アジア動向年報
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各国・地域の動向
2015年の中国 イノベーション,構造改革と社会統制の強化
江藤 名保子丁 可
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2016 年 2016 巻 p. 125-158

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2015年の中国 イノベーション,構造改革と社会統制の強化

概況

2015年に国内政治については,広範な汚職摘発が継続された。だが中央での大物幹部に対する摘発はなく,地方政府レベルや海外に逃亡した汚職官僚の摘発に力が入れられた。その一方で,「国家安全法」が制定されるなど社会統制に関わる法や組織の拡充が図られ,統一戦線工作などの共産党の伝統的統制手法も強化された。また人民解放軍に関して,30万人削減方針の発表や統合作戦指揮機関の設立など新たな動きが始まった。

国内経済は,GDP成長率が25年ぶりに7%を切り6.9%にとどまった。製造業では生産能力過剰の問題が顕在化する一方,ハイテク製造業は躍進した。「大衆による創業,万人によるイノベーション」といったスローガンや政府の「中国製造2025」計画などで,イノベーションと産業高度化の気運が盛り上がった。非効率な国有企業や金融市場が足かせとなっていたため,第13次5カ年計画とサプライサイドの構造改革では,イノベーションの重要性が強調される一方,ゾンビ企業の淘汰や過剰な不動産在庫の除去を目指すことになった。対外的には,人民元はついにIMFの特別引き出し権(SDR)の構成通貨に採用され,アジアインフラ投資銀行(AIIB)も正式に発足した。

対外関係は南シナ海問題をめぐる緊張が高まり,アメリカが南沙(スプラトリー)諸島周辺に駆逐艦を航行させるなど米中間に緊張も見られたが,対話も進められている。日中関係は歴史認識問題や東シナ海問題などの課題が残るものの,少しずつ改善が進んでいる。これらに比してロシアと中国の蜜月関係が際立った。

国内政治

汚職摘発の多角化

国内においては,最高ポストである共産党総書記・国家主席・中央軍事委員会主席を兼任する習近平が権力をほぼ掌握した。習近平政権は2012年から「虎もハエもたたく」(大物幹部も末端の下級官僚も処罰する)とするスローガンの下,反腐敗キャンペーンを大々的に進めてきた。2014年には「大虎」と呼ばれる大物幹部の摘発が相次ぎ,2015年にはこれら「大虎」に対する処分が順次確定した。6月11日に,天津市第1中級人民法院は周永康前政治局常務委員前中央政法委員会書記に無期懲役,政治権利終身はく奪の判決を下した。7月20日に中央政治局会議は令計画前党統一戦線工作部長の党籍はく奪と公職追放処分を決定し,続く30日に郭伯雄前軍事委員会副主席の党籍はく奪を決定した。

2015年には「大虎」の摘発はなかったものの,地方政府レベルでの「虎退治」を継続し,広範な汚職官僚の摘発が進んだ。11月には,呂錫文北京市党委副書記と艾宝俊上海市副市長が重大な規律違反のため失脚したことが報じられた。この結果,31ある省・直轄市・自治区のすべての地域で高官が摘発されたことになる。

2015年には「猟狐」(キツネ狩り)と呼ばれる,海外に逃亡した汚職官僚の摘発にもいっそう力が入れられた。中国公安部は2014年に引き続き,特別行動「猟狐2015」を4月1日から開始し,4月から12月末にかけて66の国や地域から857人の海外逃亡犯を捕らえた(公安部2016年1月8日発表)。そのうち58人が1億元以上の汚職に関与するとみなされている。また公安部は,さらなる摘発を目指すため正式に「境外緝捕工作局」(海外逮捕工作局)を発足させた。

社会統制の強化と制度化

習近平政権は発足当初から社会に対する政治面における統制を重視してきた。2013年ごろから著名なオピニオン・リーダーの拘束や逮捕が相次ぎ,引き締めが強化されている。2015年7月には,9日から16日にかけての1週間で200人を超える弁護士などの人権活動家が拘束された。

他方で社会統制に関わる法や組織の拡充が図られた。2015年7月1日には「国家安全法」が成立した。「国家安全」とは「政権や主権,領土,福祉,経済発展など国家の重大な利益が危険や内外の脅威にさらされない状態」であり,同法はこれを保つことを目的とする。中国には1993年に成立した同名の法律が存在したが,これは2014年に「反間諜法」(反スパイ法)に改正され,スパイ取り締まりを目的としたものに変わった。今回の「国家安全法」はこれとは別に新たに制定されたものである。

新しい「国家安全法」はネット空間,宇宙空間,深海,極地などの広い領域において「中国の活動や資産を守る」ことだけでなく,国内の治安維持のための取り締まりと,密告などを含めて国民が行う義務などを規定した。また2015年12月27日には「反恐怖主義法」(反テロ法)が第12期全人代常務委員会第18回会議を通過し,翌2016年1月1日に施行された。そのほかに4月に草案が公開された「境外非政府組織管理法」(海外NGO管理法)や7月に草案が公開された「網絡安全法」(サイバー安全法)についても準備が進められている。

共産党の社会統制を担う組織においても,社会の多様化にあわせた刷新が図られた。5月18日から20日にかけて共産党の中央統一戦線工作会議が開催された。「統一戦線」とは共産党が党外の人々と協力する際に用いられる概念で,共産党,民主諸党派,各団体および各界の代表で構成される中国人民政治協商会議が代表的な,そしてもっとも広範な統一戦線組織とされる。同会議で習近平は「高度に重視する」対象として「新しい経済組織,新しい社会組織のなかの知識人」に言及し,具体的には留学した人材,ネットなどの新しいメディアを代表する人材(すなわち著名なブロガーなど)を挙げた。さらに5月18日付で10章46条からなる「中国共産党統一戦線工作条例(試行)」が施行された。これは党中央政治局常務委員会が2013年12月に制定を決めていたもので,統一戦線工作拡大の方針を実行する組織体系を明示したものである。さらに7月30日には「中央統一戦線工作領導小組」が設立されており,各部門をまたいだトッププダウン型の政策が進められていると推察される。

また7月7日から8日に共産党は,初めて「中央党的群団工作会議」(中央による党の群団工作会議)を開催した。「群団」とは「群衆団体」の略で日本語の大衆団体に相当するが,人事面などで共産党が強く関与している組織を指す。現在は労働組合(工会)の全国組織である「中華全国総工会」(全総),共産党の予備党員である「中国共産主義青年団」(共青団),全国的婦人組織である「中華全国婦女聯合会」(婦聯)のほか,専門業種団体や中国紅十字会総会(中国の赤十字),中国人民対外友好協会,中国国際貿易促進委員会などの22の組織が,共産党と群衆の懸け橋になる「群団組織」に位置づけられている。7月9日に新華社が発した「中共中央の党の群団工作を強化と改善することに関する意見」によれば,各級党委員会の指導の強化,「社会主義の核心価値」の涵養と実行,新しいメディア・プラットフォームを総合的に運用した指導と動員,などが指示された。以上のような施策からは,社会の変化に合わせて各種制度を再編し,網の目のように張り巡らせた党の影響力を維持・強化しようとする姿勢がうかがえる。

環境問題の深刻化と国際協力

微小粒子状物質「PM2.5」による大気汚染が深刻化するなか,環境問題はもっとも重要な社会問題となっている。2014年4月24日に全国人民代表大会が可決した改正版の「環境保護法」が2015年1月1日に施行された。25年ぶりに改正された同法では汚染を引き起こした企業に対する罰金の上限をなくすなど罰則規定が強化された。また2月28日には元中国中央テレビ(CCTV)キャスター柴静の自費制作によるドキュメンタリー番組『穹頂之下』(ドームの下で)がインターネット上で公開され,大きな注目を集めた。

共産党は5中全会において,「革新,協調,緑色(エコ),開放,共有」を打ち出し「革新は発展を先導する第一の原動力であり,エコは永続的発展の必要条件,素晴らしい生活への人々の追求の重要な体現」として,技術革新による「緑色発展」(エコな発展)の推進を目指すことを明らかにした。

9月26日にニューヨークでの国連開発サミットで講演した習近平は,20億ドルを拠出して「南南協力援助基金」を設立し,発展途上国のポスト2015年開発アジェンダ実施を支援すること,2030年までに120億ドルの後発開発途上国への投資を行うことなどを表明した。11月30日にパリで開幕した国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)にも習近平は出席し,途上国としての立場から「私たちは先進国に対し,これまでの責任を負い,二酸化炭素排出量削減の約束を果たし,発展途上国が気候変動を緩和し,それに適応できるようご支援いただけるよう促したい」と述べた。さらに期間10年,総額10億ドルの中国・国連平和発展基金を創設,8000人規模の平和維持待機部隊を組織すること,5年間にアフリカ連合に対し総額1億ドルの無償軍事援助を提供することを表明した。

だが皮肉なことにCOP21開催中の11月末から中国国内では,史上最悪レベルの大気汚染が発生した。北京では12月7~10日および19~23日の計9日間にわたり大気汚染に関する最高レベルの「赤色警報」が初めて出された。改めて問題の深刻さが浮き彫りになったとともに,「赤色警報」の発出が遅すぎたのではないかという当局に対する不満の声も上がった。

戦争勝利70周年の記念式典

9月3日に北京で「抗日戦争勝利ならびに世界反ファシズム戦争勝利70周年」を記念する式典が開催された。ロシア,韓国など30カ国からの首脳級の来賓が参加し,アメリカ,イギリス,フランスなどの19カ国からは閣僚級以下の政府代表が参加した。招待を受けた51カ国のうち日本とフィリピンの2カ国が欠席した。欧米主要国のうち唯一の首脳級の出席者であるロシアのプーチン大統領と,旧西側の首脳として唯一出席した韓国の朴槿恵大統領に注目が集まった。記念式典で演説した習近平は,中国の世界平和への貢献を強調し,人民解放軍の人員30万人削減を発表した。

記念式典の後に大規模軍事パレードである「閲兵式」が行われ,各国からの式典参加者はすべて観閲した。従来,中国の軍事パレードは建国記念日である国慶節(10月1日)に行われていたが,今回初めて戦争勝利記念日にあたる9月3日に実施された。軍事パレードに投入された軍人は約1万2000人,戦闘車両は500両以上,戦闘機は200機以上で,そのうち84%が初公開の兵器とされている。なお,この記念式典および軍事パレードに台湾の連戦・元国民党主席らが参加したことに対して,台湾の総統府報道官は「遺憾」であると表明した。

人民解放軍の組織改革

2015年5月26日に国防白書である「中国の軍事戦略」が発表され,海空軍重視の方針を採ることが明示された。海軍に関しては「近海防御と遠海護衛型の結合」への転換を目指すことが明記され,空軍は「空と宇宙の一体化」や「攻防兼備」を打ち出した。また「海軍部隊は常態化した戦闘即応パトロールを組織,実施し,関連海域での軍事的プレゼンスを保持する。空軍部隊は平時と戦時の一体化,全域での反応,国土全域到達の原則を貫き,機敏かつ効率的な戦闘準備状態を保つ」といった目標が示された。

他方で,9月3日の「抗日戦争勝利ならびに世界反ファシズム戦争勝利70周年」記念式典で習近平は,人民解放軍の30万人の人員削減を表明し,現在の230万人体制から200万人への縮減の方針を明らかにした。式典後に国防部報道官の楊宇軍は「資源の集中,情報化建設の加速,質の向上に利する」ためと説明したうえ,対象は「老朽装備部隊の削減および機関と非戦闘機関人員の簡素化に重点がある」とした。削減の主な対象は陸軍の旧式な歩兵部隊や医療,通信,文化宣伝工作団などの非戦闘分野の組織とされている。

11月24日から26日には「中央軍事委員会改革工作会議」が開催された。同会議では共産党中央および中央軍事委員会に最高指導権・指揮権を集中させる方針の下,党中央軍事委員会の執行機関である4総部(総参謀部,総政治部,総装備部および総後勤部)体制を解消すること,陸軍主体の7大軍区制度を廃止して5大戦区に再編し,あわせて統合作戦指揮機関を設立することなどの組織改編が明らかにされた。さらに12月31日には「陸軍指導機構」「戦略支援部隊」「ロケット軍」が新設された。「陸軍指導機構」は陸軍司令部に相当し,陸軍を海軍,空軍,ロケット軍と同様,1軍種に位置づけた。「戦略支援部隊」はサイバー関連を扱う部門と考えられる。「ロケット軍」は従前の「第2砲兵部隊」が改組されたものである。

なお,3月5日に第12期全人代第3回会議に提出された予算草案によれば,2015年の国防予算は前年比10.1%増の8868億9800万元(約17兆1158億円)であった。

台湾の国民党への接近

5月4日,習近平と朱立倫国民党主席が人民大会堂で会談し,6年ぶりの国共首脳会談となった。また連戦元国民党主席も9月1日に習近平と会見し,3日の「抗日戦争勝利ならびに世界反ファシズム戦争勝利70周年」記念式典に出席した。「抗日戦争」は共産党ではなく国民党が主導したものだとする馬英九政権は,当局関係者の式典への参加を禁止してきたが,連戦は「同じ中華民族として共に抗日戦争勝利を記念する」ためだとして来訪を強行した。

11月7日,シンガポールで習近平と馬英九が会談し,初の両岸指導者による会談が実現した。2016年1月の総選挙・総統選挙で民進党が有利な見通しが高く,任期切れが近い馬英九が関係改善の成果をアピールするねらいがあったとされる。両者はお互いを肩書ではなく「先生」(さんの意)を付けて呼び,「一つの中国」原則を含む「92年コンセンサス」と「台湾独立反対」の原則を確認し,担当閣僚級レベルのホットラインの開設で合意した。

経済

低迷するマクロ経済と激しい構造転換

2015年の国内総生産(GDP)は67兆6708億元に達したが,実質成長率は年初目標の7%を0.1ポイント下回る6.9%となった。これは1990年以来の低水準である。四半期ごとにみると,第1四半期は7.0%,第2四半期は7.0%,第3四半期は6.9%,第4四半期は6.8%と,下落を続けていった。これまで中国の経済成長率は,2010年第1四半期の11.9%をピークに,5年続けて右肩下がりの傾向をみせてきた。すでに高度経済成長が終焉しており,「ニュー・ノーマル」といわれる安定成長の時代に突入したことが確認される。

経済成長を牽引するファクターをみると,固定資産投資は55兆1590億元(実質成長率12.0%)で,伸び率が前年比2.9ポイント下落した。輸出入総額は24兆5849億元で,前年比7.0%減と大きく落ち込んだ。うち,輸出は14兆1357億元で1.8%減,輸入は10兆4492億元で13.2%減と大幅に落ち込み,純輸出は3兆6865億元にとどまった。これに対して,消費については,社会消費財小売総額が30兆931億元で前年比10.6%増であった。最終消費支出のGDPへの寄与率は66.4%に上っており,消費はついに成長を牽引する最大の原動力となった。

GDP構成を産業別にみると,第一次産業の付加価値額は6兆863億元(前年比3.9%増)で全体の9.0%を占めている。第二次産業の付加価値額は27兆4278億元(前年比6.0%増)で,全体の40.5%を占めている。それに対して,第三次産業の付加価値額は34兆1567億元(前年比8.3%増)で,全体の50.5%を占めるまでになっている。中国の産業構造は着実に製造業からサービス業へとシフトしつつあることが示されている。

2015年の製造業はとりわけ激しい構造転換を経験した。工業生産者出荷価格は,前年比5.2%減で,45カ月続けてマイナス成長となった。工業生産者仕入れ価格も前年比6.1%減となった。1月から11月までの間に全国の規模以上工業企業(主要業務の収入が500万元以上の工業企業)による利潤総額は5兆5387億元で,前年比1.9%減であった。これらの数字は,生産能力過剰の問題が一部の業種において顕在化していることを示している。なかでも,鉄鋼,石炭,セメント,プレートガラス,アルミ電解といった業種がもっとも深刻である。たとえば10月に,石炭採掘と洗浄業の利潤額は69億6000万元であり,前年より63億4000万元も大幅に減少した。

一方,ハイテク製造業の成長には目を見張るものがあった。2015年の全国の規模以上工業の付加価値額の伸び率は6.1%だったが,ハイテク産業は10.2%と突出して高かった。その規模以上工業全体に占める割合も前年比1.2ポイント高い11.8%となった。ハイテク産業の内訳についてみると,航空・宇宙機器および設備製造業の伸び率は26.2%,電子および通信設備製造業の伸び率は12.7%,情報化学品製造業の伸び率は10.6%,医薬品製造業の伸び率は9.9%となっている。

第13次5カ年計画の制定とサプライサイドの構造改革の始動

10月26~29日に中国共産党の重要会議である第18期中央委員会第5回全体会議(5中全会)が北京で開催された。この会議では,「中国共産党中央委員会による国民経済と社会発展の第13次5カ年計画の建議」が採択され,2020年までの5年間の中国経済・社会の発展を規定する大枠が決められた。

第13次5カ年計画では,「小康社会」の全面的な完成を全体目標として掲げた。具体的には,2020年までに中国のGDPと国民1人当たり所得のいずれも,2010年より倍増させる,という数値目標を出した。2016~2020年の年平均成長率は最低でも6.5%に達する必要がある,という計算である。これまでの成長率の落ち込み方をみると,この成長目標を達成するためには,本格的な産業高度化の実現と抜本的な構造改革の遂行が求められている。

このような厳しい情勢のなかで,第13次5カ年計画では,イノベーション,協調,グリーン,開放,共有という5つの発展理念を打ち出した。さらに(1)経済成長の持続,(2)経済発展方式の転換,(3)産業構造の調整と最適化,(4)イノベーションが主導する発展の推進,(5)農業現代化の加速,(6)体制改革,(7)協調的な発展の促進,(8)生態文明の強化,(9)民生の保障と改善,(10)貧困削減と発展の推進,という10の目標を具体的に掲げた。これらの発展理念や目標をあわせて検討すると,イノベーションの推進がこれまで以上に強調されていながら,地域間格差や貧困削減,環境問題といった社会問題の解決も,最重要課題として位置づけられていることがわかる。

第13次5カ年計画では「イノベーション」に力点が置かれているが,年末に開催された一連の会議では,さらに「サプライサイドの構造改革」というキャッチフレーズが浮上した。それは,11月10日に開催された中央財経済指導小組の第11次会議で,習近平が「適宜,総需要の拡大を図ると同時に,サプライサイドの構造改革の強化に着手し,供給システムの品質と効率を向上させ,経済の持続的な成長の原動力を強化する」と述べたことが始まりであった。その後,12月18日から21日にかけて開催された中央経済工作会議は,「来年および今後の一定の時期に,適宜,総需要の拡大を図るとともに,サプライサイドの構造改革に着手する」と宣言した。

政府によって提起された「サプライサイドの構造改革」には,「構造」という言葉が入っているように,非効率的な経済構造を是正するという強い意味合いが含まれている。これは,中央経済工作会議において,過剰生産能力の除去(「去産能」),不動産在庫の除去(「去庫存」),レバレッジ取引の解消(「去杠杆」),経営コストの削減(「降成本」),弱点の補強(「補短板」)という2016年の5つの任務が提起されていることに表れている。

第1の過剰生産能力の除去とは,ゾンビ企業(経営が破綻しているが,銀行などの支援により倒産しない企業)を閉鎖したり,操業停止したりして市場から退出させることを意味する。ゾンビ企業の存在によって押し上げられた人的コスト,資金コスト,土地利用コストを引き下げ,その占有していた資源を効率の良い優良企業へ移転させることによって,産業全体の競争力の向上を図る。

第2の不動産在庫の除去とは,税金の減免や頭金の引き下げ,購入制限の解消,戸籍制度の改革,住宅賃貸市場の発展を通じて,三線と四線都市において過剰になった不動産在庫を減らすことを意味する。

第3の「レバレッジ取引」の解消とは,借入を通じた過度の業務拡大と債務増大を抑制することである。このため,株式市場や証券市場の整備を通じて,多層にわたる資本市場を確立し,銀行を中心とする間接融資から資本市場を中心とする直接融資への移転を促し,国有企業と地方政府の過剰債務問題を解決することを目指す。

第4の経営コストの削減とは,企業の税金や費用負担を軽減し,不合理な費用を撤廃するとともに,公平な税環境づくりを目指すことを意味する。

第5の弱点の補強とは,病院,学校,幼稚園,老人ホームといった公共財を提供したり,ハイテク産業を発展させたりすることによって,中国経済の不足した部分を補完し,有効供給の拡大を図ることを意味する。

とくに第1の過剰生産能力の問題については,2008年の金融危機に対応するための4兆元の公共投資の大部分が国有企業に注ぎこまれたことと関連している。国有企業は,効率のいかんにかかわらず,各分野で過剰な投資を行ったため,大規模な過剰生産能力が生じた。

2015年9月13日,中国共産党中央委員会と国務院は「国有企業改革の深化に関する指導意見」を発表した。続けて2015年9月24日と12月29日には,改革の具体的な措置を国務院と国務院,国家発展改革委員会の名義で発表した。今回の改革措置には3つのポイントがある。

第1に,国有企業を商業類と公益類に分類したことである。種類によって,改革の措置や役割分担,監査,評価の仕方も異なってくる。商業類の国有企業の場合は,市場メカニズムに基づいて運営されているため,国有資産の価値保有と価値上昇,市場競争力の向上,国民経済へのコントロールの能力,および牽引力が評価の対象となっている。一方,公益類の国有企業は民生問題の解決や公共サービス,公共財の提供といった役割を担っている。評価の際も,民生保障の機能や公共財提供の機能がポイントとなってくる。

第2に,混合所有制の導入である。異なる所有制の投資者による出資を通じて株式の多様化を実現し,国有企業の上場を促す。非国有企業にも株式を公開することによって,国有企業の歪んだ経営行動を是正して,経営効率の向上を図ることがねらいである。

第3に,国有資産監督管理委員会の役割転換である。中央所属の大手国有企業の経営に,同委員会は従来人事,監査,評価などの面で大きな発言権を持っていた。今回の改革では,国有資産監督管理委員会が国有資産の管理に専念することで所有と経営を分離するべきとの方針が強調された。

イノベーションと産業高度化への取り組み

第13次5カ年計画と「サプライサイドの構造改革」のいずれでも,イノベーションと産業高度化をニュー・ノーマルに入った経済の活力を保つもっとも重要な手段として位置づけていた。これに関して,まず,国民の間で創業とイノベーションのブームを喚起するために「大衆による創業,万人によるイノベーション」(「大衆創業,万衆創新」)というスローガンが打ち出された。このスローガンは李克強総理が2014年9月の夏のダボス・フォーラムで初めて提起したものであった。李克強は2015年3月に開催された全人代での「政府工作報告」において,「大衆による創業,万人によるイノベーション」を中国経済の継続的な発展を牽引する「ダブルエンジン」と位置づけた。そして,「大衆による創業,万人によるイノベーションを強力に推進する若干の政策措置に関する国務院の意見」が発表され,8月に国家発展改革委員会を中心に,「大衆による創業,万人によるイノベーションに関する省庁間合同会議制度」が確立した。また,国務院は,創業やイノベーションに関する財政支援のために,1月に,総額400億元に上る「国家新興産業創業投資指導基金」の設立を決定した。

大衆による創業を唱える背景には厳しい就業環境に鑑み,創業と起業によって自ら雇用の機会を創出しようと呼び掛ける政府の思惑が潜んでいる。そして,万人によるイノベーションの背景には,オープンイノベーションの考え方がある。李克強はこの発想をアピールするために,2015年に深圳や北京にあるいわゆる「創客空間」を視察した。創客は,英語のMakerとHackerという2つの言葉の意味をあわせ持つ造語であり,知識やアイデアの共有,業種を跨いだ連携,さらに繰り返される試行錯誤,といった形でオープンイノベーションを展開しながら自らのアイデアを具現化する人々を指している。とくにウェアラブルデバイスやドローン,3Dプリンターの世界では,創客のプレゼンスが大きい。中国政府は,膨大かつ多様な人口の存在という中国社会の特徴を意識しながら,創客に代表されるオープンイノベーションを意図的に推奨しているものと思われる。

また,産業高度化を本格的に遂行するために,李克強は3月の全人代で「中国製造2025」という計画を発表した。9月に国家製造強国建設戦略諮問委員会は「〈中国製造2025〉重点領域技術路線図(2015版)」を公表した。その背景には,中国人観光客による日本での「爆買い」に象徴的に表れているように,中国は「世界の工場」になったにもかかわらず,日々拡大する中間層の満足する良質で高付加価値の商品を提供するに至っていないということがある。

中国製造2025計画の重要なポイントは以下のとおりである。

第1に,3段階における中国製造業の発展の戦略的目標を掲げた。2025年までの第1段階においては,日本やドイツが工業化を達成した時期の水準に到達し,世界製造業強国の第2軍団への仲間入りを果たす。

第2に,工業化と情報化の融合を製造業の発展を加速する手段として捉えた。情報化について,中国政府は2つのことに取り組んでいる。ひとつ目は,後段で取り上げる「インターネット+」と呼ばれる取り組みである。いまひとつは,ドイツが提唱したインターネットや各種センサーを駆使して工場の情報化を目指す「Industry 4.0」の積極的な導入である。2014年11月,李克強総理がドイツ訪問の際に,「Industry 4.0」について,ドイツと積極的に連携することを宣言した。その後,2015年2月,中独による「Industry 4.0 推進連盟」が青島にて発足し,さらに12月には「中独(瀋陽)ハイエンド製造産業園建設方案」が批准され,「Industry 4.0」に関する中独連携の初めてのプロジェクトが始動した。

第3に,2025年までの製造業発展の重点領域を指定したことである。具体的には,半導体をはじめとする新世代情報技術産業,ハイエンドのNC工作機械とロボット,航空宇宙装備,海洋エンジニアリング装備およびハイテク船舶,先進的な鉄道輸送機器,省エネ・新エネルギー車,電力装備,農業機器,新素材,バイオ医薬,先進医療機器,といった10の領域が挙げられた。

李克強は3月の全人代で,イノベーションの推進や製造業の高度化にインターネット技術を活用する「インターネット+」アクションプランにも言及した。「インターネット+」アクションプランは,モバイルインターネット,クラウドコンピューティング,ビッグデータ,IoT(Internet of Things)と製造業の結合を促すことで,電子商取引や工業インターネットとインターネット金融の健全な発展を推進しようとするものであると指摘した。その後,7月4日に,国務院は「『インターネット+』行動の積極的な推進に関する指導意見」を発表した。

企業もインターネットを幅広い分野で積極的に応用しはじめている。2015年の全国のネット販売による小売額は3兆8773億元で,前年比33.3%増と飛躍的に伸びている。なかでも,実物商品のネット販売による小売額は3兆2424億元で31.6%増,社会消費財小売総額の10.8%を占めている。サービスなどの非実物商品のネット販売による小売額も6349億元で前年比42.4%増である。

インターネットに関連するビジネスについては,国家工商総局の統計によると,2015年上半期,情報伝達,ソフトウェアと情報技術サービス業の事業体の新規登録数は前年比70.9%増であり,同時期の業種別平均伸び率の15.4%を遥かに上回っている。テンセントテクノロジー(騰訊科技)社が公表したデータによると,12月22日までに,2015年のインターネット業界における各種ファンドからの融資案件の関連する分野は,電子商取引(融資案件数596件,全体の15.2%),ローカルライフ(グルメ,家事サービスなど425件,同10.8%),企業サービス(404件,同10.3%),インターネット金融(389件,同9.9%),文化とスポーツ,自動車,ハードウェア,教育,医療の順となっている。こうして,流通分野のみならず,日常生活や企業経営の現場に至るまで,インターネットは国民経済のさまざまな領域に浸透するようになった。

株式市場の波乱

2015年の株式市場は前半の急騰から一転,大暴落に陥り,波乱万丈の1年となった。

上海の株式総合指数は,2014年中期からの上昇の流れを受け,年初の3350ポイントから上昇を続け,6月15日には5178.19ポイントの2015年の最高値を記録した。この間,4月20日には上海と深圳の取引高が合計して1兆8000億元に達し,うち上海の取引高は史上初めて1兆元を上回り,1兆1500億元となった。中国で株式を扱うすべてのソフトウェアは,取引高の上限を1兆元に設定していたので,当日,これらソフトの取引高の数字は一斉に,1兆元に刻まれていた。その後,上海市場では,14の取引日,深圳市場では6つの取引日に取引高が1兆元を上回っていた。

6月までの株価上昇には中国独特のファクターが働いていた。そもそも,中国では株式売買の約8割は個人投資家によるものである。この人々のかなりの部分は,2015年に信用取引を始めたばかりであり,そのレバレッジの倍数は,最大で10倍に達するようになった。信用取引に伴う証拠金残高は6月中旬には2兆3000億元にまで膨らんでいた。そこに政府は株式市場への積極的な投資を呼び掛けた。たとえば,4月22日の『人民日報』は,4000ポイントにまで上昇したことについて,ブル・マーケットが始まったばかりで潜在力が大きく,バブル崩壊の予測には賛成しかねる,と主張する評論を発表した。人民銀行も,2月4日に預金準備率を0.5%,3月1日に基準金利を0.25%,4月20日に預金準備率を1%,5月11日には基準金利を0.25%引き下げて,金融緩和を続けた。

しかし,過熱した状況に対応するべく6月12日に証券監督管理委員会は株式投資の信用取引に対する規制強化を発表した。個人投資家はこれを嫌い,株式を売却する方向に転じたが,信用取引をしていたため,株価の下落で追い証を求められるようになり,売りが売りを呼ぶ展開となった。6月15日に最高値を記録した後,株式市場はすぐさま暴落しはじめた。7月8日には,株価の大暴落を回避するために,上海と深圳の銘柄数の4割以上を占める1200銘柄が一時的な売買停止を決定した。上海総合指数は8月26日に,いったん2015年最安値の2850ポイントにまで下落した。9月14日までのわずか3カ月の間に,上海と深圳の株式市場はほぼ4つの取引日に1回の頻度で1000銘柄以上のストップ安を16回経験した。うち2000銘柄以上のストップ安も3回経験しており,世界的にみても稀な光景となった。

これに対して,7月に株式の暴落を救済するために,証券監督管理委員会は大手の証券会社21社に協力を要請した。なかでも中信証券は主力部隊として巨額の資金を株式の買い支えに注ぎ込んだ。しかし,8月に,警察が中信証券の総経理をはじめとする8人をインサイダー取引,情報漏えいなど証券取引法違反の容疑で取り調べていることが報じられた。中信のスキャンダルは投資家の信頼を大きく傷つけることになった。さらに市場に大きな衝撃を与えたのは,公的な監督部門である証券監督管理委員会もスキャンダルに巻き込まれたことである。11月までに,日本留学組である姚剛副主席をはじめとして発行監督管理部長である李志玲および姚剛の前秘書である劉書帆を含む5人の重要幹部が共産党中央紀律委員会や警察の取り調べを受けていた。WIND社の統計によると,6月のピーク時から12月9日までの間に,中国の株式市場の時価総額は22兆3000億元も目減りしており,個人投資家の1人当たりの損失は4万3700元に達した。人民銀行は6月28日以降も,大暴落の株式市場を救済するために金融緩和を続けることになった。6月28日に,預金準備率を0.5%,基準金利を0.25%,8月26日に預金準備率,基準金利ともに0.25%,10月23日には預金準備率を0.5%,基準金利を0.25%引き下げ,計3回にわたって,同じ日に預金準備率と基準金利の両方を引き下げた。2015年12月末時点で,中国の広義の通貨であるM2の残高は139兆2300億元に達しており前年比13.3%増であった。狭義の通貨であるM1の残高は40兆1000億元で前年比15.2%増であった。

株価暴落は,株式の発行に関する登録制を導入しようとする政府の計画を遅らせることになった。政府は,銀行を中心とする間接金融の構造では,イノベーションの主たる担い手である民間企業に資金がスムーズに行き届かないため,株式市場を中心とする直接金融へ中国の金融構造を転換させることで,実体経済の振興を図ろうとした。李克強総理は3月の全人代の「政府工作報告」で,登録制の導入計画を発表した。新しい登録制の下では,発行人の資格について実質的な審査が行われず,全面的かつ正確な資料をタイムリーに証券監督管理機構に届け出さえすれば,株式の発行が認められるとされていた。12月27日に登録制導入はようやく全人代の常務委員会の審議を通過し,2016年3月以降に導入されることが決定した。

人民元の自由化と国際化

中国では従来人民銀行が定めた基準金利に基づき,銀行が一定の範囲内で金利水準を決めてきたが,2013年7月に貸出金利の下限規制が撤廃され,2014年11月から預金金利の上限規制の緩和が始まった。2015年3月1日に,人民元預金金利の上限が基準金利の1.2倍から1.3倍へ,5月11日には1.5倍へと引き上げられた。そして8月26日に,人民銀行は1年以上(1年とそれ以下を含まない)の定期預金の金利の上限を完全に自由化することを決め,さらに,10月23日に,預金金利を決める際の上限規制を撤廃し,銀行金利を原則自由化すると発表した。

金利の自由化が実現すると,銀行は自身の経営状況や競争の度合い,貸出先の信用状況などに基づいて,独自に金利水準を決めるようになる。しかし,このことは人民銀行によるモニタリングが完全に撤廃されたことを意味していない。一応,基準金利は各行の金利決定時の目安として,いままでどおりに発表される。そのうえ,人民銀行は,預金準備率を決める権利を保有している。これを調整することによって,銀行の貸出資金の規模や資金コストに影響を及ぼし,合理的な金利水準の設定を促すことができる。

人民銀行は一方で,8月11日に人民元の対ドル基準値の算出方式を変更すると発表した。人民元の対ドルレートは当日に1.9%切り下がり,その後,切り下げの一途をたどった(図1)。人民元の切り下げには,マクロ経済情勢の要請に応える一面があった。税関統計によると,7月の輸出は1950億9700万ドルで前年比8.3%も下落した。固定資産投資の成長率が鈍化していることを考慮すると,その時点で為替レートを操作し,純輸出を増やすことは,経済情勢を改善するための重要な政策手段だった。しかし,他方で人民元の切り下げは,経済情勢の悪化に伴うホットマネーの流出に由来している,との見方もある。たとえば,アメリカ財務省が10月末に発表した「為替レートの中間年度報告」によると,2015年の中国の非直接投資(non-FDI)の形による資本流出は5000億ドルを超えていたと推計されている。中国の外貨準備高が2014年の後半から減少し続けていることはこの点を裏付けている(図1)。

図1  中国における外貨準備高と人民元為替レートの推移

(注) 外貨準備高は月末値,為替レートは月間平均値。

(出所) 『中国経済景気月報』2016年1月号。

なお,2015年11月30日,人民元はIMFの特別引き出し権(SDR)構成通貨に正式に採用され,これまで強力に進められてきた人民元の国際化はついに開花したといえる。人民元のSDR通貨バスケットに占めるウエートは,ドルの41.73%,ユーロの30.93%に次ぐ10.92%となっており,一気に世界第3位の準備通貨に躍り出た。以下は,日本円(8.33%),イギリス・ポンド(8.09%)の順となっている。中国としては,SDR採用をきっかけに人民元建ての取引を増やし,海外投資を積極的に推進したいとの思惑がある。ただ,SDRは採用後,5年おきに1度,審査が行われることになっており,条件を満たさなくなった場合は,退出させられることも考えられる。したがって,中国の金融当局は今後も金利や為替改革などを継続し,金融の自由化を推進していくものとみられる。

新しいシルクロード構想の推進とアジアインフラ投資銀行の設立

習近平によって提起された「一帯一路」戦略(新しいシルクロード構想)について,3月には「シルクロード経済圏と21世紀海のシルクロードの共同建設の推進に関するビジョンと行動」が発表され,構想の青写真が示された。一方で1月から10月までの間に,中国企業は新しいシルクロード沿線の49カ国に対して直接投資を行い,投資額は前年比36.7%増の131億7000万ドルに達した。新しいシルクロード構想の沿線国による対中投資でも前年比18%増の1752社が設立された。これらの国によって実際に投資された金額は64億9000万ドルであり前年比14%増えた。

インフラ建設を主たる目的とする新しいシルクロード構想の推進には,膨大な資金の投入が必要不可欠である。中国政府は,主にアジアインフラ投資銀行(AIIB)とシルクロードファンドによって,インフラ投資への資金拠出を計画していた。なかでも,AIIBについては2015年に実質的な進捗があった。

2015年4月15日,AIIBの創設メンバーは57カ国と確定し,うちアジア域内国は37,域外国は20となっている。6月29日,57カ国の政府代表によって,「アジアインフラ投資銀行協定」が調印され,AIIBの法的根拠が確立し,AIIBの目的,資本金,投票権,業務の運営,意思決定のメカニズムなどが決定した。中国は最大の株主として株式の30.34%を保有しており,また26.06%の投票権を持ち,事実上の拒否権を握ることになった。

「アジアインフラ投資銀行協定」を批准した創設メンバーの数は12月25日現在で17カ国になった。これらの国による出資がAIIBの株式全体の50.1%に達したことで同協定は発効した。これによって中国のイニシアティブで設立された初めての多国間金融機構であるAIIBが正式に発足した。

新しいシルクロード構想とAIIBは2つの大きな課題を抱えている。ひとつは既存の国際開発金融機構との関係をいかに調整していくかということである。AIIBの創設メンバーには,アメリカと日本という2大経済大国が参加しておらず,しかも米日はそれぞれ世界銀行とアジア開発銀行を主導しながら途上国へのインフラ投資を行ってきた。もうひとつは,途上国でのインフラ投資の効率性の問題である。新しいシルクロード構想が打ち出された背景には,中国国内の過剰な生産能力を海外へ移転することが必要であるという事情があり,沿線国家でのインフラ整備は,主に中国の国有企業によって推進されることになると思われる。しかし,国有企業は経営の効率いかんにかかわらず銀行から融資が受けられるため,実際の市場需要よりも政治的な要請を優先しながら投資を行う傾向が強い。その一方で,沿線国の多くは政府によるガバナンスが脆弱である。国有企業を主体とする投資体制のなかで,これらの途上国から予定どおりに投資資金が回収できるのかという懸念もある。

対外関係

南シナ海の緊張

2015年は中国の南シナ海への勢力拡張が急速に進み,軍事拠点化に対する周辺国の懸念が高まった。当初はフィリピンやベトナムといった領有権争いの当事国が抗議していたが,南シナ海は海上輸送面だけでなく安全保障上も重要であることから,次第に国際社会の注目を集めるようになった。10月以降にはアメリカの「航行の自由」作戦が実施されたことで緊張が高まった。

1月17日にフィリピン大統領府は,中国による南沙(スプラトリー)諸島ミスチーフ礁(中国名:美済礁,比名:パンガニバン礁)での滑走路建設は「地域の対立を激化させる」という非難声明を発した。フィリピン側は在マニラ中国大使館に対して抗議文書を提出するなど,ミスチーフ礁の埋め立てやファイアリークロス礁(永暑礁,カギティンガン礁)での滑走路建設に対しても抗議した。6月12日のフィリピンの独立記念日には,中国に対する抗議デモが行われた。

3月30日には,中国空軍がフィリピン・ルソン島北端のバシー海峡を越えて西太平洋(フィリピン海)洋上に達する初めての「遠海飛行訓練」に成功したと発表した。一方,4月24日,フィリピン国軍報道官はスプラトリー諸島スビ礁(渚碧礁)周辺でフィリピン軍用機が,海上の中国船から強力な光の照射を受け,無線で退去要求を受けたと発表した。中国外務省の洪磊副報道局長は同日,「報道されているような,強い光線が照射されたという状況は生じていない」と反論しつつ,フィリピンの航空機が中国の島や岩礁周辺の上空に「不法に侵入」していると応じた。

国際社会においても,中国に対する警戒感が高まっていった。4月27日に開催されたASEAN首脳会議(クアラルンプール)の議長声明では「南シナ海で行われている岩礁埋め立てに関し,一部の指導者が表明した重大な懸念を共有している」ことが表明された。同会議は強制力を伴う「南シナ海に関する行動規範」(COC)の早期策定を目指すことで合意した。同様に,6月8日にドイツ南部エルマウで開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)においても,南シナ海の岩礁埋め立てを「力による現状変更の試み」と批判する首脳宣言が出された。

またアメリカのケリー国務長官は5月16~17日に来訪し,16日に王毅外交部長と会談した。会談後の共同会見でケリー長官は南シナ海南沙諸島での埋め立て作業の「速度と規模」に対する懸念を表明した

6月16日に中国外交部は,南シナ海の南沙諸島について「既定の作業計画に基づき,中国が南沙諸島で行っている岩礁での埋め立て工事は近く完了を迎える予定だ」と発表し,「埋め立て工事完成後,次の段階でわれわれは関連の機能を満たすための施設建設を進める」という予定を明らかにした。7月9日には,西沙(パラセル)諸島において操業中のベトナム漁船が中国船に衝突され沈没する事件が起きた。6月ごろから中国船とみられる船舶による同様の妨害行動が頻発していた。

10月11日に北京で開かれた国際安全保障フォーラムで中国軍制服組トップの範長龍中央軍事委員会副主席は,領有権問題について「中国は一貫して,当事者間の友好的な話し合いで,相違や争いを解決しようと努めている」と述べた。アメリカの介入を牽制した発言と考えられる。

10月27日には米軍が駆逐艦「ラッセン」を派遣し,南沙諸島スビ礁に中国が造成した人工島から12カイリ(約22キロメートル)以内を無害通航(軍事行動を伴わない通行)させた。「航行の自由」作戦(Freedom of Navigation Operation: FONOP)の一環で,国際法の下で許容される自由な航行や飛行を行うという意思表明であった。中国が人工島周辺の航行を制限することへの牽制が目的だが,中国だけをターゲットにしないというメッセージとして,ラッセンはベトナム,フィリピンの埋め立て区域付近も航行した。これに対し中国側は,南シナ海での「危険な挑発行為」の「再発防止」を求めた。11月22日にマレーシアのクアラルンプールで開かれた東アジア首脳会議(EAS)では,議長声明に南シナ海における平和,安定,安全の維持ならびに航行および上空飛行の自由の保持の重要性を再確認することが盛り込まれたうえ,「複数の首脳による深刻な懸念」が明記された。

10月29日にはハーグの常設仲裁裁判所は南シナ海での領有権問題に関して仲裁裁判所に管轄権があると判断し,仲裁手続きを進めると発表した。11月24~30日にはフィリピン側の主張を聞くための口頭弁論を行った。フィリピン側は中国の領有権主張が国際法に反すると提訴していたのに対し,中国は仲裁裁判所に管轄権そのものがないとして一貫して仲裁手続きを拒否している。

経済外交の推進

経済活動を通して中国の国際的な地位が高まる状況が続いている。AIIB設立においては,3月12日にイギリスが参加申請したことを皮切りに,17日にはドイツ,フランス,イタリア,19日にルクセンブルク,20日にスイスとヨーロッパ各国が続々と参加を表明した。6月29日にAIIBの協定調印式が行われた際には,創設メンバー57カ国に上った。AIIBの決議には投票による75%の賛同が必要とされるが,議決権は出資比率に比例しているため,26.06%の議決権を得た中国は事実上の拒否権を有することとなった。

3月28日のボアオ・アジア・フォーラム(26~29日)では習近平が基調講演を行い,「地域の金融協力システムを積極的に構築」することを表明した。また「シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロードの共同建設推進のビジョンと行動」に言及した。同文書は国家発展改革委員会,外交部,商務部の3機関が28日発表したもので,「行動」の重点を周辺国と共同での道路,鉄道,港湾などのインフラ建設と周辺各地とのネットワーク強化による貿易・物流の円滑化においている。

10月19~23日には,習近平がエリザベス英女王の招きでイギリスを公式訪問した。中国メディアはこれを「中英関係の『黄金期』の始まり」としている。21日にはキャメロン英首相と会談し,原子力発電事業への中国の投資や中国製の原発建設などを含む総額400億ポンド(約7兆4000億円)の契約を結んだ。11月30日には,IMF理事会がSDRに中国人民元を採用することを正式決定した。構成比の10.92%はポンドや円を上回り,ドル,ユーロに次ぐ世界第3位の「主要通貨」になった。

アフリカ諸国との関係も引き続き重視している。12月4日に南アフリカ・ヨハネスブルグで開かれた「中国アフリカ協力サミット」(中非合作論壇)に出席した習近平は,新型戦略パートナーシップから全面的戦略協力パートナーシップへの格上げと,アフリカ諸国のインフラ整備や貧困削減・社会福祉向上のための3年間で600億ドル(約7兆3600億円)の資金援助を表明した。また鉄道施設に関しては,10月2日に日本との受注競争となっていたインドネシアの高速鉄道建設を獲得,12月3日にはタイとの鉄道協力枠組み覚書に合意するなど,積極的に海外からの受注を取り付けている。

米中首脳会談と緊張の高まり

これまでオバマ政権は協調・対話を軸とする対中政策を展開してきたが,南シナ海での大規模な埋め立てやサイバー・セキュリティに関する議論が平行線をたどるなか,次第に対中不信を募らせていった。9月の首脳会談以降には,「航行の自由」作戦が実行されるなど,アメリカとの安全保障面における緊張が高まっている。だが一方で,経済や環境問題などの分野では協調を維持しており,牽制と協力の微妙なバランスを維持している。

アメリカのケリー国務長官が5月16~17日に来訪し,16日に王毅外交部長と会談した(「南シナ海の緊張」参照)。6月4日にはアメリカ政府の職員情報を管理する連邦人事管理局のコンピューターが大規模なサイバー攻撃を受けた。その後の調査では約2150万人の社会保障番号(SSN,日本のマイナンバーに相当)が影響を受け,そのうち560万人の指紋データが盗まれたことが明らかになった。中国のハッカー集団による犯行とみられているが,この問題について中国新華社は12月2日に「中国政府の関与はなかった」とする調査報告を伝えた。

6月8~13日に範長龍中央軍事委員会副主席(上将)が訪米し,カーター国防長官と会談した。南シナ海問題についてカーター長官は「米中間の課題ではないし,アメリカは南シナ海の主権争いに特定の立場は取らない」としつつ,岩礁埋め立てに「永続的な停止」を求めた。

6月22日には第5回米中戦略安全保障対話が,23~24日に第7回米中戦略・経済対話(S&ED)が開催された。米中の貿易投資協定(BIT)交渉や気候変動や海洋保全での協力などでの前進はあったが,人民元自由化,サイバー・セキュリティ問題,南シナ海問題などの懸案事項の議論では成果を出せなかった。

上述の地ならしを経て,9月22~25日に習近平が訪米した。首脳会談に先立ち訪れたシアトルで習近平は,アメリカのボーイング機300機の購入を発表し,マイクロソフト創業者のビル・ゲイツと会談するなどアメリカ企業との良好な関係をアピールした。しかし25日に行われたオバマ大統領との3回目の首脳会談では,習近平は人工島を軍事化する意図はないと述べたものの,南シナ海問題やサイバー・セキュリティ問題をめぐる議論は平行線に終わった。この直前のローマ法王フランシスコの訪問に比して,習近平訪問は霞んだ印象であった。『人民日報』は26日に「49項目の共通認識の成果リスト」を掲載し,米中の「新型大国関係」の進展を強調したが,アメリカ側は「新型大国関係」という表現を用いていないことから,両国の温度差が明らかになった。

10月27日に「航行の自由」作戦が実施され,アメリカの駆逐艦「ラッセン」が南沙諸島スビ礁の人工島から12カイリ以内を通過した。これまで「航行の自由」作戦を自制していたオバマ大統領が,米中首脳会談を経て対話による説得から軍事力を用いた牽制へと舵を切ったものと考えられる。11月30日にCOP21の開催にあたり,パリで再び習近平とオバマによる首脳会談が行われた際には,温暖化対策で連携することを合意しており,必ずしも中国と対立しない姿勢を示した。

日中関係

2015年の訪日外国人旅行客数は前年(1341万人)を47%も上回る1974万人で過去最高となったが,そのうち中国からの旅行者は前年比107%増の499万人であった。人的交流が拡大するなかで世論の対日イメージが改善したとする見方がある。政治・外交面においては首脳会談が行われるなど対話の兆しがみられる一方で,歴史問題や安全保障領域では緊張が続いている。

4月22日には,アジア・アフリカ会議60周年記念首脳会議(ジャカルタ)の際におよそ5カ月ぶりの日中首脳会談が行われ,両首脳は関係改善を図る方針で一致した。習近平は「歴史を直視してこそ相互理解が進む」としつつも「9月の抗日戦争勝利記念日でも,今の日本を批判する気はない」と述べた。5月には,20~26日にかけて「中日友好交流大会」のため自民党の二階俊博総務会長率いる3000人の訪中団が来訪し,関係改善の雰囲気が高まった。23日に人民大会堂で開かれた式典では習近平が訪中団を歓迎した。

7月には中国が東シナ海に新たな海上施設を建設していることが明らかになった。7月10日の衆議院平和安全法制特別委員会で中谷元防衛相は「プラットフォームにレーダーを配備する可能性がある」として安全保障上の懸念を表明した。日本政府は22日に,2013年6月以降に新設された12基を含む計16基の写真を公開した。いずれも日本が境界線と主張する中間線より中国寄りの海域で建設されていたが,両国は2008年6月にガス田の共同開発で合意していたため,菅義偉官房長官は同日の記者会見で「中国が一方的に資源開発をすることはきわめて遺憾だ」と批判した。なお防衛省は尖閣諸島などの離島防衛を強化するため,中期防衛力整備計画(2014~2018年度)に基づいて南西諸島への配備計画を進めている。

7月16日,来訪した谷内正太郎国家安全保障局長と楊潔篪国務委員がハイレベル政治対話を共同主催し,これを第1回と位置づけて対話の重要性を相互に確認した。安倍晋三首相が検討していた9月初旬の訪中について調整を図ったとされる。10月13日には東京で第2回対話が開かれた。

8月14日に安倍首相は内閣総理大臣談話を発表した。過去の村山談話や小泉談話にあった「植民地支配」「侵略」「お詫び」「反省」のキーワードがすべて盛り込まれたが,中国国内では「日本の侵略について曖昧」などの批判が多かった。14日に中国外務省の華春瑩報道官は「いかなるごまかしもすべきではない」と批判し,15日付の『環球時報』は社説で「東南アジアの国々,台湾,韓国,中国など,隣人であるアジアの人々」という部分について「台湾」が中国と併記されたことに不快感を示した。

9月21日に外交部報道官は,外交部の組織改編により「日本処」(日本課)を廃止したことを伝えた。また9月30日には,日本人2人が中国国内で,スパイ容疑で逮捕されたことを外交部報道官が認めた。

11月1~2日にはソウルで,安倍晋三首相,李克強総理,朴槿恵大統領による日中韓の3カ国による首脳会談が開催された。日中韓については「自由貿易協定(FTA)の交渉加速や首脳会談の定例化」で合意し,「歴史を直視し,未来に向かう」という表現を共同宣言に盛り込んだ。しかし歴史認識問題については中韓が日本を牽制し,安倍首相は「特定の過去にばかり焦点を当てる姿勢は生産的でない」と述べた。この間,11月1日には安倍晋三・李克強による日中首脳会談が行われ,「東シナ海のガス田共同開発協議の再開を目指す」ことで一致した。

中ロ関係

ウクライナ問題で主要8カ国(G8)から外されるなど国際的に孤立し,経済でも中国の協力を仰ぎたいロシアと,対米戦略や経済面でロシアと協調したい中国の思惑が一致し,中ロの蜜月関係が際立った。第2次世界大戦70周年という節目の年に,自らの歴史認識の正当性をアピールしたい中国に対してロシアが歩調を合わせた側面もあった。

5月8~10日に習近平がモスクワを訪問し,「大祖国戦争(独ソ戦)勝利70周年」の式典に出席,軍事パレードを観閲した。パレードには,インドや独立国家共同体(CIS)とともに中国の人民解放軍儀仗隊が初参加した。8日にプーチン大統領と首脳会談を行い,両首脳は「全面的戦略協力パートナーシップの深化と協力相互勝利の提唱に関する共同声明」と「シルクロード経済ベルトとユーラシア経済同盟のリンクに関する共同声明」に署名した。「シルクロード経済ベルト」と「ユーラシア経済同盟」(EEU)の連携,中ロが中央アジアのインフラ整備で協調することや,アメリカによるミサイル防衛システムの配備拡大に反対することで一致した。習近平は7日にカザフスタン,10~12日にベラルーシを訪れており,ロシアと合わせて3カ国を歴訪した。

7月7日には,中国,ロシアなど新興5カ国(BRICS)により創設された新開発銀行(BRICS銀行)がモスクワで第1回総会を開いた。これに合わせて7月8~10日に習近平がロシアを訪問し,8日にプーチン大統領と首脳会談を行った。両者はEEUにおける協力を協議し,中国側は戦後70周年記念式典へのロシアの協力を確認した。さらに9日に第7回BRICS首脳会議,10日に第15回上海協力機構(SCO)首脳会議が開催され,習近平はいずれも出席した。インドとパキスタンが正式にSCOメンバーに加入し,SCO構成国は8カ国になった。

9月3日の「抗日戦争勝利ならびに世界反ファシズム戦争勝利70周年」に出席するため来訪したプーチン大統領は同日に習近平と会談を行い,エネルギー資源や投資,金融など20項目以上の協力に関する合意文書に署名した。中国との全面的な戦略的協力パートナー関係を深化させると表明し,中ロ蜜月をアピールした。

2016年の課題

2016年には,「全面的な小康社会」建設に向けた具体的な取り組みが進むと考えられる。ただし経済や社会の国際化が進むなかで,どのように世論をコントロールし,現行の政治体制を維持するかという難問を抱え,社会に対する引き締めが継続すると予想される。政治的には,2017年秋に予定されている第19回党大会を見据えた権力闘争が過熱するだろう。習近平と李克強以外の5人の中央政治局常務委員が引退すると見込まれることや,習近平の右腕として腐敗問題を取り仕切ってきた紀律検査委員会の王岐山書記が定年に該当することから,習近平がいかに後任人事を取り仕切るかが注目される。また民進党政権が誕生する台湾との間で摩擦が生じる可能性がある。

国内経済では,GDP成長率が引き続き下落していくだろう。固定資産投資と貿易の拡大が期待できない以上,消費が中国経済のもっとも重要な牽引力になることはほぼ確実である。インターネット技術と結合した産業高度化やイノベーションの推進は,いっそう進展していくものと思われる。しかしサプライサイドの改革で,過剰生産能力の除去に伴う失業問題にどう対処するのか,また金融改革で民間企業に直接融資の効率的なチャネルが提供できるのか,予断を許さない状況である。対外的には人民元の切り下げ問題と外貨準備の減少に伴うホットマネーの流出が,引き続き懸念材料として残っている。AIIBは発足元年にあたって,順調な出だしができるのか,新しいシルクロード構想の成否にも関わっているので,世界的に注目が集まるだろう。

対外政策においては,アメリカとの関係をどのように安定させるかが最大の課題となる。11月に予定されるアメリカ大統領選挙がどのような結果になるかが重要な不確定要因である。また南シナ海問題はさらに緊張が高まることが予想されるが,この問題で中国が強硬な姿勢を維持するならば国際的な批判にさらされることとなる。経済協力をてこに各国との友好関係を演出しつつ,どのように現実的な問題収束を図るかという道筋はいまだ見えていない。

(江藤:地域研究センター)

(丁可:地域研究センター)

重要日誌 中国 2015年
  1月
1日 新「環境保護法」の施行。
1日 上海外灘(バンド)で将棋倒れ事故が発生,36人死亡。
12日 共産党第18期中央規律検査委員会第5回全体会議(~14日)。
17日 フィリピン大統領府が南沙(スプラトリー)諸島ミスチーフ礁での中国の滑走路建設に対して非難声明。
28日 周生賢環境保護部長,更迭される。後任に清華大学の陳吉寧学長が就任。
  2月
2日 中央党校での省・部級主要幹部による学習会で習近平総書記が「4つの全面」を説明。
4日 人民銀行,預金準備率の0.5%引き下げを発表。
10日 国家発展改革委員会,アメリカのクアルコム社による独占行為を認定,史上最高の60億8800万元の罰金を科すと発表。
14日 国務院,「サービス貿易の発展の加速に関する若干の意見」を発表。
28日 元CCTVキャスターの柴静が,自費制作の『穹頂之下』(ドームの下で)公開。
  3月
1日 人民銀行,基準金利を0.25%引き下げ,預金金利の上限を基準金利の1.2倍から1.3倍へ拡大と発表。
4日 人民政治協商会議第12期全国委員会第3回会議が北京で開幕(~13日)。
5日 第12期全人代第3回会議(~15日)。李克強総理は『政府工作報告』において,「大衆による創業,万人によるイノベーション」「中国製造2025」「インターネット+」アクションプランを発表。2015年の国防予算は前年比10.1%増の8868億9800万元。
15日 党中央紀律委員会,仇和雲南省副書記,徐建一第一汽車集団董事長が,組織調査を受けていると発表。
16日 党中央紀律委員会,廖永遠中国石油天然气集団総経理が,組織調査を受けていると発表。
26日 ボアオ・アジア・フォーラム(~29日)で習近平国家主席が講演,「地域の金融協力システムを積極的に構築」と発言。
28日 国家発展改革委員会,外交部,商務部,「シルクロード経済圏と21世紀海のシルクロードの共同建設の推進に関するビジョンと行動」を共同で公表。
30日 空軍がフィリピン・ルソン島北端のバシー海峡を越えて西太平洋への初めての「遠海飛行訓練」に成功と発表。
  4月
1日 公安部が「猟狐2015」を開始。
15日 アジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設メンバー数は57カ国と確定。アジア域内国は37,域外国は20。
20日 習近平国家主席,パキスタン訪問(~21日)。21日に議会で講演。
20日 人民銀行,預金準備率の1%引き下げを発表。
21日 中国(広東)自由貿易試験区,中国(天津)自由貿易試験区,中国(福建)自由貿易試験区が発足。
22日 アジア・アフリカ会議60周年記念首脳会議(ジャカルタ)で日中首脳会談。
24日 フィリピン国軍報道官はスプラトリー諸島スビ礁周辺でフィリピン軍用機が強力な光の照射を受けたと発表。
27日 中国(上海)自由貿易試験区の拡張区が発足。
27日 クアラルンプールで開かれたASEAN首脳会議,議長声明で南シナ海に関して「重大な懸念を共有する」と表明。
  5月
4日 習近平共産党総書記と朱立倫国民党主席が人民大会堂で会談。6年ぶりの国共首脳会談。
8日 習近平国家主席,モスクワ訪問(~10日)。大祖国戦争(独ソ戦)勝利70周年記念式典の軍事パレードを観閲。中国軍儀仗隊が参加。
8日 中ロが「全面的戦略協力パートナーシップの深化と協力相互勝利の提唱に関する共同声明」と「シルクロード経済ベルトとユーラシア経済同盟のリンクに関する共同声明」を発表。
11日 人民銀行,基準金利を0.25%引き下げ,預金金利の上限制限を1.5倍引き上げると発表。
16日 ケリー米国務長官が来訪(~17日)。南シナ海スプラトリー諸島での埋め立て作業の「速度と規模」に懸念。
17日 ケリー米国務長官,習近平国家主席と会談。
18日 党中央統一戦線工作会議,北京で開催(~20日)。同日に「中国共産党統一戦線工作条例(試行)」を施行。
20日 「中日友好交流大会」で二階俊博自民党総務会長率いる3000人が来訪(~26日)。
23日 自民党の二階俊博総務会長が習近平国家主席と面談,安倍首相の親書を手渡す。
26日 国務院新聞弁公室,国防白書『中国の軍事戦略』を発表。
  6月
1日 湖北省監理利県の揚子江水域で大型客船が竜巻で転覆,442人遭難。
8日 ドイツ南部エルマウでの主要7カ国首脳会議(G7サミット)で南シナ海の岩礁埋め立てを「力による現状変更の試み」と批判する首脳宣言を発表。
8日 範長龍中央軍事委員会副主席が訪米(~13日),カーター国防長官と会談。
11日 習近平国家主席,アウンサンスーチー率いるミャンマー国民民主連盟代表団と会談。
11日 周永康前政治局常務委員会委員(前中央政法委員会書記)に無期懲役,政治権利終身剥奪の判決。
12日 証券監督管理委員会,株式投資の信用取引に対する規制強化を発表。
15日 上海証券取引所は5178.19ポイントの年間最高値を記録。その後,市場が大暴落に転じる。
16日 外交部,南シナ海のスプラトリー諸島の埋め立て工事完了予定を発表。
22日 第5回米中戦略安全保障対話,ワシントンで開催。
23日 米中戦略・経済対話(S&ED)第7回会議,ワシントンで開催(~24日)。南シナ海問題とアメリカ政府職員データベースへのサイバー攻撃が焦点に。
28日 人民銀行,預金準備率を0.5%,基準金利を0.25%引き下げると発表。
29日 「アジアインフラ投資銀行協定」の調印式,北京で開催。
30日 習近平総書記,北京で全国優秀共産党県委員会書記と面会。
  7月
1日 新「国家安全法」が全人代を通過,即日公布。
4日 国務院,「『インターネット+』行動の積極的な推進に関する指導意見」を発表。
7日 党中央委員会が「中央党的群団工作会議」(中央の党の群団工作会議)を北京で初開催(~8日)。
7日 新開発銀行(BRICS銀行)がモスクワで第1回総会。習近平国家主席が出席。
8日 習近平国家主席が訪ロ(~10日)。プーチン大統領と首脳会談。
9日 習近平国家主席が第7回主要新興国(BRICS)首脳会議に出席。
10日 習近平国家主席が第15回上海協力機構(SCO)首脳会議に出席。
10日 習近平国家主席がベラルーシを訪問(~12日)。
16日 谷内正太郎国家安全保障局長と楊潔篪国務委員が第1回ハイレベル政治対話を北京で共同主催。
20日 中央政治局会議,令計画前統一戦線工作部長の党籍はく奪と公職追放処分決定。
24日 党中央紀律検査委員会,河北省共産党書記である周本順が,組織調査を受けていると発表。
30日 中央政治局会議,郭伯雄前軍事委員会副主席の党籍はく奪決定。
30日 中央政治局会議,中央統一戦線工作領導小組の設置を決定。
31日 2022年第24回冬季五輪の開催都市に北京が決定。張家口と共催。
  8月
11日 人民銀行,人民元の対ドルレートを1.9%切り上げる。
12日 天津で化学物質による大爆発,死者が165人,行方不明者が8人。
18日 党中央紀律検査委員会,楊棟梁国家安全生産監督管理局長が,組織調査を受けていると発表。
24日 党と政府が中央第6回チベット工作座談会を北京で開催(~25日)。
26日 人民銀行,預金準備率と基準金利をそれぞれ0.25%引き下げ,1年以上(1年とそれ以下を含まない)の定期預金の金利の上限を完全に自由化と発表。
28日 習近平国家主席,ライス米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)と面会。
  9月
1日 習近平国家主席,連戦元国民党主席と会談。
2日 習近平国家主席,朴槿恵韓国大統領と中韓首脳会談。
3日 「中国抗日戦争ならびに世界反ファシズム戦争勝利70周年」記念式典,北京で開催。習近平国家主席が軍30万人削減を発表。
13日 党中央委員会と国務院,「国有企業改革の深化に関する指導意見」を発表。
21日 外交部報道官,外交部日本処の廃止を確認。
22日 習近平国家主席が訪米(~25日)。
25日 米中首脳会談。南シナ海問題で対立,「新型大国関係」で両国の認識のずれ。
26日 習近平国家主席が国連開発サミットに出席。
29日 国家製造強国建設戦略諮問委員会,「〈中国製造2025〉重点領技術路線図(2015版)」を公表。
30日 外交部報道官,日本人2人が中国内でスパイ容疑で逮捕されたことを確認。
  10月
2日 インドネシアの高速鉄道建設を中国が受注。
5日 屠呦呦中国中医科学院首席サイエンティストが日本人,アイルランド人研究者とともにノーベル生理学医学賞を受賞。中華人民共和国出身の科学者としては初めて。
7日 党中央紀律検査委員会,蘇樹林福建省長が組織調査を受けていると発表。
9日 習近平党総書記,朝鮮労働党第一書記の金正恩へ朝鮮労働党成立70周年の祝電。
9日 「南京大虐殺」の資料がユネスコ記憶遺産に登録。
13日 第2回日中ハイレベル政治対話開催。
15日 習近平党総書記,文芸工作座談会で重要講話。
19日 習近平国家主席,エリザベス女王の招きでイギリスを公式訪問(~23日)。
21日 習近平国家主席,キャメロン英首相と会談。
23日 人民銀行,預金準備率を0.5%,基準金利を0.25%引き下げ,預金金利を決める際の上限規制を撤廃し,銀行金利を原則自由化すると発表。
26日 党第18期5中全会,北京で開催(~29日)。「国民経済・社会発展の第13次5カ年計画」草案を発表。「一人っ子政策」を廃止。
27日 「航行の自由」作戦でアメリカの駆逐艦「ラッセン」が南沙諸島の人工島から12カイリ(約22キロメートル)以内を無害通航。
  11月
1日 ソウルで日中韓首脳会談を開始(~11月2日)。同日,安倍晋三首相・李克強総理による日中首脳会談。
2日 習近平国家主席,オランド仏大統領と北京で首脳会談。
7日 習近平国家主席と馬英九総統がシンガポールで会談。1949年以来初めての両岸指導者による会談。
10日 中央財経済指導小組の第11回会議,北京で開催。習近平党総書記は初めてサプライサイドの構造改革に言及。
10日 党中央紀律検査委員会と中国政府・監察部は艾宝俊上海市副市長が重大な規律違反で取り調べ中と発表。
11日 党中央紀律検査委員会と中国政府・監察部は呂錫文北京市党委副書記が重大な規律違反で取り調べ中と発表。
13日 党中央紀律検査委員会,姚剛証券監督管理委員会副主席が,組織調査を受けていると発表。
14日 習近平国家主席,トルコで開催される20カ国集団首脳会議でエルドアン・トルコ大統領と会談。
19日 習近平国家主席,APEC第23回非公式首脳会義に参加。
20日 胡耀邦誕生100周年座談会,北京で開催。
22日 マレーシア・クアラルンプールで東アジア首脳会議が開催。南シナ海問題について「深刻な懸念」を議長声明に明記。
24日 中央軍事委員会改革工作会議(~26日)。7大軍区制度を廃止し,5大戦区に再編。「統合作戦指揮機関」の設立を表明。
27日 中央貧困削減開発工作会議,北京で開催(~28日)。
29日 オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所,南シナ海問題での仲裁手続きの継続を発表。
30日 習近平国家主席,パリで開幕した国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で講演。200億元の発展途上国支援を発表。
30日 人民元,IMFの特别引き出し権(SDR)構成通貨に正式に採用。
  12月
3日 中国とタイが鉄道協力枠組み覚書に合意。
4日 「中国アフリカ協力サミット」(中非合作論壇),南アフリカ・ヨハネスブルグで開催。
7日 北京で初の大気汚染「赤色警報」発令。
18日 中央経済工作会議(~21日)。サプライサイドの構造改革に着手と明言。
20日 深圳市光明新区で地滑り事故が発生,死者58人。国務院調査チームは事故であり,自然災害ではないと認定(25日)。
23日 習近平国家主席,梁振英香港特別行政区行政長官,崔世安マカオ特別行政区行政長官と面会。
24日 中央農村工作会議,北京で開催(~25日)。
25日 「アジアインフラ投資銀行協定」が発効,AIIBは正式に発足。
27日 全人代常務委員会第18回会議,株式上場に関する登録制の導入が審議を通過。
31日 人民解放軍に「陸軍指導機構」「戦略支援部隊」「ロケット軍」を新設。

参考資料 中国 2015年
①  国家機構図(2015年末現在)
②  中国共産党・国家指導者名簿(2015年末現在)
②  中国共産党・国家指導者名簿(2015年末現在)(続き)
③  各省,自治区,直轄市首脳名簿(2015年末現在)

主要統計 中国 2015年
1  基礎統計
2  国内総支出(名目価格)
3  産業別国内総生産(名目価格)
4  産業別国内総生産成長率(実質価格)
5  国・地域別貿易
6  国際収支
7  国家財政
 
© 2016 日本貿易振興機構 アジア経済研究所
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