準備高は,経常収支赤字の拡大を反映して,1128億ドル(2012年末)から7月末には927億ドルまで減少したが,2013年末には994億ドルまで戻っている。これは輸入および政府対外債務返済額の5.5カ月分に相当する。
燃料補助金削減と物価上昇6月22日,補助金付きガソリンと軽油価格がそれぞれ1リットル4500ルピアから6500ルピア(44%増),4500ルピアから5500ルピア(22%増)へと引き上げられた。これにより7月のインフレ率は2009年2月以来となる前年同月比8.6%を記録し,年間のインフレ率は8.4%と5年ぶりに高い水準となった(図1)。
(注) 政策金利は,2005年10月以降は中央銀行レート(BI rate),それ以前については1ヵ月物中央銀行証書金利(SBI rate)を用いている。
(出所) インドネシア中央銀行のウェブ資料をもとに筆者作成。
この価格引き上げは,6月17日に2013年度補正予算案が国会を通過し,燃料補助金の削減が決定したことに伴う措置であった。財務省はこの補正予算案作成の理由として,中央・地方政府をあわせて財政赤字はGDP比3%以下に抑えなければならない(中央・地方間の財政均衡に関する法律2004年第33号)が,当初予算のもとでは中央政府予算だけでもその水準を超える可能性が高く,違法となる可能性がある,といった点を挙げている。補正予算案は,野党の闘争民主党,グリンドラ党,ハヌラ党のほか,連立与党の福祉正義党も反対にまわったが,国会で賛成多数により可決された。これにより中央政府の財政赤字はGDP比2.38%に抑えられると見込まれている。
かつてユドヨノ政権が発足した2004年には1リットル1810ルピアで販売されていた補助金付きガソリンは,国際原油価格の高騰に伴い,翌年10月には4500ルピアへ,そして2008年5月には6000ルピアにまで引き上げられている。その後,原油価格の下落に伴い,ガソリン価格は2009年1月に4500ルピアに戻していた。産油国であるにもかかわらず国際原油価格の上昇が負の影響を及ぼした背景には,石油製品への国内需要は年々増加している一方で,スハルト政権崩壊後の政治・法制度面におけるリスクの高まりから石油産業では投資が進まず,生産量が2000年の日量142万バレルから2012年には同86万バレルにまで落ち込んでいることがある。2003年,通関ベースでみた原油・石油製品の貿易収支は赤字となり,2009年には石油輸出国機構(OPEC)から脱退した。2013年には原油も輸入額が輸出額を上回り,原油・石油製品の貿易収支赤字は約277億ドルに膨らんだ。これが経常収支赤字の要因となっているため,その拡大を抑えるためにも燃料補助金削減は避けられない状況にあった。
補正予算には,過去の補助金削減時と同様に,2013年12月までの時限的な貧困層向け現金給付策(BLSM)の予算が含まれていた。現金給付策は6月22日から実施され,1世帯当たり60万ルピアが全世帯の約4分の1にあたる1550万世帯に郵便局を通して支給された。
財政赤字はまだ高い水準にあるため,長期的には補助金付き石油燃料価格を市場価格に近づけていくことは避けられない。燃料補助金予算はより効率的に貧困削減を実現するための条件付き現金給付策予算などに振り分け,段階的に補助金付き燃料価格を引き上げていくことが必要である。しかしこれは次期政権にとっての大きな課題として持ち越されることになった。
ルピア安と双子の赤字5月,アメリカ連邦準備理事会(FRB)による量的緩和策の縮小議論が出始めると,新興国の対ドル為替レートは軒並み下落した。インドネシアでは6月の燃料補助金削減に伴いインフレ率も上昇していたため,これがさらに通貨安に拍車をかけた。
対ドル為替レートの急速な減価を招いた国際収支赤字,特に第2四半期に100億ドル近くにまで膨らんだ経常収支赤字に直面した政府は,限定閣僚会議にインドネシア経営者連盟(Apindo)とインドネシア商工会議所(Kadin)の代表も交えて現状把握ならびに対策を議論し,8月23日,ハッタ・ラジャサ経済担当調整相が4項目からなる経済政策パッケージを発表した。その内容は以下のようなものである。第1に,経常収支赤字と対ドル為替レートの改善を図ることを目的に,(1)輸出促進のため,生産額の30%以上を輸出している労働集約産業に対する減税を実施する,(2)バイオディーゼルの利用増を促進して軽油の輸入を削減する,(3)完成車や奢侈品の輸入に対して増税を行う,(4)輸出増のため一時的にニッケル鉱石など未加工品での鉱石輸出制限を緩和する。第2に,2013年度予算の赤字をGDP比2.38%以下に抑える。第3は,購買力維持のため,中央銀行と連携して価格・インフレ率を安定させる。具体的には,牛肉・園芸作物の取引システムを数量規制から価格規制へ移行する。第4が,投資の促進である。許認可の簡素化と窓口一本化で効率化を図ることや,投資ネガティブリストに関する大統領令2010年第36号を改正すること,パーム原油や,カカオ,籐,ボーキサイト,ニッケル,銅などに関連する投資プログラムを加速させるため,免税期間や課税控除といったインセンティブを付与すること,などが挙げられている。その後,第2次経済政策パッケージとして,(1)最終消費財輸入品に対する税率引き上げ(第22条所得税の引き上げ),(2)再輸出目的の輸入業者を対象とした付加価値税免除や輸出目的輸入便宜(KITE)制度利用の簡素化,という2つの財務相令も12月6日付で公布された。
中央銀行ならびに金融サービス監督庁(OJK)も8月23日,ルピア安・経常収支赤字に対応すべく金融政策を発表している。中央銀行の政策は,(1)外貨定期預金の期間の柔軟化,(2)輸出収入をルピアに交換した輸出業者に対する外貨購入規制の緩和,(3)商業銀行に対する為替スワップ取引規制の緩和,(4)非居住者が株式・債券取引に利用しているルピア口座を商業銀行の短期対外債務カテゴリーから除外,(5)国内での銀行間取引に限定した,譲渡性の中銀預金証書(SBDI)の発行,といったものであった。また,金融サービス監督庁は,株式市場への影響を和らげるべく,証券取引所の総合指数が3日間で15%以上下落した場合,20%まで自社株の買い戻しを可能にしたOJK令2013年第2号を26日に公布した。
これに加えて,中央銀行は,この時点で政策金利を年初の5.75%から6.5%へと段階的に引き上げていたが,8月29日に臨時理事会を急遽開催し,9月の定例会合を待たずに政策金利を2009年6月以来の7%に引き上げた。また,日本との120億ドルの二国間通貨スワップ協定を延長したことも発表している。
経済政策パッケージに含まれていた投資規制分野(ネガティブリスト)については,12月24日,最終改正案がまとまったとして,マヘンドラ・シレガル投資調整庁長官がその内容を発表している。規制緩和が進む分野をみてみると,インフラ整備の促進という視点から注目されるのは,官民連携事業方式(PPP)を活用して建設される港湾施設については,外資の出資比率が95%へと引き上げられた点である。同様に,10MW以上の発電施設ならびに送電・配電業についても100%の参入が認められるほか,陸上輸送施設や広告業の分野で外資への開放が進められるとされる。
反対に,規制が強められた業種もみられる。流通・倉庫・冷蔵倉庫業は100%から33%(冷蔵倉庫業は東部地域については67%)へと外資出資比率の上限が引き下げられる。園芸作物についても,園芸に関する法律2010年第13号の規定に従って,外資の上限が95%から30%へと引き下げられる。そして,当初100%の外資への開放が期待されていた空港については,航空に関する法律2009年第1号の規定に従い,外資出資比率が49%以下となる。
為替レートの推移を振り返ってみると,対ドルでは世界的金融危機時と同程度の水準にまで減価しているが,実質実効為替レートは2008年当時ほどには減価していない(図2)。急速なルピア安の進行に対しては,アジア通貨危機の再来を懸念する声もあがったが,少なくとも2013年については杞憂に終わった。
(注) 実質実効為替レートは国際決済銀行が作成・公開している値(月平均値)。名目為替レートはインドネシア中央銀行が公表している対ドル為替レートの値(月平均値)であるが,ここでは実質実効為替レートの動きと比較できるよう,1ドル=9000ルピアを100に指数化した場合の変動を描いている。なお,通貨危機時には,対ドルでは1998年7月に1万3963ルピア,実質実効為替レートでは同年6月に37.11を記録している。
(出所) 国際決済銀行(BIS)ならびにインドネシア中央銀行のウェブ資料をもとに筆者作成。
2013年にも大豆や牛肉,唐辛子,赤玉葱といった農産物価格の高騰が続いた(図3)。この高騰の原因には,農業省の策定した中期計画「農業省戦略計画2010~2014年」と,自由貿易協定の発効を背景とした農産物輸入に対する一連の規制強化策の導入があると指摘されている。農業省の中期計画をみると,39品目について生産目標が設定されている。なかでも,コメ・砂糖・大豆・牛肉・トウモロコシの5品目については2014年までの国内自給達成が掲げられた。ただし,それを実現するためには砂糖・大豆・牛肉の生産量の成長率を2009年までの5年間に実現した年間成長率を大幅に上回るものにしなければならず,きわめて達成が困難な目標であった。しかし,政府はこの計画を前提に,たとえば牛肉については,その輸入割当を2011年の15万7000トンから2013年には8万トンに半減させていった。この供給量の減少が牛肉価格の高騰を招いたとみられている。
(注) 2012年1月=100。2012年1月の輸入大豆価格の単純平均値は1キログラム当たり8276ルピア,牛肉価格の単純平均値は1キログラム当たり7万1825ルピア。
(出所) 商業省のウェブ資料をもとに筆者作成。
その一方で,2010年にはASEAN自由貿易地域(AFTA)枠組みのもとで,インドネシアを含む原加盟国で輸入関税が撤廃され,同時にASEAN・中国自由貿易協定(ACFTA)も発効したため,域内から輸入される果樹・野菜といった園芸作物への関税はゼロとなっていた。これが堅調な内需主導の経済成長のもとで輸入増を招き,国内生産者は低価格の外国産農産品の輸入に対する規制を求めていた。
2011年12月,政府は,輸入規制策のひとつとして,国内の検疫体制の不備を理由にインドネシア最大の貿易港であるタンジュン・プリオク港などを園芸作物の輸入港から除外する方針を発表した。これに対してはアメリカが強く反対をしたため,基準認証に関して相互承認協定をインドネシアと結んでいるアメリカ,オーストラリア,カナダ,ニュージーランドについてはタンジュン・プリオク港の利用が認められることになった。
他方で政府は,輸入ライセンス制の導入を通じて規制を強めていった。2011年9月には動物・動物製品の輸入が許可制となり,2012年1月には農業省に認可された園芸作物輸入業者にのみ商業省から輸入ライセンスが付与されることになった。園芸作物の輸入規制に対して,アメリカは2013年1月10日,世界貿易機関(WTO)の紛争解決手続きに基づいた協議を申し入れた(4月24日,紛争解決機関が小委員会を設置)。
輸入港の制限や輸入ライセンス制を通じた規制は,輸送コストの増加や国内供給量の減少をもたらして農産物の小売価格上昇を引き起こした。そこにルピア安が急速に進んだため輸入していた農産物価格が急上昇した。4月3日,商業相は園芸作物の輸入制限規則を緩和すると発表し,それまで規制対象となっていた57品目のうち赤玉葱・唐辛子を含む39品目の輸入手続きを簡素化した。また6月20日,牛肉価格の上昇が見込まれる断食月ならびにイドゥル・フィトリ(断食明けの大祭)に備えるべく,政府は食糧調達公社(BULOG公社)を通じて輸入割当とは別枠で牛肉3000トンを追加的に輸入することを決定した。しかしその後も農産物価格の上昇は続いたため,豆腐・テンペ(大豆発酵食品)製造業者らは大豆価格の高騰に抗議して9月9日から3日間,全国一斉ストライキを行った。
政府は,9月18日,大豆の関税5%の撤廃を決定し,3日後には,大豆の輸入割当や出荷前検査などの廃止を発表した。また,園芸作物や牛肉については,9月3日,ギタ・ウィルヤワン商業相とススウォノ農業相が共同記者会見を開き,園芸作物の輸入割当を撤廃し,牛肉や赤玉葱,唐辛子価格については参照価格を設定して価格安定化を図ると発表した。牛肉の場合には1キロ7万6000ルピアの参照価格を5%下回った場合には輸入を停止し,反対に15%上回る価格の上昇時には,輸入増により価格を安定化させるとしている。
2013年のインフレ率は年間8.4%と2008年以来の高水準であったが,食料品に限ると11.4%に達している。貧困者比率が9月に増加しているように,食料品価格の上昇が購買力の低下を通じて低所得層へ与えた影響は大きかったと思われる。2014年2月に国会で可決成立した新商業法は,政府に輸出入規制についての強い権限を付与している。今後施行されるこの法律に関する実施細則策定にあたっては,農産物輸入規制が招いた一連の経験を反映させることが望まれる。
低価格低燃費車への優遇税制導入5月23日,政令2013年第41号に大統領が署名し,低価格低燃費の低コスト・グリーンカー(LCGC)に対する優遇税制が実現した。ハッタ・ラジャサ経済担当調整相は,LCGC政策の導入理由として,環境対策に加えて,2015年のASEAN経済共同体(AEC)発足を前に輸入が増加するのを防ぐ狙いがあると説明している。LCGC政策の導入案は2010年に発表されており,遅くとも2012年中の実施が見込まれていた。
政令の施行細則は7月5日に公布され,奢侈税免除の条件は,(1)燃費1リットル当たり20キロメートル以上,(2)排気量はガソリン車で980~1200CC,ディーゼルエンジン車は1500CC以下,(3)価格は9500万ルピア以下,と定められた。
導入後,国内からはこの政策に反対する声が多くあがった。ジョコウィ・ジャカルタ首都特別州知事は,これが2010年に発表された政府の交通渋滞削減のための17政策に矛盾しているとして,17政策を発表したブディオノ副大統領に対してLCGC政策に反対する書簡を送った。また,11月19日の地方代表議会(DPD)本会議の場でも,大統領の代理として出席したハッタ経済担当調整相に対し,同政策が交通渋滞を悪化させる恐れがあるとの懸念が表明されている。
9月9日,LCGCに対する税優遇適用の第1号がアストラ・ダイハツ・モーター社から販売された。2014年2月時点で同社の国内調達率はすでに88%に達しているともいわれており,5年後までに100%に達することも可能だと,ヒダヤット工業相は期待している。先述したように,補助金付きガソリン価格の44%引き上げに加えて政策金利も引き上げられたにもかかわらず,2013年の自動車販売台数は約123万台と最高記録を再度更新している。2014年も業界団体が予想するように10%増の130万台へと記録を更新するか,注目が集まっている。
従来,隣国オーストラリアとの関係は,旧東ティモール領やパプア州における分離独立運動の問題をめぐってしばしば摩擦が生じるなど,決して安定的なものではなかった。しかし,ユドヨノ政権下では,2006年に7年ぶりに安全保障協定(ロンボク条約)が締結されるなど,比較的良好な関係が維持されてきた。2013年7月に,ユドヨノ大統領はオーストラリアのケビン・ラッド首相と会談し,難民急増で受入政策の転換を迫られているオーストラリア政府に対して国際会議の開催を提案した。8月にインドネシア政府が主催して開催された「人の非正規移動に関する特別会議」には,難民の送り出し国であるアフガニスタンやミャンマー,中継地のバングラデシュ,マレーシア,タイ,受け入れ国のオーストラリア,ニュージーランド,パプア・ニューギニアなどアジア太平洋地域の13カ国と国際機関が参加し,難民発生の予防,早期発見,保護,取り締まりなどに関係国が協力して取り組むことを約した「ジャカルタ宣言」を採択した。
しかし,11月にオーストラリア政府によるインドネシア政府首脳に対する盗聴疑惑が豪メディアで報道されると,関係は急速に悪化した。アメリカ中央情報局(CIA)の元職員エドワード・スノーデンから提供された情報によると,オーストラリアの情報機関が2009年にユドヨノ大統領のほか,大統領夫人,大統領報道官,主要閣僚などに対する盗聴・監視活動を行ったということである。インドネシア政府は報道の内容に強く反発し,オーストラリア政府に対して詳しい説明と謝罪を求めるとともに,再発防止のため行動規準の策定を提案した。しかし,オーストラリア政府が盗聴の実態を明らかにしなかったうえ明確な謝罪も避けたため,ユドヨノ大統領はオーストラリアとの協力関係の見直しに入った。インドネシア政府は,駐オーストラリア大使を召還するとともに,軍事,情報,密航対策などの分野における協力停止を発表した。
2014年に入っても,オーストラリア海軍が自国海域に侵入した難民船をインドネシア海域に強制的に追いやったことが発覚したり,2013年にアメリカとインドネシアの間で貿易摩擦が発生した際に,オーストラリアの情報機関が盗聴記録をアメリカ政府に提供していたことが報道されたりするなど,関係改善の見通しはまったく立っていない。
対日関係日本の安倍首相は1月18日,就任後初の外遊先のひとつであるインドネシアでユドヨノ大統領と会談し,対ASEAN外交5原則を発表した。また,インドネシア経済開発加速・拡大マスタープラン(MP3EI)の一環である首都圏投資促進特別地域(MPA)戦略プラン実施に向けて協力を進めていくことでも両首脳は合意した。さらに,安倍首相とユドヨノ大統領は,10月7~8日にかけてバリで開催されたAPEC首脳会議,12月13日の日・ASEAN特別首脳会議でも会談を重ね,MPAの協力促進や南シナ海問題での両国の連携などについて確認しあった。
MPA関連案件で日本側にとって目下大きな懸念材料となっているのは,第1号官民連携(PPP)案件であり,かつ,インドネシア・インフラ保証基金(PII)の適用第1号案件でもある中ジャワ州バタン県の火力発電所の建設である。日本企業が落札し,APEC・CEOサミットでの講演では安倍首相が同事業で活用される日本の環境技術をアピールしたが,住民の反対運動により用地買収が滞っており,2013年10月に延期されていたファイナンス・クローズ(融資組成の完了)は2014年10月に再延期されている。一方,MPAのフラッグシップ事業のひとつに位置づけられている大量高速鉄道(MRT)建設計画については,ジョコウィ・ジャカルタ州知事が就任後に計画の見直しを指示し,中央政府と地方政府の間で1250億円の国際協力機構(JICA)からの融資の債務負担割合をめぐって交渉が行われたために,着工が当初予定より遅れた。最終的には,中央政府の負担は49%とされ,期間40年(猶予期間10年),利子1%以下という条件での借り入れが決定している。MRTは4月30日,ジャカルタ首都特別州議会にて2013~2017年中期開発計画案(RPJMD)が承認された後,5月2日,知事出席のもと着工式典が開催された。MRTの第1段階は2017年に完了する予定である。
もうひとつ大きな進展がみられたのが,インドネシア・アサハン・アルミニウム(イナルム)社の売却問題である。東南アジア唯一のアルミ製錬所である同社は,1976年にインドネシア政府と日本アサハンアルミニウム社(JICAのほか日本の民間企業12社が株主)の合弁会社として設立され,1983年から操業を開始した。これは日本政府による援助の一環として実施された経済協力プロジェクトであった。プロジェクト開始当時,オイルショックにより電力価格が高騰し,国内生産が困難になっていた日本は,海外でのアルミ資源の開発・輸入を必要としていた。イナルム社は生産したアルミ地金の6割を日本へ輸出していたが,2013年10月末をもって合弁契約が切れることになっていた。10月30日,国会第11委員会は,政府の設定したイナルム社買収の上限価格を承認した。この売却額をめぐって当初,日本側は国際仲裁裁判所に申し立てる方針であったが,問題の長期化による関係悪化といった悪影響を考慮した結果,11月13日,中央政府と日本アサハン社との間で,イナルム社の暫定的資産価値(5億5670万ドル)ならびに所有権移転方法について基本合意に至った。こうして12月19日,正式に株式譲渡の合意が成立し,インドネシア政府がイナルム社を100%所有することになった。
対韓国関係2013年は韓国とインドネシアにとって国交樹立40周年となる記念の年であった。韓国の朴槿恵大統領はバリでのAPEC首脳会談,ブルネイでのASEAN首脳会談に参加後,10月10日にジャカルタを訪れた。11日,朴大統領も出席したインドネシア・韓国ビジネス投資フォーラムで,韓国企業はジャンビ州の200MW石炭火力発電所建設など計7件総額100億ドル以上とされる覚書をインドネシア側と締結した。12日の首脳会談では,インドネシア経済特区や防衛分野など4分野で協力を進めることが合意され,覚書が交わされた。両国政府は,2013年内に包括的経済連携協定(CEPA)を締結すべく努力することも確認したが,その後の会合で関税率などについて合意に達しなかったことから,2014年上半期の締結が目指されることになった。12日には,両国の中央銀行間で初めてとなる100億ドル相当の二国間通貨スワップ協定を結んだことも発表されている。
民間部門の経済協力で大きな注目を集めたのは,クラカタウ・ポスコ製鉄所の稼働である。12月23日にユドヨノ大統領やヒダヤット工業相,ギタ商業相らも出席し,同製鉄所の火入れ式が行われた。同製鉄所は,国営クラカタウ製鉄社と韓国の鉄鋼最大手ポスコ社が,2010年から総額30億ドルをかけて建設した東南アジア初の一貫製鉄所で,資本比率はポスコ社が7割を占める。操業開始後は,年間300万トンの鉄鋼製品を生産する予定であるが,第2段階に入る2015年末以降は,投資総額は60億ドル,年間600万トンの生産が可能になるとされる。インドネシアの鉄鋼消費量は,過去10年間,平均して年13%増と周辺諸国を上回る成長を記録し,2012年には粗鋼換算で1500万トンに達したとされる。その一方で国内生産量は増加せず,輸入依存度が高まっていた。そのため,同製鉄所の稼働により鉄鋼製品の国内自給率が高まるとして政府の期待は高い。
対中国関係10月2日,APEC首脳会談にあわせて習近平国家主席が初めて来訪し,ユドヨノ大統領と会談した。両国は,2005年に結ばれた戦略的パートナーシップを包括的なものへと引き上げることで合意するとともに,5年間の経済協力開発プログラムなど,6項目からなる包括的協力にも合意した。翌3日,習国家主席は海外からの要人としては初めて国会で演説を行い,中央銀行間では150億ドル相当の新たな二国間通貨スワップ協定が締結された。さらに同日のインドネシア・中国ビジネス午餐会の場では,両首脳の立ち会いのもと,21件総額282億ドルの共同事業契約が結ばれた。このなかにはジャカルタ・モノレール社と中国交通建設社との間でのモノレール建設計画への投資に関する合意書への署名も含まれている。MRT同様,モノレール建設もジャカルタ州議会で中期開発計画案として承認され,6月29日,ジャカルタ・モノレール社はドイツ・中国・タイ・シンガポール・インドネシアからの7社との間で共同事業体合意書に調印していた。こうして6年間の中断を経て,10月16日にモノレール建設が再開されることになった。
2014年は,新しい大統領を選出する重要な年である。3選禁止の憲法の規定によりユドヨノ大統領の立候補はなく,必ず政権が交替する。ユドヨノ政権の10年間で政治的安定と経済成長を実現し,新興民主主義国,新興経済大国としての国際的な地位を確立したインドネシアで,誰が大統領に選ばれ,どのような政権が樹立されるのか,そしてその新政権がどのような政策を展開するのか,世界中が注視している。4月に議会選挙,7月に大統領選挙第1回投票,さらにここで過半数を獲得する候補がいなければ上位2組による決選投票が9月に実施される。
経済分野では,2014年初めに公布された新工業法・新商業法に対して,保護主義的傾向が加速するのではないかとの懸念が持たれている。新鉱業法(法律2009年第4号)により,2014年1月からは未加工鉱石の鉱物資源輸出は原則的に禁じられているため,これが経常収支赤字のいっそうの拡大を招く可能性がある。さらにこの禁輸措置をめぐっては日本などがWTOへ提訴するという動きも伝えられている。一連の選挙を控えて,ユドヨノ政権と新政権はポピュリズム的政策と一線を画した経済政策を実施できるかどうか,注目される。
(川村:地域研究センター)
(東方:地域研究センター)
1月 | |
5日 | 警察テロ対策チーム,12月の中スラウェシ州ポソでのテロ事件容疑者5 人を西ヌサトゥンガラ州内で射殺。 |
8日 | 総選挙委員会,2014年総選挙に参加する10政党とアチェ州地方議会選に参加する3政党を認可。 |
10日 | ジャカルタ汚職裁,ハンバラン総合体育施設建設汚職事件の被告アンジェリーナ民主主義者党議員に懲役4年半の実刑判決。 |
10日 | 輸入港制限や果樹・野菜の輸入許可制などの規制に対して,アメリカがWTOの紛争解決手続きに基づいた協議を申し入れる。 |
13日 | ジャカルタで大規模な洪水が発生。17日には大統領官邸や州政府庁舎など中心部が浸水。州知事は非常事態宣言を発出。 |
15日 | 大統領,2012年12月に辞任した青年・スポーツ担当国務相にロイ・スルヨ民主主義者党議員を,石油・ガス上流部門執行特別対策本部(SKK Migas)長にルディ・ルビアンディニ・エネルギー・鉱物資源副大臣を任命。 |
18日 | 日本の安倍晋三首相,来訪。大統領と会談し,貿易・投資促進などに合意。 |
26日 | 民主国民党,党首にメディア・インドネシア・グループ総帥で元ゴルカル党幹部のスルヤ・パロを選出。 |
31日 | 汚職撲滅委員会,農業省牛肉輸入割当汚職事件の容疑者としてルトフィ・ハサン・イシャアク福祉正義党党首を逮捕。 |
2月 | |
11日 | 飲食業フランチャイズの直営店数を250店舗以下に制限する商業相令が公布。 |
18日 | フェイサル・タンジュン元国軍司令官,死去。 |
21日 | パプア州プンチャック・ジャヤ県で民兵が国軍兵士を襲撃。10人が死亡。 |
22日 | 汚職撲滅委員会,アナス・ウルバニングルム民主主義者党党首をハンバラン総合体育施設建設汚職事件の容疑者に指定。23日,アナスは党首を辞任。 |
24日 | 西ジャワ州知事選が実施され,福祉正義党公認のアフマド・ヘルヤワンが当選。 |
3月 | |
18日 | 総選挙委員会,高等行政裁判所の決定を受け,月星党を2014年総選挙参加政党に認可。25日には公正統一党も追加で認可。 |
18日 | ライオン航空,仏大統領府にてエアバス社から航空機234機を購入する契約を結ぶ。 |
19日 | 財務相,日本を含む5カ国からの冷延鋼板に対する反ダンピング課税を決定。 |
23日 | 陸軍特殊部隊兵士らがジョグジャカルタ特別州スレマン県の刑務所を襲撃,元部隊兵士の殺人犯を殺害。 |
27日 | 憲法裁,地方自治関連の法案については地方代表議会に提案権と審議権があるとの判断を示す。 |
29日 | 民主主義者党,アナス辞任後の党首を最高顧問会議議長のスシロ・バンバン・ユドヨノが兼務することを決定。 |
4月 | |
1日 | アチェ州議会,元独立派組織の自由アチェ運動旗を州旗とする条例を制定。 |
13日 | ライオン・エア航空機がバリのングラ・ライ空港への着陸に失敗。44人負傷。 |
13日 | 大統領,Twitterでの発信を開始。 |
14日 | 教育・文化相,試験用紙などの遅配により15日に実施予定の全国統一卒業試験を11州で延期すると発表。 |
22日 | 大統領,シンガポール,ミャンマー,ブルネイ歴訪に出発(~26日)。ブルネイではASEAN首脳会議に出席。 |
22日 | 商業相,園芸作物の輸入制限規則を緩和し,39品目の輸入手続きを簡素化。 |
30日 | ジャカルタ首都特別州議会,ジャカルタ大量高速鉄道(MRT),モノレール,大規模防潮堤,洪水対策の地下トンネルなどのプロジェクトを含む中期開発計画案を承認。 |
5月 | |
1日 | 大統領,2014年からメーデーを国民の休日とすると発表。 |
2日 | ジャカルタ首都特別州知事,MRTの建設開始を宣言。 |
6日 | 外相,イギリス国内に自由西パプア運動の事務所建設を許可したことでイギリス大使に抗議。 |
8日 | 警察テロ対策チーム,各地でテロ容疑者を一斉摘発。バンドンでは13人を逮捕,7人を銃撃戦のうえ殺害。 |
15日 | バリ州知事選が実施され,民主主義者党などの公認で現職のパスティカが当選。 |
16日 | 憲法裁,1999年森林法の一部条文を違憲と判断,慣習林は地域共同体の所有であるとの判決を下す。 |
16日 | 外相,訪米中の講演でインド洋・太平洋友好協力条約構想を提唱。 |
20日 | プラモノ・エディ・ウィボウォ陸軍参謀長が退役。後任はムルドコ陸軍副参謀長。 |
20日 | 中銀,参照レートとして当日朝の銀行間取引の平均値に基づくルピア・ドル銀行間直物相場(JISDOR)を導入。 |
20日 | ジャカルタ総合株価指数(JCI)が過去最高値を更新(5214.98)。 |
21日 | 大統領,財務相にハティブ・バスリ投資調整庁長官を任命。 |
23日 | 大統領,低燃費車に対しては奢侈税を引き下げる政令に署名。 |
24日 | アグス・マルトワルドヨ前財務相が中銀総裁に就任。任期は2018年まで。 |
26日 | 中ジャワ州知事選が実施され,闘争民主党公認のガンジャル・プラノウォが当選。 |
30日 | ジャカルタ汚職裁,宗教省コーラン調達汚職事件の被告ズルカルナエン・ジャバル・ゴルカル党議員に禁錮15年の実刑判決。 |
30日 | EU,インドネシア製バイオディーゼルに暫定的反ダンピング課税を実施。 |
30日 | 大統領,人権・信教の自由の保障への功績からワールド・ステイツマン賞を受賞。 |
30日 | 大統領,ポスト2015年開発アジェンダに関するハイレベルパネルの共同議長として,報告書を潘基文国連事務総長に提出。 |
6月 | |
3日 | 中スラウェシ州ポソで警察署を標的とした自爆テロ事件が発生。 |
8日 | メガワティ元大統領の夫トウフィック・キマス国民協議会議長,死去。 |
10日 | サウジアラビアの在ジェッダ・インドネシア領事館で,出国書類手続きに集まったインドネシア人不法就労者による暴動が発生,1人死亡。 |
12日 | 中銀,2012年2月から5.75%で維持してきた政策金利を6%に引き上げ。 |
17日 | 国会,石油燃料補助金の削減を盛り込んだ補正予算案を可決。 |
22日 | 政府,補助金付き石油燃料価格の引き上げを実施。その影響緩和として,時限的な貧困層向け現金給付策(BLSM)を開始。 |
25日 | 大統領,スマトラ島で発生している大規模な森林火災による煙害について,シンガポールとマレーシア両国に謝罪。 |
26日 | 日本政府,インドネシア産カットシート紙に対する反ダンピング関税を見送る。 |
7月 | |
2日 | 国会で大衆団体法が可決成立。 |
2日 | ハヌラ党,ウィラント党首と民主国民党から加わったMNCグループ会長ハリ・タヌスディブヨを正副大統領候補に決定。 |
5日 | 最高裁,アルコール販売規制に関する大統領決定を上位法に反すると判断。 |
11日 | 北スマトラ州メダン市の刑務所で受刑者による暴動が発生。200余人が脱走。 |
11日 | 中銀,政策金利を6.5%に引き上げ。 |
24日 | 汚職撲滅委員会がマグサイサイ賞を受賞することが発表される。 |
25日 | 北スマトラ州メダン市近郊にクアラ・ナム新国際空港が開港。 |
31日 | シンガポールのDBSグループ,ダナモン銀行の買収計画を断念。 |
8月 | |
4日 | ジャカルタの仏教寺院で爆弾が爆発,3人がけが。 |
10日 | 東ヌサトゥンガラ州シッカ県パルエ島のロカテンダ山が噴火。6人が死亡。 |
13日 | 汚職撲滅委員会,ルディSKK Migas本部長を収賄の現行犯で逮捕。 |
16日 | 大統領,独立記念日演説を行う。また,2014年度予算案を国会に提出。 |
16日 | バンテン州で警察官射殺事件が発生。7月以降,警察を標的にしたテロ事件が続発。 |
18日 | 北スマトラ州バトゥバラ県の刑務所で,受刑者による暴動が発生,刑務所を一時占拠したほか,84人が脱走。 |
19日 | 憲法裁長官にアキル・モフタルが選出される。 |
20日 | ジャカルタで難民などの密航者対策を話し合う多国間会議開催。密航防止や取り締まりの協力を謳うジャカルタ宣言を採択。 |
22日 | 最高裁,汚職罪で禁錮15年の有罪判決を受けながら逃亡していた元会社社長に対する再審請求裁判で,逆転無罪の判決。 |
22日 | 総選挙委員会,2014年総選挙の確定立候補者名簿を発表。6608人が立候補。 |
23日 | 政府・中銀,株価・ルピア安をうけて経済政策パッケージを発表。 |
26日 | 政府,日本と低炭素成長パートナーシップのための二国間クレジット制度を創設。 |
26日 | 金融サービス監督庁,株買い戻しの規制を一部緩和する規則を公布。 |
29日 | 中銀,臨時理事会を開き,政策金利の7%への引き上げを決定。日本との二国間通貨スワップ協定の延長にも署名。 |
29日 | 東ジャワ州知事選が行われ,民主主義者党などの公認で現職のスカルウォが当選。 |
30日 | 大統領,国軍司令官にムルドコ陸軍参謀長を,後任の陸軍参謀長にブディマン国防省次官を任命。 |
30日 | 園芸作物の輸入割当撤廃,および参照価格による価格安定化を定めた大臣令の公布。 |
9月 | |
1日 | 大統領,カザフスタン,ポーランド,ロシア歴訪に出発(~7日)。ロシアではG20サミットに出席(5~6日)。 |
2日 | 森林減少と劣化の抑制による排出削減(REDD+)を担当する国家機関に関する大統領令が公布される。 |
5日 | ジョグジャカルタ軍事裁判所,刑務所収監中の受刑者を殺害した罪で陸軍特殊部隊兵士11人を有罪とする判決。 |
7日 | 政府,イスラーム団体からの反対をうけ,ミス・ワールドのボゴールでの開催を中止し,バリのみで開催することを決定。 |
9日 | 豆腐・テンペ製造業者,大豆価格の高騰に抗議するストを全国で実施(~11日)。 |
15日 | 民主主義者党の大統領候補を選出するための党内予備選挙に向け,11人の候補者による選挙戦が始まる。 |
15日 | 北スマトラ州のシナブン山が2010年以来となる噴火。 |
20日 | 政府,大豆の輸入枠・登録輸入業者制度を一時的に撤廃。 |
23日 | 国営石油会社プルタミナ,政府が所有する液化天然ガスの売買交渉権限をSKK Migasから譲り受ける。 |
25日 | インドネシアと中国,広州で開催の中小企業国際フェアを共催。 |
27日 | 大統領,最低賃金額の決定にあたっての指針に関する大統領訓令に署名。 |
10月 | |
1日 | 大統領,投資調整庁長官にマヘンドラ・シレガル財務副大臣を任命。 |
2日 | 汚職撲滅委員会,アキル・モフタル憲法裁長官を地方首長選挙異議申立審査における収賄の現行犯で逮捕。 |
2日 | 中国の習近平国家主席,来訪。経済・漁業・観光などの協力に合意。中銀は中国人民銀行と150億㌦の二国間通貨スワップ協定の更新に合意。3日にジャカルタ・モノレール社が中国交通建設社とモノレール・プロジェクトに調印(10月16日着工)。 |
7日 | APEC首脳会議がバリで開幕(~8日)。 |
9日 | 大統領,ブルネイで開催のASEAN首脳会議に出席。 |
12日 | インドのマンモハン・シン首相,来訪。汚職撲滅,麻薬密売対策,食料安全保障などの分野での協力に合意。 |
12日 | 大統領,来訪中の韓国の朴槿恵大統領と会談。経済・環境・国防などの協力に合意。中銀は,韓国銀行と100億㌦の二国間通貨スワップ協定を締結。 |
19日 | 大統領,憲法裁長官逮捕をうけ,憲法裁判事の選出方法などを定めた法律代行政令を制定。 |
25日 | 大統領,スタルマン警察庁刑事局長を新警察長官に任命。 |
25日 | 国会,2014年予算法案を可決。 |
31日 | 最低賃金の引き上げなどを求め,各地で労働組合のデモやストライキが発生。 |
11月 | |
1日 | ジャカルタの米・豪両国大使館が,大統領を含む政府首脳に対して盗聴を行っていたことが明らかになる。 |
1日 | アキル憲法裁長官が懲戒免職され,新長官にハムダン・ズルバが選出される。 |
4日 | 総選挙委員会,2014年総選挙の確定選挙人名簿を発表。有権者数は1億8562万人。1040万人分のデータに問題が残る。 |
7日 | 第6回バリ民主主義フォーラムが開幕。81カ国・3国際機関の代表が参加。 |
11日 | 政府,フィリピン・ルソン島の台風被害に対して支援金100万㌦と援助物資100万㌦相当の提供を発表。 |
12日 | 中銀,政策金利を7.5%に引き上げ。 |
12日 | 菅原茂・気仙沼市長,来訪。東日本大震災の支援に対する謝意を大統領に伝える。 |
15日 | 汚職撲滅委員会,ブディ・ムルヤ元中銀副総裁をセンチュリー銀行汚職事件の容疑者に指定。 |
18日 | 外相,豪政府による盗聴事件をうけ,駐豪大使を召還。20日には,大統領が豪との軍事・諜報・密航対策協力の停止を発表。 |
20日 | オランダのマルク・ルッテ首相,来訪。包括的パートナーシップに関する共同宣言を発表。 |
12月 | |
3日 | 159カ国の代表が参加するWTO閣僚会議がバリで開幕。7日に合意が成立。 |
6日 | 政府,経常赤字改善のための第2次経済政策パッケージを策定。 |
9日 | ジャカルタ汚職裁,牛肉輸入割当汚職事件の被告ルトフィ福祉正義党前党首に対して禁錮16年の有罪判決。 |
12日 | 中銀,日本との間に第3次二国間通貨スワップ取極を締結。上限額が倍増される。 |
12日 | 大統領,東京で開催の日本ASEAN友好協力40周年を記念する特別首脳会議に出席のため訪日(~14日)。 |
18日 | 国会,村落法案を可決。 |
19日 | 国会,憲法裁に関する法律代行政令の法律化を賛成多数で可決。 |
19日 | 政府,株式譲渡によりインドネシア・アサハン・アルミニウム(イナルム)社を国有化。 |
19日 | 国会,新工業法案を可決。 |
20日 | 汚職撲滅委員会,憲法裁長官汚職事件の贈賄側容疑者としてバンテン州知事アトゥット・ホシヤを逮捕。 |
31日 | 金融サービス監督庁,中央銀行との間で金融監督業務に関する譲渡手続きを実施。 |