アジア動向年報
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各国・地域の動向
2015年のベトナム 党大会を前に経済,外交面で成果
石塚 二葉藤田 麻衣
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2016 年 2016 巻 p. 221-248

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2015年のベトナム 党大会を前に経済,外交面で成果

概況

2015年は,年内に4回の党中央委員会総会が開催され,2016年1月に予定される第12回共産党全国代表者大会(党大会)の準備が進められた。とくに党指導部人事の行方をめぐってはさまざまな噂や真偽不明の情報がインターネット上に氾濫したが,党中枢における議論や決定は従来通り密室のなかで行われた。年初の党中央委員会第10回総会では,次期指導部人事の行方を占ううえで注目された党政治局員,書記局員に対する信任投票が実施されたが,その結果は公表されなかった。党書記長をはじめとする「四柱」といわれる4つの主要職位の候補者は年内に固まらず,2016年の年明けに党中央委員会第14回総会を開催して決定することとなった。党大会の日程は,2016年1月21~28日と決定した。

経済は,世界的な混乱の影響を最小限に抑えて,マクロ経済の安定を維持しつつも6.68%という高水準の成長率を達成し,本格的な回復を裏付けた。数々の国際経済統合の枠組みが合意や実施に至ったことによって企業の競争力強化の必要性がいっそう高まり,政府は経営環境を改善するための法制度整備を進めた。5カ年計画の最終年であることから,かねてから遅延が目立っていた国有企業改革や金融企業改革においても,2015年までの目標達成に向けて前進がみられた。しかし,数値目標の達成を急ぐあまり改革の質が犠牲にされたという側面も否めない。いずれも抜本的な解決は先送りされた格好となった。

2015年は,中国との国交樹立65周年,アメリカとの国交正常化20周年に当たり,この機にグエン・フー・チョン党書記長は自ら両国を訪問して,それぞれの二国間関係の重要性を誇示した。とくに,ベトナム共産党書記長のアメリカ公式訪問は史上初めてであり,近年の南シナ海における緊張の高まりを背景とする両国関係の急速な進展のひとつの到達点を示すものとして,歴史的な意味をもつと評価できる。

国内政治

共産党中央の動き──第12回党大会の準備進む

党中央委員会総会は,通常年2回,5月と10月に開催されるが,2014年には2回目の総会が年内に開催されなかったことなどから,2015年には年間で4回の総会が開催された。

第11期党中央委員会第10回総会は,年明け早々の1月5日から8日間にわたって開催された。総会では,第12回党大会に上程される文書の草案について討議が行われたほか,幹部・公務員の定数削減案および2025年までのメディア発展管理計画案の検討,党中央検査委員会の委員8人の補充選出などが行われた。

なかでも注目を集めたのは,党中央委員会による党政治局員,書記局員に対する初めての信任投票であった。この信任投票は,2011年末の党中央委員会第4回総会決議で,党内の綱紀粛正策のひとつとして打ち出されたものである。

投票は1月10日に行われた。投票が行われることは国営メディアを通じて予告されていたが,投票の実施後,その結果は公表されず,総会の閉幕演説でも触れられていない。この沈黙を破ったのは,「権力の肖像」(Chan dung Quyen luc)と題された正体不明のブログであった。同ブログは,「党中央委員会第10回総会における政治局,書記局信任投票の結果」と題する1月16日付の記事で,党中央委員からの信頼できる情報に基づくとして,党政治局員,書記局員全20人について「高信任」,「信任」,「低信任」のそれぞれの得票数を明らかにしている。同記事によれば,「高信任」票をもっとも多く獲得したのはグエン・タン・ズン首相であり,197票中152票であったとされる。ズン首相の政治的ライバルとされるチュオン・タン・サン国家主席は同149票で第2位,グエン・フー・チョン党書記長は同135票で第8位であったとされる。この記事に対しても,党の側からは明示的な反論は行われなかった。

2014年12月に国会で行われた国家幹部に対する第2回目の信任投票で,ズン首相への信任度が向上していたことからみても,「権力の肖像」の記事による信任投票の結果は不自然ではない。同記事は,ズン首相が次期指導部のポスト争いにおいて優位に立ちつつあることを印象づけた。

第11回総会は,通常通り5月に開催された(4~7日)。総会では,(1)第12期中央委員会人事の方針,(2)第12回党大会に出席する代表の割り当て,(3)地方行政組織,(4)ロンタイン空港プロジェクトの諸項目に関して討議が行われた。(1)については,第12期党中央委員会を組織するに当たっての4つの要請や委員の人選に際しての3つの基準などが提示され,政治局員,書記局員は政治的資質,道徳性などにおいて中央委員会の模範でなければならないこと,中央委員会には党の方針や原則に反する者や,権力を貪る者などを入れてはならないことなどが確認された。(3)に関しては,各地方行政単位に人民評議会と人民委員会が置かれることとなった。2008年から一部の地方行政単位において試験的に人民評議会が廃止されていたが,これらの行政単位も従来の制度に戻ることになった。(4)の空港プロジェクトについては,2014年10月の国会で意見が分かれ,採決が見送られていたが,今総会でその必要性,適切性が改めて強調された。

第12回総会も通常通り10月に開催された(5~11日)。総会では,(1)2015年の経済社会情勢および国家予算の状況,ならびに2016年の経済社会発展計画および国家予算草案,(2)2016年国会議員・人民評議会議員選挙の方針,(3)第12期党中央委員会および政治局,書記局等の人事案などの諸項目について討議が行われた。(3)では,第12回党大会で初めて党中央委員候補として推薦される予定の候補者の名簿を確定するための投票が行われ,また再任が適当であると考えられる現職中央委員や,政治局員,書記局員候補についても意見聴取が行われた。

第13回総会は,党大会の開催を翌月に控えた12月14~21日に開催された。総会の主要な議題は,(1)党大会に上程される各文書の草案の採決,(2)第11期中央委員会の活動総括,(3)第12期党中央委員会,政治局,書記局などの人事案であった。(3)については,現職中央委員のうち次期中央委員候補として推薦される予定の候補者の名簿を確定するための投票が行われ,また政治局員,書記局員候補のうち年齢などに関する規定の要件を満たしている者についても同様に投票が行われた。政治局員,書記局員候補で,規定の年齢制限の例外となる者については,意見聴取が行われ,年明けに第14回総会を開催して検討を行うことになった。すなわち,「四柱」と呼ばれる党書記長,国家主席,政府首相,国会議長の4つの職位については,党大会開催前月になってもまだ候補者が確定せず,党政治局,党中央委員会のなかで意思統一が達成されていなかった模様である。第12回党大会の日程については,2016年1月21日開幕,28日閉幕と決定した。

なお,第12回党大会に上程される政治報告および経済社会発展5カ年計画の草案については,4月以降,各級の党大会で意見聴取が行われてきたが,9月15日,各メディアを通じて公開され,10月31日まで国民からの意見聴取が行われた。また,各級党大会では,各行政単位における新指導部が選出され,ズン首相の長男グエン・タイン・ギ(39歳)がキエンザン省で,グエン・ヴァン・チ元政治局員の長男グエン・スアン・アイン(39歳)がダナン市で,それぞれ党委書記に就任するなど,若年の二世政治家の要職就任が注目された。

数年来,現体制の転換を求めて声を上げはじめている知識人たちは,党中央委員会第13回総会を前にした12月9日,第11期党政治局,中央委員会,第12回党大会参加代表,および全党員に宛てた公開書簡を公表した。同書簡は,近隣諸国に比してのベトナムの発展の遅れ,増大する中国の脅威,国際統合の深化がベトナムにもたらす機会などの状況認識をふまえ,マルクス=レーニン主義をその思想的基礎としている党大会文書草案は事実を直視していないと批判し,党大会は,党名,国名から「共産」や「社会主義」を外すなどの具体的な行動により政治体制転換の意思を示すべきだと提言している。同書簡は,元駐中国大使を筆頭とする127人の知識人らによって署名されている。

最終的にだれが党内トップの座に就くにせよ,こうした体制そのもののあり方に対する批判は今後も続くことが予想される。

国会の動き──国家機構,人権などに関わる多くの法律成立

国会では,前年に引き続き,2013年憲法改正に伴う多くの新規立法や法改正が行われた。

第9回国会(5月20日~6月26日)では,改正政府組織法,地方政府組織法(人民評議会・人民委員会組織法の改正法),国会議員・人民評議会議員選挙法(国会議員選挙法および人民評議会議員選挙法を統合)など,11本の法律が成立した。そのほかにも国会は,定年前に退職した労働者に対し,定年年齢を待たずに年金の一時金を受け取ることを可能にする決議や,ロンタイン空港建設計画を承認する決議など5つの決議を採択した。

年金に関する決議は,2014年11月に国会で改正された社会保険法(2016年1月1日発効)第60条を実質的に再改正するものである。2014年の社会保険法改正により,定年前に退職する労働者への年金の一時金支払いが認められなくなったことに反対して,ホーチミン市の台湾系工場の労働者9万人が,3月26日から約1週間にわたる大規模なストライキを行った。4月1日,首相が議長として開催した会議で,政府は問題の条文の再改正を国会に提案することを約束し,ストライキはようやく収束した。その結果,今回の決議採択となったが,国会議員のなかからは,国会が当初の法改正に当たって労働者の声を反映できなかったことに対する戸惑いや反省も表明された。

表1  2015年の国会で可決された法律

(出所) ベトナム国会ウェブサイト(http://quochoi.vn)より筆者作成。

第10回国会(10月20日~11月27日)は,民法典,刑法典の改正法などを含む16本の法律,および2016年の経済社会発展計画や国家予算などに関する15本の決議を成立させた。刑法典改正では財産強奪罪や麻薬を不法に隠匿する罪など7つの犯罪について死刑を廃止し,刑事訴訟法改正では取り調べの録画などによる可視化や被疑者の黙秘権についての規定が加えられた。このような法改正は,2013年憲法改正における人権重視の姿勢の具体化とみることができる。もっとも,人権団体などからは,政府による言論統制の主たる手段となっている刑法上の各条文については改善がみられず,また一部の基本的人権に関連する規定ではより重い刑罰が科されることになったという批判もある。

1月7日,不動産会社ハウジング・グループ会長のチャウ・ティ・トゥ・ガー国会議員が,不動産取引にかかる詐欺・財産占奪の容疑で逮捕された。ガー議員は,6月18日,国会決議により議員の職を罷免された。2012年にも,立候補の際の申告に不誠実な点があったとして女性議員が罷免されており,第13期国会で2例目の罷免となった。罷免された議員は2人とも企業経営者であり,2016年に行われる第14期国会議員選挙の候補者の構成にも影響を与える可能性がある。

汚職撲滅──ベトナム鉄道総公司元幹部に有罪判決

第12回党大会を控え,汚職防止指導委員会は,重大汚職事件の裁判を急ぐ決定を行い,日本のODA絡みの収賄事件を含む一連の事件の審理が進んだ。他方,汚職問題の追及に力を入れてきた新聞の編集長が解雇,立件されるという事件もあり,党・政府は,メディアに対する統制を強化する姿勢を示している。

旧正月を目前にした2月13日,グエン・バー・タイン党中央内政委員長が,骨髄異形成症候群のため,死去した。汚職撲滅に手腕を振るうことを期待されて2012年末に内政委員長に就任した同氏は,2014年5月にこの難病を発症し,同年8月にアメリカに渡って治療を受けていたが,1月9日に帰国し,ダナン病院に入院していた。タイン委員長の死去については,前出の「権力の肖像」ブログが毒殺であるという記事を掲載し,この情報を否定する異例の記者会見が中央幹部健康保護委員会によって開かれた。ダナン市党委書記として同市の発展に貢献したタイン氏であったが,内政委員長としては手腕を示す前の急逝であった。

2月9日,情報・通信省は,ベトナム高齢者協会の機関紙『グォイカオトゥオイ(高齢者)』紙に対して実施した2カ月間の監査の結論として,同紙が多くの事実と異なる情報を掲載し,組織や個人の威信や名誉を損なったなどとして,同紙の電子版の免許取り消し,キム・クォック・ホア編集長の記者章剥奪を決定し,高齢者協会に対しホア編集長の解任を要請した。同月12日,情報・通信省監査局は,『グォイカオトゥオイ』紙に対し,9点の行政違反行為を理由として6億9970万ドンという高額の罰金を科した。ホア編集長は,同日,停職処分を受け,3月12日付で解任された後,5月11日には「民主的権利の濫用により国家の利益および組織・個人の合法的な権利,利益を侵害した」容疑により立件されている。

『グォイカオトゥオイ』紙は,長年,土地収用などにかかる多くの汚職事件を追及してきており,最近では2014年にチャン・ヴァン・チュエン元政府監査院長の資産にまつわる疑惑を明るみに出したことで知られる。汚職問題の報道において「一線を越えた」ジャーナリストが逮捕されるなどの事例は過去にもあったが,同紙およびその編集長に対する処分は,国営メディアであっても汚職の告発が大きなリスクを伴うことを改めて示すことになった。

なお,情報・通信省は,9月25日,2025年までのメディア発展管理計画を公表している。同計画には,印刷媒体や電子媒体の発行主体の数を減らして指導,管理を容易にするなどの方針が示されており,この動向も注目される。

党・政府による汚職摘発には,ベトナム石油ガス経済集団(ペトロベトナム)の前会長が7月に逮捕されたこと以外,あまり新たな展開はなかったが,とくに年末の3カ月間に汚職事件に関する裁判が相次いだ。これは,党書記長が委員長を務める汚職防止指導委員会が,9月28日の会合で,第12回党大会前に8件の主要汚職事件を裁判にかける方針を決定したことによる。8件の主要汚職事件には,ベトナム鉄道総公司元幹部が日本のコンサルタント会社,日本交通技術(JTC)から収賄した事件などが含まれていた。同事件に関して,10月27日,ハノイ市人民裁判所は,ベトナム鉄道総公司のプロジェクト管理機関元幹部6人がJTC社から総額110億ドンの賄賂を受領したと認定し,最高12年の懲役判決を言い渡した。汚職防止指導委員会の12月28日の会合の公表資料によれば,8件の主要汚職事件のうち,6件はこの日までに第1審が結審し,1件は審理中であり,もう1件も年内に審理が始まる予定であるという。

3月,韓国のポスコ社傘下のポスコE&Cベトナムが,2009年から2012年の間に,ベトナムの高速道路建設プロジェクトに関連して,下請け業者に支払う代金を水増しして,100億ウォンに上る裏金づくりを行っていた容疑で,韓国当局の捜査を受けた。ベトナム側でも,JTC事件に次ぐ交通運輸省所轄下の不祥事の可能性が取り沙汰されたが,韓国側の捜査および裁判の報道によれば,同事件では,関与した下請け業者も韓国企業であり,ポスコE&C社元幹部による裏金の使途も個人的なものであったと認定された模様である。

その他の動き──人権問題への批判に配慮

2015年は,ベトナムにとって,ベトナム戦争終結,南部解放40周年,建国70周年であったほか,中国,ソ連との国交樹立65周年,アメリカとの国交正常化20周年でもあり,多くの記念,祝賀行事が開催された(対外関係の項参照)。

南部解放40周年記念式典は,3月10日に中部高原のバンメトート市で始まり,中部,南部の諸都市で順次開催され,最後は4月30日,ホーチミン市で盛大に行われた。4月30日の式典ではズン首相が演説を行い,近年関係が深まるかつての敵国アメリカに関して,「帝国主義アメリカは,新しい植民地制度を一方的に押しつけ,南ベトナムをその軍事拠点とし……我々の同胞,祖国に対し,多くの野蛮な罪を犯し,多くの悲しみ,喪失をもたらした」と厳しい言葉を用いたことが注目された。

9月2日の独立・建国記念日には,過去最多の1万8539人に対し特赦が行われた。ただし,政治犯はこの特赦の対象に含まれていない。

党大会開催前には反体制的な言論,活動の取り締まりが厳しさを増すのが過去の例であるが,2015年は,7月にチョン党書記長がアメリカ公式訪問を行ったことや,環太平洋パートナーシップ(TPP)協定締結交渉が大詰めを迎えたことなどから(経済,対外関係の項参照),ベトナム政府は,人権問題で批判を受けることがないよう,細心の注意を払ったものとみられる。2月には,健康状態が懸念されていたグエン・クアン・ラップら2人のブロガー(ブログ開設者)に対し,捜査を継続しつつも拘禁を解き,身柄を解放した。9月には,懲役10年の刑で服役していたブロガーのタ・フォン・タンを,刑期を6年残して釈放し,直ちにアメリカに移送した。このような形で国外追放となった政治犯は2014年の2人に続き3人目である。

2月にはまた,反中国活動家のレ・ティ・フオン・アインら3人に対し,民主的権利濫用の罪で懲役12~18カ月の判決が下された。ただし,3人は2014年5月12日に逮捕されており,懲役12カ月の刑を受けたアインは5月12日には満期釈放されている。11月の習近平国家主席来訪の際には,ハノイとホーチミンの中国大使館,領事館前で行われた反中デモの参加者が当局によって強制排除され,殴られて流血したデモ参加者の写真がインターネット上に掲載された。他方,習国家主席到着以前に行われた小規模なデモなどは当局によって黙認されたという。

経済

内需に支えられた本格的回復

2015年のベトナム経済は,中国に端を発する世界経済の混乱の影響を最小限に抑え,実質GDP成長率は前年の実績5.98%,目標値6.2%をともに大きく上回る6.68%に達した。2012年に下げ止まった後,緩やかな上昇が続いていた成長率が2015年に大きく上向いたことで,本格的な回復を裏付けることとなった。

成長に大きく貢献したのは内需である。支出項目別の成長率寄与度は,最終消費が10.66%,総固定資産形成が4.64%,財・サービス貿易収支が-8.62%であった。国内消費と投資の伸びが輸入を促進したことがわかる。

産業別の成長率をみると,農林水産業は2.41%と前年の3.44%を下回った。干ばつによる不作や国際市場における需要減退と価格下落が影響した。工業・建設は9.64%と前年の6.42%を大きく上回り,成長の動力となった。とくに製造業は10.60%,建設も10.82%と高水準であった。サービスは6.33%で,前年の6.16%をわずかに超えた。堅調な内需に牽引されて卸売・小売が9.06%に達した。

対外貿易は,統計総局の速報によると,輸出1624億ドル(前年比8.1%増),輸入1656億ドル(同12%増)であった。輸出の伸び率がリーマン・ショックの影響を受けた2009年以来の低水準となったことで貿易収支は32億ドルの赤字となり,過去3年間続いていた貿易黒字は途絶えた。

輸出は工業製品と一次産品で大きく明暗が分かれた。工業製品,とりわけ電話・部品(前年比29.9%増),電子製品・コンピューターおよび部品(同38.2%増),繊維・縫製(同8.2%増)の輸出は好調で,主な担い手である外資企業の輸出総額に占める比率は70.9%に達した。これに対し,一次産品は国際市場における価格下落や競争激化などの影響を受け,コーヒー(数量ベースで前年比24.3%減,金額ベースで前年比27.8%減),原油(同0.6%減,同47.3%減),石炭(同76.1%減,同66.7%減)など軒並み大幅減となった。コメとゴムは数量ベースではそれぞれ7.7%,7.2%の増加であったが,価格下落のため金額ベースではそれぞれ1.1%,13.6%の減少となった。

外国直接投資は,12月15日までの登録資本金額総額が227億6000万ドル(前年同期比12.5%増)となり,このうち新規投資が155億8000万ドル,拡張投資が71億8000万ドルであった。近年,輸出の牽引車となっているサムスン電子によるバクニン省におけるディスプレイ工場への拡張投資(30億ドル)およびホーチミン市の家電複合施設への拡張投資(6億ドル)が拡張投資総額の半分以上を占めたほか,小規模ながらベトナムのTPPへの参加(後述)を見据えた繊維・縫製業への投資も目立った。

マクロ経済安定を維持するも,財政は依然として深刻

2015年の高成長の基盤となったのは,マクロ経済の安定である。消費者物価指数(CPI)は前年末比0.6%上昇と,過去14年で最低の水準となった。背景としては,世界市況の影響による石油価格の下落(財政省価格管理局の報告によれば,年間で24.77%減少),世界的な食糧供給の増加と輸出市場における競争激化によるコメの輸出価格低下が国内に波及したことによる食糧価格の下落という2つの要素が大きい。

低インフレを背景に,国家銀行は緩和的金融政策を維持した。前年末に引き下げられた政策金利は維持され,金融機関の自己資本算出にあたっての不動産融資に対するリスク・ウェイトが引き下げられたことなどにより,12月21日までの与信の伸びは前年末比17.17%と2011年以来最高の水準となり,内需主導の成長に貢献した。

アメリカの利上げ観測と年初からの貿易赤字,さらに8月の人民元切り下げによって通貨ドンに対する下落圧力が強まったことを受け,国家銀行は為替レートの機動的調整を行った。ドンの対ドルレートは1月と5月にそれぞれ1%切り下げられたが,人民元切り下げ後の8月12日には許容変動幅が1%から2%へ,8月19日には3%へと拡大されるとともに,対ドルレートもさらに1%切り下げられた。ドル建て預金金利の数度にわたる引き下げ(12月には0%へ)などドル化阻止策も相まって,国際金融市場の変動にもかかわらず為替投機などの混乱は生じず,年末の対ドルレート指数は前年末比5.34%のドン安となった。年末,国家銀行は自らが定めた基本レートを中期的に維持する従来の方式に代わり,2016年からは市場の趨勢に合わせて毎日中央レートを発表するという,より柔軟な為替管理メカニズムへ移行すると発表した。

他方,悪化が続いていた財政状況はいっそう厳しいものとなった。第9回国会では,2013年の国家予算決算案が承認されたが,その内容は財政赤字の対GDP比率を2013年の第6回国会で予算案として承認された5.3%を大きく上回る6.6%へ修正するというものであった。2015年についても厳しい状況に変わりはなく,ディン・ティエン・ズン財政相は第10回国会において,2015年の公的債務の対GDP比率は61.3%に達すると予想され,2015年までに財政赤字の対GDP比率を4.5%とするという5カ年計画の目標は達成できない見込みであると報告した。2009年頃からの経済停滞を受けての税の減免措置や原油価格の下落に伴う収入減,開発投資の拡大により公的債務は年々上昇してきた。さらに,ベトナムの中所得国入りによって,海外からの低利融資が減少する一方で国内借り入れの比重が増加しており,国内借入の期間の短さと利率の高さが財政負担を増大させている。公的債務の対GDP比率が5カ年計画で上限と定められた65%に近づくなか,各年の赤字縮減と負担軽減のための債務の再編が並行して行われている。

国際経済統合の深化と対応──企業部門強化のための経営環境の改善

2015年には,ベトナムが関与する数々の経済統合枠組みが合意や実施に至った。韓国との自由貿易協定(FTA)が12月20日付で発効したほか,ロシア,ベラルーシ,カザフスタン,アルメニア,キルギスから構成されるユーラシア経済連合とのFTAが5月29日に,欧州連合(EU)とのFTAが12月2日に署名された。ASEAN経済共同体(AEC)は12月31日付で成立し,ベトナムは一部の品目について期限が2018年まで延期されているものの,域内からの輸入品に対する関税引き下げが進みつつある。しかし,国内でもっとも関心を集めたのは,10月5日に大筋合意に至ったTPPであろう。

TPPは日米を含む12カ国を包摂し,包括的かつ高度な財・サービス・投資の自由化を図るとともに,企業のサプライチェーンの発展を促進する21世紀型FTAといわれる。ベトナムでは,アメリカへの繊維・縫製品や靴などの輸出拡大,直接投資などを通じた多国籍企業のサプライチェーンへの参加促進といった効果への期待が高まっている。ただし,中国など非TPP加盟国からの輸入生地を用いてベトナム国内で縫製のみを行うという,現状において主流の生産方式ではTPPの原産地規則を満たせないことから,すでに繊維部門への外国投資の流入が始まっている。輸入や外国企業の参入の拡大による国内企業への影響も懸念される。とくに一部のTPP加盟国が高い競争力をもつ畜産業などでは,安価な輸入品の流入が国内生産者にとって脅威となる可能性が指摘されている。

このように国際経済統合の深化に伴ってベトナム企業の競争力の強化が喫緊の課題として浮上しており,政府は経営環境の改善によって企業の活性化を図ろうとしている。7月1日には新企業法・投資法が発効し,施行細則も定められた。投資禁止分野や条件付き投資分野が削減されたこと,企業登録などの行政手続きの簡素化と迅速化が図られたことなどが主要なポイントである。3月には,国家競争力向上のための経営環境の改善についての政府決議19号が採択された。類似の決議は2014年にも出されたが,国際的なビジネス環境指標において2015年末までの先行ASEAN6カ国の平均水準への到達など,より具体的かつ高度な目標が掲げられた。財政省が行政手続きの簡素化にかかわる具体的施策を出すなど,省庁レベルの地道な対策も進みつつある。

経済の回復に経営環境改善の取り組みが加わったことで,2015年に新たに設立された企業数は9万4754社(前年比26.6%増),登録資本金額は601兆5000億ドン(同39.1%増)という記録的な水準となり,既存企業による拡張投資も851兆ドンに及んだ。ただし,解体・活動終了した企業は9467社(同0.4%減),一時的に活動を休止した企業は7万1391社(同22.4%増)と依然として高水準にある。

政府は,国際経済統合の影響が懸念される農業についても企業の参入を促すことによる競争力の強化を図ろうとしており,2015年にはヴィングループ集団株式会社などの大手企業が相次いで農業への参入を開始,ないし発表した。

国有企業改革──前進するも課題山積

大幅な遅れが指摘されていた国有企業改革は,2015年までの目標達成に向けて年後半から加速した。年末の企業刷新・発展指導委員会の報告書は,2015年12月25日までの再編済み企業は244社,うち株式会社への改組(株式化)案が承認された企業は222社に及んだこと,2011~2015年の5年間の再編済み企業数は558社,うち株式化を行った企業は478社で,5年間の株式化目標514社に対する達成率は93%であったことを発表した。ただし,上述の数字は株式化案が承認済みである企業を対象としているようであり,株式化案の承認から株式化の完了までには長い時間を要する事例が多いことをふまえると,実績が過大評価されている可能性が高い。また,2015年に株式化や新規株式公開(IPO)を行った企業は小規模なものが多く,大規模国有企業では依然として遅れが目立つ。前年までと比べ2015年に前進がみられたことは事実のようだが,最終的な評価は正式な株式化件数の発表を待ってから行う必要があろう。

また,株式化件数では進展があったとはいえ,国有企業の経営やガバナンスを改善する効果はいまだ限られている。国有企業の経営改善には外部投資家の経営への参加が鍵となるが,そもそも外部投資家への株式の売却が進んでいない。上述の報告書によれば,12月22日までにIPOを行った企業は128社あったが,売り出し株式総数に対する売却株式数の比率は36.25%にとどまった。建設大手のベトナム機械据付総公司(LILAMA)の IPOでは機関投資家からの応募はなく,売り出し株式数の3%を112の個人投資家に売却したのみであった。長期的に株式を保有し事業上の連携を行う「戦略投資家」の決定はさらに難航する事例が続出している。2015年に株式化された最大の国有企業であるベトナム空港総公司(ACV)に対しては,フランスと日本の企業を含む複数の企業が戦略投資家候補として名乗りを上げたが,このようなケースはむしろ例外である。

背景には,株式化後も国家が高い所有比率を維持し,戦略投資家を含む外部投資家には株式のごく一部しか売却されないケースが多いため,外部投資家にとっては経営への実質的な関与が望めずメリットが小さいという問題がある。株式化目標の達成を優先すべく,企業関係者の抵抗を抑えられる方式が選ばれた結果だとみられるが,実効性という観点からは見直しが必要であろう。

政府も対策の必要性については認識しており,国有企業への国の出資や関与を引き下げ,国有・民間を問わず外国企業による出資を拡大するために動きはじめている。公開会社における外国所有比率が49%までに制限されていることが,外国企業によるベトナム企業への投資の拡大を阻害しているという問題がかねてから指摘されていたが,6月にはこの上限を撤廃する政府議定60号が公布された。10月には首相が,国家資本の国有企業への投資と管理を担う国家資本投資経営総公司(SCIC)について,バオベト集団など9社に対し長期的投資を行う一方,ベトナム乳業株式会社(VINAMILK)やIT大手のFPT株式会社など10社からは完全に撤退する方針を示す公文書1787号を公布した。SCICの撤退が対象企業の自由かつ柔軟な経営を可能にすることが期待される。

10月には,国有企業の透明性やアカウンタビリティを高め,経営の効率性を向上させるための政策が相次いで発表された。財務監督についての政府議定87号では,国有企業の財務監督,効率性評価の基準,評価結果に基づく企業の分類の仕組みとともに,定期的な財務情報の公開についての規定がなされた。国有企業の投資管理についての政府議定91号は,金融,保険,証券,不動産への投資を制限し,厳格な管理を行うことを定めた。

金融機関の再編と不良債権処理に部分的進展

2015年は,2012年に採択された2011~2015年の金融機関再編プログラムの最終年である。かねてから進捗の遅れが指摘されていた金融セクター改革だが,プログラムに定められた目標達成に向けて,以下の2点で進展があった。

第1は,銀行の再編である。従来,銀行の再編は,国家銀行の主導下で脆弱な銀行をほかの銀行と合併させる方式で行われてきたが,2015年には,国家銀行がガバナンスに問題がある銀行の全株式を0ドンで強制的に取得し1人有限会社へ転換(国有化)するとともに,元国有商業銀行(現在は株式商業銀行)の幹部を経営陣に就任させて経営とガバナンスの改善を行うという手法が採用された。対象となったのは,ベトナム建設銀行(VNCB),大洋銀行(OceanBank),およびグローバル石油銀行(GP Bank)で,いずれも再編と前後して幹部や関係者が逮捕された。VNCBにはベトナム外商銀行(Vietcombank)の幹部が,OceanBankとGP Bankにはベトナム工商銀行(Vietinbank)の幹部がそれぞれ派遣され,経営の改善にあたることとなった。

従来型の銀行間の合併も相次いだ。メコン住宅銀行がベトナム投資開発銀行(BIDV)へ,ペトロリメクス石油銀行(PG Bank)がVietinbankへ,メコン開発銀行がベトナム海事銀行(Maritime Bank)へ,南方銀行(Southern Bank)がサイゴン商信銀行(Sacombank)へ,それぞれ吸収合併された。過去数年間の金融セクター再編の結果,2011年初時点で政策金融機関や海外銀行支店などを除き約130あった金融機関の数は,2015年までに脆弱な銀行を中心に19減少した。

第2は,不良債権の処理である。上述の再編プログラムには,2015年末までに不良債権比率を3%未満に引き下げるという目標が定められていた。しかし2015年初めには,2013年に公布されつつも数度にわたって実施が延期されていた債権評価・分類の厳格化にかかわる国家銀行通知02号の発効により,不良債権比率が上昇することが見込まれており,不良債権の買い取りの加速が急務となっていた。

このため政府は3月,不良債権の処理を担う金融機関資産管理会社(VAMC)の機能を強化する議定34号を公布した。(1)法定資本金の5000億ドンから2兆ドンへの引き上げ,(2)債券を発行して資金を調達し,市場価格での不良債権の買い取りを行えるようにしたこと(従来は,特別債を発行し不良債権と引き換えに金融機関に帳簿価格で引き取らせる方式),(3)財務状態が悪い金融機関などに対しては特別債の最長償還期間を5年から10年に延長したこと,(4)不良債権の処理にあたり既存規定に定められたオークションでの売却が行えなかった場合,再度のオークションの実施あるいは買い手への直接の売却も可能としたことなどが主なポイントである。ただし(2)については,2016年以降に実施に移される予定であり,2015年は特別債の発行による従来方式での買い取りが中心であった。

VAMCによれば,2015年の不良債権の買い取り額は110兆ドン以上,2013年の活動開始時からの特別債発行累計額は243兆ドンに達した。金融システム全体に占める不良債権比率は11月末までに2.72%まで引き下げられ,年末までに3%未満に引き下げるという目標は達成されたと国家銀行は発表した。

しかし,不良債権を金融機関からVAMCに移管しただけでは,問題の本質的な解決には至らない。肝心の債権処理は難航しており,VAMCの発表によれば,債権の売却や担保処分による回収額は2013年から2015年末までの累計で22兆ドン,清算済みの特別債は11兆ドンにとどまる。担保の大半を占める不動産に対する権利や押収手続きにかかわる法的枠組みが未整備であることが根底にあるといわれており,これらは議定34号においても未解決のままである。特別債の償還期限までに処理が行われなかった不良債権は金融機関に売り戻されることになっており,議定34号によって条件付きで期限が延長されたとはいえ,残された期間は長くない。債権処理を促進するため抜本的な対策が必要だといえよう。

対外関係

中国との関係──国交樹立65周年で友好関係演出

ベトナムと中国は,両国の最高指導者の相互訪問によって国交樹立65周年を祝った。チョン党書記長は,4月,自身3年半ぶりとなる4日間の中国公式訪問を行った。2014年に両国間の緊張を高めた中国による石油掘削装置(オイルリグ)設置問題の後,初めてのベトナム最高指導者の訪中であり,また,この後に控えているチョン党書記長のアメリカ訪問をも視野に入れて,ベトナム,中国両国首脳にとって,両国間の良好な関係をアピールする機会となった。今回の訪中にはまた,ディン・テ・フィン党中央宣教委員長,グエン・ティ・キム・ガン国会副議長,フン・クアン・タイン国防相,チャン・ダイ・クアン公安相の4人の政治局員が同行しており,党書記長の外遊に同行する政治局員の数としては過去最多であったという。

習国家主席との会談後に出された共同コミュニケは,両国が「善隣友好,全面協力,長期安定,未来志向」という方針や,「よき隣国,よき友人,よき同志,よきパートナー」の精神に従って,両国関係をさらに促進していくことを再確認した。他方,海洋関連の問題については,2011年の「海洋上の問題解決のための基本原則」を遵守し,友好的な交渉を通じて双方にとって受け入れ可能な基本的,長期的解決を目指すとともに,共同開発など,相互の立場や政策に影響しない過渡的な解決を積極的に研究すると述べられている。これらの文言は,南シナ海に関し,両国の立場の違いが存在することを間接的に認めたものであるとも解される。

チョン書記長の訪中後,6月にはファム・ビン・ミン副首相兼外務相が訪中,7月には中国の張高麗副首相が来訪,9月3日に北京で開催された抗日戦勝70周年記念式典にはサン国家主席が参加するなど,ハイレベルの交流が続いた。

11月には習国家主席が2日間の日程で来訪した。中国の最高指導者の来訪は,2006年に当時の胡錦濤国家主席が来訪して以来9年ぶりであった。習国家主席は,ハノイ滞在中,チョン書記長をはじめとするベトナム首脳陣と相次いで会談し,ベトナム国会で演説を行った。両国首脳はこれらの会談や演説を通じて両党間,両国間の友好関係を強調し,両国間の経済関係を発展させることや南シナ海の安定を保つことを確認した。また,中国がベトナムに対し,学校,病院などのインフラ建設のために今後5年間で10億人民元を援助すること,ハノイの都市鉄道プロジェクトに追加融資を行うことも表明された。

このような指導者レベルの密接な交流の一方,国内では,2014年中から明らかになった中国によるチュオンサ(スプラトリー)諸島における大規模埋め立て,滑走路などの施設建設や,繰り返される中国船によるベトナム漁船への攻撃などが,国民の反発や警戒心を引き続き喚起してきた。また,中国からの援助により,中国企業が請け負って進められているハノイ市都市鉄道システム建設事業では,建設現場での事故が相次ぎ,市民の不安が高まっている。6月にはディン・ラ・タン交通・運輸相が,鉄道車両13編成を中国から購入する計画について,多くの人が懸念を示し,反対していることを認め,自分自身も問題を認識しているが,契約があるので仕方がないとコメントしている。11月には国会でチュオン・チョン・ギア議員が,有権者は,とくに両国間に領土に関する係争があるときに,中国から援助や融資を受けたりしない方がよいと考えていると述べ,中国からの援助についての首相の考えをただした。

アメリカとの関係──チョン党書記長,歴史的なアメリカ訪問

2015年はベトナムとアメリカの国交正常化20周年であり,また,南シナ海における緊張の継続やTPP協議の進展という諸情勢にもあずかって,ベトナム共産党書記長の初めてのアメリカ公式訪問が実現するなど,両国関係の緊密化が進んだ。

まず,3月にはクアン党政治局員・公安相が,ベトナムの公安相として初めてアメリカを公式訪問した。クアン公安相は,アメリカ連邦捜査局(FBI)長官や国土安全保障相らと会談し,公安分野における協力推進について話し合うとともに,ジョン・マケイン上院議員とも会談してTPP交渉におけるベトナムへの支援を要請するなど,幅広い外交活動を行った。5月末にはカーター国防長官が来訪し,ベトナムの海上治安維持能力の向上を目的として1800万ドルを供与することを正式に発表し,また,タイン国防相とともに両国間の国防に関する共同ビジョン声明に調印した。

7月,チョン党書記長は,5日間にわたってアメリカを公式訪問し,ホワイトハウスでオバマ大統領と会談した。国家元首ではない共産党書記長をアメリカ大統領がホワイトハウス執務室で迎えたことは,アメリカ側のベトナム重視の姿勢を示したものといえる。会談には,トン・ティ・フォン国会副議長とレ・タイン・ハイ・ホーチミン市党委書記の2人の党政治局員も同席した。会談で両首脳は,この訪米の歴史的意義を確認し,今後の両国関係のさらなる発展への期待を表明した。会談後,両首脳は,TPPの早期締結への意欲や南シナ海情勢への懸念などに触れた共同ビジョン声明を出した。

チョン党書記長は,20年前にはこのような会談が実現するとは誰も考えられなかったと述べ,両国はかつての敵同士から友人になり,包括的パートナーになったと強調した。実際,公安,国防部門におけるアメリカとの協力関係の進展に加え,イデオロギー部門出身で,中国寄りの保守派とみられてきたチョン党書記長のアメリカ公式訪問は,ベトナム共産党の世界観が根本的な部分で変化してきていることを示唆するものとして注目される。

11月17日,オバマ大統領のAPEC首脳会議出席のためのマニラ入りに合わせ,アメリカ政府は,フィリピン,ベトナム,インドネシア,マレーシアの4カ国に対し,南シナ海上の脅威に対抗して海洋安全保障能力を高めるため,2015~2016年の2年間で総額2億5900万ドルを供与すると発表した。このうちベトナムはフィリピンに次ぐ4000万ドルの供与を受けることとなっている。

チョン党書記長は,オバマ大統領との会談で大統領のベトナム訪問を招請しており,11月に大統領が来訪する可能性も浮上していたが,これは実現しなかった。

その他の主な外交活動・出来事

チョン党書記長は,9月には日本を訪問して安倍首相と会談した。ベトナム共産党書記長の訪日は,前任のノン・ドゥク・マイン書記長の訪日以来,6年ぶりであった。会談後に発表された共同ビジョン声明では,両国間の「広範な戦略的パートナーシップ」関係が包括的かつ実質的に発展していることを高く評価し,両国関係の発展の方向性として,安全保障・防衛分野などにおける協力の強化を謳っている。声明はまた,南シナ海における大規模な埋め立てや拠点構築を含む最近の進展に深刻な懸念を表明している。会談では,日本政府がベトナムに対する中古船舶の追加供与を決定したことも伝えられた。

ロシアのメドベージェフ首相は,4月,チョン党書記長の中国訪問の直前に,3日間のベトナム公式訪問を行った。ズン首相との会談では,石油分野での協力強化や,ベトナムにおける原子力発電所プロジェクトの推進などについて話し合われたほか,ベトナムとユーラシア経済連合の間で6月までにFTAを締結することが合意された(同FTAを含むFTAの締結,発効などについては経済の項参照)。

近隣諸国との関係では,ベトナムは2015年,マレーシア,フィリピンとそれぞれ戦略的パートナーシップを樹立した。他方,カンボジアとの間では,国境問題をめぐる確執が再燃した。まず,6月28日,ロンアン省の両国国境地帯において,約250人のカンボジア人とベトナム側国境警備隊および住民との間の衝突という事態が発生した。両国政府は,7月7日,合同国境委員会の緊急会合を開催したが,7月19日には再び約1800人のカンボジア人が国境付近に集合し,その一部が国境を越えようとして,両国の国境警備隊などによって阻止された。さらに10月25日には,フランス訪問中のカンボジアのフン・セン首相が,両国の国境に位置するダクダム地域に関して,ベトナム側が非公式に分割提案をもちかけたと発言したという情報が流れ,ベトナム外務省報道官が,記者の質問に答える形で,同地域に対するベトナムの完全な主権を主張した。

2016年の課題

2016年は,1月に第12回党大会が開催され,新しい党指導部の顔ぶれと今後5年間の党・国家運営の方向性が固まる。5月には第14期国会議員選挙が開催され,7月に召集される第14期第1回国会では主要国家幹部の人選が確定する。まずは党大会直前までもつれ込むこととなった党指導部人事の行方が注目されるが,より重要なのは,選ばれた新指導部がどのように党・国家を運営していくのかである。共産党にとっては体制の安定が常に最重要課題であるが,昨今の党内知識人らの動きには,従来のような漸進的な改革では時代の変化に対応できないという焦燥感が表れている。新指導部にとっては,政治,経済,外交のすべての面において,継続性と変化のバランスをどのようにとるかが体制安定のカギとなろう。その点において,2015年に党書記長がアメリカ訪問を行い,両国関係が新たな段階に入ったことは重要である。新指導部はこのような前指導部の成果を引き継ぎ,発展させていくことが期待される。

2015年には,ベトナムが2008年頃から苦慮してきたマクロ経済の安定と成長回復の両立がようやく実現したが,これは世界的な一次産品価格の急落下で緩和的な金融政策を維持できたことによって可能になった部分も大きい。成長回復がインフレ再燃につながらないか注視していく必要があろう。国際経済統合の深化と実施段階への移行に伴って,ベトナムがこれまで優位をもつとされてきた繊維・縫製業や農業にすら淘汰と再編の可能性が浮上している現在,改革を先送りしている余裕はない。経済回復とマクロ経済の安定が実現された現在は,長期的な課題に腰を据えて取り組む好機であり,国有企業,金融セクター,公共投資を中心に経済構造再編に向けた抜本的な取り組みが求められる。

(石塚:新領域研究センター)

(藤田:地域研究センター)

重要日誌 ベトナム 2015年
  1月
1日 労働者の最低賃金,最大で14.8%引き上げ。
4日 ハノイ市紅河に架かるニャッタン橋開通。
5日 第11期党中央委員会第10回総会開幕(~12日)。
6日 国会テレビチャンネル開設。
7日 国家銀行,ドンの対ドルレートを1%切り下げ。
7日 チャウ・ティ・トゥ・ガー国会議員,詐欺容疑で逮捕。
11日 飲食業の外資系企業への独資解禁。
13日 公安省と農業・農村開発省,漁業取締部隊用の武器の装備・管理・使用に関する合同通知1号公布(2月26日発効)。
15日 中国との国交樹立65周年(1月18日)記念祝賀パーティ,ハノイと北京で開催。
30日 ロシアとの外交関係樹立65周年記念集会,ハノイで開催。
  2月
2日 共産党創立85周年(2月3日)記念式典,ハノイで開催。
10日 ブロガーのグエン・クアン・ラップ,保釈。
11日 チョン書記長,中国の習近平国家主席と電話会談,相互に年内の訪問を招請。
11日 ブロガーのホン・レ・ト,保釈。
12日 情報・通信省,『グォイカオトゥオイ(高齢者)』紙に約7億ドンの罰金。同紙編集長キム・クォック・ホアに停職処分(3月12日解任)。
12日 反中国活動家のレ・ティ・フオン・アインら3人に民主的権利濫用の罪で懲役12~18カ月の判決。
13日 ズン首相,安倍首相と電話会談。幅広い分野での協力推進で一致。
13日 グエン・バー・タイン党中央内政委員長,骨髄異形成症候群のため,死去。
  3月
3日 ラオスとの貿易協定に署名(4月6日批准)。
4日 ホーチミン市の地下鉄1号線の建設にかかる最後の土地収用案件で合意達成。
5日 国家銀行,ベトナム建設銀行の全株式の0ドンでの取得を決定。
11日 アメリカ政府,ベトナム政府に対し,カムラン港をロシア軍機に使用させないよう要請とロイター通信報道。
12日 工商省,電気料金の平均7.5%の引き上げを決定。3月16日付で発効。
12日 政府,2015~2016年のビジネス環境と国家競争力の改善について19号決議公布。
16日 チャン・ダイ・クアン公安相,アメリカ訪問(~20日)。
17日 ズン首相,オーストラリア,ニュージーランド歴訪(~20日)。アボット・オーストラリア首相との共同声明で南シナ海における関係各国の自制を求める(18日)。
20日 ハノイ市人民委員会主席,市内の約6700本の街路樹伐採計画の中止を指示。
23日 サン国家主席,ラオス訪問(~25日)。
25日 ハティン省ヴンアン経済区で工事現場の足場崩落,14人が死亡。
26日 ホーチミン市の台湾系企業,宝元社の労働者約9万人が改正社会保険法に抗議してストライキ(~4月1日)。
27日 ダナン港当局,ティエンサ港改良事業に日本のODA資金は使わない方針を表明。
28日 ベトナム日本友好協会,新会長にディン・ラ・タン交通・運輸相を選出(任期2015~2020年)。
28日 列国議会同盟(IPU)の第132回総会,ハノイで開催(~4月1日)。
31日 政府,金融機関資産管理会社(VAMC)の法定資本金の引き上げなどを定めた議定34号公布。
  4月
1日 低賃金公務員の給与8%引き上げ(1月1日に遡って施行)。
1日 ズン首相,改正社会保険法に関する会議開催,国会に同法の再改正を求める方針決定。
5日 ロシアのメドベージェフ首相,来訪(~7日)。
6日 メコン川に架かる「つばさ橋」開通。バンコク,プノンペンとホーチミン市が陸路で結ばれる。
7日 チョン書記長,中国公式訪問(~10日)。習近平国家主席と会談。
9日 交通・運輸省,韓国ポスコ社系企業の不正資金問題で調査開始を決定。
13日 世銀,ベトナムの2015年の経済成長率の予測を5.5%から6%へ上方修正。
17日 政治局決議39号公布。7年間で公務員の1割削減を指示。
26日 ズン首相,クアラルンプールで開催のASEAN首脳会議に出席。
30日 ホーチミン市で南部解放・国家統一40周年記念式典開催。
  5月
4日 第11期党中央委員会第11回総会開催(~7日)。
5日 韓国との自由貿易協定(FTA)に署名。
6日 国家銀行,大洋銀行(OceanBank)の全株式の0ドンでの取得を決定。
7日 国家銀行,ドンの対ドルレートを1%切り下げ。
7日 サン国家主席,ロシア,チェコ,アゼルバイジャン歴訪(~15日)。モスクワで対独戦勝70周年式典に参加(9日)。
7日 アメリカの戦略国際問題研究所(CSIS),南シナ海のチュオンサ(スプラトリー)諸島の2カ所でベトナムが埋め立てを行ったと指摘。
15日 第2回ベトナム・中国国境国防友好協力交流会,ラオカイ省および中国雲南省で開催(~17日)。両国国防相が出席。
16日 外務省のレ・ハイ・ビン報道官,中国海南省政府による南シナ海での漁船操業禁止(5月16日~8月1日)通告に異議表明。
18日 ホー・チ・ミン生誕125周年(5月19日)記念式典,ハノイで開催。
20日 第13期第9回国会開幕(~6月26日)。
22日 国連の潘基文事務総長,来訪(~23日)。サン国家主席らと対談。
29日 ズン首相,カザフスタン,アルジェリア,ポルトガル,ブルガリア歴訪(~6月6日)。
29日 ユーラシア経済連合とのFTAに署名。
  6月
1日 来訪中のアメリカのカーター国防長官,ベトナムに巡視船購入費として1800万ドルを供与することを正式に表明。
9日 カンボジア訪問中のレ・ホン・アイン党政治局員,フン・セン首相と会談。
15日 ベトナム漁業協会,中国船によるベトナム漁船攻撃に抗議。
25日 中国海洋石油総公司,石油掘削装置(オイルリグ)を再びベトナム沖に設置。
25日 外務省,中国船が拿捕したベトナム漁船の解放を求める。
26日 政府,公開会社の外国所有比率の上限の撤廃などを定めた議定60号公布。
27日 ラオスとの国境貿易協定に署名(10月12日批准)。
27日 ブロガーで法律家のレ・クォック・クアン釈放。
28日 カンボジア人約250人がロンアン省に侵入,ベトナム国境警備隊および住民と衝突。
  7月
1日 改正企業法,改正投資法など施行。
2日 在ベトナム・アメリカ大使館,アメリカ独立239周年(7月4日)とベトナム・アメリカ国交正常化20周年(7月12日)を記念する式典開催。クリントン元大統領出席。
4日 ズン首相,東京で開催の日メコン首脳会議に出席。
6日 チョン書記長,アメリカ公式訪問(~10日)。オバマ大統領と会談(7日)。
7日 国家銀行,グローバル石油銀行(GP Bank)の全株式の0ドンでの取得を決定。
7日 ベトナム・カンボジア合同国境委員会,緊急会合を開催(~9日)。早期の国境画定などで合意。
17日 国家銀行ロンアン支店元幹部2人およびGP Bank元幹部2人,経済管理に関する規程違反の容疑で逮捕。
19日 ロンアン省のカンボジア国境で,カンボジア人約1800人が集合,その一部が国境を越えようとして両国国境警備隊に阻止される。
21日 ベトナム石油ガス経済集団(ペトロベトナム)のグエン・スアン・ソン前会長,経済管理に関する規定違反の容疑で逮捕。
25日 タイン国防相,肺の検査と治療のため訪れていたフランスから帰国。
29日 イギリスのキャメロン首相,来訪(~30日)。
  8月
4日 EUとのFTAが大筋合意。
7日 ズン首相,マレーシア,シンガポール歴訪(~9日)。マレーシアとの関係の戦略的パートナーシップへの格上げで合意(7日)。
10日 中国との第5回国防戦略対話をハノイで開催。
12日 国家銀行,人民元の切り下げを受け,ドンの対ドルレートの許容変動幅を1%から2%に拡大。
19日 国家銀行,ドンの対ドルレートを1%切り下げ,許容変動幅を3%に拡大。
24日 外務省報道官,台湾によるチュオンサ諸島のバービン(大平)島における灯台建設に抗議。
28日 建国70周年(9月2日)を記念して,過去最多の1万8539人に特赦決定。
30日 ベネズエラのマドゥロ大統領,来訪(~31日)。
  9月
2日 建国70周年記念式典,ハノイで開催。
2日 フン国会議長,ニューヨークで開催の第4回世界国会議長会議に出席。
3日 サン国家主席,北京で開催された抗日戦勝70周年記念式典に参加。
4日 政府監査院,国防省傘下の全企業の監査の実施を決定。
15日 チョン書記長,訪日(~18日)。
15日 第12回党大会文書草案公開。
20日 ブロガーのタ・フォン・タン,刑期満了前に釈放,アメリカに到着。
23日 前クアンナム省党委書記の息子レ・フォック・ホアイ・バオ,全国最年少の30歳でクアンナム省計画投資局長に就任。
24日 サン国家主席,アメリカ,キューバ歴訪(~30日)。ニューヨークで国連総会に出席(24~28日)。
25日 情報・通信省,2025年までのメディア発展管理計画公表。
28日 汚職防止指導委員会,第12回党大会前に8つの主要な汚職事件の裁判を行う方針決定。
30日 外務省傘下の新聞記者,ハ・フイ・ホアン,中国の諜報員に情報を提供した罪により懲役6年宣告。
  10月
5日 第11期党中央委員会第12回総会開幕(~11日)。
5日 TPP交渉が大筋合意。
5日 世銀,ベトナムの2015年の経済成長率の予測を6%から6.2%へ上方修正。
8日 ズン首相,国家資本投資経営総公司(SCIC)の長期的投資および撤退対象について公文1787号公布。FPT株式会社など10社から国家資本を完全に撤収する方針。
13日 外務省報道官,中国によるチュオンサ諸島の岩礁上の灯台建設に抗議。
18日 カンボジアとの初の国防対話開催(~20日)。
19日 首相,所得以外の基準を含む多面的な貧困指標を定めた決定59号公布。
19日 カンボジアのシハモニ国王,来訪(~22日)。
20日 第13期第10回国会開幕(~11月27日)。
21日 国連経済社会理事会の理事国に選出(任期2016~2018年)。
27日 日本のODA事業をめぐる汚職事件で,元ベトナム鉄道総公司幹部6人に最高12年の懲役判決。
29日 常設仲裁裁判所,南シナ海の領有権に関するフィリピン政府の申し立てに関する同裁判所の管轄権の所在を認定。
  11月
5日 中国の習国家主席,来訪(~6日)。チョン書記長,サン国家主席,ズン首相らと会談。
5日 アグリバンク第6支店における巨額の詐欺,資産横領事件で11人に終身刑を含む懲役判決。
14日 トンキン湾でベトナム漁船5隻が数百隻の中国船に襲撃され,漁網を破られる。
17日 フィリピンとの戦略的パートナーシップ協定締結。
17日 アメリカ政府,ベトナムを含む東南アジアの4カ国に対し,海洋安全保障のため,2015~2016年の2年間で総額2億5900万ドルを供与すると発表。
21日 ズン首相,クアラルンプールで開催のASEAN首脳会議に出席(~22日)。
24日 サン国家主席,ドイツ訪問(~26日)。
30日 ズン首相,フランス,ベルギー歴訪(~12月2日)。国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)に出席(11月30日~12月1日)。
  12月
1日 外務省報道官,チュオンサ諸島海域でベトナム漁船が襲撃され,漁民1人が死亡した事件を非難。
2日 EUとのFTAに署名。
5日 ハノイ=ハイフォン高速道路,開通。
10日 アグリバンク傘下の第2ファイナンスリース会社元社長に18年の懲役刑宣告。
10日 ベトナム空港総公司(ACV),ホーチミン証券取引所で新規株式公開(IPO)を実施。
13日 外務省報道官,台湾の閣僚によるチュオンサ諸島のバービン島上陸に抗議。
14日 党中央委員会第13回総会開幕(~21日)。
16日 法律家・ブロガーのグエン・ヴァン・ダイ,反国家宣伝罪の容疑で逮捕。
17日 国家銀行,金融機関におけるドル建て預金金利を0%とする決定2589号公布。
20日 ベトナム・韓国FTA発効。
21日 アグリバンク第7支店における汚職事件で9人に終身刑を含む懲役判決。
23日 フン国会議長,中国公式訪問(~27日)。
26日 ベトナム,カンボジア間の国境標識30号設置式典に両国首相らが出席。
31日 ASEAN経済共同体が成立。
31日 国家銀行,新たな為替管理メカニズムについての決定2730号公布。
31日 ベトナムと中国,両国国防省間のホットライン開設。

参考資料 ベトナム 2015年
①  国家機構図(2015年12月末現在)
②  ベトナム共産党指導部(2015年12月末現在)
③  国家機関要人名簿(2015年12月末現在)
④  2016年の主な目標と主要指標

主要統計 ベトナム 2015年
1  基礎統計
2  支出別国内総生産(名目価格)
3  産業別国内総生産(実質:2010年価格)
4  所有形態別国内総生産(実質:2010年価格)
5  国・地域別貿易
 
© 2016 日本貿易振興機構 アジア経済研究所
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