アジア動向年報
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各国・地域の動向
2013年の韓国 新政権発足と対日関係の悪化,経済は緩やかな回復基調
奥田 聡渡邉 雄一
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2014 年 2014 巻 p. 53-82

詳細

2013年の韓国 新政権発足と対日関係の悪化,経済は緩やかな回復基調

概況

国内政治では,2月25日に就任した朴槿恵大統領が高い支持を集めたが,社会統合には課題を残した。外交面での得点により,朴大統領への支持率は5割を上回った。しかし,野党勢力の朴大統領への個人攻撃のほか,国家情報院の大統領選介入問題などを挙げた「大選不服」攻勢が続き,国会の機能がマヒした。また,原則固守・非妥協という朴大統領の政治スタイルが目立った。

経済は,底堅い輸出の伸びや個人消費など内需の緩やかな復調を受けて,景気回復の兆しがみえた。新政権による相次ぐテコ入れで不動産や建設景気も持ち直しつつある。その一方,企業業績はサムスン電子の1強構造が鮮明となるなか,ほかの主要企業はウォン高の進行や市況の悪化などから軒並み減収減益に陥り,一部の中堅財閥では事実上の経営破綻が相次いだ。朴大統領の経済運営では,2012年の大統領選挙で公約に掲げた「経済民主化」や「国民幸福」に関連する施策が本格的に始動したほか,成長戦略である「創造経済」の実現に向けても緒についた。

対外関係では,南北関係が朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の休戦協定白紙化宣言や開城工業団地の操業中断で緊張したが,8月の同工団の操業再開合意で関係は好転した。日本側の歴史認識や靖国参拝などをめぐる韓国側の厳しい姿勢が続き,日韓関係の改善は遠のいている。6月の大統領訪中で韓中両国は蜜月関係を演出したが,中国の防空識別圏設定で困惑感も広がった。対米関係ではミサイル防衛や原子力協定をめぐり両国の意見はかみ合わなかった。

国内政治

韓国史上初の女性大統領就任

2月25日,李明博大統領が5年の任期を終えて退任し,2012年12月の大統領選挙において51.6%の得票率で当選した朴槿恵が韓国史上初の女性大統領に就任した。就任演説では父である朴正煕・元大統領の成し遂げた「漢江の奇跡」の再来を強調したほか,政権交代に伴う部署改編では大統領秘書室・警護室や経済副総理を復活させるなど,復古調の政権交代となった。

一方では,韓国社会における価値観の多様化,階層間対立の激化,経済の成熟,近隣国際情勢の緊張など,山積する内外の懸案への対処が課題となった。とくに,内政面では野党勢力の非協力と,この影響を受けた人事のもたつき,そして政策提示の遅延という洗礼を受けた。

諸問題の縮図――閣僚任命の遅延

大統領選当時,朴候補の安定感ある戦いぶりは,勢力分裂で自滅した野党とは対照的であった。しかし,当選後の朴陣営の動きはそれまでとは様相を異にした。安定感のなさを印象づけた最大の要因は新政権の主要人事の難航であった。

1月29日,閣僚の要となる首相に指名されていた金容俊・大統領職引継委員会委員長が指名を辞退した。金容俊の首相指名が公表されて以降,マスコミは不動産投機や子息の兵役忌避問題を盛んに取り上げていた。内定者脱落のケースはこれにとどまらなかった。政権発足前後の時期における同様の事例は,国防相や新政権の政府部署改編の目玉となる未来創造科学相などの重要閣僚ポストのほか,憲法裁判所長官など6件発生し,そのたびに人選確定が遅延することとなった。閣僚就任が順当と思われた大物よりも,政治的に無名なダークホース的人物を起用する意表を突いた人事が目立ち,内定者の顔ぶれに対していぶかしむ声も上がりはじめた。政権サイドの人選をめぐる問題のほか,ポストへの就任の遅れも目立った。閣僚人事が出揃ったのは尹珍淑・海洋水産部長官が任命された4月17日,政権発足後52日目のことで,李明博政権発足時の組閣所要日数21日に比べて立ち上がりの遅れは否めなかった。

政権立ち上がりにおける閣僚任命の遅延は,朴大統領の意思疎通のまずさや野党の非協力など,その後の政権運営における諸問題の縮図ともいえた。

「手帳人事」――孤独な政治スタイルが浮き彫りに

政権発足当初における異例の人事遅滞は,朴政権が直面する多くの諸問題の複合的産物といえる。韓国マスコミでしばしば「落馬」と評された閣僚など内定者の辞退の多発や,無名の新任者に対する「小粒」批判は,周囲に人を多く配さないなかで判断を下す傾向のある朴大統領の政治スタイルによるところが大きい。

落馬が相次いだ原因のひとつは,指名前の人物検証が足らなかったことにある。政権発足時の組閣は大統領本人がもっぱら取り組み,周囲の関与を排除した。こうしたスタイルは「手帳人事」ともいわれた。このため,内定者に対する多面的な適格性の検証ができず,内定後の不祥事露見,指名辞退につながった。

「小粒」人選もこうした構図のなかで起きている。経験豊かな大物の起用を避けたのは,朴大統領が就任前に「すべての公職に公平な人事をする」と発言したように情実人事との批判を未然に防ぐためであった。しかし,このために選挙戦に協力した与党有力者らには声が掛けられることはなく,鄭烘原首相や玄旿錫・経済副首相のように政治色の薄い官僚出身者が多くを占める結果となった。歴代政権では,任期の初期に非官僚出身者を抜てきして思い切った改革を推進し,任期後半には安定感を出すために官僚の登用を進める例が多いが,朴大統領の人選は過去の例とは趣を異にする。

国会先進化法――野党勢力による非協力の武器

政権発足時の人事遅滞については,主要ポストの内定者に対する国会での人事聴聞が苛烈を極める政治文化のほか,国会先進化法の規定により野党が事実上の拒否権を持つ国会の仕組みなど,政権外の要因も大きい。

国会先進化法とは,国会法の2012年改正のうち,与党の単独採決を封じる一連の条項を指す通称である。毎年の予算案など与野党が対立する法案を与党が強行採決しようとした際に繰り返されてきた国会内での乱闘騒ぎを防止することが法改正の目的であった。国会議長の職権による本会議への法案上程を戦争・天変地異などの国家非常事態の場合を除いて禁じ,常任委員会の6割以上の賛成を得た法案のみを上程することなどを規定している。国会で与党セヌリ党が有する議席は6割を下回っており,野党が事実上の拒否権を持つ状態となっていた。

韓国では政権交代時に政府部署改編が行われることが通例となっており,今回も外交・安全保障・統一政策の司令塔となる国家安保室と新政権の経済国政課題の目玉となる「創造経済」を担当する未来創造科学部を新設するほか,部署名変更,部署所管業務の移動が行われた。こうした部署改編に当たっては政府組織法の改正が必要となるが,野党は国会先進化法で手にした拒否権を使って政府組織法の改正を阻止し,新政権立ち上がり時の部署改編に待ったをかけた。野党は,部署改編により放送通信委員会の一部業務(衛星放送などの有料放送分野)を未来創造科学部に移管するという朴政権の構想に対して,放送の中立性が阻害されるとして強硬に反対した。3月4日には組織改編と閣僚人事の遅れに対し,朴大統領が謝罪に追い込まれた。結局,政権側は放送業務の移管を断念し,改正政府組織法が3月22日に成立,部署改編がようやく実現した。

野党の非協力と与党の反撃――国内政治の空転

2013年の国内政治は,激しい与野党対立のためにしばしば空転し,国会は機能不全に陥った。野党は大統領選の結果を受け入れない不服キャンペーンを繰り広げ,政権および与党がそれに対して折々の反撃を試みた。最大野党の民主党に対する支持率は年間を通じて2割台で低迷し,4月24日と10月30日の国会再・補欠選では議席を取れなかった。弱い党勢とは対照的に,4割強の国会議席を背景とする事実上の拒否権を武器に民主党は政権および与党に揺さぶりをかけた。

民主党が1年を通じて論じたのが国家情報院職員による大統領選介入事件であった。5月の党大会後,同事件を取り上げての大統領選不服キャンペーンは本格化した。国家情報院職員が野党の文在寅候補を中傷する書き込みをインターネット上の掲示板で行って世論操作を図ったとされるこの事件に関し,6月11日にソウル中央地検が元世勲・前国家情報院長を起訴するなど,政権側は通常の法的処理によって決着をつけようとした。しかし,民主党はこの案件を与野党対立の焦点として大々的に取り上げた。7月2日には国政調査特別委員会が始動し,国会の場で選挙介入事件が議論されるようになった。7月11日には洪翼杓・民主党院内スポークスマンが朴槿恵大統領を指して「鬼胎」(生まれてくるべきでなかった人)の子孫と表現するなど,民主党の攻撃的な姿勢が目立つようになった。

9月の定期国会開会後も大統領選介入事件を巡る民主党の揺さぶりは続いた。10月には国防部のサイバー司令部職員に対する疑惑も浮上し,事件はさらに拡大する様相をみせた。秋の定期国会では次年度予算案が審議されるほか,この年には景気低迷を打開するための経済活性化法案(外国人投資促進法や中小企業創業支援法,住宅市場正常化法など)の成立が急がれていた。11月18日には朴大統領が施政方針演説のなかで法案審議への協力を呼び掛けたが,民主党は大統領選介入事件を問題視してこれら国民生活に直結する諸法案の審議に応じず,国会は空転を続けた。国会先進化法に基づく事実上の拒否権を持つ民主党が動かないまま,これらの法案は審議未了となって越年した。

経済活性化法案のうち,とくに注目されていたのは外国人投資促進法の改正であった。従来,持ち株会社の孫会社は子会社設立時の単独出資強制(企業グループの無分別な拡張防止のための公正取引法による規制)のため,合弁事業ができなかった。こうした不便を解消するため,孫会社の合弁事案に関する出資規制の緩和を盛り込んだ外国人投資促進法改正案が国会に上程されていた。だが,経済活性化法案の審議未了でSK総合化学(SKの孫会社)と日鉱日石エネルギーの9600億ウォン規模の合弁案件をはじめとする総額2兆3100億ウォン規模の投資案件の推進が止まるなど,国会での与野党対立は実体経済にも影響を与えた。

与党・政権側も手をこまねくばかりではなかった。6月24日には,国家情報院が2007年の南北首脳会談の議事録を公開した。公開された文書には,現在の民主党を出身母体とする盧武鉉元大統領が,韓国が主張する黄海上の北方限界線(NLL,軍事境界線)の無効化に同意したと取れる発言をしたことが記されていた。盧元大統領のNLL否定発言は2012年の大統領選の際に対野党攻撃の材料となっていたが,それを補強する資料が選挙後半年を経て出されたことになる。民主党は議事録に改ざんの疑いがあるとして猛反発し,国家記録院に保管されているはずの原本との照合を求めたが,7月18日になって議事録の紛失が明らかになった。その調査過程で,議事録紛失は盧政権の不手際である可能性が濃くなり,民主党にとって不利な状況となった。9月5日には,国家情報院が左派政党の統合進歩党に所属する李石基議員を内乱陰謀・扇動容疑で逮捕した。同容疑による現職議員逮捕は初めてのケースであった。しかし,こうした野党勢力の失点にもかかわらず,与党・政権側が民主党に押される構図には変わりなかった。

選挙公約に忠実な朴政権の政策

朴政権の政策の特徴を一言で表すとすれば,選挙公約への忠実さであろう。2月21日に大統領職引継委員会が2012年12月の大統領選挙の公約をほぼそのまま引き継いだ新政府の国政課題を発表した。5月28日には引継委員会の国政課題を若干修正した確定版が完成した。確定版の国政課題では,「経済復興」「国民幸福」「文化隆盛」「平和統一基盤構築」の4大国政基調と14の推進戦略,140件の国政課題が示された(図1を参照)。

図1  朴政権の国政課題の構造(確定版)

(出所) 関係部署合同「朴槿恵政権の国政課題」,2013年5月28日。

経済復興と国民幸福では経済民主化,創造経済,福祉,雇用など,朴政権の経済政策を特徴づける戦略が並ぶ。平和統一基盤構築においては,「信頼外交」で外交全般の方向を示したほか,朝鮮半島情勢・南北関係への高い関心がうかがえる。安保情勢変化に備えた国防予算の確保にとくにふれたほか,「朝鮮半島信頼プロセス」による南北関係安定化と統一ビジョンが提示された。また,長らく懸案となっていた兵役期間の短縮については,中長期課題として盛り込まれた。

これら国政課題の履行状況について,専門家らは外交・統一への高評価でほぼ一致する。この点は一般国民を対象とした世論調査と整合的である。一方,経済については,具体性や実効性に問題があるとの声は多い。経済関連戦略のうち,問題とされたのが「創造経済」である。これが目指すのはITなどを活用した高付加価値化で,その範囲は広く経済の各分野にわたるが,抽象度・包括度が高すぎて具体的政策が示されなかった。実効性については,玄旿錫・経済副首相率いる経済チームの対応が後手に回り,与党内からも景気・雇用といった足元の経済状況に対応できていないとの批判が上がっている。7月17日,金武星・セヌリ党議員は,「現在の経済チームに経済状況を解決するリーダーシップはみられない」と異例の批判を行っている。福祉については公約に縛られ,過大な負担を抱え込んだ感がある。選挙公約の基礎年金導入に当たって財源上の理由から一部支給制限の導入を余儀なくされ,陳永・保健福祉部長官が大統領府との対立で9月30日に辞任している。

朴政権と与党に対する高支持率と野党の低迷

政権立ち上がりにおけるもたつきや,その後の国会での逆風にもかかわらず,朴政権と与党セヌリ党への支持は高水準で推移した(図2を参照)。政権発足前,新政権への期待の高まりから支持率は6割超で推移したが,政権発足後は人事の遅れと与野党対立をみた有権者の間に政権運営への先行き不安が広がって支持率が落ち,3月末には5割を割り込んだ。しかし,その後支持率は急速に回復して6月には6割に達した。支持回復の要因は2月12日の核実験の後に立て続けに韓国に揺さぶりをかけてきた北朝鮮に対して朴大統領が毅然たる姿勢をみせたことと,5月5日からの訪米と6月27日からの訪中をいずれも無難にこなしたことなど外交面での得点によるとみられる。9月5日の李石基・統合進歩党議員逮捕の時点で支持率はピークとなる67%に達した。しかし,その後は国会における与野党対立や経済活性化法案の処理遅滞,12月の鉄道労組ストなどにより支持率を下げ,年末の政権支持率は48.5%であった。

図2  政権・政党支持率と朴槿恵プレミアム

(注) 朴槿恵プレミアム=政権支持率-セヌリ党支持率。2月までの政権支持率は「次期大統領に対する国政遂行展望」を表す。

(出所) リアルメーター(http://www.realmeter.net)。

一方,政党支持率をみると,与党セヌリ党が政局の動きとは関係なく一貫して4割以上の支持率を集めて堅調だったのに対し,最大野党の民主党は年初には支持率が3割を上回ったが2月以降は2割台で低迷した。4月24日の国会再・補欠選で当選した安哲秀議員(無所属,元大統領候補)が11月28日に新党立ち上げを宣言して以降,民主党の党勢はさらに弱まった。興味深いのは,与野党への支持率が民主党による激しい与党・政権攻撃にも関わらず大きく変化しなかったことである。大統領選という過去のイベントをめぐって繰り広げられる政局に一般国民がもはや関心を失っていることを示唆する。

残された課題――朴大統領のコミュニケーション能力と社会統合

ただ,与野党対立は政権支持率を押し下げる要因として働いていることには留意する必要がある。これは独断・発信不足の傾向のある朴大統領への警告信号ともいえよう。政権支持率は与党セヌリ党への支持率をほぼ一貫して上回り,いわば「朴槿恵プレミアム」を享受した形である。朴槿恵プレミアムを構成する要素としては,上述のような外交上の得点のほか,韓国経済発展の基礎を築いた朴正煕大統領の娘であることへの好感や過去史(日本統治時代)をめぐる対日批判を堅持したこと,姿勢のブレが少なく発言が慎重で,とくに見方が分かれる問題への言及を巧みに避けたことなどが挙げられる。得点が見込める分野では着実に評価を上げ,リスクのある懸案には手を出さない,安全運転的な姿勢が幸いしているものとみられる。しかし,この朴槿恵プレミアムは3月と秋以降に下落していることがわかる。これは,いずれも与野党対立が激化した時期に当たる。こうした時期に朴大統領自身による対立解消に向けた情報発信や大胆な妥協提示がないという指摘は多い。事実,年間を通じて記者会見は1度も開かれていない。

原則を曲げない姿勢も時にはあだとなる。その意味で,12月の鉄道ストは今後の教訓となりそうである。ソウル南部の水西を起点とする高速鉄道(KTX)の運営主体を民営化するという韓国鉄道公社(KORAIL)の方針に反発したKORAIL労組は,12月9日から全面的なストライキに突入した。ストライキは22日間にわたり,国民生活に多大な影響を与えた。朴大統領の「違法ストは絶対に許さない」との原則の下,政府は12月22日に労組幹部逮捕のために労組ナショナルセンターのひとつである民主労総本部に警官隊を投入したが,これにより労組と政権の対立が一層強まり,解決が遅れた。労組との妥協を拒んで国民生活の不便に配慮しなかった政権側の対応を問題視する向きは多かった。

12月の鉄道ストは,朴政権が直面する社会統合の難しさを象徴する出来事でもある。今回のストは,労組が民営化反対の要求を通すために国民生活を犠牲にした側面があり,労組側の要求姿勢の強さも目を引いた。正社員としての恵まれた待遇の切り下げに抵抗する既存労組が他者を顧みない激しい労働争議を繰り広げることに対して従来からあった冷ややかな見方は,今回のストを契機に一層厳しいものとなり,階層間の対立が深まった感がある。

2012年の大統領選では朴大統領に対する若年層,湖南地方(全羅南・北道)の支持が少なく,世代・地域間の立場の差が改めて鮮明となっていた。既述の通り2013年には与野党間の対立が激化したが,一方では既存の政治に飽き足らない無党派層が増えるなど,価値観の多様化も進んでいる。朴大統領も社会統合の問題を重視しており,5月に確定した国政課題に盛り込んだ。しかし,この種の問題はそれぞれに根深いものを抱えており,早期の解決は簡単ではない。韓国社会の各主体の要求が激化するなか,社会統合は依然大きな問題として残されている。

経済

マクロ経済の概況

2013年の韓国経済には,輸出の堅調さに加えて個人消費や建設投資などの内需に復調の兆しがみられ,景気は緩やかな回復局面にある。2014年年初に韓国銀行が発表した国内総生産(GDP)の速報値によれば,2013年の実質GDP成長率は2.8%で,3年ぶりに前年を上回った。ただし,4%前後とされる潜在GDP成長率には及ばず,GDPギャップはマイナスが続いている。

支出項目別には,GDPの約半分を占める民間消費が前年比1.9%増とやや持ち直したものの,実質賃金や家計所得の伸び悩み,家計負債の増大,長期化する不動産市況の低迷などがボトルネックとなり,依然として力強さは感じられない。一方で,建設投資は政府による相次ぐ不動産景気対策が奏功して,前年比6.9%増の大幅なプラス成長に転じた。輸出はIT関連機器や自動車,石油化学製品などでの伸びを受けて,前年比4.3%増と引き続き底堅く推移し,外需の相対的な好調も成長に寄与した。しかし,企業には2月に発足した朴政権の経済政策の動向を見守る姿勢から生産設備の増強や更新を見送る動きが目立ったため,設備投資は前年比1.5%減と2年連続のマイナスを記録し,成長の足かせ要因となった。

経済活動別には,輸出の堅調な伸びを反映して製造業が前年比3.0%増となったほか,サービス業(同2.4%増)も保健・社会福祉事業や情報通信業,金融保険業などが比較的高い伸びを示したことで前年と同水準を記録した。また,建設投資の復調を受けて建設業は前年比3.7%増と4年ぶりにプラス成長に転じたほか,農林漁業(同5.6%増)も同様にプラスに反転したことが特筆される。国内総所得(GDI)の成長率は,輸入資源価格の安定化とウォン安是正などによって貿易損失規模が縮小し(65兆ウォンから50兆4000億ウォン),交易条件が改善されたことでGDP成長率を大きく上回る4.3%を記録した。1人当たり名目GDPは4年連続で2万ドル台前半を維持するのは確実で,1人当たり国民総所得(GNI)では2万5000ドルを超える見通しである。

2013年の消費者物価および生産者物価の上昇率はそれぞれ1.3%と-1.6%で,前年の2.2%と0.7%を下回った。国内物価が落ち着きを取り戻すなか,内需の伸び悩みやウォン高・円安基調による景気下降リスクを重くみた韓国銀行は,5月に7カ月ぶりとなる政策金利の引き下げ(0.25ポイント)を実施した。同月には大型の補正予算(17兆3000億ウォン規模)が国会を通過しており,上半期には金融・財政の両面で拡張的な景気浮揚策が講じられた。なお,下半期以降は景気の回復傾向やアメリカの量的緩和縮小の影響を見極める姿勢から,金融当局は政策金利を据え置く立場をとり続けている。

雇用情勢は景気の緩やかな回復を受けて,若干改善された。統計庁の発表によれば,2013年の全体の就業者数は2507万人で,前年比38万5000人増加した。部門別には,保健・社会福祉サービス業(前年比15万5000人増)や宿泊・飲食業(同6万5000人増)などのサービス部門で堅調な伸びがみられたほか,製造業でも前年を大きく上回る7万9000人の増加をみた。全体の失業率は3.1%で前年比0.1ポイント改善したが,20歳代の失業率は7.9%と前年比0.4ポイントも悪化し,若年層の就業難は深刻さを増している。しかし,公共部門や主要な企業では非正規職から正規職雇用への転換の流れがみられたほか,今後は「時間選択制雇用」の導入によって働き方の多様化や就業率の上昇が期待されている。

表1  支出項目別および経済活動別国内総生産成長率(2005年価格,前期比,%)

(注) 数値はすべて暫定値。四半期別数値は季節調整後の値。在庫増減はGDPに対する成長寄与度を表す。

(出所) 韓国銀行「2012年第4四半期および年間国内総生産(速報)」2014年1月23日。

国際収支の動向

関税庁の発表(2014年1月)によれば,2013年の通関基準の輸出額は5596億ドル(前年比2.1%増),輸入額は5156億ドル(同0.8%減)で,貿易黒字は441億ドルと過去最高額を更新し,貿易総額も3年連続で1兆ドル超えを達成した。輸出の内訳を品目別にみると,モバイル機器市場の急成長を受けて半導体(同13.3%増)や無線通信機器(同11.1%増)が大きく伸びたほか,乗用車(同4.5%増)や自動車部品(同6.0%増)も史上最高実績を上げた。一方で,価格下落などが響いた液晶デバイス(同8.5%減)や石油製品(同6.0%減)は大きく落ち込み,業界不況のあおりを受けて鉄鋼製品(同7.5%減)や船舶(同5.4%減)なども不振にあえいだ。

地域別には,最大の輸出先である中国向けが前年比8.6%増,2012年に自由貿易協定(FTA)が発効したアメリカ向けも前年比6.0%増でともに過去最大の輸出額を更新した。しかし,EU向け輸出は財政債務危機の影響が続いて前年比1.1%の小幅な減少をみたほか,ASEAN諸国の成長鈍化から東南アジア向けも前年比0.9%減を記録した。対日輸出は主力品目の落ち込みによって前年比10.6%減となったものの,対日貿易赤字は253億ドルにとどまり,赤字幅は若干縮小した。なお,FTA締結国との貿易額は全体の35.4%まで拡大し,約400億ドルの輸出超過である。

輸入はIT関連機器や製造装置などの資本財が前年比2.8%増となり,乗用車や衣類,牛肉などの伸びを受けて消費財輸入も前年比7.5%増加した。原材料輸入は原油価格と輸入数量の下落などで前年比3.7%減少したものの,中東の資源国との貿易赤字は輸出減が響いてむしろ拡大した。貿易収支とともに経常収支の一部を構成するサービス収支や所得収支は,前年から引き続き黒字(60億ドルと48億ドル)を確保した。その結果,貿易黒字の拡大に支えられて経常黒字は前年実績(480億8000万ドル)を大きく上回り,過去最高の707億3000万ドルを記録した。

企画財政部の発表によれば,2013年の海外直接投資額(申告ベース)は351億2000万ドル(前年比11.0%減)で2年連続の減少となり,主に鉱工業での落ち込みや中国などアジア・欧米向けでの減少が響いた。一方で産業通商資源部の発表では,外国人直接投資(申告ベース)は145億5000万ドル(前年比10.7%減)で,史上最大規模を記録した2012年には及ばなかったものの,引き続き高い水準を保っている。EUからの投資が大幅に増加した反面,2012年に製造業での対韓投資の増大が目立った日本からは激減したことが大きかった。

為替相場,証券市場の動向

2013年の証券および為替市場は,年前半と後半で対照的な展開をみせた。証券市場では,年前半は新政権の本格的な始動の遅れや北朝鮮の相次ぐ挑発行為による影響を不安視した外国人投資家の売り圧力が強まり,韓国総合株価指数(KOSPI)は上値の重い展開が続いた。6月には,アメリカの量的金融緩和の縮小が意識されたことや収益力の悪化が懸念されたサムスン電子株の下落が重なって,KOSPIは年最安値となる1780.63まで急落した。外国為替市場でも,年前半には北朝鮮との緊張が高まったことや急激な資本流出入を規制する金融取引課税(トービン税)の導入が政府によって検討されたこと,アメリカの量的緩和策の縮小観測などが材料視されてウォン相場は軟調な推移が継続し,同じ6月下旬には対ドルレートで年最安値となる1ドル=1161.4ウォンをつけた。

しかし,年後半には一転して上昇基調に転じた。輸出や内需に回復の兆しがみられるなど,相対的に良好な経済環境が海外資金の流入を促して証券市場ではKOSPIが10月末に年最高値の2059.58を記録するまでに回復し,年末にかけても2000台前後を維持した。ただし,証券投資は通年で69億4000万ドルの出超となった。一方の為替市場でも,海外投資資金の流入や大幅な経常黒字などを受けて,年後半にはウォン相場の漸進的な上昇が続き,12月には対ドルレートで年最高値の1ドル=1051.0ウォンまで増価した(年末には1ドル=1055.4ウォンで前年末比1.4%のウォン高)。また,日銀による大胆な金融緩和を背景に対円レートでは年初の100円=1238.3ウォンから,年末には最高値となる100円=1002.1ウォンまで切り上がり,対ドル以上かつ前年以上の上げ幅となった(前年末比23.6%のウォン高)。こうしたウォン高・円安の急激な進行により,海外市場で日本勢と競合する輸出企業では業績悪化への懸念が強まっている。

主要企業業績

2013年の国内企業の業績は,有力企業が相次いで減収や減益に陥るなか,資産規模が突出するサムスン電子の1強構造が鮮明となった。韓国最大企業で外国人の選好度も高いサムスン電子は,2013年連結決算で売上高228兆6927億ウォン,営業利益36兆7850億ウォンを記録し,いずれも過去最高実績を更新した。「ギャラクシー」シリーズで有名なスマートフォンやタブレット端末の販売が引き続き好調で,それを受けて半導体やディスプレイなど中核部品の自社供給が拡大したことも増益に一役買った。しかし,足元では第4四半期の連結営業利益が約2年ぶりに減益(前年同期比)に陥り,スマートフォンを含むIT機器事業に偏重する収益構造が懸念されてか株価も下落するなど,その勢いには陰りが見えはじめる。また,半導体で競合するSKハイニックスは9月に中国工場での火災による生産トラブルに見舞われたが,需給の引き締まりからメモリー単価が上昇し,年間の連結決算では売上高と営業利益ともに過去最高となり黒字転換を果たした。

一方,同じく韓国の代表的な企業である現代自動車の2013年連結決算は,新興国市場での販売増加から売上高こそ87兆3076億ウォンで過去最高額を記録したものの,営業利益では8兆3155億ウォンと前年割れとなった。減益の要因としては,前年来続くウォン高の進行による輸出採算の悪化や欧米市場などでの販売伸び悩み,国内工場での大規模ストライキの発生による生産稼働率の低下などがあげられる。また,比較的利ざやの大きい国内市場では,EUやアメリカとのFTA発効による関税引き下げを追い風に価格低下で攻勢をかける輸入車との競争が激化しており,国内販売シェアが圧迫されていることも大きい。同グループの起亜自動車もまた,販売単価の上昇などで売上高こそ伸びたものの,ウォン高の影響により減益に陥った。

国土交通部によると,2013年の海外建設受注額はアジアや中東を中心に652億ドル(前年比0.5%増)を記録し,プラント建設や土木部門で引き続き好況を呈している。海外建設受注は今や半導体や自動車の輸出を上回る規模となり,今後も有力な成長分野として期待されている。一方,重厚長大型の鉄鋼や造船では過剰供給や製品価格の下落などによる市況の低迷から,ポスコや現代重工業,サムスン重工業といった大手が軒並み減収減益に陥った。とりわけ,ポスコは大口の取引先であった現代自動車がグループ企業の現代製鉄を通じて自動車用鋼板の内製化を進めるなか,国内生産シェアが低下していることも減速に追い打ちをかけている。また,主力の造船・海運や建設事業の不振により資金繰りが悪化したSTXグループは5月に債権銀行団の管理下に置かれたほか,同じく中堅財閥の東洋グループでも系列会社5社が9月末から相次いで法定管理(会社更正法に相当)の申請を行った。韓進や東部といった上位企業グループも,財務構造の改善に向けて再建中である。

「経済民主化」と「国民幸福」に向けて始動

2012年末に行われた大統領選挙で,財閥の規制改革や中小零細企業の保護・育成などのいわゆる「経済民主化」を公約に掲げた朴大統領は,新政権発足後に早速その実現に向けて乗り出した。5月以降,中小企業協同組合への納品単価調整協議権の付与や不当行為を働く元請け事業者に対する損害賠償(被害額の最大3倍)の義務化などを命じた改正下請法や,加盟本部による加盟店事業者への不当な強要行為や不公正取引を禁止する改正加盟事業法(フランチャイズ法)などの関連法案を矢継ぎ早に成立させた。また,近年相次ぐ横領・背任や脱税などの財閥犯罪に対しては厳罰化の姿勢を示しており,税収不足の補填目的を兼ねて大企業に対する税務調査の強化も行っている。残る課題としては,財閥のオーナー一族が少ない持ち株で多数のグループ企業を支配する循環出資をめぐって,新規実施の禁止に踏み切れるかどうかが今後注目される。

近年の韓国では住宅ローンや事業資金,生活資金などの借り入れで膨らみ続ける家計債務負担とその質的悪化が社会問題となっており,韓国銀行によれば12月末現在の家計負債総額は1021兆3000億ウォンと初めて1000兆ウォンの大台に達した。朴政権は庶民対策としての「国民幸福」政策にも早々に着手し,3月には1億ウォン以下の負債を6カ月以上滞納する約32万人の延滞者に対して30~50%の債務減免,残りは最長10年までの分割返済を可能にする国民幸福基金を設立し,総額1兆5000億ウォン規模の予算投入を決めた。10月末に申請受付が締め切られ,約21万人に対して債務調整支援が実施されることになった。また,5月には1997年のアジア通貨危機時に倒産した中小企業の連帯保証人(約11万人)に対して,総額13兆2000億ウォンに上る債務を元金(10億ウォン以下)の40~70%まで減免する救済支援策をまとめている。

選挙公約で拡充を謳った福祉政策については,財源難からやや後退した。たとえば,当初65歳以上の高齢者全員に一律月20万ウォン支給としていた基礎老齢年金の改正では,所得水準下位70%の65歳以上高齢者に対して国民年金受給額に応じて月10~20万ウォンを差等支給し,2014年7月からの導入を目指すことになった。また,満5歳までの乳幼児への無償保育・養育については公約通り実施されるが,4大重症疾患の治療費に対する健康保険負担の拡大をめぐっては議論が難航している。しかし,2014年度の予算総額(355兆8000億ウォン)に占める福祉関連予算は105兆8000億ウォンと初の100兆ウォン台に達する過去最大規模となり,依然として福祉拡充志向に変わりはない。中長期的な福祉財源の調達方法にはかねてから疑念が出ていたが,政府は福祉事業への充当を目的として,年間給与所得が3450万ウォンを超える中産層から富裕層に対する所得増税と所得控除から税額控除への見直しなどを骨子とする税制改正法案を8月に発表した。しかし,政府案に対して与野党からの批判が相次ぎ,わずか4日後には増税対象者を年収5500万ウォン超に引き上げるなどの大幅修正を余儀なくされた。朴大統領の掲げる「増税なき福祉」は早くも試練に立たされている。

対外関係

南北関係

南北関係は,年前半に北朝鮮の不安定な動きと度重なる対南威嚇によって緊張が高まった。2月の北朝鮮による核実験以後,3月の休戦協定白紙化宣言,4月の開城工業団地の操業中断など,北朝鮮は韓国に対する強い揺さぶりをかけた。しかし,8月の開城工業団地の操業再開合意で雰囲気は好転した。12月の張成沢・北朝鮮国防副委員長の粛清は南北関係に大きな影響を与えておらず,開城工団の正常化はそのまま進行した。

北朝鮮は2月12日に3回目の核実験を強行したのち,3月11日から実施予定の韓米合同軍事演習「キーリゾルブ」に焦点を合わせた対南非難を浴びせた。核実験に対する国連制裁決議への反発もあり,3月5日の休戦協定の白紙化宣言や核の先制攻撃示唆(7日)など,北朝鮮による一連の対南非難の度合いは強く,緊張が高まった。

上記軍事演習が3月21日に終了した後,北朝鮮の対南攻勢の焦点は韓国の対北経済協力事業の象徴である開城工業団地に移った。4月9日以降同工団に勤務する北朝鮮労働者は出勤せず,工団は操業を停止した。これまで,2010年の延坪島砲撃などの事態にも操業を続けており,南北関係は転機を迎えた感があった。

2月25日に就任した朴大統領は,南北間の信頼醸成の度合いに応じて南北協力を行うことを謳った「朝鮮半島信頼プロセス」を対北朝鮮政策の柱に掲げた。就任早々朴大統領は同プロセスを維持するか否かの決断を迫られたが,3月11日の初閣議でその維持を表明し,開城工団の操業停止後も北朝鮮に対して話し合いによる解決を粘り強く求めた。

6月以来6回にわたる実務協議は不発に終わったが,8月7日に統一部が被害企業に対する南北経済協力保険金の支払いを決定したことで韓国側が工団放棄も辞さない態度をみせると,北朝鮮は操業再開の姿勢を明確にした。8月14日には韓国と北朝鮮が同工団の正常化に向けた5項目に合意し,今後の操業停止事態の防止,韓国人の身辺安全,投資資産の保護などで合意した。これにより南北関係の雰囲気は好転し,9月16日には開城工団は操業を再開した。開城工業団地の操業再開後の焦点は,2010年の韓国哨戒艇撃沈事件後に韓国が北朝鮮に対して行っている制裁措置(5.24措置)の解除と,2008年に韓国人観光客が北朝鮮兵に射殺された後に停止している金剛山観光事業,そして南北離散家族再会などへと移った。いずれも年内に実現しなかったが,2014年以降の実現に含みを持たせた。

これらのうち,韓国は離散家族再会を希望し,北朝鮮は開城工団に次ぐ外貨獲得源であった金剛山観光事業の再開を希望した。北朝鮮は離散家族再会と金剛山観光再開をセットで実施することを求めた(8月19日)が,韓国は2008年の韓国人観光客射殺事件の責任所在確認が金剛山観光再開の前提と考えており,家族再会と観光再開は別個であることを強調した。9月25日には離散家族再会が予定されていたが,結局北朝鮮は延期を通告した。5.24措置の解除については,柳吉在・統一部長官が11月1日に「政府もいろいろ考えている」との見解を示した。

12月には北朝鮮の張成沢・国防副委員長が粛清されたことで北朝鮮内部での大規模な権力構造変化が予想され,これに伴う南北交流への影響が懸念された。しかし,同月11日には開城工団で無線タグによる出入システムの設置工事が始まるなど,同工団の利便性向上に向けた作業は粛々と進められた。

対日関係

「強い日本」を標榜する安倍政権に対し,韓国は強い警戒感をみせた。日韓関係は,韓国側が政権交代後に従軍慰安婦など日本統治時代に起きた諸問題の提起をさらに強め,日本側がこれに反発したことで一種の悪循環に陥った感がある。日韓首脳が就任後1度も会談を持たない異例の事態となった。

朴大統領は大統領選の過程で,韓国を日本による統治の被害者として位置づけ,これを強調したが,就任直後の3月1日の三一節演説において,「加害者と被害者という歴史的な立場は,千年の歴史が流れても変わらない」と強調するとともに,「日本政府の積極的な変化と責任ある行動」を要求した。朴大統領は被害者の立場の固守と日本政府の出方を待つ姿勢を変えず,これが冷え込んだ日韓関係の基調を規定した。朴大統領の厳しい対日姿勢に呼応し,政権周辺やマスコミは日本側の韓国関連の言動に以前にも増して敏感に反応するようになった。

アベノミクスに伴う円安による悪影響や,2月22日に開かれた島根県主催の「竹島の日」式典に政府関係者が出席したことが問題にされたほか,4月22日には尹炳世・外交部長官が麻生副首相など閣僚の靖国神社参拝に反発して訪日を取り止めた。安倍首相の「侵略の定義は定まっておらず,捉える観点により違う」との発言(4月23日)にも韓国政府は別所駐韓大使を呼んで抗議した。

こののち,韓国の対日批判は第三国を巻き込む形で展開するようになった。5月7日,朴大統領は韓米首脳会談の席上「日本は正しい歴史認識を持つべき」と述べたほか,アメリカ議会でも同趣旨の言及を行った。6月27日,朴大統領訪中の際に発表された韓中共同宣言では,歴史認識問題による域内諸国間の対立深化への懸念が表明された。9月6日の韓独首脳会談,同30日のヘーゲル米国防長官との会談,11月13日の韓ロ共同宣言でも日本の歴史認識に言及した。また,民間の海外における動きも活発化した。7月30日にはアメリカ・カリフォルニア州グレンデール市に従軍慰安婦を象徴する少女像が建立されたほか,アメリカ・バージニア州をはじめとするいくつかの州で公立学校の教科書に「日本海」と「東海」を併記させる動きが活発化した。

打開策を見いだせない日韓関係について,北東アジアの地域安全保障体制を重視する立場から,両国関係の悪化を懸念するアメリカの仲介を期待する空気も生まれた。しかし,10月にアメリカが日本の集団的自衛権行使を支持したほか,12月6日の朴大統領とバイデン米副大統領との会談では,朴大統領が日本の歴史認識是正を日韓関係改善の前提条件として強調したのに対し,バイデン副大統領は関係改善への取り組みの早期着手を重視するなど,温度差がみられたという。

日韓関係の悪化は各方面に広がり,日本側の対韓意識の悪化が目立つ。円安と関係悪化で日本人入国者数は前年比22.4%減少した。韓国の対日批判に抗議する嫌韓・反韓デモも日本国内で頻発した。日本側の韓国司法への信頼が揺らぎ,経済への影響が懸念されるようになった。靖国神社放火犯の日本引き渡し拒否(1月3日),盗難仏像の返還禁止(2月26日)のほか,日本支配時代の個人請求権を認定する判決が相次いだ。7月10日,ソウル高裁は新日鉄住金に対して戦時中の韓国人徴用工への賠償を命じたが,同社はそれを不服として上告した。11月6日には経団連など4団体が韓国人徴用工に対する相次ぐ賠償命令判決を憂慮する共同提案書を発表した。日本の対韓投資は前年比40.8%減少(申告基準)した。

12月26日,安倍首相が靖国神社を参拝したことで,日韓対立の様相は深刻化した。韓国政府は「慨嘆と憤怒を禁じえない」と非難した。同日付の『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙は,安倍首相の靖国神社参拝は,日韓対立で守勢に立たされていた朴大統領にとって命綱になったと論評した。

対米関係

北朝鮮が不安定な動きをみせるなか,韓米同盟は60周年を迎えた。韓米の軍事協力が地域の安全保障に重要であることでは引き続き意見が一致している。しかし,韓国が対中傾斜を強めたことで韓米関係に微妙な空気も漂うようになった。

3月には「キーリゾルブ」,3~4月には「フォールイーグル」,8月には「乙支フリーダムガーディアン」の韓米合同軍事演習が例年通り実施されたほか,2月には日本海で原子力潜水艦やイージス艦などを投入した演習が実施された。

一方,懸案事項も残されている。アメリカ主導のミサイル防衛体制(MD)加入と戦時作戦統制権(作統権)返還時期の再延長については,10月2日に開催された韓米定例安保協議会(SCM)で議論されたが,結論は出なかった。MDを対中包囲網として警戒する中国への配慮や費用対効果の問題などから,MD加入について韓国は慎重姿勢を崩していない。一方,MDに代わって推進されている韓国型ミサイル防衛体制(KAMD)とMDの連携や機種のアップグレードでKAMDのカバーする高度を上げることによる防御力強化などが当面の課題となった。2月の北朝鮮の核実験や4月のミサイル発射兆候などにより,韓国軍への作統権返還時期(2015年12月)を再延期する考えが韓国側に強まった。これに対し,ヘーゲル米国務長官は作統権返還時期の再延期について,韓国のミサイル防衛能力が重要との考えを示し,MD参加との連携を示唆した。

朴大統領は,5月5日からアメリカを訪問した。韓米同盟60周年記念共同宣言で長期にわたる韓米関係のビジョンを示したほか,朴大統領の朝鮮半島信頼プロセスへの支持を引き出し,北朝鮮の挑発には断固対応することを再確認するなどの成果を上げ,上昇基調にあった政権支持率はさらに上向いた。韓国は朴大統領の訪米中に2014年3月に満了する原子力協定を見直し,使用済み核燃料の再処理についてのアメリカの同意を得ようとしたが,韓国の再処理を認めない現協定の2年延長(4月24日に合意)は覆らなかった。

中国との関係を強めてMDへの加入を渋る韓国に対してアメリカのいら立ちは募った。12月6日,バイデン米副大統領は,「米国と逆に賭けるのは良い賭けではない」と述べ,暗に米中間でのバランス外交を展開する韓国をけん制した。

対中国関係

朴政権は当初より中国との関係を重視し,外交における序列を日本よりも高めた。中国はかねてから韓国との密接な関係を望んでおり,韓国の対中接近を歓迎した。北朝鮮の核保有に反対することで歩調を合わせ,韓中間の友好ムードは6月の朴大統領の訪中で高まった。だが,北朝鮮をめぐる見解には一部で差があるほか,11月の中国による防空識別圏設定は中国の脅威を改めて実感させた。

2月21日に発表された新政権の国政課題には,信頼外交戦略のなかに「韓米同盟と韓中同伴者関係の調和・発展」との課題が置かれ,中国はアメリカに次ぐ重要なパートナーと位置づけられた。韓中関係の重要性は,尹炳世・外交部長官が就任前の人事聴聞会(2月27日)で「外交上の優先順位は米中日ロの順」と答えたことからも分かる。北朝鮮による2012年12月のロケット発射と2013年2月の核実験に対する国連制裁決議の採択において,中国は安保理常任理事国としての拒否権を行使せず,北朝鮮の大量破壊兵器抑制に向けて韓中は歩調を合わせた。

韓中蜜月のムードは6月27日からの朴大統領の訪中でピークに達した。朴大統領一行が中国側の最大級の歓待を受けるなか,両国は韓中未来ビジョン共同声明を発表した。そのなかで中国は,朝鮮半島の平和的統一を支持し,朴大統領の朝鮮半島信頼プロセスを歓迎した。また,北朝鮮の核放棄を求めた国連決議や第4次6カ国協議に関する共同宣言(9.19宣言)の履行を改めて確認した。ただし,細部では韓中の見解に差がみられた。北朝鮮の核放棄に関しては,国連決議などを引用する形で言及され,北朝鮮への言及が避けられた。また,半島統一後の政治形態への言及がなく,習近平国家主席が27日の記者会見で「自主的平和統一」と発言したことにみるように,中国は朝鮮半島統一にアメリカが関与しないことを望んでいるとみられる。

11月23日に中国が防空識別圏を設定し,韓国が管轄権を主張する東シナ海の暗礁・離於島(中国名・蘇岩礁)上空もそれに含まれることが判明した。25日,韓国政府は事前協議なく中国が防空識別圏を設定したことに抗議した。28日に開かれた第3回韓中国防戦略対話で韓国側は中国の設定した防空識別圏の調整を強く求めたとされるが,不調に終わった。結局,韓国は離於島をカバーしていなかった自身の防空識別圏を拡大することとし,12月8日にその旨発表した。

FTA

FTAに関しては,今後数年にわたる推進戦略を示す新通商ロードマップが6月13日に発表されたのが特筆される。朴大統領は選挙戦当初からFTA推進における重点を協定拡大から国内対策重視に移す考えを示しており,新通商ロードマップはそれを具体化したものである。また,ロードマップではこれまで二国間交渉に偏重していたのを改め,多国間交渉にも関心を払うことが盛り込まれた。具体的には,韓中FTAの締結を引き続き推進するほか,東アジア経済統合での主導権を確保するため日中韓FTA,東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を推進し,対中配慮から従来は慎重であった環太平洋経済連携協定(TPP)も検討対象となった。

個別案件をみると,5月1日にトルコとのFTAが発効した。コロンビアとのFTAは2月21日に正式署名されたほか,大きな影響が予想される韓中FTAが,双方が品目基準10%を除外するなどの交渉基本指針に9月5日に合意した。

TPPについては,日本が7月に交渉に参加したことなどが刺激となり,11月28日に韓国も関心を表明した。これと前後して,TPP参加国とのFTA交渉も再び動き出した。長らく交渉が途絶えていたオーストラリアおよびカナダとのFTA交渉が11月に再開され,オーストラリアとのFTAは12月4日に事実上妥結した。

日韓経済連携協定(EPA)は,両国関係の冷え込みもあり,進展がなかった。

2014年の課題

国内政治で注目されるのは,安哲秀議員が立ち上げる新党の影響である。民主党との関係如何で政党支持構図,とくに野党支持者と無党派層が動く可能性がある。外交面での得点に支えられた政権支持率が維持されるかも焦点となる。評価の高くなかった経済政策において具体的で実効性のある政策が出せるかが問われる。国民への説明能力の向上や世代,階層間の断絶解消も引き続き課題となろう。

経済面では,堅調な輸出や緩やかな内需の持ち直しを受けて,景気回復を本格軌道に乗せられるかどうかが課題となる。そのためには,企業の設備投資マインドを喚起させ,企業収益力をいかに高めていけるかがカギとなるが,一方で大企業の投資活動を萎縮させかねない「経済民主化」施策の今後の行方にも注目が集まる。朴大統領は2014年年頭の会見で,規制緩和や中小・ベンチャー企業育成,起業支援,内需型5大サービス産業(保健・医療,教育,観光,金融,ソフトウェア)の育成,非効率な公営企業改革などを含む「経済革新3カ年計画」を発表した。政権発足当初にすでに打ち出している,ICT(情報通信技術)と科学技術の復興による産業高度化といういわゆる「創造経済」の実現とあわせて,目標や計画にとどまらない具体的な成果が徐々に問われていくであろう。

外交においては,大量破壊兵器を誇示する北朝鮮の動きに対して広く国際社会と連携して対応するとともに,冷え切った日本との関係をどうするかが問われよう。また,北朝鮮を追い詰めたくない中国と韓米同盟を盾に踏み絵を迫るアメリカとの間のバランス外交は難しさを増すであろう。

(奥田:国内客員研究員・亜細亜大学教授)

(渡邉:地域研究センター)

重要日誌 韓国 2013年
  1月
3日 ソウル高裁,靖国神社放火を疑われる中国人・劉強元受刑者の日本引き渡しを認めないと決定。
4日 朴槿恵次期大統領,安倍首相の特使(額賀元財務相)と会談。
7日 現代・起亜自動車,深夜勤務を廃止し,2交代制を導入。
8日 大統領職引継委員会,2012年末で終了した不動産取得税の減免措置を2013年末まで延長すると発表(1月1日から遡及適用)。
14日 韓国電力公社,電気料金を平均4%値上げ(産業用は4.4%値上げ)。
22日 政府,ウォン高の進行を受けて中小輸出企業への支援策を発表。
29日 金容俊・大統領職引継委員会委員長,次期首相候補を辞退。
29日 サムスン電子,アメリカの医療機器中堅ニューロロジカ社の買収を発表。
31日 ソウル中央地裁,横領罪でSKグループの崔泰源会長に懲役4年の実刑判決。
  2月
1日 ソウル中央地裁,遺産相続を巡り李孟熙元CJグループ会長が弟の李健熙サムスン電子会長を訴えた裁判で原告敗訴の判決。
5日 同伴成長委員会,製菓・飲食店などサービス業14種と製造業2種を中小企業適合業種に選定し,関連業界に勧告。
12日 朴次期大統領,北朝鮮の3回目となる核実験に抗議。
12日 韓米連合司令部,北朝鮮の核実験を受け,対北情報監視態勢(ウォッチコン)を2段階に引き上げ。
18日 LGディスプレイ,テレビ用有機ELパネルの量産ラインへの投資を発表。
19日 政府,22日の竹島の日式典に島尻内閣府政務官が出席することを批判,式典の中止を求める。
21日 大統領職引継委員会,新政府の国政課題を発表。
21日 韓コロンビアFTA,正式署名。
25日 朴槿恵,第18代大統領に就任。「第2の漢江の奇跡」を強調。
26日 大田地裁,韓国人窃盗団が対馬で盗んだ仏像の占有移転禁止の仮処分を決定。
28日 東京地裁,通信特許権をめぐるサムスン電子とアメリカのアップル社との訴訟で,アップル側の特許侵害はないとの判決。
  3月
1日 朴大統領,三一節演説で日本政府の積極的な変化と責任ある行動を強調したうえで,「(日韓の)加害者と被害者という歴史的な立場は,千年の歴史が流れても変わらない」と述べる。
4日 朴大統領,政府組織改編の遅延と関連,国政運営への支障に対し謝罪。
4日 金鍾勲・未来創造科学部長官候補,指名を辞退。
5日 北朝鮮,人民軍最高司令部報道官声明を通じ,休戦協定の白紙化を宣言。
6日 朝鮮中央通信,核攻撃でソウルだけでなくワシントンまで火の海にすると論評。
6日 シャープ,サムスン電子との資本提携を発表(28日に第三者割当増資)。
7日 北朝鮮,外務省報道官声明で「第2の朝鮮戦争は避けがたい」「(韓国への)核の先制攻撃の権利を行使する」と警告。
11日 韓米合同軍事演習「キーリゾルブ」実施(~21日)。
11日 政府,朴政権初の閣議を開催。「朝鮮半島信頼プロセス」の継続を表明。
20日 放送局や銀行などで一斉にサーバーダウン(北朝鮮による攻撃とされる)。
22日 政府組織法改正案,成立。国家安保室,未来創造科学部などを新設。
26日 日中韓FTA交渉の初会合,ソウルで開催(~28日)。
27日 北朝鮮,南北軍通信回線を遮断。
28日 サムスン物産,オーストラリアで56億豪㌦規模の超大型鉱山開発インフラ事業を受注。
29日 政府,国民幸福基金を設立。
  4月
1日 カーニー米大統領報道官,「アメリカが最新兵器を朝鮮半島に送ったのは,平壌への警告と,韓国による『独自行動』への圧力を減らすため」と述べる。
1日 政府,「庶民住居安定のための住宅市場正常化総合対策」を発表。
1日 公正取引委員会,資産総額5兆㌆以上の相互出資制限企業集団62グループを指定。
8日 北朝鮮,開城工業団地の運営を一時中断,労働者を撤収させると宣言。
9日 国土交通部,国民住宅基金の貸出金利引き下げなどの庶民支援策を拡大。
10日 韓米連合司令部,北朝鮮のミサイル発射に備え,対北情報監視態勢(ウォッチコン)を2段階へと再度引き上げ。
17日 朴大統領,尹珍淑を海洋水産部長官に任命。これにより,全閣僚任命。
22日 尹炳世・外交部長官,麻生副首相などの靖国神社参拝に反発し,訪日を中止。
24日 政府,韓米原子力協定が現行内容のまま2年延長される,と発表。
24日 国会再・補欠選挙実施。安哲秀・元大統領候補とセヌリ党候補2人が当選。
25日 金奎顕・外交部第1次官,別所駐韓大使を呼び,23日の安倍晋三首相の「侵略の定義は定まっておらず,捉える観点により違う」との発言に抗議。
30日 国会,60歳定年制の段階的義務化を骨子とする改正雇用促進法案を可決。
  5月
1日 韓トルコFTA,発効。
1日 企画財政部,「規制改善中心の投資活性化対策」を発表。
4日 民主統合党,党大会を開催。党名を民主党に戻し,代表に金ハンギル元文化観光部長官を選出。
5日 朴大統領,アメリカを公式実務訪問(~9日)。
7日 朴大統領とオバマ米大統領,韓米同盟60周年記念共同宣言を採択。
7日 朴大統領,韓米首脳会談の席上「日本は正しい歴史認識を持つべき」と言及。
7日 国会,17.3兆㌆規模の補正予算および基金運用計画案を確定。
9日 尹昶重・青瓦台報道官,大統領訪米中のセクハラ事件のため更迭される。
9日 韓国銀行,基準金利を2.75%から2.50%に引き下げ。
14日 産業銀行,STXグループと債権銀行団との間の自律協約締結を発表。
28日 韓国原子力安全委員会,部品性能試験の成績証明書の偽造を受けて,原発2基の運転停止を決定。
28日 政府,4大国政基調と140件の国政課題からなる,朴政権の国政課題を確定。
31日 企画財政部,国政課題に対する財政支援実践計画を発表。
  6月
7日 STXパンオーシャン,資金繰り悪化でソウル中央地裁に法定管理申請。
11日 ソウル中央地検,国家情報院の大統領選介入に関連し,元世勲前院長を起訴。
13日 政府,新通商ロードマップを発表。国内対策,多国間FTA重視を盛り込む。
24日 国家情報院,黄海上の北方限界線(NLL)に関する2007年の南北首脳会談の議事録を公開。
24日 財務省,30億㌦の日韓通貨スワップ拡大措置について,期限延長をしないことで韓国側と合意したと発表。
27日 朴大統領,国賓として中国を訪問(~30日)。韓中未来ビジョン共同声明で北朝鮮の核保有の不容認,歴史認識問題による域内諸国間の対立深化への懸念を表明。
  7月
1日 検察,李在賢CJグループ会長を横領や背任などの容疑で逮捕。
2日 国会,国家情報院の大統領選挙介入疑惑に関する国政調査特別委員会を始動。
5日 イギリスのHSBC,韓国の小口金融(リテール)業務からの撤退を発表。
10日 ソウル高裁,朝鮮半島の日本統治時代の戦時徴用訴訟で,新日鉄住金(旧日本製鉄)に対して損害賠償命令の判決。
11日 洪翼杓・民主党院内スポークスマン,朴槿恵大統領を「鬼胎」(生まれてくるべきでなかった人)の子孫と表現。
17日 金武星・セヌリ党議員,「現在の経済チームに経済状況を解決するリーダーシップはみられない」と発言。
18日 国家記録院,2007年の南北首脳会談の議事録を保管していないと発表。
21日 新韓銀行,300億円規模の円建て外債(サムライ債)を発行。
30日 カリフォルニア州グレンデール市に従軍慰安婦を象徴する少女像,建立。
  8月
4日 現代重工業,サウジアラビアで33億㌦規模の超大型火力発電所建設を受注。
5日 朴大統領,大統領秘書室長と首席秘書官3人を交代,首席秘書官1人を新たに任命。許泰烈・大統領秘書室長に代えて金淇春・元法務部長官を任命。
6日 サムスン電子,3次元NAND型フラッシュメモリーの量産を発表。
7日 統一部,開城工業団地の操業停止で被害を受けた韓国企業に南北経済協力保険金を支払うと発表。
8日 企画財政部,「2013年税法改正案」を発表(13日には修正案を発表)。
14日 韓国と北朝鮮,開城工業団地で7回目の実務者協議を開催。同工団の正常化に向け5項目の合意文を採択した。
19日 韓米合同軍事演習「乙支フリーダムガーディアン」開始(~30日)。
19日 北朝鮮,朴大統領の南北離散家族再会の提案を受け入れるとともに,金剛山観光再開のための実務会談を要求。
20日 現代自動車労組,部分ストライキに突入(以後,断続的に実施)。
23日 梁建・監査院長,辞任。
28日 政府,「伝貰・月貰市場安定のための対応方案」を発表。
  9月
4日 政府,10億㌦規模の外国為替平衡基金債券を発行。
5日 国家情報院,統合進歩党の李石基議員を内乱陰謀・扇動容疑で逮捕。同容疑による現職議員逮捕は初めて。
5日 朴大統領,ロシア・サンクトペテルブルクで開かれた主要20カ国・地域(G20)会議に出席。
6日 朴大統領,メルケル・ドイツ首相と会談。日本が歴史を眺めながら未来志向的な関係を発展させることを希望する,と発言。
9日 政府,福島や宮城など8県からの水産物輸入を全面禁止。
12日 現代自動車,基本給の5%引き上げなどで労使合意。
13日 蔡東旭・検事総長,辞意を表明(30日退任)。
16日 開城工業団地,操業を再開。
21日 北朝鮮側,25日に予定されていた南北離散家族再会の無期限延期を通告。
26日 朴大統領,基礎老齢年金拡充の公約見直しで国民に謝罪。
29日 ヘーゲル米国防長官,訪韓(~10/2)。戦時作戦統制権委譲の再延期について,韓国のミサイル防衛能力が重要な判断基準との考えを示す。
30日 陳永・保健福祉部長官,基礎年金導入案をめぐる大統領府との対立で辞任。
30日 朴大統領,ヘーゲル米国防長官と会談。日本の歴史,慰安婦関連の言動を批判。
30日 東洋グループ系列3社,資金繰り悪化でソウル中央地裁に法定管理申請。
  10月
2日 韓米定例安保協議会(SCM)開催。アメリカのミサイル防衛体制(MD)への韓国の参加と戦時作戦統制権返還時期の再延長について結論が出ず。
12日 韓国銀行,インドネシアと100億㌦規模の通貨スワップ協定締結(13日には54億㌦規模でUAEと,20日には47億㌦規模でマレーシアとも締結)。
23日 サムスン電子,アメリカのガラス大手コーニング社へ23億㌦規模の出資を発表。
30日 国会再・補欠選挙,2選挙区でいずれもセヌリ党候補が当選。
  11月
1日 柳吉在・統一部長官,「5.24措置」の解除について,「政府もいろいろ考えている」との見解を示す。
6日 経団連など4団体,戦時中の韓国人徴用工に対する相次ぐ賠償命令判決を憂慮する共同提案書を発表。
13日 雇用労働部,「時間選択制雇用活性化推進計画」を発表。
13日 韓国とロシア,首脳会談後の共同声明で日本の歴史認識問題,慰安婦問題に言及。
18日 朴大統領,国会で施政方針演説。非正常の正常化を強調。予算案と経済活性化法案成立への協力を求める。
18日 バージニア州のリチャード・ブラック上院議員(共和党),同州の公立学校教科書に「東海」「日本海」の併記を義務づける法案を提出すると表明。
25日 国防部と外交部,中国大使館の徐京明武官と陳海公使参事官をそれぞれ呼び,中国の一方的な防空識別圏設定に抗議。
28日 国防部,韓中国防戦略対話の席上,中国の防空識別圏設定に抗議,防空圏の調整を要求。
28日 安哲秀議員,新党結成準備を宣言。
29日 玄旿錫・経済副首相,環太平洋経済連携協定(TPP)参加国との協議入りを表明。
  12月
3日 国土交通部,4.1・8.28不動産対策の後続措置を発表。
5日 バイデン米副大統領が来訪(~7日)。中国の防空識別圏問題など,日韓関係について朴大統領と会談。
6日 バイデン米副大統領,韓国の対中傾斜と関連し,「アメリカと逆に賭けるのは良い賭けではない」とけん制。
8日 国防部,離於島上空を含む空域への韓国防空識別圏拡大を発表。
9日 韓国鉄道公社(KORAIL)労組,水西発高速鉄道の子会社化に反発し,全面ストライキ(~30日)。
18日 大法院,自動車部品メーカーの賃金・退職金をめぐる訴訟で,通常賃金の構成範囲に定期賞与も含まれるという判断を示す。
22日 警察,鉄道ストと関連して,全国民主労働組合総連盟本部に突入。
23日 ポスコ,インドネシアで高炉一貫製鉄所を稼動。
26日 政府,安倍首相の靖国神社参拝に対し,「慨嘆と憤怒を禁じえない」と非難。
30日 双龍建設,資金繰り悪化でソウル中央地裁に法定管理申請。
31日 現代製鉄,現代ハイスコの冷延鋼板事業を吸収。

参考資料 韓国 2013年
①  国家機構図(2013年12月31日現在)

(出所) 大統領府ウェブサイト(http://www.president.go.kr)などから筆者作成。

②  国家機関要人名簿(2013年12月31日現在)

主要統計 韓国 2013年
1  基礎統計
2  支出項目別国内総生産(2005年固定価格)
3  産業別国内総生産(実質:2005年固定価格)
4  国(地域)別貿易
5  国際収支
6  国家財政
 
© 2014 日本貿易振興機構 アジア経済研究所
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