アジア動向年報
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各国・地域の動向
2014年の中国 汚職腐敗の取り締まりによる権力基盤の強化
松本 はる香山田 七絵
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2015 年 2015 巻 p. 149-186

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2014年の中国 汚職腐敗の取り締まりによる権力基盤の強化

概況

2014年の中国は,中国共産党総書記(党),中央軍事委員会主席(軍),国家主席(国家)の全最高ポストに就任した習近平が,引き続き自らの権力基盤の強化のために,党内や軍部の汚職腐敗の厳しい取り締まりに注力した1年であった。

国内政治は,新設された中央国家安全委員会や中央全面深化改革(改革の全面的な深化)指導小組をはじめとする,国内改革,軍事,情報管理,経済に関する4つの小組のすべてのトップに習近平が就任することによって,権力の集中化を進めている。また,党や軍の一部が既得権益集団化して,大衆の反感を買っている現状をふまえて,習近平政権は,汚職腐敗が進めば党や国が滅びるという危機意識に立って「党の大衆路線の教育実践活動」などを推進している。さらに,党の指導下で「法に基づく国家統治」を強化することによって,社会の公平性を促進していくという新たな方針を示した。

国内経済は,不動産市場の冷え込みとそれにともなう建設業,製造業の低迷により,経済成長率は7.4%にとどまり,24年ぶりの低水準となった。不動産市場の抑制政策の緩和やインフラ建設事業などの「微刺激策」,中国人民銀行による利下げが実施され,景気を下支えした。安定的で持続可能な経済成長モデルを目指して本格的な行政改革が始動し,行政簡素化と権限の下方委譲,財政・金融制度改革,小・零細企業支援策,都市化政策などで一定の成果がみられた。対外的には,通貨スワップ協定や人民元決済機関の設立などによって人民元の国際化が進展したほか,上海と香港の株式市場の相互乗り入れの試行が始まった。

対外関係は,北京におけるアジア太平洋経済協力会議(以下,北京APECとする)の主催国として,その存在感を国際社会にアピールした。中国は,かつての「韜光養晦」(能力を隠し,密かに力を蓄える)の外交姿勢から事実上脱却しつつあり,自らが「大国」であることを強く意識した「アグレッシブ」ともいえる積極的な外交政策を打ち出そうとしている。近年,習政権はアメリカとの間で「新型大国関係」の構築によって大国間外交を進めつつ,周辺外交ではアジアや中東,ユーラシア大陸を網羅した全方位外交を展開している。また,膠着状態にあった日中関係は,両国首脳会談の実現によって改善の兆しをみせている。

国内政治

近年,習近平政権は「改革の全面的な深化」を掲げて,汚職腐敗の取り締まりを重視する国内改革を進めてきている。2014年10月の中国共産党第18期中央委員会第4回全体会議(4中全会)では,法による国家統治の全面的な推進の目標として,中国の特色ある社会主義法治体系と,社会主義法治国家を建設することが挙げられた。あくまでも党の指導下という条件付きではあるが,「法に基づく国家統治」を推進していく方針が示されたのは,今回が初めてのこととなった。中国の経済成長が減速しつつあるなかで,持続可能な発展を保持しつつ改革を進めるためには,法治の強化による社会の公平性の促進は,もはや避けて通ることのできない課題となっている。

権力基盤強化のための新たな指導小組の創設

2013年3月以来,習近平は中国共産党総書記,中央軍事委員会主席,国家主席の最高ポストに就任して,中国の最高指導者として,権力の基盤固めに注力してきた。最近,習近平の権力強化の方策のひとつとして注目を集めているのが,指導小組などの重要組織の創設である。従来,指導小組は最高意思決定機関であるにも関わらず,実体そのものが不透明で秘密性が高かった。しかし,習近平政権になって,指導小組の新設や活動内容の概要が相次いで判明した。

2013年11月の中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(3中全会)以降,中央国家安全委員会や中央全面深化改革指導小組をはじめとして,中央軍事委員会深化国防・軍隊改革指導小組,中央網絡安全・信息化(インターネット安全・情報化)指導小組,中央財経指導小組を新設して,習近平が全組織のトップに就任したことが公式発表された。

2014年2月2日には,中央全面深化改革指導小組の第1回会議が開催された。同小組は,中央から末端までの国内の政治・経済改革を推進していくために中心的役割を果たす。同指導小組の下には,(1)経済体制・生態文明体制改革,(2)民主法制分野改革,(3)文化体制改革,(4)社会体制改革,(5)党の建設制度改革,(6)紀律検査体制改革,という6分野の専門小組も設置された。2014年の1年間に同指導小組は8回にわたる会議を実施していたことが明らかになっている。また,中央全面深化改革指導小組の活動が公にされたことによって,習近平が改革の主導者として絶大な権力を有することが,中央から地方に至るまでの中国社会全体に誇示されることになった。その一方で,国務院の職務権限が同小組と重複していることから,同院トップの李克強の権限縮小はもとより,国務院そのものの機能低下の可能性も指摘されている。

4月15日には,中央国家安全委員会第1回会議が開催された。同会議において習近平総書記が演説を行って,外部の安全保障だけではなく,内部の安全保障も重視する方針を示した。中国版の国家安全保障会議(NSC)ともいわれる中央国家安全委員会は,アメリカのNSCのように外交や国家安全保障の問題に限られたものではなく,国内問題をも扱う見通しが強まっている。とくに,中国国内におけるテロや少数民族問題などに起因する騒乱の発生といった不安定要因をふまえて,治安維持強化や騒乱の制圧などのための役割を果たしていく可能性が高い。

第二次「党の大衆路線の教育実践活動」の展開と総括

2013年1月14日,中央紀律検査委員会第2回全体会議における「トラもハエも叩き,不正の風潮,腐敗を解決する」という習近平の号令によって,共産党の中央から末端に至るまでの汚職腐敗に対する取り締まりを強化して,党内の綱紀粛正に注力している。また,蔓延する汚職や腐敗に対する厳格な取り締まりの一環として,2013年6月の党の大衆路線の教育実践活動工作会議の開催以降,中央政治局常務委員全員が地方の農村や工場などを訪れて「党の大衆路線の教育実践活動」を展開してきた。同活動のねらいは,(1)党幹部の汚職腐敗が蔓延して大衆の人心が乖離することを避けるために,党員に対する綱紀粛正の徹底を図ること,(2)大衆を重視して,党が大衆のなかに入って国内の諸問題を解決して,党の求心力を高めるとともに大衆の支持を得ることにある。

2014年1月20日,中国共産党による第一次大衆路線教育実践活動のまとめと,第二次の活動のための準備会議が開催された。習近平総書記は同会議で「1回目の活動の経験を十分に活かし,『四風(形式主義,官僚主義,享楽主義,贅沢主義)』への反対を貫き,民衆がもっとも関心を寄せる問題に着手し,民衆の利益に関わる問題の解決に力を入れ,民衆の身近にある不正問題を解決し,仕事に対する姿勢の改善を草の根レベルで実施するべきだ。民衆が満足できる効果を収めなければならない」ことを強調した。

2014年も前年に続いて常務委員7人全員がそれぞれの拠点地域を決めて,第二次「党の大衆路線の教育実践活動」を展開した。その活動の一環として,習近平総書記は,3月と5月の2度にわたって自らの拠点である河南省開封市蘭考県と鄭州の公共機関や農村を訪れて,末端の幹部や民衆との交流を行うとともに,教育実践活動の実地指導を行った。

以上のような活動をふまえて,10月8日には「党の大衆路線の教育実践活動」総括大会が開催された。習近平は同大会の演説で「同活動の展開によって大衆のなかで党の威信とイメージが一段と確立されて,党と人民の心がいっそう結びつき,改革と発展を推進する巨大なプラスの力が生まれた」として,その成果を強調した。また,同活動によって幹部の不必要な会議が以前より25%削減され,個人的に不正使用されていた11万5000台余りの公用車が廃止され,不必要な2580件の公的建設工事が中止されたなどの実績が公表された。

党や軍幹部の汚職の相次ぐ摘発

近年,習近平政権は反腐敗キャンペーンの強化によって,党や軍の幹部の汚職摘発を進めてきた。2014年6月30日,政治局会議は,胡錦濤前政権において軍のナンバー2の地位にあった徐才厚・元政治局委員・中央軍事委副主席が職権乱用で賄賂を受け取ったとして,党籍剥奪処分と最高人民検察院への送致決定を発表した。政治局員の党籍剥奪処分は,2012年の薄熙来の失脚事件以来のこととなった。なお,徐才厚の摘発に先立って,4月2日には,『解放軍報』が人民解放軍指導者18人の連名による「習近平軍事委主席の国防・軍建設に関する重要論述を貫徹する」発言録を掲載した。この真意は,徐才厚の処分を目前に控えて,軍部の反発を抑え込んで習近平への忠誠を誓わせたという見方が有力となっている。

また,7月29日には,中央紀律検査委員会が周永康に対する重大な規律違反容疑での立件・審査を決定したことが明らかになった。2013年以来,江沢民派の周永康・元政治局常務委員の周辺では逮捕者が相次ぎ,出身母体の石油利権などに絡む数々の疑惑が取り沙汰されてきた。このため,かつて党内序列9位で,警察や公安,司法の権限を束ねる党中央政法委員会のトップとしても絶大な権力を掌握していた周永康にまで捜査の手が及ぶかどうかに注目が集まっていた。しかし,最終的には,党中央が周の立件に踏み切ったことによって,「刑不上常委」(政治局常務委員は罪を問われない)という党内の不文律が覆されることになった。ついに,12月5日には周の党籍剥奪処分を党中央が決定し,収賄などの容疑で最高人民検察院が逮捕を決定するという,きわめて厳しい処分が下された。

さらに,12月22日には共産党青年団(共青団)出身の胡錦濤の側近で,かつて党中央弁公庁主任という地位にあり,その後,全国人民政治協商会議副主席・中央統一戦線工作部長を務めていた令計画が重大な規律違反の容疑で取り調べを受けていることが判明して,同月31日に現職を解任されることが決定した。

腐敗に対する厳しい取り締まりは,習近平や王岐山をはじめとする,いわゆる「紅二代」(建国世代の高級幹部・指導者の子弟)が中心となって進めているという見方が有力である。「紅二代」そのものは派閥ではないため,派閥間の対立構図として捉えるのは難しいものの,汚職腐敗の撲滅運動を通じて,党内で依然影響力の強い江沢民派や共青団派の弱体化を図り,習近平の支持を拡大して権力基盤の強化に繋げていこうといった政治的意図が作用していることは明らかである。習政権の一連の汚職腐敗の取り締まりによって,民衆をはじめ一部の支持が拡大しているのも事実であるが,摘発には明確な基準がなく,あくまでも党中央が恣意的に決定するため,党内で自由に発言する雰囲気は失われつつある。

都市と農村の格差解消のための改革

習近平政権は,都市部と農村部の格差解消のための改革を進めている。従来,中国では出身地によって「都市戸籍」と「農村戸籍」に分かれた戸籍制度が運用されており,教育,就職,医療,社会保障などの公共サービス面で待遇に差をもたらしていることから,都市と農村の間で広がる格差問題の根源となってきた。

2014年2月6日,国務院は「統一的な都市部・農村部住民の基本年金制度の構築に関する意見」を発表して,都市と農村の住民の社会年金保険制度を全国統一する方針を明らかにした。また,3月5日には第12期全国人民代表大会(全人代)第2回会議の政府活動報告のなかで,李克強総理は都市化を提起して,(1)農村から都市に移転した約1億人を都市戸籍に入れる,(2)約1億人が居住する都市の「城中村」を改造する,(3)約1億人を対象に中西部地域で都市化を進める,という「3つの1億」の方針を打ち出した。さらに,3月16日,党中央および国務院は「国家の新型都市化計画(2014~2020年)」を発表して,大都市への人口集中を抑制しつつ,農民の都市戸籍への転換を中小都市優先で認めるといった新たな都市化政策を発表した。

7月30日には,国務院が「戸籍制度改革の一層の推進に関する意見」を公表して,都市戸籍と農村戸籍の統一を柱とした戸籍制度の改革方針を示した。それによって,2020年までに新しい戸籍制度を確立して,農村人口の約1億人を都市戸籍に移転させる方針が示された。戸籍制度の改革には,農業の近代化を図って,農村の余剰人員を都市に吸収して,農村出身者の生活水準を向上させ,都市に新たな消費者層を生み出すというねらいもあるものとみられる。

新疆ウイグル自治区における騒乱の頻発

2014年は新疆ウイグル自治区における騒乱やテロ事件の発生が後を絶たなかった。近年,関連の事件は無差別化して規模が拡大する傾向を強めているだけでなく,同地域以外にも広がりをみせている。3月1日には雲南省の昆明駅で無差別殺傷事件が起きて市民29人が死亡,140人余りが負傷した。中国当局は同事件を新疆ウイグル自治区のウイグル族を中心とした独立勢力による暴力テロと断定した。4月27~30日には,習近平総書記が新疆ウイグル自治区カシュガルやウルムチの視察を行ったものの,視察直後の30日夜にウルムチ南駅で大規模な爆破事件が発生して多数の死傷者が出たことから,指導部に大きな衝撃が走った。5月22日にもウルムチ市内の朝市で車両爆発事件が起きて過去最大級の惨事となった。5月23日,当局は中国全土の警戒態勢を強化するとともに,新疆ウイグル自治区で今後1年間は超法規的な措置も辞さない対テロ戦争を展開することを宣言した。だが,7月28日にはカシュガルで襲撃事件が発生して死傷者が100人余りに上ることとなった。

習近平政権は,ウイグル族やチベット族などの少数民族に対する締め付けを強化してきた。学校や寺院などでは愛国主義教育を徹底させる一方で,新疆の一部の地域で髭・ベール着用の禁止やモスクの閉鎖といった措置をとってきた。9月23日には,国家分裂罪で起訴されていた,比較的穏健派で知られるウイグル族学者のイリハム・トフティに無期懲役の1審判決が下された。同月28日には中央民族工作会議が9年ぶりに開催されて,少数民族の移動を制限して居場所に対する監視を強める方針などが示された。10月以降も新疆ウイグル自治区における騒乱は終息する気配をみせず,カシュガルなどの南部で頻発した。

歴史認識に関する反日キャンペーンの強化

2015年の「抗日戦争勝利70周年記念」を間近に控えて,中国国内における歴史認識に関する反日キャンペーンが積極的に展開されている。2014年2月27日,第12期全人代常務委員会第7回会議では,9月3日を「日本の帝国主義・侵略戦争に中国人民が抵抗した日であり,世界の反ファシズム戦争の重要な構成部分である」として,「人民抗日戦争勝利記念日」とする法案が採択された。それとともに,12月13日を「南京大虐殺犠牲者国家追悼日」として国家の記念行事を行うことが決定された。中国側はこの日を「40日以上にわたる大虐殺が始まった日」としたうえで,「30万人余りが虐殺されて,内外を震撼させた国際法違反の残虐行為があった」と位置づけている。

また,6月10日には,外交部が南京大虐殺と慰安婦問題に関する史料の世界記憶遺産への登録を目指して,国連教育科学文化機関(ユネスコ)に申請したことを明らかにした。さらに,7月7日の盧溝橋事件77周年記念日には,中国の最高指導者としては初めて盧溝橋の中国人民抗日戦争記念館を訪れた習近平は,中国全土に実況中継された演説のなかで,「日寇侵略」について幾度か言及したうえで,「少数の者が依然として鉄の歴史的事実を無視していることは遺憾である」として厳しい対日批判を行った。近年,安倍晋三首相の靖国神社参拝問題をめぐって,中国国内では反発が高まっているため,一連の記念日設置などの動きを歓迎する声も挙がっている。

経済

経済成長の鈍化と全面的な行政改革の始動

2014年の中国の国内総生産(GDP)の実質成長率は前年を0.3ポイント下回る7.4%で,年初の目標値(7.5%)をわずかながら下回った。これは1990年の3.8%以来,24年ぶりの低水準である。各期のGDP成長率は,第1四半期7.4%,第2四半期7.5%,第3四半期7.3%,そして第4四半期7.3%と,ほぼ横ばいで推移した。GDPの産業別内訳は,第1次産業は5兆8332億元(前年比4.1%増),第2次産業は27兆1392億元(同7.3%増),第3次産業は30兆6739億元(同8.1%増)となっており,第3次産業の比率が48.2%と前年より1.3ポイント上昇し,第2次産業の比率42.6%を上回った。GDP総額は名目で63兆6463億元,円安の影響もあり世界第3位の日本の約2倍の規模となった(『日本経済新聞』2015年1月20日)。

成長鈍化の主な要因は,住宅市場の冷え込みとそれにともなう建設業,製造業の低迷である。2014年の主要なマクロ経済指標からも,景気の減速がみてとれる。投資に関しては建設・設備投資の傾向を示す都市固定資産投資の成長率が15.7%で,鉄道や高速道路などのインフラ投資が支えたものの,2013年の19.6%より縮小した。不動産開発投資は10.5%増で,前年より9.3ポイント下落した。工業生産の伸びは原油・鋼材価格などの下落,新車販売の低迷などの要因により8.3%にとどまり,前年の9.7%を下回った。国際貿易総額は4兆3030億ドルで3.4%の伸びにとどまり,年間目標の7.5%を大きく下回った。輸出総額は2兆3427億ドル,輸入総額は1兆9603億ドル(それぞれ前年比6.1%,0.4%増)で,過去最大の3825億ドルの貿易黒字となった。貿易黒字拡大の主な要因は国内の不景気,産業構造の高度化と輸入代替の進展による輸入の低迷,輸出先である欧米諸国の不景気,国内の賃金上昇を背景とした外資の域外移転による輸出の低迷である。

物価は安定的に推移し,消費者物価指数の上昇率は目標値3.5%を大きく下回る2.0%であった。工業関連価格は国際原油価格の下落を受け,前年比で工業生産者出荷価格は1.9%下落,工業生産者購入価格は2.2%下落した。消費動向を示す社会消費品小売総額は26兆2394億元で前年比10.9%増(実質)と堅調であった。景気の減退を反映して電力使用量は前年比で3.8%と小幅な増加にとどまり,第1次産業は0.2%減,第2次産業は3.7%増,第3次産業は6.4%増,家庭用は2.2%増となった。

中国政府は2008年の「4兆元の大型刺激策」のような短期的な刺激策は取らないと強調しつつも,経済の下振れ圧力が強まるなか,2014年に入ってターゲットを絞った「微刺激策」と呼ばれる一連の財政・金融政策を実施した。具体的には,国務院が4月に発表した小・零細企業への税制上の優遇措置やバラック住宅地区の再開発事業に対する金融サービス支援,財政部が4月に発表した小・零細企業への所得税減免と増値税改革,中国人民銀行(中央銀行)が4月と6月の2回にわたり実施した小・零細企業や農業向け融資を行う銀行を対象とした預金準備率の引き下げなどである。下半期にはさらに不動産市場での抑制政策の緩和,インフラ建設事業の追加的な認可などの措置が取られたほか,11月には中国人民銀行が2年4カ月ぶりの利下げに踏み切った。一連の措置により住宅市場が一定程度回復するなど景気を下支えしたが,効果は限定的であった。

経済成長の減速について,習近平総書記は中国経済が「新常態」(ニュー・ノーマル)の段階に入ったと表現している。「新常態」という言葉が初めて登場したのは5月の河南省視察時であり,それ以来現政権のマクロ経済コントロールの理念としてメディアに頻繁に登場するようになった。2008年のリーマン・ショック以降,中国の経済成長率はかつての2桁から8%前後へ減速した。中国政府は「新常態」という理念を打ち出すことで,経済が高度経済成長期から中高速成長期に移行したという認識を示すとともに,従来の量的拡大路線から質的な向上,すなわち安定成長と構造調整を通じた公平な発展モデルへの転換を目指す姿勢を明らかにした。

李克強総理は就任以来(1)安定成長の維持,(2)構造調整,(3)改革の推進,の3本の柱から成る「リコノミクス」と呼ばれる経済政策を推進しており,(3)を最優先課題としている。それぞれの具体的な重点課題は以下のとおりである。(1)は財政・金融制度の整備による地方政府の財政健全化と非正規金融への依存の抑制,住宅価格の安定化である(「地方政府の債務問題と財政・税制度改革」,「金融制度改革」の項を参照)。(2)は従来の工業・投資重視からサービス業・消費重視の発展モデルへ転換するための,所得分配の公平性の向上,社会保障制度の充実や消費市場に関する制度の整備,イノベーションの促進である。具体的には,2014年から本格化した戸籍制度改革と不動産登記制度を核とする一連の都市化推進政策,小・零細企業支援策などが含まれる(「小・零細企業および雇用支援政策と労使関連制度の整備」「三農問題への取り組み」および国内政治の「都市と農村の格差解消のための改革,」の項を参照)。(3)は経済の市場化に合わせた行政改革で,前年に引き続き市場の活性化と政府介入の削減を目的とした行政の簡素化と行政審査・許認可権限の下方委譲が進められ,11月までに700を超える項目が対象となった。国有企業改革についても,国有企業責任者の給与改革と混合所有制改革の2点で進展がみられた。前者については8月29日党中央政治局会議が承認した「中央管理企業責任者の給与制度改革方案」により国有企業責任者の給与が引き下げられ,情報公開,国と企業の分離が進められた。後者については中国石油化工(シノペック)の混合所有制改革プランが発表されるなど,市場化に向けた成果があった(『中国証券報』2014年7月1日)。

不動産市場の冷え込みと住宅ローン緩和政策

2013年後半の金融引き締め政策の影響で,それまで高騰していた不動産価格は,年初より調整局面に入った。2014年第1四半期の金融機関による不動産向け貸し出し,個人向け住宅ローンの伸び率が前年より低下し,住宅市場の冷え込みはとくに地方都市で顕著となった。5月12日,中国人民銀行は商業銀行に対し住宅ローンの緩和を指示したが,これは実行されなかった。そこで中国人民銀行と中国銀行監督管理委員会(銀監会)は9月30日,住宅ローン政策の見直し・条件緩和に関する通知を出した。通知によると,1軒目の住宅を保有し,かつ住宅ローンを完済している世帯が買い替えを目的として普通分譲住宅購入ローンを申請する場合,1軒目と同等の住宅ローン政策が適用される。さらに1軒目の住宅ローンの金利下限を基準利率の0.7倍に下げ,最低頭金比率を30%に引き下げるとしている。

住宅需要の縮小を受け,各地の都市が次々と住宅の購入制限政策を緩和・撤廃した。購入制限政策は2011年頃から住宅価格高騰への対策として導入されたもので,一時全国40以上の都市で実施されていたが,6月26日の内モンゴル自治区フフホトを皮切りに9月21日までに41都市が規制を緩和・撤廃した。9月末の住宅ローン政策の緩和などの影響で国慶節休暇明けに住宅需要が回復の兆しを見せたため,一線都市の住宅購入制限政策が撤廃される可能性は低いとみられる。

2014年の不動産開発投資の変化率(前年同期比)を図1に示した。2014年の不動産開発投資は総額9兆5036億元(うち住宅は6兆4352億元),投資の増加率は一貫して右肩下がりで,2014年の増加率は10.5%(実質9.9%)と,前年の19.8%を大きく下回った。開発業者による購入面積は合計3億3383万平方メートルで,前年のプラス成長から一転して1~4月に大幅に下落,9月まで横ばいのマイナス成長が続いた。同面積は9月末の住宅ローン緩和政策を受けて一時プラスに転じたものの,11月以降は再び落ち込み,最終的には通年で14.0%のマイナス成長となった。不動産の販売総額は7兆6292億元(うち住宅は6兆2396億元),販売面積は12億649万平方メートル(同10億5182万平方メートル)で,年初に急落して以降ずっと前年比減で推移し,最終的な伸びは前年よりそれぞれ7.6%,6.3%減少した。

図1  2014年不動産開発投資の変化

(注) 前年同期比。

(出所) 中国国家統計局ウェブサイト(http://www.stats.gov.cn/tjsj/)。

主要70都市における新築住宅価格の変化をみると,2014年前半はほとんどの都市で価格が上昇していたが,7月以降住宅価格の下落が始まり,9月には58都市,10月以降はほぼすべての都市で価格が下落した(図2)。とくに地方都市での住宅在庫の積み上がりが深刻化し,不動産業者が値下げによる販売増加をねらったためとみられる。住宅ローンの規制緩和と11月の利下げの影響により,12月の不動産市場は回復に向かった。

図2  2014年全国70大・中都市における新築分譲住宅価格の変化

(出所) 中国国家統計局ウェブサイト(http://www.stats.gov.cn/tjsj/)。

地方政府の債務問題と財政・税制度改革

中国政府は,財政・税制度の不備が汚職と腐敗,経済格差,非効率な公共支出や地方政府の債務問題を助長しているだけでなく,海外からみた中国経済の重大なリスク要因であるとの認識の下,ガバナンスの強化に重点をおいた制度改革を実施している。6月30日,政府は財政・税制改革の大枠と2020年までのスケジュールを示した「財税体制改革深化基本計画」を発表した。同計画の重点は(1)予算管理制度の改善,(2)租税制度の整備,(3)事業権と支出責任が一致した制度づくり,の3つである。2014年は(1)に優先的に取り組むこととされ,とりわけ地方政府の債務問題に関して大きな進展があった。

6月12日の王保安財政部副部長の発言によれば,2014年中に地方政府が返済責任のある債務は債務総残高の21.9%を占める。地方政府の債務の問題点は,第1に返済が土地譲渡収入に依存しており,不動産市場の低迷により返済が困難に陥るリスクが高い点にある。会計検査署によれば,2012年末時点で土地譲渡収入による返済予定の債務残高は約3兆5000億元に達している。第2に,地方政府の主要な資金調達チャネルである融資プラットフォーム(地方政府が資金調達のために設立した企業組織)の運営の不透明性とリスクがある。財政部の試算では,2013年6月末時点で地方政府の債務約12兆元のうち融資プラットフォームによる借入は4兆元超である。第3に,地方政府が依存している融資プラットフォームや非正規金融では一般的に金利が銀行より高く,資金調達コストが割高である。

他方財政の健全化のため,財政部は5月21日に「2014年地方債の自主発行・自主償還に関する試行通知」を発表し,上海,浙江,広東など10地区を地方政府債券自主発行・自主償還試行地区に選定し,他地域に先行して起債や資金調達の仕組みを構築する改革を実施した。2011年後半より財政部は試験的に一部の地域で債券の自主発行を許可してきたが,今回の改革では地方の自主償還を強調している。「通知」によれば毎年国務院が地方債の発行限度額を設定し,翌年に繰り越すことはできない。また,債券は5年物,7年物,10年物の3種類,比率は4:3:3と規定された。さらに財政部が6月13日に発表した「2014年地方政府債券自主発行自主償還実験の信用格付けに関する指導意見」「2014年地方政府債券自主発行自主償還実験の情報開示に関する指導意見」に基づき,総合格付けと年1回の見直し,事前の情報公開が義務づけられた。

8月31日には全人代常務委員会会議で20年ぶりとなる予算法の改正が可決され,財政制度改革に法的な根拠が与えられることになった。続いて10月2日,国務院は「地方政府債務管理の強化に関する意見」を発表し,初めて地方政府の債務リスク管理に関する包括的な制度的枠組みを明らかにした。「意見」は,地方政府が返済すべき債務は予算に組み入れ中央は救済しないこと,資金調達は地方債の発行と政府部局を通じた借入に限定し企業や事業体を通してはならないこと,地方政府の起債は中央の総量コントロールと予算管理を受けること,などを定めた。なお地方政府の資金調達は,非営利事業向け一般債券と準非営利事業向け特定債券の2種類に限定される。続いて10月22日には「地方政府債務ストック整理処置弁法」の暫定版が下達され,地方財務部局に対し2015年初までの債務残高の確認と確定,情報公開の実施を求めた。同法は債務の区分と予算への組み入れ方法,返済期限を過ぎた政府債務の返済を優先すること,地方財政部門が一定比率の債務返済準備金を用意することを明確に規定している。

12月31日,財政部が「権利責任発生主義政府総合財政報告制度改革プラン」を正式に公布し,今後政府財政報告制度の改革に着手していくことを示した。同プランによれば,2020年までに各級政府に財務報告の作成,監査終了後の財務の一般公開が義務づけられる。従来政府財務の情報公開が決算報告のみに限定されていたことを考えると,この改革により今後政府の財務管理の規範化と監督,地方債の信用格付けのための情報公開が進展することが期待される。

金融制度改革―リスク・コントロールの強化と国際化

中国人民銀行は2014年も引き続き近年の中立的な金融政策を維持すると強調しつつも,企業の資金調達コストを軽減する目的で利下げを実施した。まず三農(農村,農業,農民)と小規模・零細企業向け貸出が一定比率に達している商業銀行を対象として,4月25日と6月16日の2回にわたり人民元預金準備率を引き下げた。そして11月21日,2年4カ月ぶりに金融機関の人民元貸出・預金基準金利の引き下げを決定した。11月の利下げで金融機関の1年物貸出金利と1年物預金金利の利下げ幅がそれぞれ0.4ポイント,0.25ポイントと異なるのは,銀行の預貸金利差を縮小し銀行の利益の一部を企業へ誘導するためとみられる。同日,2012年6月に基準金利の1.1倍に拡大された預金金利の許容変動幅の上限がさらに1.2倍に拡大され,金利の自由化がまた一歩前進した。

近年増加している銀行以外の資金調達システム「影の銀行」(銀行を介さない金融取引の総称,狭義では銀行の「理財商品」や信託会社など)は,従来銀行主体であった中国の金融システムの市場化を後押しする一方,そのリスク・コントロールが重要な課題となっている。この点については,国務院が2013年末に通達した107号文書で中国人民銀行に「影の銀行」の統計・監視システムの構築と情報公開の実施を求めており,銀監会は7月11日に「銀行の理財業務組織管理体制の整備の関連事項に関する通知」を出し,各銀行に理財業務の規範化とリスク・コントロールを求めた。

インターネット金融に関しては,3月26日に中国人民銀行の下級組織である中国支付清算協会がインターネット金融専門委員会を設置した。メンバーは銀行,証券会社,P2Pの借り入れプラットフォームなど75機関に及ぶ。4月3日には中国人民銀行,中央銀行条法司が主導したインターネット金融協会が国務院に承認され,民政部に設立申請が出された。同協会はファンド会社などを対象に,ネット金融業界の自主規制管理を目的にしている。現時点では銀監会がP2P業界,中国証券監督管理委員会(証監会)がクラウドファンディング,中央銀行が第三者決済の監督・管理を所轄している。

対外的には,人民元の国際化が進展した。中国人民銀行が6月24日に発表した「2013年中国地域金融報告」によれば,2013年の中国の銀行によるクロスボーダー人民元決済は前年比57%増の4兆6000億元に達し,そのうち財貿易の決済が3兆元(前年比47%増),輸出入総額全体に占める割合は11.7%(同3.3%増)となった。人民元建てクロスボーダー取引を行った海外企業は222カ国・地域に達している。中国は2009年以来20あまりの国・地域との間で通貨スワップ協定を結んでおり,2014年は新たにスイス国立銀行,ロシア中央銀行などと調印した。一般的な通貨スワップ協定調印の目的が危機対応であるのに対し,中国は貿易・投資促進と人民元の国際化を目的としている点に特徴がある。今年に入って人民元清算システムの協力覚書がロンドン,フランクフルト,パリ,ルクセンブルク,ソウルで締結され,人民元清算システムはすでにアジア,欧州,オーストラリアのネットワークを形成しつつある。また,2011年に始まった海外から人民元で中国本土の資本市場へ投資できる人民元適格外国機関投資家(RQFII)制度も急速に拡大しており,7月18日の証監会の発表によれば今年6月までに香港,イギリス,シンガポール,フランス,韓国,ドイツの84の金融機関をRQFIIとして認定し,総額2500億元の投資枠を供与した。

2014年の人民元の対ドルレートは5年ぶりに下落し,年間下落幅は2.42%とデータが取得できる1995年以来最大となった(『日本経済新聞』2014年12月31日)。年内の動きをみると,1月の人民元相場は上昇して1ドル=6.1元を割り込んだが,中国人民銀行の自国通貨売り介入により下落した。5月に訪中したルー米財務長官が為替政策の透明性を求めたことから人民元相場は安定を取り戻したが,11月に中国人民銀行が利下げを断行すると再び下落基調に転じた(図3)。2013年11月の三中全会で習総書記は,2005年の管理相場制移行から10年近くが経過し,変動相場制への移行に向け,さらなる金利と為替の自由化を進めると述べている。

図3  人民元対米ドルレートの推移(2013年1月~2015年2月)

(出所) 国家外匯管理局ウェブサイト(http://www.safe.gov.cn/)。

証券市場では,李総理は4月10日にボアオ・アジア・フォーラムで,上海と香港の株式市場の相互乗り入れシステム(通称「滬港通」)の試行を実施すると発言し,同日証監会と香港証券先物委員会(SFC)も公告でこれを明らかにした。同システム発足により,上海と香港の投資家は規定の範囲内で双方の取引所に上場している株式(香港株とA株)の売買ができるようになる。上海証券取引所は4月29日に「滬港通を試行するための実施細則(草案)」,9月26日に「滬港通実験弁法」などを公布し,発表から半年足らずというスピードで制度的な準備が完成した。「滬港通」は11月17日より正式に試行された。

小・零細企業および雇用支援政策と労使関連制度の整備

2014年の都市新規雇用は1322万人,登録失業率は4.1%となり,3月5日の全人代で発表された目標(都市新規雇用1000万人以上,都市登録失業率4.6%以内)を達成した。ただし,2014年に大学新卒者が過去最高の727万人に達することもあり,依然雇用創出を求める圧力は強い。

4月29日,財政部,国家税務総局,人力資源社会保障部は合同で今後3年間の雇用支援政策を発表した。このなかで失業者の起業と失業者を採用する企業に対する減税措置の適用範囲を大幅に拡大したうえ,業種の制限も撤廃した。続いて5月13日に国務院弁公室が「2014年全国普通大学卒業生就業・起業に関する通知」を発表,起業する大卒者に対する優遇措置や利子補給,新卒者採用企業に対する優遇措置の実施を打ち出した。これは外国からの技術移民受け入れを含めたイノベーション促進政策と,ITを活用した新分野の就業・起業の支援政策の一環である。このほか,6月23日に教育部など6部局が合同で「現代職業教育体系計画(2014~2020年)」を発表し,学生や農民工への職業教育の実施計画と目標を明らかにした。

雇用の受け皿やイノベーションの推進主体として,小・零細企業の支援にも重点が置かれている。2月18日,国務院は「登録資本金登記制度の改革方案に関する通知」を発表し,企業の参入条件の緩和,ビジネス環境の改善を目的として,登録資本金の最低金額条件の緩和を行った。6月4日,李総理は国務院常務会議を招集し,起業・就業を支援するためのいっそうの行政簡素化と権限移譲の措置を検討し,新たに(1)小・零細企業の審査・認可,一時帰休・失業者に対する税の減免,大学運営の自主権などに関する52の行政審査・認可事項を廃止または移管,(2)一部の職業資格の認定・許可の廃止,(3)36業種の工商登記のための事前審査(「先証後照」)を事後審査・認定(「先照後証」)へ変更すること,などを決定した。さらに国務院は11月20日に「小規模・零細企業の健全な発展の推進に関する意見」を発表し,税制優遇,金融保証,企業拠点,情報サービスなど10の分野で小規模・零細企業の長期的発展のための方針を打ち出した。

労働者の権利の向上にも一定の進展がみられた。2013年2月に国家発展改革委員会,財政部,人力資源社会保障部が合同で発表した「所得分配制度改革の深化に関する若干の意見」は,業種・地域別賃金団体交渉の積極的な推進を打ち出しており,これに基づき「賃金団体交渉条例」などの制定作業が進行中である。

賃金の情報公開も進められ,5月27日に国家統計局は初めて業種別の平均賃金データを公表した。公表された16業種の87万法人のなかで,平均賃金がもっとも高かった「法人の責任者」ともっとも低かった「商業・サービス業従業員」では, 2.7倍の格差が存在することが明らかとなった。最低賃金基準は2014年も19の一級行政区で平均13.1%引き上げられたが,2013年の27の一級行政区平均17%を下回った。12月11日までに全国21の一級行政区が企業賃金ガイドラインを発表したが,賃上げの基準ラインは平均12%前後で,これは前年発表された17行政区の基準ラインの14%前後と比べ明らかに低下している。合理的に決定された賃金ガイドラインは,今後の労使交渉制度の推進に役立つことが期待される。

上海自由貿易試験区の取り組みと対外開放の推進

2013年9月29日に始動した上海自由貿易試験区は,第18回全国人民代表大会で採択された「改革の全面的深化の若干の重大な問題に関する決定」のなかでも対外開放推進の重要な拠点であり,その経験は他地域へ普及されるものと位置づけられている。

同試験区の発足から1年余りを経て,2014年は法制化とさらなる規制緩和の2点で改革が進展した。第1に,8月1日に「中国(上海)自由貿易試験区条例」が施行された。さらに条例の規定に基づき「中国(上海)自由貿易試験区の行政不服審査権の実施に関する弁法」と「中国(上海)自由貿易試験区管理委員会の行政文書の法律審査に関する規則」が10月1日から正式に施行された。前者は,従来個々の業務主管部局が行使していた不服審査権を市政府または浦東新区政府レベルに集中させること,後者は行政文書の法律審査制度の整備を定めている。

第2に,試験区では外資の投資や企業設立に関わる認可・批准手続きを原則不要としているが,業種のネガティブリストによる参入規制や制限を行っている。上海市人民政府は6月30日にネガティブリストの改定を発表し,項目数を2013年版の190から139へ減らすことでさらなる規制緩和を進めた。国務院は9月4日「中国(上海)自由貿易試験区における関連行政法規および国務院の批准を経た部門規則が規定する参入特別管理措置の一時的な調整実施に関する決定」を公布し,上記の規制緩和に法的な裏づけを与えた。

上海自由貿易試験区の経験を普及する取り組みとして,新しい通関制度が9月18日までに段階的に全国に導入された。上海税関は税関総署から権限を受けて一括納税,保税展示取引,事後通関など14の新制度を実施して効果を上げており,輸入および輸出の通関時間は他の地域よりもそれぞれ41.3%,36.8%短縮されている。

さらに李総理は,12月12日の国務院常務会議で上海自由貿易試験区の経験の普及と対外開放をいっそう推進するための決定を行った。具体的には,(1)同試験区における一部の開放措置を浦東新区に広げる,(2)貿易,投資,金融制度の規制緩和や事前認可から事後監督への変更など28項目を全国に広げる,(3)広東,天津,福建の3カ所に自由貿易試験区を開設し,同試験区の内容を普及しつつ新たな試行内容を充実させる,の3点である。決定を迅速に実施していくため,国務院は12月21日に「中国(上海)自由貿易試験区における複製可能改革試行経験の普及に関する通達」を公布し,上海自由貿易試験区での経験のうち全国へ普及すべき項目をリスト化し,各項目の責任部門を指定した。リストには企業設立手続きのワンストップ・サービス化,外貨資本金元転制度(区内の外商企業が外貨資本金を人民元に自由に換金できる制度)の導入などが含まれる。通達は,2015年6月30日までに実施するよう国務院の関連部門に呼び掛けている。

地域開発構想

2014年の全人代の政府活動報告において,新たな地域経済ベルトの開発構想が打ち出され,東北の旧工業地域,環渤海地域,京津冀(北京・天津・河北)首都経済圏,黄金水道(長江)経済ベルト,黄河ゴールデントライアングル(山西・陝西・河南),汎珠江デルタ地域などを重点的に育成することとされた。

なかでも京津冀首都経済圏の発展戦略は大きく進展し,12月26日に習近平主席が召集した「京津冀地区の共同発展推進会議」で重大国家戦略に格上げされるに至った。京津冀首都経済圏は北京を中心とし,河北省の石家庄,廊坊,承徳,張家口,保定,邯鄲,.台,唐山,天津の薊県,宝.で構成される。同戦略の具体的な内容は,首都機能の強化を目的としたインフラ整備,産業分布の計画,イノベーションの促進,環境保全,規制緩和である。7~8月に北京・天津・河北の政府間で産業発展,インフラ整備,環境協力に関する18件の協定が締結され,協同発展推進機構が設立された。インフラ整備については,税関総局が6月23日に「京津冀税関区域通関一体化の展開に関する公告」を公布し,9月22日に石家庄が組み入れられることで京津冀の通関一体化が完成をみた。同日,広東,長江経済ベルト税関の通関一体化も開通した。11月14日には中国初の国家エコ開発モデル区である「中国シンガポール天津エコシティー」が国務院の認可を経て実施されるなど,年内に産業,交通,環境の3大重点分野で初歩的な成果を収めた。

インフラ建設の加速

12月28日の交通運輸部長の発表によれば,2014年の道路,鉄道,水路への投資額は2兆5000億元に達し,舗装道路は9万3800キロメートル(うち高速道路7450キロメートル),農村部の道路23万キロメートルが完成あるいは修復を完了した。重点プロジェクトとしては京新高速道路(北京=ウルムチ)の内モンゴル西区間,港珠澳大橋(香港,広東省,マカオを結ぶ大型海上橋)などの建設が順調に進んだ。鉄道分野の固定資産投資は総額8000億元となり,蘭新(蘭州=ウルムチ)線第2複線,大同=西安線,杭州=長沙線,南寧=広州線,合肥=福州線など中・西部を中心に8000キロメートルが開通した。水上輸送事業では,631のバースが完成・拡張された。民間航空関連では8空港を新設し,営業許可証を取得した国内の民間空港は202カ所に達した。

「シルクロード構想」の下,インフラ建設事業の海外進出も増加した。ロシア,モンゴル,インド,タイ,ブラジルなどとの鉄道建設協力,またラオス,中東欧(CEE)諸国,アメリカなどの高速鉄道建設事業に参加した。中国の高速鉄道の高い国際競争力の要因は他国の3分の2以下という建設コストの低さにあるという指摘もあるが(“China's High-speed Rail Revolution” BBC News, 15th July, 2014),加えて基盤整備などの技術と政府の強力な支援という要因がある。鉄道事業の発展と海外進出を見据え,国家鉄道局は同技術委員会の承認を経て12月22日に中国初の高速鉄道の設計基準「高速鉄道設計規範」(2015年2月1日施行),12月24日に鉄道建設投資企業の経営自主決定権を定めた「鉄道輸送企業参入許可弁法」,安全管理に関する「鉄道旅客輸送安全検査管理弁法」,乗車券の購入方法などに関する「鉄道旅客乗車券実名制管理弁法」の3規則(2015年1月1日施行)を発表した。また,国務院国有資産監督管理委員会が合併交渉を進めていた2大鉄道車両メーカーの中国南車と中国北車は12月30日に合併し,中国軌道交通車両集団となった。両社が海外において事実上競合し,入札価格の引き下げなど鉄道輸出の拡大に不利益をもたらしていたためである。

水利事業としては,長江の水を北部へ引く国家プロジェクトの南水北調中線第1期事業が2003年12月30日の着工から10年あまりを経て12月12日正式に開通した。同事業は全長1432キロメートルで,湖北省丹江口ダムから取水し,年平均95億立方メートルの水を河南省,河北省,北京市に給水する。給水開始後,北京の水道普及率は75%から95%に向上する見通しである。このほか,10月7日には北京市の南水北調東線幹線水路のうち,もっとも長い第5区間(全長4030.5キロメートル)も完成した。

三農問題への取り組み

1月19日,中央1号文件「農村改革と農村の現代化に関する決定」が発表された。中央1号文件において,11年連続で三農問題が取り上げられたことになる。「決定」は,(1)食料安全保障,(2)農業支援制度の強化,(3)農業の持続可能な発展,(4)農村土地制度改革,(5)新しいタイプの農業経営体系の構築,(6)農村金融制度の改革,(7)都市と農村の一体的な発展,(8)農村管理の仕組みの改善,からなる。前年に引き続き食料安全保障を強調しており,1億2000万ヘクタールの農地の保護目標(レッドライン)を維持しつつ,大型専業農家や家族農場,生産者組織など新しい担い手の育成,現代的な農業の推進,環境汚染対策のための財政的な支援を実施するとしている。

「決定」が重視する農民の権利保護のなかでとくに注目されるのは,請負地に対する農民の権利として従来の占有,使用,収益,転売権に加えて初めて土地請負経営権の抵当,担保権を認めた点である。「決定」は,農村集団による所有権,農家の請負権と経営権の「三権」を分離し,経営権を担保として金融機関から融資を受けることを認めている。農村の集団所有建設用地についても,従来農村と都市で分断されていた土地市場の統合を進める。

この点と関連して,都市・農村の土地を統一的に管理・取引するための不動産登記システムが設立されることとなった。3月26日に国土資源部など9部門で構成された不動産登記業務省庁間合同会合が初めて開催され,4月2日には国土資源部が不動産登記工作指導小組を設置し,年内は主に関連制度や機関の整備・設置が行われた。11月20日,中国共産党中央弁公庁と国務院弁公庁が「農村土地経営権の秩序ある移転を指導し,農業の適正規模経営を発展させることに関する意見」を発表し,5年前後で土地請負経営権の登記,証明書発行作業を終了させるとしている。そして12月22日,不動産登記の具体的な手続きなどを定めた「不動産登記暫定条例」が公布され,2015年3月1日から施行される運びとなった。条例は6章35条からなり,不動産の登記機関,登記簿,登記手続き,情報共有と保護などについて定めている。同条例は国土資源部が全国の不動産登記に責任を負い,指導・監督を行うことを明確に定めている。

2014年の農業・農村に関連する成果は以下のとおりである。2014年の食料(穀物・豆類・イモ類)生産量は6億709万9000トンに達し,前年に比べ516万トン(0.9%増),11年連続の増産となった。一方で輸入が急増し,余欣栄農業部副部長によれば2014年は国際穀物価格の下落により食料輸入量が約1億トンと過去最高の水準に達し,このうち大豆が約7割の7140万トン(前年比12.7%増),穀物が1951万トン(同33.8%増)であった(『網易財経』2015年3月6日)。

農村の土地制度に関する改革の成果として,12月4日の会議で韓長賦農業部長は2014年6月末までの全国の農村請負耕地の累計取引面積は約2533万ヘクタール(全体の28.8%)に達し,前年の2267万ヘクタールより11.7%増加したことを明らかにした。新しい農業の担い手の育成も着実に進んでおり,大規模農家317万戸,家族農場は87万,生産者組織124万,農業産業化関連企業12万社に達したことを発表した。

一方,食品安全問題については例年より目立った事件が少ないなか,外資系ファーストフード大手のマクドナルドやKFCに原料を供給していた上海福喜食品有限公司が,使用期限の過ぎた原料を使用していた事件が注目を集めた。7月20日に上海市食品薬品監督管理局が福喜食品に立ち入り検査を実施し,23日同局と公安局は責任者や品質担当者などを拘束した。8月29日,幹部6人が偽物劣悪製品生産販売罪で逮捕された。

食品安全問題への社会の関心の高まりを反映し,関連制度の整備が着実に進められている。農業部と国家衛生和計画出産委員会は,8月1日から新しい残留農薬基準を適用した。新基準はこれまででもっとも厳しく,野菜や果物など生鮮食品を中心に2495項目の残留農薬の限度量基準を定めている。6月13日には国務院弁公庁が,関連4部局が共同で策定した「乳幼児用調整粉ミルク企業の合併再編推進業務プラン」を通達した。2008年のメラミン入り粉ミルク事件以来中国産粉ミルクに対する消費者の不信は根強いが,同プランでは合併による業界再編の推進,品質の向上などを目指す。続いて同月23日,第12期全人代常務委第9回会議において張勇国家食品薬品監督管理総局局長が「食品安全法」改正案を報告し,事件発生時の製造企業側の民事賠償責任と行政処罰の厳格化,消費者の損害賠償請求権,違法な添加物を販売した者への罰金刑を明確に規定するとした。同局は8月6日,問題発生時の回収の手順や情報公開などについて規定した「食品回収弁法」の草案を発表した。

対外関係

2014年11月28日,習近平政権下の今後の外交指針を示す重要会議である中央外事工作会議が約8年ぶりに北京で行われた。同会議上,習近平国家主席は演説を行って,「中華民族の偉大な復興」と「中国の夢」の実現の重要性を改めて提唱した。また,「すでに中国は中華民族の偉大な復興を実現するうえで鍵となる段階に入っている」としたうえで,「中国は必ずや自国の特色ある大国外交を持たなければならない」という立場を示して,「特色ある大国外交」を新たなスローガンに掲げた。さらに,隣国との善隣友好や周辺外交の推進の方針を示すとともに,今後も主権や領土問題で決して手を緩めない方針を改めて強調した。

米中関係における「新型大国関係」の模索

習近平政権は「中華民族の偉大な復興」や「中国の夢」を政治的スローガンとして掲げて「強い中国」の復興を唱え,大国としての存在を国内外に強くアピールしてきた。その一環として,米中関係を「新型大国関係」と位置づけて,大国間外交を推進することに注力してきた。中国側の公式見解によれば,「新型大国関係」とは,(1)対抗せず,衝突しない,(2)互いに尊重する,(3)協力を通じてウィン・ウィン関係などを米中間で築くことなどを意味する。

2013年6月の米中首脳会談の場で,習近平国家主席はオバマ大統領に対して「太平洋には米中両大国を受け入れるに十分な空間がある」としたうえで,「新型大国関係」の構築の必要性を語った。この会話の流れから,中国側が「新型大国関係」の構築を通じて,アジア太平洋地域の覇権の分割や,自らの「核心的利益」をアメリカ側に容認させることを意図しているのではないかといった疑念が国際社会に生まれている。

米中首脳会談以降,2014年3月にオランダのハーグで行われた核安全保障サミットや,11月の北京APECなどの機会に行われた米中首脳会談の場においても,中国側は米中関係を「新型大国関係」と位置づける公式的立場を再三にわたって強調してきた。また,ヘーゲル国防長官との会談をはじめとするアメリカ政府高官との会談に際しても,中国側は折にふれて「新型大国関係」の立場を提起してきた。これに対して,アメリカ政府関係者が呼応するような形で「新型大国関係」について言及する場面もみられた。だが,その内容や定義については米中双方の明確な合意は存在しない。11月の北京APECにおける米中首脳会談後の共同記者会見で,オバマ大統領は「新型大国関係」に関する言及を避けた。

11月11~12日の2日間にわたって行われた米中首脳会談では,地球温暖化対策のための温室効果ガス排出量の削減目標についての合意がなされた。アメリカは,2025年までに2005年比で温室効果ガス排出量の26~28%を削減する一方で,中国は2030年頃をピークとして二酸化炭素(CO2)の排出量を減少させることを目標として掲げた。米中両国の温室効果ガスの排出量は世界の3~4割を占めているが,両国がこうした具体的な目標値を掲げるのは初の試みとなった。

ロシアからの天然ガス供給の大型契約の締結

中国は「新型大国関係」の構築によって対米関係のみを重視しているのではなく,ロシアとの関係強化にも余念がない。元来,中ロ両国は,アメリカ一極の国際秩序の形成に異議を唱える立場や,人権問題をはじめとする内政干渉を嫌うという点でも一致してきた。とくに,最近ではウクライナ問題をめぐり欧米諸国とロシアの対立が先鋭化していることが,中ロ間の距離をさらに接近させている。中国は主権や領土保全の尊重,内政不干渉という立場から,中立的な姿勢を貫くという方針を示しながらも,ややロシア寄りの外交姿勢をみせている。2014年3月27日に行われた,クリミアのロシア編入問題の是非を問う住民投票を無効とする国連安保理決議案の採決において,中国は「棄権」の立場を選択した。

また,経済成長によってエネルギー需要が急増する中国と,資源大国のロシアとの間の経済面における相互依存も深まっている。5月20~21日,プーチン大統領が上海を訪問して習近平国家主席と会談した際には,中国石油天然気集団(CNPC)とロシア国営のガスプロム社との間に,総額4000億ドルに上るロシアからの天然ガスの大規模な供給契約が締結された。このロシア産ガスの対中輸出問題をめぐっては,価格交渉が難航してきたため,10年間に及ぶ交渉が続けられてきた。今回の合意に及んだ背景には,従来,ロシアは天然ガスの大半を欧州に輸出してきたが,ウクライナ問題の影響で,欧州連合(EU)はロシア産のガスの輸入を減らす方針を示していたこともあると考えられる。

さらに,中国は安全保障面でも,ロシアをはじめとする非欧米諸国との連携を強めようとする動きをみせている。5月20~21日には,アジア信頼醸成措置会議(CICA)の首脳会議が上海で行われた。同会議は,アジア地域の安全保障問題の協議を目的としたもので,ロシアや中央アジア周辺諸国をはじめとして,インドや韓国を含むアジアや中東地域などの24カ国が参加している。CICA主催国代表として演説を行った習近平国家主席は「いかなる国家も地域の安全保障を独占すべきではない」として,安全保障同盟の形成に反対する立場を示した。そのうえで,「アジアの安全はアジアの国民によって守られなければならない」として,新たな「アジア安全保障観」の樹立の必要性を唱えるとともに,地域の安全保障秩序の形成に向けて,中国が積極的な役割を果たしていく立場を明らかにした。

「シルクロード構想」を通じた周辺外交の推進

中国をめぐる周辺外交についていえば,その周辺環境は必ずしも良好な状況ではない。近年,中国の海洋進出や海洋権益を追求する動きは活発化しており,周辺諸国との間にさらなる摩擦や軋轢を生む危険性が高まっている。とくに,東シナ海や南シナ海における領有権争いをめぐる中国の強硬な対応は,地域の安全保障上の不安定要因となっている。そのような状況下で,習近平政権は,2013年秋頃より本格的に周辺諸国との関係改善に乗り出す姿勢をみせはじめた。習近平は2013年9月には中央アジア諸国,10月には東南アジア諸国を歴訪して,中国を起点とした中央アジアから欧州に至る陸路の「シルクロード経済ベルト」と,中国沿岸部から東南アジアや中東を経由して欧州に至る海路の「21世紀の海のシルクロード」(中国語では「一帯一路」)から成る,「シルクロード構想」を提唱した。習政権は周辺外交を通じて近隣諸国との関係改善をはかるとともに,中東や中央アジアからの資源エネルギーの安定的供給の確保,内陸部のインフラ整備や新興市場の開拓,国内の過剰生産力の海外移転,多額の外貨準備の活用などを進めていこうとしている。

2014年11月の北京APECの開幕に先立って,同月8日,習近平国家主席は,非APEC加盟国の首脳陣を集めて「相互接続のパートナーシップ強化対話会議」を開催して,「シルクロード構想」の実現の必要性を呼び掛けた。また,「シルクロード基金」の創設を中国が主導して約400億ドルを出資し,周辺地域のインフラ整備の援助に当てる方針を新たに打ち出した。

その一方で,近年,中国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設に向けて外交攻勢をかけてきた。これは習近平が2013年10月に提案したアジアのインフラ整備を支援する国際金融機関である。2014年10月には,2015年末の設立を目指してASEAN諸国や中央アジア,中東などの20数カ国の間で覚書が締結された。

「シルクロード基金」やAIIBの創設は,アジア開発銀行や世界銀行,国際通貨基金(IMF)といった欧米や日本が主導する既存の国際金融秩序への対抗姿勢の表われともいえる。また,北京APECの首脳会談で議長を務めた習近平は,APEC域内関係諸国・地域を中心とした自由貿易や経済連携を目指すアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想の実現に向けたロードマップを策定することに成功した。これは,アメリカ主導の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉が思うように進んでいない最近の状況を見据えた,中国側の対抗軸の提示とも受け取れよう。

さらにいえば,最近,ASEANの中国に対する姿勢が少し軟化の様相をみせている。たとえば,南シナ海問題をめぐってフィリピンやベトナムとの関係が悪化しており,「行動規範」の策定も難航している。だが,2014年8月のASEAN地域フォーラム(ARF)における議長声明には,南シナ海における中国の脅威を念頭に置いて,当初ASEAN諸国の間で検討されていた「深刻な懸念」という批判的な表現は盛り込まれず,名指しの批判も行われなかった。このことは中国の周辺外交が一部功を奏しつつあることを意味している。

北京APECにおける日中首脳会談の実現

2012年9月の日本政府による尖閣諸島の国有化の発表以来,中国各地で反日デモが発生して日中関係は悪化した。2013年12月の安倍首相による靖国神社参拝が両国関係の冷却化にさらなる追い討ちを掛けた。だが,2014年に入ってようやく関係改善の兆しをみせつつある。

2014年夏頃から日中首脳会談の実現に向けて,両国の複数の関係者による水面下の接触が活発化した。同年7月末と10月末には,福田康夫元首相が北京を訪問して,習近平国家主席と2度にわたる会談を行った。さらに,北京APEC開幕直前には,谷内正太郎内閣官房国家安全保障局長が楊潔.国務委員と会談して,日中首脳会談開催に向けた最終調整を行った。

なお,中国側が,日中関係の悪化が継続することは双方にとって不利益であるという認識を有していたのも事実である。2013年10月末に行われた周辺外交工作会議では,習近平自らが対日関係の改善を指示したことが明らかになっている。最終的に,中国政府は靖国神社参拝の自粛や,尖閣諸島の領土問題の存在を日本側が認めることなどを日中首脳会談開催の交換条件にはしなかった。

2014年11月10日,約2年半ぶりに日中首脳会談が北京で行われた。習近平国家主席が安倍首相と対面した時にみせた笑顔のない固い表情は,依然として両国の関係改善が必ずしも容易ではないことを象徴していた。だが,長らく膠着状態にあった日中関係を打開するための一大契機となったのは確かである。

これを機に,日中両国政府は,尖閣諸島周辺の海域における緊急事態回避のための危機管理メカニズムの構築の必要性などが盛り込まれた4項目の合意文書を発表した。これによって「海上連絡メカニズム」構築に向けた実務者レベルの早期運用開始を確認して,尖閣周辺における緊急事態回避のための枠組み作りの作業に入ることで一致した。これは東シナ海周辺における日中間の軍事的緊張の緩和へ向けた意義ある第一歩となった。

その一方で,12月13日には,初の国家主催の追悼式典が「南京大虐殺記念館」において挙行され,習近平が演説のなかで日中戦争をめぐる歴史認識で日本を強く牽制する姿勢を見せた。そのうえで,習は「少数の軍国主義者が引き起こした侵略戦争で,その民族を恨むべきではない。戦争責任は人民にはなく,両国民は友好を続けるべきだ」と発言して,日中友好の継続の必要性を唱えた。だが,日中関係改善の傾向がみられるとはいえ,2015年は中国にとって「抗日戦争勝利70周年記念」の年となるため,国内世論を意識して,ある程度の対日姿勢の硬化を避けることは難しい状況となるだろう。

習近平の韓国訪問と中韓関係の緊密化

韓国の朴槿恵大統領が2013年6月に中国を訪問したのに次いで,2014年7月3日には習近平国家主席が韓国を訪問して,朴大統領と会談を行った。習近平政権の発足以降,北朝鮮との間では中朝首脳会談がいまだに行われていないのとは対照的に,中韓関係は緊密化している。中国の最高指導者が北朝鮮の首脳との会談の前に韓国を訪れるのは,1992年の中韓国交正常化以来初めてのこととなった。

今回の中韓首脳会談後の共同声明においては,中韓両国は北朝鮮の核開発に反対する立場で一致して,6カ国協議によって解決する方針が示された。また,政治・安全保障分野における中韓のハイレベルの戦略対話を定例化することも決定した。さらに,中韓自由貿易協定(FTA)の年内妥結に向けて,いっそう努力することでも一致した。それらに加えて,歴史認識問題に関しては,共同声明の付属文書において,旧日本軍の慰安婦問題をめぐる中韓の共同研究を進める方針が示された。

中韓FTAに関しては,2014年11月10日,北京APECでの中韓首脳会談での大筋合意を経て,両首脳が「実質的妥結」を宣言した。目下のところ,交渉の途上にある日中韓FTAや日韓FTAの締結に先行した形となった。また,翌11日に習近平国家主席がAPEC首脳会談の場でFTAAPの実現に向けたロードマップを示した際には,朴槿恵大統領がこれを積極的に支持する立場を表明した。

台湾の民意によって見直しを迫られる両岸関係

近年,習近平政権は,台湾に対して政治的協議の早期実現を強く呼び掛けてきた。2014年2月11日には,台湾の王郁琦・行政院大陸委員会主任委員が南京を訪問して,張志軍・国務院台湾事務弁公室主任と会談を行った。従来,中国と台湾の間の交流は,民間窓口機関を通じて実施されてきたことから,1949年の中台分断以来初の政府間の閣僚級公式会談が実現する運びとなった。なお,2014年6月25日には,張志軍主任が台湾を訪問したが,台湾各地で民衆による激しい抗議活動が発生したため,スケジュールの大幅変更を余儀なくされるとともに,中国大陸への帰国を早める事態になった。

海峡両岸経済協力枠組み協定(ECFA)の関連事項として協議が続けられ,2013年6月に中台間で締結されたサービス貿易協定の発効をめぐっては,「ひまわり学生運動」と呼ばれる大規模な反対運動が台湾で発生した。2014年3月18日には台湾の学生が立法院を占拠して,同協定の撤回を要求した。

近年,中国と台湾の首脳会談の可能性などが取り沙汰されてきたが,思いがけず,今回のような台湾における民意の洗礼を受けて,国民党政権の対中融和策は軌道修正を余儀なくされ,中国側の思惑通りに両岸交流が進むことが難しい状況となった。さらに,2016年初頭の台湾総統選挙の前哨戦として注目を集めていた2014年11月29日の統一地方選挙では,与党国民党が大敗して,翌月には馬英九総統が国民党主席を辞任した。野党民進党が次の政権与党として返り咲く可能性が高まりつつあるなかで,中国の台湾政策も見直しを迫られることになった。

2015年の課題

国内政治は,2017年の党大会を見据えた動きが予想される。65歳定年の定着にともなって,習近平と李克強以外の5人の中央政治局常務委員の引退の可能性が高いとみられているなかで,後任人事をめぐって激しい権力闘争が展開されることになるだろう。習近平は,引き続き自らの側近を政権中枢に近いポストに取り込むことに重点を置くことになるが,江沢民派や共青団派がいかにして巻き返しを図るかについても注目される。国内改革は,引き続き習近平が先頭に立って進められていくことになるであろう。だが,汚職腐敗の厳しい取り締まりに対して不満が鬱積して,党や軍から反発を受けることも予想されることから,政権運営を不安定化させる可能性もある。

国内経済では,中国経済は依然として強い景気の下振れ圧力に直面しているが,そのなかで2014年に始動したさらなる市場化に向けた行政改革,財政・金融改革,都市化や格差是正に向けた諸改革は今後本格化していくだろう。12月の中央経済工作会議において発表された2015年の経済運営における重点目標は,(1)経済の安定成長の維持,(2)新しい成長分野の積極的な育成,(3)農業発展パターンの転換,(4)地域間の経済構造調整,(5)生活の質の改善とサービスの強化,であった。中国経済が「新常態」の理念の下,改革の痛みに耐え,安定的で持続可能な成長モデルに円滑に移行できるかどうか,注目が集まっている。

対外政策は,アメリカとの「新型大国関係」の定着を図るべく外交努力を続けることになるが,オバマ政権は,2014年11月の中間選挙敗北によって議会運営が厳しくなっている。アメリカ議会の共和党関係者には,人民元や人権問題をめぐる対中強硬論者が多いことから,中国の思惑通りの米中関係の進展を期待するのはより難しくなるであろう。また,日中関係は,日中首脳会談の実現によって,一応のところ改善の道筋がみえてきた。しかし,近年の日中関係の悪化は,中国の大国化による日中間のパワー・バランスが変化しつつある状況下で起こっていることから,両国関係は必ずしも楽観できる状況にはないといえよう。

(松本:地域研究センター)

(山田:新領域研究センター)

重要日誌 中国 2014年
  1月
5日 陝西省渭南市蒲城県で旅客バス爆発。5人死亡,24人負傷。
7日 中央政法会議(~8日)。習近平総書記が反腐敗に関する重要講話。
13日 中央紀律検査委第3回全体会議(~14日)。習総書記が重要講話。
13日 アメリカ国防当局筋,中国による極超音速ミサイル「WU14」の飛行実験を発表。
13日 程永華駐日大使,『人民日報』署名論文発表,安倍晋三首相の靖国神社参拝を批判。
16日 新疆ウイグル自治区アクス地区アーバード県でウイグル族と公安当局衝突。
19日 2014年中央1号文件「農村改革と農村の現代化に関する決定」を公布。
20日 国家統計局,2013年統計公報を発表。GDPは7.7%増の56兆8845億元。
22日 中央全面深化改革指導小組第1回会議,習総書記が重要講話。
24日 政治局会議,中央国家安全委員会の設置と習近平の主席就任を決定。
24日 新疆ウイグル自治区アクス地区トクス県で爆発が発生。1人死亡,2人負傷。
26日 習総書記,内モンゴル自治区を訪問(~28日)。農村,企業,社区などを視察。
  2月
6日 習近平国家主席,第22回冬季五輪出席のためロシアのソチを訪問(~8日),プーチン大統領と会談。
6日 国務院常務会議,都市住民と農村住民の社会年金保険制度の全国統一を決定。
11日 国務院,第2回清廉政治工作会議。
11日 台湾の王郁琦行政院大陸委員会主任委員,来訪(~14日),張志軍国務院台湾事務弁公室主任と南京で会談。
14日 ケリー米国務長官,来訪(~15日)。習国家主席,李克強総理,王毅外交部長と会談。
14日 新疆ウイグル自治区アクス地区ウシュトゥルファン県で武装グループがパトカー襲撃。
17日 台湾の連戦国民党栄誉主席,来訪(~20日)。習総書記と会談。
21日 外交部,オバマ米大統領とダライ・ラマ14世の会談に対する反発声明を発表。
25日 第12期全国人民代表大会常務委員会第7回会議(~27日)。「抗日戦争勝利記念日」と「南京大虐殺犠牲者国家追悼日」制定。
27日 中央網絡安全・信息化指導小組会議。
28日 全面深化改革指導小組第2回会議。
  3月
1日 雲南省昆明駅で無差別殺傷テロが発生。29人死亡,143人負傷。
3日 中国人民政治協商会議第12期全国委員会第2回会議(~12日)。
3日 習国家主席,プーチン・ロシア大統領と電話会談,ウクライナ情勢などを協議。
5日 第12期全人代第2回会議(~13日),李総理,政府活動報告を発表。都市化を提起。中国の国防予算案,前年実績比12.2%増。
10日 習国家主席,オバマ大統領と電話会談,ウクライナ情勢などを協議。
15日 中国人民銀行,3月17日から外国為替市場の人民元対ドル相場の変動幅を1%から2%に拡大することを発表。
15日 中央軍事委員会深化国防・軍隊改革指導小組第1回会議,習総書記が重要講話。
16日 党中央と国務院,「国家の新型都市化計画(2014~2020年)」を発表。
17日 習総書記,党の大衆路線の教育実践活動を河南省開封市蘭考県で視察(~18日)。
17日 新疆ウイグル自治区ウルムチ市で警察襲撃事件が発生。警官1人死亡。容疑者は射殺。
22日 習国家主席,オランダ,フランス,ドイツ,ベルギーを訪問(~4月1日)。
24日 習国家主席,オランダのハーグで核安全保障サミット出席,オバマ大統領と会談。
31日 軍事検察院,谷俊山・元人民解放軍総後勤部副部長を汚職容疑で軍事法院に起訴。
  4月
1日 常万全国防部長,タジキスタンで上海協力機構(SCO)国防相会議に出席。
2日 『解放軍報』,人民解放軍指導者18人による「習近平軍事委主席の国防・軍建設に関する重要論述を貫徹する」発言録を掲載。
6日 胡耀邦元総書記の長男である胡徳平,日本を訪問(~13日)。安倍首相と会談。
7日 ヘーゲル米国防長官,来訪(~10日)。習国家主席と会談。空母「遼寧」を視察。
10日 ボアオ・アジア・フォーラム年次総会(~11日),李総理が出席。
14日 習総書記,空軍機関を視察。
15日 中央国家安全委員会第1回会議。習総書記が重要講話。
16日 国務院常務会議,「三農」の発展へ向けた金融サービスに関する措置を決定。
21日 第12期全人代常務委員会第8回会議(~24日)。
27日 習総書記,新疆ウイグル自治区カシュガル,ウルムチを視察(~30日)。
29日 中国国家海洋局,「中国海洋発展報告(2014)」を発表。
30日 新疆ウイグル自治区のウルムチ南駅で爆破事件が発生。3人死亡,79人負傷。
  5月
3日 中国海上安全当局,南シナ海域における石油掘削活動の実施をベトナムに通告。
4日 李総理,エチオピア,ナイジェリア,アンゴラ,ケニアなどを訪問(~11日)。
5日 遼寧省人代,李希を代理省長に任命。
6日 広東省広州市の広州駅広場で刃物を持った男が通行人を襲撃して6人負傷。
8日 新疆ウイグル自治区アクス地区アクス市で警官襲撃とパトカー爆破事件発生。
9日 習総書記,党の大衆路線の教育実践活動を河南省開封や鄭州で視察(~10日)。
10日 南シナ海の領有権問題をめぐってベトナム各地で反中抗議デモが発生,拡大。
17日 アジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会議,山東省青島で開催(~18日)。
19日 財政部,「地方政府債券の自主発行・自主償還の試行方法に関する通知」を発表。
20日 アジア信頼醸成措置会議(CICA)首脳会議,上海で開催(~21日)。
20日 プーチン大統領,来訪(~21日)。習国家主席と会談。天然ガス供給契約の締結。中ロ海上合同軍事演習「海上連合2014」に出席。
20日 第4回中国・ASEAN国防相会議,ミャンマーのネーピードーで開催。常国防部長が出席。
22日 新疆ウイグル自治区ウルムチ市で車両爆発・炎上。39人死亡,94人負傷。
24日 日本防衛省,東シナ海公海上で中国軍機による自衛隊機への異常接近を発表。
26日 政治局会議,新疆の治安の長期的安定を推進する工作について検討。
28日 中央新疆工作会議 (~29日)。
  6月
6日 全面深化改革指導小組第3回会議。
10日 国務院新聞弁公室,白書「香港における『一国二制度』の実践」を発表。
11日 日本防衛省,東シナ海公海上で中国軍機の自衛隊機への2度目の異常接近を発表。
13日 中央財経指導小組第6回会議。
16日 李総理,イギリスとギリシャを訪問(~22日)。キャメロン英首相などと会談。
21日 新疆ウイグル自治区カシュガル地区で車両爆発・炎上。警察が13人を射殺。
23日 12期全人代常務委員会第9回会議(~27日)。
25日 張国務院台湾事務弁公室主任,台湾を訪問(~28日)。台湾各地で抗議活動が発生。
30日 政治局会議,徐才厚元政治局委員・中央軍事委副主席の党籍剥奪処分と,収賄容疑による最高人民検察院への送致を決定。
30日 財政部,「財税体制改革深化基本計画」を発表。
  7月
1日 香港で民主派による大規模な反中デモが発生,過去最大の51万人が参加。
3日 習国家主席,韓国を訪問(~4日),朴槿恵大統領と会談,共同声明を発表。
7日 習総書記,盧溝橋事件77周年記念式典で歴史認識問題に関する重要講話。
9日 第6回米中戦略経済対話,北京で開催(~10日)。習国家主席が開幕式に出席。
13日 習国家主席,ブラジル,アルゼンチン,ベネズエラ,キューバを訪問(~23日)。BRICS首脳会議に出席。
27日 福田康夫元首相,来訪(~29日),習国家主席と会談。
28日 新疆ウイグル自治区カシュガル地区で武装グループが地元政府庁舎や派出所などを襲撃。警察が59人を射殺,215人を拘束。
29日 党中央,周永康元政治局常務委員・中央政法委書記を重大な規律違反容疑により中央紀律検査委員会での立件と審査を決定。
30日 国務院常務会議,都市戸籍と農村戸籍の統一を柱とする戸籍制度の改革を発表。
30日 新疆ウイグル自治区カシュガル地区のモスク指導者ジュメ・タヒル師が殺害される。
30日 SCO加盟国外相会議,タジキスタンで開催(~31日)。王毅外交部長が出席。
  8月
1日 新疆ウイグル自治区カラカシュ県で騒乱。容疑者9人を射殺。1人を拘束。
2日 江蘇省昆山市の中栄金属製品有限公司の工場で大規模な爆発事故が発生。68人死亡,187人負傷。
3日 雲南省昭通市魯甸県でマグニチュード6.5の地震が発生。
9日 王毅外交部長,ミャンマーを訪問(~11日)。中国・ASEAN外相会議,ASEAN+3(日中韓)外相会議,東アジアサミット外相会議,ASEAN地域フォーラム(ARF)外相会議に出席。
18日 全面深化改革指導小組第4回会議。
19日 財経指導小組第7回会議。
20日 国家発展改革委員会が日系自動車部品メーカー12社を独占禁止法違反と認定,10社に対し過去最高の合計12億3540万元の罰金を科すことを発表(後に一部減額)。
21日 習国家主席,モンゴルを訪問(~22日)。エルベグドルジ大統領と会談。
24日 SCO加盟国軍による合同軍事演習「平和の使命2014」(~29日)。
25日 12期全人代常務委員会第10回会議(~31日)。31日,予算法改正を決議。
  9月
5日 吉林省人代,蔣超良を代理省長に任命。
7日 ライス米大統領補佐官国家安全保障問題担当,来訪(~9日),習国家主席と会談。
11日 習国家主席,タジキスタンでSCO加盟国元首会議に出席。プーチン大統領と会談。
21日 新疆ウイグル自治区バインゴリン蒙古自治州ブルグ県で大規模な襲撃が発生。
22日 香港の民主派が金融街セントラルの占拠を宣言。香港警察が鎮圧を開始。
22日 京津冀,広東,長江経済ベルト税関の通関一体化開始。
23日 ウルムチ市中級人民法院,ウイグル族学者のイリハム氏に無期懲役の1審判決。
28日 中央民族工作会議,北京で9年ぶりに開催(~29日)。習総書記が重要講話。
29日 全面深化改革指導小組第5回会議。
30日 中国人民銀行と銀監会が住宅ローン政策の緩和通知を発表。
  10月
2日 国務院,「改正予算法と地方政府債務管理の強化に関する意見」を発表。
7日 雲南省普洱市景谷タイ族イ族自治県でマグニチュード6.6の地震が発生。
8日 党の大衆路線の教育実践活動総括大会,習総書記が重要講話。
9日 李総理,ヨーロッパを訪問(~17日)。アジア欧州会合(ASEM)首脳会議に出席。
17日 雲南省人代,陳豪を代理省長に任命。
19日 新疆ウイグル自治区カシュガル地区マラルベシ県で警官などへの襲撃事件発生。
20日 党第18期中央委員会第4回全体会議(4中全会,~23日)。習総書記が重要講話。
24日 アジアインフラ投資銀行(AIIB)創設に向けた覚書を21カ国代表が北京で調印。
25日 中央紀律検査委第4回全体会議。
27日 全面深化改革指導小組第6回会議。
27日 12期全人代常務委第11回会議(~30 日)。
28日 福田康夫元首相,来訪(~29日),習国家主席と会談。
31日 全軍政治活動会議。
  11月
4日 財経指導小組第8回会議。
7日 谷内正太郎国家安全保障局長,来訪。楊潔篪国務委員と会談。4項目合意文書発表。
7日 APEC閣僚会議,北京で開催(~8日)。
8日 「相互接続のパートナーシップ強化対話会議」,北京で開催。習国家主席が演説。
10日 第22回APEC非公式首脳会議,北京で開催(~11日)。習国家主席が演説。
10日 日中首脳会談,北京で2年半ぶりに開催。
11日 米中首脳会談,北京で開催(~12日)。
12日 李総理,ミャンマーを訪問(~14日)。第17回中国・ASEAN首脳会議,ASEAN+3(日中韓)首脳会議,第9回東アジアサミット出席。
14日 習国家主席,オーストラリア,ニュージーランド,フィジーを訪問(~23日)。オーストラリアでG20首脳会議に出席。
17日 上海・香港の株式相互乗り入れシステム(通称「滬港通」)試行開始。
19日 国務院弁公室,「エネルギー発展戦略行動計画(2014~2020年)」を発表。
20日 「農村土地経営権の秩序ある移転を指導し,農業の適正規模経営を発展させることに関する意見」発表。
21日 中国人民銀行,金融機関の人民元建て貸出・預金の基準金利引き下げを決定。
22日 四川省甘孜チベット族自治州康定県でマグニチュード6.3の地震が発生。
28日 中央外事工作会議,北京で8年ぶりに開催(~29日)。習総書記が重要講話。
28日 新疆ウイグル自治区カシュガル地区ヤルカンド県で騒乱。4人死亡,14人負傷。
  12月
2日 全面深化改革指導小組第7回会議。
5日 政治局会議,周永康の党籍剥奪処分,収賄などの容疑で刑事責任の追及を決定。
9日 中央経済工作会議(~11日),5点の主要任務を提起。習総書記が重要講話。
12日 南水北調中線第1期事業が開通。
13日 南京大虐殺国家追悼式,南京で開催。習総書記が歴史認識に関する重要講話。
14日 李総理,カザフスタン,セルビア,タイを訪問(~20日)。SCO首脳会議に出席。
22日 令計画元全国政協副主席・中央統一戦線工作部長が重大な規律違反の容疑で取り調べを受けていることが判明。31日に解任。
22日 12期全人代常務委第12回会議(~28日)。
22日 中央農村工作会議(~23日)。
22日 「不動産登記暫定条例」公布。
30日 全面深化改革指導小組第8回会議。
31日 新疆ウイグル自治区人代,ショハラト・ザキルを代理自治区主席に任命。
31日 財政部,「権利責任発生主義政府総合財政報告制度改革プラン」を発表。

参考資料 中国 2014年
①  国家機構図(2014年末現在)
②  中国共産党・国家指導者名簿(2014年末現在)
②  中国共産党・国家指導者名簿(2014年末現在)(続き)
③  各省,自治区,直轄市首脳名簿(2014年末現在)

主要統計 中国 2014年
1  基礎統計
2  国内総支出(名目価格)
3  産業別国内総生産(名目価格)
4  産業別国内総生産成長率(実質価格)
5  国・地域別貿易
6  国際収支
7  国家財政
 
© 2015 日本貿易振興機構 アジア経済研究所
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