アジア動向年報
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各国・地域の動向
2015年の韓国 輸出不況と対中傾斜の修正
奥田 聡渡邉 雄一
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2016 年 2016 巻 p. 51-78

詳細

2015年の韓国 輸出不況と対中傾斜の修正

概況

国内政治においては,青瓦台文書流出事件や「成完鍾リスト」をめぐる不正資金疑惑など朴槿恵政権への打撃となる事件が相次いだ。だが,保守層の結集が功を奏して政権支持率は崩落せず,その基盤の強さを示した。与党内では2016年の総選挙や2017年の大統領選をにらんだ主流派と非主流派との間のさや当てが続いた。野党は勢力が分裂し影響力が低下した。最大野党の新政治民主連合では,進歩派の文在寅が代表に復帰したが中道派の安哲秀との融和が進まなかった。年末には安が脱党のうえ新党を創立する意向を示し,分裂が決定的となった。

経済では,5~6月にかけて発生した中東呼吸器症候群(MERS)の感染拡大によって民間消費の一時的な落ち込みが見られたほか,中国の景気鈍化や原油価格の下落などの影響を受けて輸出の伸び悩みが大きく響き,通年では景気は3年ぶりに下降局面に陥った。デフレ懸念と対円・対ユーロレートでのウォン高基調のなか,景気の下降リスクから2度にわたる政策金利の引き下げや拡張型の景気対策が実施される一方で,家計の債務残高は増え続けている。設備投資や建設投資は堅調さを維持しているものの,国内主要企業の多くで減収や減益が相次ぎ,企業業績は決して明るくない。

対外関係では,南北関係が軍事境界線での地雷爆発事件で一触即発の状況となった。その後の交渉で関係が改善し,離散家族再会など各種交流が行われた。対日関係は年末にかけて大きく好転した。朴政権下で初の日韓単独首脳会談が開催され,慰安婦問題について両国間で妥結を見るに至った。対米関係も好転を見せた。防衛協力を中心に再び緊密化の兆しが見えている。対中関係は9月に中国の戦勝70周年記念パレードに朴大統領が参加した時点がピークとなったが,その後は日米との関係好転とともに対中傾斜への警戒感が台頭した。

国内政治

青瓦台文書流出事件と与党内紛

朴大統領の元秘書官ですでに民間人となっていた鄭允会が大統領側近の秘書官らと頻繁に会い,政府高官人事に干渉したとする文書が流出したことが2014年11月に報じられていた。2015年1月5日,検察は秘密漏洩の疑いで大統領秘書官1人を起訴するなどの捜査結果を発表したが,文書の内容は虚偽であったとした。1月12日,朴大統領は年頭記者会見に臨んだが文書流出事件については多くを語らず,鄭允会と頻繁に接触したとされた大統領秘書官3人の更迭も拒否した。十分な説明なしに幕引きを図るように見える大統領の姿勢はさらなる疑念を生んだ。

朴大統領は事態の悪化を打開すべく首相と大統領秘書室長の交代を打ち出し,セヌリ党院内代表(幹事長)の李完九を首相に指名した。大統領側の対応に与党セヌリ党内部でも批判の声が上がり,不協和音が高まった。2月2日に後任の院内代表選挙が実施され,選ばれたのは非主流派の劉承旼議員であった。これで非主流派の金武星・党代表ともども,非主流派が与党運営を掌握することとなった。翌3日には金武星代表が大統領の政権公約である「増税なき福祉」を批判し,「そのような言葉で国民を欺くのは間違い」と述べた。文書流出事件の真相解明遅延と与党内紛で政権支持率は大きく低下した。世論調査会社のリアルメーターによれば,2月第1週の政権支持率は31.8%で,年初に比べ13ポイントもの急落となった。

「成完鍾リスト」と改正国会法への拒否権発動

4月9日,京南企業会長で元議員,李明博前大統領の側近でもあった成完鍾が自殺した。李政権は海外資源開発プロジェクトを大々的に推進したがずさんな運営のためさしたる成果を上げず,損失規模は数十兆ウォンともいわれる。プロジェクトには成完鍾が経営する京南企業も参加しており,成完鍾の不法行為が損失拡大の一因となったとの疑いを持たれていた。与野党合同の国政調査が行われたほか,3月18日には同社が検察の家宅捜索を受けていた。

成完鍾の着衣からは朴大統領に近い政治家8人の名前と金額などが書かれたメモが見つかり,政界は騒然となった。8人のなかには李完九首相や李丙琪・大統領秘書室長,そしてその前任者であった金淇春が含まれていた。対処を誤ると朴政権がレームダック化しかねない危機的状況であったが,青瓦台文書流出事件の教訓からか朴大統領側の動きは素早かった。4月12日には検察が本格的捜査に乗り出したほか,朴大統領が同日に検察に対して厳正な対処を要望した。現職の首相であった李完九にはとくに厳しい視線が注がれた。李首相は苦しい弁明を続けたが20日になってついに辞意を表明した。また,与党側は成完鍾が盧武鉉政権時代に2度にわたって特赦を受けていたことを指摘して盧政権与党の後身である野党勢力を暗に批判するなど,野党の攻勢を削ぐことに努めた。29日に行われた国会議員の再選挙・補欠選挙(以下,「再・補選」)の結果が注目されたが,与党セヌリ党は4選挙区中3選挙区で勝利すると本件に関する世論の関心は急速に薄れ,朴政権への支持率も回復した。

だが,6月に入ると政権支持率は再び急落した。 MERSの感染拡大に対して政府の対策が後手に回ったことについて朴大統領の責任を問う声が高まったほか,この時期に顕著になった与野党間および与党内の対立が大きく影響した。

これに先立つ5月,朴大統領が推進する4大改革の一角をなす公務員年金改革案の国会審議が山場を迎えた。野党は国民年金の支給水準アップに加え,政府が定める施行令への修正権限を国会に与える国会法改正を求めた。5月29日に与野党合意のうえ,これら法案がセットで可決された。国会法の規定により法案上程には6割以上の賛同が必要で,議席シェア6割未満のセヌリ党としては野党の要求を受容する必要があった。だが,朴大統領は国会による施行令への過度の干渉は行政を麻痺させるとして野党を強く批判した。朴大統領は年金改革,労働市場改革,経済活性化など4大改革の推進を最重要課題と位置付けていたが,そのために必要な国会での法案審議が野党の非協力により進まず,改革が進展しないことに苛立ちを強めていた。改正国会法により国会の干渉がさらに強まるという事態に,朴大統領は怒りを爆発させた。6月25日,改正国会法が「三権分立の趣旨を損なう」として,朴大統領は拒否権発動という強硬手段に訴えた。

国会法改正で火がついた朴大統領の怒りは与党内部にも向けられた。標的となったのが公務員年金改革に関する与野党協議に伴う国会法改正を主導し,与党内における非主流派伸長の象徴でもある劉承旼・院内代表であった。朴大統領は劉に対し,院内代表からの追い落としを図った。与党の内紛で保守の固定支持層に離反の兆候すら見られたが,それでも朴大統領は追及を緩めなかった。6月27日には劉院内代表が国会法改正に関して謝罪したが朴大統領は受け入れず,結局7月8日の党議員総会での辞任勧告決議に従い,劉承旼は院内代表を辞任した。

朴大統領の国会法改正への激しい反応は,非主流派による揺さぶりに党内融和の観点から耐えてきた反動でもあった。非主流派は,朴大統領が掲げる「増税なき福祉」に異論を唱えたほか,中国への配慮から朴大統領周辺が慎重姿勢を崩してこなかった終末高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備を主張していた。4月29日の国会議員の再・補選でのセヌリ党勝利の後,非主流の金武星代表が次期大統領選候補としては1位(5月8日時点での支持率22.6%,リアルメーター調べ)に浮上し,与党への支持が非主流派に向かっているかの印象を与えた。こうした伏線のうえに,政策遂行の自由度をさらに狭める国会法改正を非主流派主導の執行部が与野党合意するに至り,朴大統領の忍耐も限界に達したのであった。

旧来スタイル固守でチャンスを生かせなかった野党

2月8日,最大野党の新政治民主連合(以下,新政治連合)は,「親盧」派(盧武鉉元大統領に近いグループ)の大物である文在寅議員を代表に選出した。文在寅は同党の前身である民主党の2012年大統領選における擁立候補でもあり,国内での知名度は野党政治家のなかでも群を抜く。2014年の創立以来,新政治連合の運営は盧元大統領と距離を置く「非盧」派が担ってきたが,党内部は親盧のほかに安哲秀系,湖南系(金大中元大統領に近い)など多くの派閥に分かれていて,絶えず内紛に悩まされてきた。同党が文在寅をトップに据えるに至った背景には,2016年春の総選挙を見据えて進歩色が強く2017年の大統領選でも有力候補と目される文在寅を前面に押し立て,与党との対比を鮮明に打ち出すねらいがあった。

野党勢力再編への期待感から,2月第3週の新政治連合への支持率は33.8%と,内紛で支持率を落としていたセヌリ党の34.7%に肉薄した。同じ時期,文在寅の次期大統領候補としての人気も高まった。文への支持率は1位の27.5%で,次期大統領候補と目されていた安哲秀(新政治連合・元共同代表),朴元淳(ソウル市長),金武星(セヌリ党代表)を大きく引き離した。

4月29日に行われた国会議員再・補選はその後の総選挙,大統領選に向けての党勢を占う重要な試金石であった。投票の3週間前に起きた成完鍾事件のため与党への世論の批判が高まっており,野党としては得票を伸ばす好機であった。しかし,党内の有名政治家を選挙区の応援に動員せず,もっぱら文代表が中央のメディアに露出する戦術が裏目に出たほか,盧武鉉政権が成完鍾に2度にわたり特赦を与えていたことを与党が強調したこともあって新政治連合は予想外の苦戦を強いられた。文代表が2月の代表就任の際「勝つ政党を作る」との抱負を述べて臨んだ選挙は,改選4選挙区の議席がいずれもセヌリ党と無所属の候補の手中に落ちるという惨敗に終わった。

選挙敗北後,文在寅代表に対する責任論が浮上した。「排除型リーダーシップ」(『中央日報』5月7日付)のため人心掌握が不得手との指摘も出た。文代表をはじめとする親盧派への反発が広がるなか,5月7日の院内代表選では非盧の李鐘杰議員が選出された。親盧の大物が野党勢力を糾合するという目論見は外れ,党内は派閥が割拠する状況に逆戻りした。文在寅は党内の混乱収拾のため革新委員会を組織し,2012年大統領選の野党統一候補を争った安哲秀・元共同代表に委員長就任を要請したが,固辞された。

与党,総選挙をにらんだ動きが活発化

年後半における与党の動きは,2016年春の総選挙における党候補公認の方式をめぐる主流派と非主流派のさや当てが中心となった。これまで,与野党を問わず総選挙時の候補公認の主導権を主流派が握ったことがしばしば内紛をもたらした。総選挙で党の公認を得られるかどうかで派閥の消長が左右されるからである。

ず登場したのが「オープンプライマリー」(世論調査結果を加味する公認候補選定方式)をめぐる議論である。今回の選挙に関しても,従来どおりの方式で政党による公認権限を確保し,次期政権での影響力保持をねらう朴大統領をはじめとする主流派と,オープンプライマリーを導入することで候補指名における主流派の影響力を薄めて総選挙においてできるだけ多くの議席を確保し,ひいては党の大統領選候補擁立において有利な位置に立とうとする金武星代表ら非主流派の考え方が対立した。

南北関係が緊張し,保守層の結集で政権支持率,与党支持率ともに上昇するなか,8月20日に金武星代表は「オープンプライマリーに政治生命をかける」と発言し,選挙制度改革に向けた強い意志を示した。さらにオープンプライマリーの法制化を見据えて,9月28日には最大野党・新政治連合の文在寅代表との間で,2016年総選挙の両党の公認作業においてオープンプライマリーを導入することで合意した。党の公認権限放棄を意味するオープンプライマリーをめぐる与野党合意にセヌリ党主流派は猛反発して党内のムードが険悪化したが,世論調査ではオープンプライマリーを支持する意見が多く,主流派の巻き返しにも限界があった。その後,主流派と反主流派の公認権限をめぐる議論は平行線をたどり,与野党合意も思惑の違いから霧消したが,金武星代表の「公認権は国民に返す」という主張は生き続けた。

11月に入ると,2016年春の総選挙での与党候補公認の主導権を確保すべく朴大統領が直接動き出した。この時期,候補公認と関連する朴大統領の動きを象徴するキーワードは,「誠実な人」「TK(大邱・慶北)入れ替え論」「国民審判論」,そして選挙準備と関連した閣僚交代であった。

11月10日の国務会議における朴大統領の発言は,与党候補者選定に関する彼女の考えをよく表したものであった。候補者に関しては,直訳すれば「国民のために『真実の』人々だけが選ばれるようにしてほしい」との希望を述べた。「真実の」とは「本当の」「まじめな」「誠実な」などさまざまな解釈が可能で憶測を呼んだが,6月から7月にかけて劉承旼・院内代表を辞任に追い込んだ際に使った「背信」の対語,「誠実」との見方が一般的である。2016年春の総選挙を控え,立候補予定者たちの自身への忠誠心を試そうとしたのであった。

「TK入れ替え論」とは,朴大統領が候補選定を自己の地域的基盤である大邱・慶北地域の選挙区を手始めに行い,これまでの経緯にかかわらずゼロベースで査定を行うという意味である。地縁のある所属議員であっても公認作業では優遇しないことを示すことで,朴大統領の候補公認における主導権を確保する意図が垣間見える。また,「真実の人」発言は候補選定の基準を示したものとされる。

国務会議発言では,「国民審判論」も登場した。朴大統領は自らの政敵を「国民の敵」に置き換えて言及することがあるが,ここでは労働改革法案,経済活性化法案,韓中FTA批准などの懸案を念頭に置いて「国会が放置して廃案となれば国民は絶対に許さないだろう」と述べた。これには審議に非協力的な野党を批判すると同時に,懸案の処理を進めることで自らの得点とし,候補公認の主導権を強めようとの意図がうかがえる。

10月と12月には延べ7人の閣僚交代が発表されたが,これは総選挙への出馬予定者を閣僚ポストから外して与党党務に復帰させるためとされる。知名度の高い閣僚経験者を投入することで選挙戦を優位に展開する意図がある。ポストを外れた閣僚のなかには経済副首相で朴大統領の側近である崔炅煥が含まれている。経済政策において「突破型」の強力な推進力で名を上げた彼は,交代が決まると大邱・慶北地域を中心する選挙区を奔走し,「TK入れ替え論」における「親朴鑑別師」の異名をとる。崔炅煥の後任として経済副首相に指名された柳一鎬議員は,総選挙出馬のために10月に国土交通部長官を辞したが,12月に経済副首相の大任を任された。租税研究院長を歴任した財政専門家ではあるが「管理型」「守備型」との評が多く,経済副首相として韓国の経済政策全般を一手に引き受ける行政手腕があるかについては未知数である。選挙対策を優先した小粒人事との批判も聞かれる。

混迷する野党――国定教科書問題と安哲秀新党

文在寅代表の求心力が低下し,党勢が弱化していた野党は,秋になると朴大統領が打ち出した国史教科書の国定化に対する反対キャンペーンを敷いた。

2002年から運営されてきた国史教科書検定制については,とくに保守層から教科書の記述内容の「左傾化」が指摘されていた。しばしば指摘されたのは朴正煕元大統領の事績であった。保守派は,朴元大統領の産業建設などの功績を高く評価せず,政治的抑圧などの負の側面を強調する教科書の論調を問題視した。朴元大統領の娘でもある朴槿恵大統領としては国史教科書の「偏向」に歯止めをかけるため,執筆基準の見直しを模索していた。9月の国史編纂委員会の公聴会で慰安婦問題や哨戒艇沈没・延坪島砲撃など最近の南北間の紛争事例についての記述が強化される見通しとなったが,その後国史教科書の国定制を復活させることとなり,10月12日に教育部がこの旨を行政予告した。

国史教科書の問題は与野党間の立場の違いが鮮明で,9月の党革新委員会による改革案の発表以来混迷の度を深めていた野党にとっては内部引き締めのための好機となった感がある。10月18日,文在寅・新民主連合代表は「親日派の子供たちが親日・独裁の歴史を美化するため国定化を推進している」と述べた。朴大統領と金武星・セヌリ党代表の父親が日本統治下で軍人,親日経営者であったと取り沙汰されていることを念頭に置いた発言であった。11月になると,国史教科書の国定化への反発は市民団体を巻き込んだものとなった。民主労総など53団体が11月14日に開いた「民衆総決起集会」には朴政権下で最大の6万4000人(警察発表)が参加した。この集会の態様は過激で市民生活にも大きな影響を与えたため,警察は首謀者らの責任追及に乗り出したが,身元確認を困難にするため覆面を着用した者が多く,捜査は難航した。こうした状況を受け,25日にはセヌリ党が集会における覆面着用を制限するいわゆる「覆面禁止法」を発議した。野党が大々的に繰り広げた国史教科書問題などを取り上げての与党・政府批判はさしたる成果を生まなかった。一連のキャンペーンの先頭に立った文在寅・新政治連合代表の次期大統領としての支持が多少高まったが,新政治連合への政党支持率はむしろ低落傾向をたどった。

野党の勢いが減退するなか,文在寅代表から距離を置いてきた安哲秀・元共同代表が12月13日に離党し,新党を創立する意向を表明した。それに先立つ6日,文在寅代表の旧来型の強硬路線では総選挙以後の展望が開けないと見た安哲秀は文の代表辞任を迫ったが文はこれを拒否した。新政治連合は共同創始者である安哲秀が離党したことで,野党勢力の連合体としての性格を喪失した。安哲秀新党は,新政治連合の非盧勢力や与党の公認漏れ議員などの受け皿となるものとみられ,大掛かりな政党再編の可能性がでてきた。安哲秀の離党を受け,新政治連合は28日に党名を「共に民主党」(더불어민주당)と改めた。党名から安哲秀を想起させる「新政治連合」(党の前身のひとつで,安が創設)の文字を抹消し,野党本流を印象づける「民主党」を前面に打ち出している。

経済

マクロ経済の概況

2015年の韓国経済は,5~6月にかけて発生したMERSの感染拡大によって民間消費の一時的な落ち込みがみられたほか,中国の景気鈍化や原油価格の下落などの影響を受けて輸出の伸び悩みが大きく響いたことで,通年では景気は3年ぶりに下降局面に陥った。2016年年初に韓国銀行が発表した国内総生産(GDP)の速報値によれば,2015年の実質GDP成長率は2.6%で,2年ぶりに伸び率は2%台にとどまった(表1)。これは,2015年末に韓国銀行が公表した潜在GDP成長率3.0~3.2%を下回っているため,GDPギャップはマイナスが続いている。

支出項目別には,GDPの約半分を占める民間消費がMERSの感染拡大による悪影響から第2四半期には一時的に落ち込んだが,沈静化後に政府主導で実施された大規模セールの効果もあって年後半には持ち直し,年間では前年比2.1%増と政府消費(同3.3%増)とともに底堅さを示した。また,前年に政府が実施した不動産融資規制の緩和などによって不動産取引や住宅建設が活発化したことで,建設投資は前年比4.0%増と大きく伸びたものの,第4四半期に入って公共事業などでの土木建設に陰りがみられる。一方,ソフトウェア投資やR&D投資などの知識財産生産物投資は前年比1.4%増と伸び悩んだが,設備投資は機械類や自動車関連分野で健闘し,前年比5.2%増の堅調な成長を示した。しかし,中国など新興国の景気減速や原油安,対円・対ユーロレートでの通貨高といった厳しい輸出環境が影響して,輸出は石油化学製品などの中間財や鉄鋼,自動車などで伸び悩み,前年比0.4%増にとどまるのみで成長の大きな足かせ要因となった。

経済活動別には,年前半の干ばつ被害が響いて農林漁業が前年比1.6%減を記録したほか,製造業も輸出不振を受けて前年比1.4%増と伸びが大きく鈍化した。しかし,建設業は建設投資の好転を受けて前年比3.2%増と大幅な伸びを示したのに加えて,サービス業(同2.8%増)でも金融保険業や保健・社会福祉事業が比較的高い伸びを示したことで前年と同水準を記録した。国内総所得(GDI)の成長率は,原油価格の下落などで実質貿易損益がプラスに転換し(マイナス14兆ウォンから39兆9000億ウォン),交易条件が改善されたことでGDP成長率を大幅に上回る6.4%を記録した。また,1人当たり名目GDPおよび1人当たり国民総所得(GNI)はともに,前年水準を超えて3万ドルに迫る見通しである。

表1  支出項目別および経済活動別国内総生産成長率(2010年価格,前期比,%)

(注) 数値はすべて暫定値。四半期別数値は季節調整後の値。在庫増減はGDPに対する成長寄与度を表す。

(出所) 韓国銀行「2015年第4四半期および年間国内総生産(速報)」2016年1月26日。

デフレ懸念,景気対策

2015年の消費者物価および生産者物価の上昇率はそれぞれ0.7%とマイナス4.0%で,前年の1.3%とマイナス0.5%を下回った。消費者物価上昇率は韓国銀行が目標値とする2.5~3.5%(2016年から2.0%)を大幅に下回っており,低インフレからデフレ転落を警戒する声が高まるなか,内需不振やウォン高・円安基調による景気下降リスクを重くみた韓国銀行は,3月と6月に政策金利を0.25ポイントずつ引き下げた。2度にわたる利下げによって政策金利は1.50%になり,リーマン・ショック後の金融緩和時(2009年)を下回る過去最低水準を更新したが,度重なる利下げはウォン相場の上昇圧力を緩和させたいとする政府の期待もうかがえる。

利下げと歩調を合わせるように,政府もMERSや干ばつ被害の影響によって冷え込んだ内需を活性化させる目的で,7月には11兆6000億ウォンの補正予算を含む総額22兆ウォン規模の景気刺激策を打ち出した。続いて,8月にも追加の景気対策を発表し,政府は国内の流通・小売大手と協力して10月に「コリア・ブラックフライデー」と呼ばれる大規模セールを実施したり,自動車や高級家電製品に対する個別消費税率を引き下げるなどの施策を講じた。また,不振の輸出を活性化させるべく,政府は4月と7月に輸出振興策もあわせて発表し,貿易金融や輸出マーケティングの支援,輸出有望品目に対するR&D投資支援などを打ち出している。

こうした金融・財政両面での拡張策が奏功して,消費や投資といった内需は年後半には持ち直すに至った。その反面,断続的な利下げや不動産融資規制の緩和によって,銀行など金融機関からの家計向け融資が急増し,足元の家計負債総額は1207兆ウォン(12月末現在)まで増大している。危機感を強めた政府は,7月に住宅ローンに関する「家計負債管理方案」を発表し,金融機関に対してこれまでの担保価格重視から借り手の返済能力を重視した融資審査基準の厳格化を促すなどのガイドラインを12月に策定した。

雇用情勢,労働改革

景気は減速する状況にあるなかで,雇用情勢はやや改善された。統計庁の発表によれば,2015年の総就業者数は2593万6000人で,前年比33万7000人増であった。部門別には,保健・社会福祉サービス業(前年比7万7000人増)や宿泊・飲食業(同8万2000人増)などのサービス部門(全体で同25万人増)で堅調な伸びがみられたほか,製造業(同15万6000人増)や建設業(同2万7000人増)でも前年を上回る増加をみた。ただし,全体の失業率は3.6%(前年比0.1ポイントの悪化)とほぼ横ばいであり,とりわけ20歳代の失業率は9.1%(同0.1ポイントの悪化)で依然として高止まりが続いている。

若年層の雇用環境の悪化や正規職と非正規職の格差が社会問題化するなか,政府は労働改革を重点的に推進している。具体的には,定年延長(段階的に原則60歳)と並行して一定年齢以上の賃金水準を抑制する「賃金ピーク制」の導入や非正規職の連続雇用期間の延長,正規職の解雇要件の緩和,期間制・派遣労働者の雇用安定化といった一連の労働改革法案を国会に上程し,朴大統領は年内採決を強く働き掛けたが,与野党協議がまとまらずに越年した。

国際収支状況

関税庁の発表(2016年1月)によれば,2015年の通関基準の輸出額は5269億ドル(前年比8.0%減),輸入額は4365億ドル(同16.9%減)となり,貿易総額は1兆ドルに届かず減少したものの,貿易黒字は904億ドルと過去最高額を更新した。輸出の内訳を品目別にみると,引き続きスマートフォンなどのモバイル機器市場の拡大を受けて情報通信機器(前年比7.9%増)や半導体(同0.5%増)で,また船舶(同0.3%増)でも前年に続き底堅い伸びをみた。しかし,そのほかは乗用車(同6.8%減)や自動車部品(同4.1%減),鉄鋼製品(同12.8%減),家電製品(同19.7%減)などで軒並み減少に転じ,とくに原油価格の下落を受けて石油製品(同36.7%減)は大きく落ち込んだ。

地域別には,最大の輸出先である中国向けが成長鈍化から前年比5.6%減と2年連続で減少したのに加え,FTA締結相手であるアメリカや欧州連合(EU)向けもそれぞれ前年比0.6%減と6.9%減で落ち込みを余儀なくされた。東南アジア向けはサムスン電子などの現地生産の拡大によってとくに部品等のベトナム向け輸出の増加が著しく,ASEAN諸国全体では前年比11.4%減を記録した。一方,対日輸出はウォン高・円安傾向などに伴う主力品目の落ち込みによって前年比20.5%減と大幅に減少したが,対日輸入の減少幅も大きかったために対日貿易赤字は202億6000万ドルにとどまり,赤字幅は縮小した。

輸入では,IT関連機器や製造装置などの資本財が前年比1.2%増,また乗用車や携帯電話などの伸びを受けて消費財輸入も前年比2.1%増加した。しかし,原材料輸入は原油安の影響を大きく受けて前年比29.6%も減少し,中東やオーストラリアなど資源国との貿易赤字は大幅に縮小した。経常収支は貿易収支と所得収支の黒字拡大が,旅行や知的財産権使用料などのサービス収支の赤字(157億1000万ドル)を補う形で,前年実績(843億7000万ドル)を上回る1059億6000万ドルの経常黒字を記録し,4年連続で過去最高を更新した。

企画財政部の発表(2016年2月)によれば,2015年の海外直接投資額(申告ベース)は402億3000万ドル(前年比15.0%増)となり,4年ぶりに増加に転じた。金融保険業を中心に大部分の業種で海外投資は増加したほか,地域別にはアメリカをはじめ中国や香港,ベトナムなどアジア向け投資も大きく増えた。また,産業通商資源部の発表(2016年1月)によれば,2015年の外国人直接投資(申告ベース)は209億1000万ドル(前年比10.0%増)と2年連続で史上最大規模を記録した。おもにアメリカや中国などからの投資が大きく増加し,とりわけ中国からの投資増大の背景には12月に発効した韓中FTAへの期待効果があるとされる。一方,EUや日本からの対韓投資は減少したが,製造業の部品素材分野やサービス産業の複合リゾート・物流分野でのグリーンフィールド投資は堅調である。

国際収支のなかの証券投資は,通年で496億1000万ドルの入超となり,海外投資資金の流入が前年より膨らんだ。証券市場では化粧品や医薬品株などの伸びを受けて,年初より外国人投資家の買い越しが目立ち,韓国総合株価指数(KOSPI)は4月末に年最高値となる2173.41をつけた。しかし,その後は中国向け輸出の不振やMERSの感染拡大が不安視されて売り越し基調に転じ,KOSPIは8月にかけて1800台前半まで割り込む場面も見られた。ただし,アメリカの早期利上げ観測の後退や輸出関連製造業銘柄の復調などもあり,KOSPIは年末には1961.31まで回復するとともに,ベンチャー企業が多いコスダック総合指数も年間を通じて大幅な伸びを記録した。

為替相場の動向

外国為替市場は,韓国の大幅な経常黒字,物価上昇率の鈍化などのウォン高要因もあったが,アメリカの早期利上げへの期待感や中国など新興国の金融不安に伴うリスク回避心理などのウォン安要因が強く働いた。このため,対ドル相場でウォンは売られる傾向が続き,年間を通じて軟調に推移した。年初よりウォンは対ドルレートで漸進的な下落基調をみせて,9月には年最安値となる1ドル=1203.7ウォンまで減価し,年末には1ドル=1172.5ウォンで前年末比6.2%のウォン安水準を記録した(年平均では前年比6.9%のウォン安・ドル高)。

一方,日銀による大規模な金融緩和に伴う円安のためウォンの対円レートは2014年後半以降対ドルレートとは対照的な動きをみせてきた。2015年前半にかけてはとくに上昇圧力が強まり,6月には年最高値となる100円=885.1ウォンまで切り上がった。しかし,年後半には対ドルレートと歩調を合わせて対円レートも下落する動きをみせ,年末には100円=974.1ウォンをつけて前年末比6.3%の減価となったものの,年平均では前年比6.6%のウォン高・円安水準となった。

主要企業業績

2015年の国内主要企業の業績は,電子・電機分野では比較的好調を維持しているものの,基幹産業である自動車や鉄鋼,造船などの重厚長大型では為替変動や市況悪化などの影響を受けて長期的な低迷が深刻化している。

韓国最大企業で外国人選好度も高いサムスン電子は,2015年連結決算で売上高こそ200兆6530億ウォン(前年比3.0%減)と2年連続の減収となったが,営業利益は26兆4130億ウォン(同5.5%増)で2年ぶりに増益に転じた。需要の堅調なメモリー部門や受託生産が増加したシステムLSIなどの半導体事業が収益を牽引し,稼ぎ頭であったスマートフォン事業は流通在庫の解消や販売品目の絞り込みなどで業績悪化の底は打ったものの,中国などの新興メーカーの台頭を受けて依然として不振は続いている。そうしたなか,サムスン電子は前年に続いて自社株買いによって株主還元を拡大する方針を示すとともに,サムスングループ全体では事実上の持ち株会社である第一毛織がサムスン電子の大株主であるサムスン物産を吸収合併したり,系列の石油化学事業を売却するなど,事業の選択と集中を図るべくグループ内再編を加速させている。また,半導体大手のSKハイニックスは,モバイル向け製品の販売拡大などが業績を押し上げ,3年連続過去最高額となる増収増益を達成した。

同じく韓国の代表的な企業である現代自動車の2015年連結決算は,売上高が91兆9590億ウォン(前年比3.0%増)で過去最高額を更新したものの,営業利益では6兆3580億ウォン(同15.8%減)と3年連続の増収減益を記録した。事業規模の拡大によって世界販売台数は微増したにもかかわらず,足元での連結営業利益は7四半期連続で前年実績を下回っており,その要因には新興国通貨の急落に伴う海外工場の収益性低下や販売奨励金の積み増しによる採算悪化などがある。そうしたなか,現代自動車も段階的な増配や自社株買いによって株主還元を強化する意向を示している。また,同グループの起亜自動車も世界販売台数こそわずかに伸びたものの,中国での業績不振やアメリカでの販促費用の増加が利益を圧迫して同じく増収減益となった。

一方,鉄鋼最大手のポスコは,中国の景気減速や供給過剰による鋼材価格の下落,ウォン安・ドル高に伴う為替差損,高級鋼板の技術流出訴訟をめぐる新日鉄住金への和解金支払いなどが響いて,2015年連結決算は売上高が58兆1920億ウォン(前年比10.6%減),営業利益は2兆4100億ウォン(同25.0%減)で,最終純損益は960億ウォンの赤字に初めて転落した。また,造船大手の現代重工業も,市況の悪化による受注減や海洋プラントの工事遅延に伴う追加費用の発生などが響いて営業赤字が続いている。

対外関係

南北関係

1月1日,北朝鮮の金正恩第一書記が「南北首脳会談開催の用意がある」と発言すると,朴大統領は12日の新年会見で「平和統一のために必要なら,誰とも前提なしに会える」と応じた。5月1日には統一部が地方自治体と民間団体の南北交流を幅広く許容すると表明し,7月10日には朴大統領が「最近北朝鮮は対話と協力の意思を少しではあるが表している」と評する(統一準備委員会民間委員との集中討論会)など,年央にかけては韓国側での南北関係に関するムードが多少好転していった。しかし,8月に入ると南北間の軍事的緊張が一気に高まった。同月4日に非武装地帯で地雷が爆発して韓国側下士官2人が重傷を負った事件に関し,合同参謀本部が10日に休戦ラインを越えて侵入した北朝鮮軍が地雷を埋設したと発表,その報復措置として北朝鮮向け拡声器放送が即日再開された。北朝鮮はこれに強く反発し,20日には韓国側に対して砲撃を加え,韓国軍は直ちに応射した。また,北朝鮮は21日に準戦時体制を宣言,韓国軍も対北朝鮮情報監視態勢(ウォッチコン)を3から2に引き上げた。南北軍事衝突の恐れが最高潮に達した22日,事態収拾に向けた南北高官協議の開催が決まり,25日に協議は劇的に妥結した。共同発表文書には南北当局者会談の実施,地雷爆発事件に対する北朝鮮の遺憾表明,対北朝鮮拡声器放送の中止,北朝鮮の準戦時体制解除,離散家族再会に向けた南北接触の実施および民間交流の活発化の6点が盛り込まれた。これに沿い,10月20~26日には金剛山での南北離散家族再会が実現したほか,開城・満月台出土遺物の展示会,南北労働者サッカー大会,南北宗教家平和大会などの各種交流が行われた。統一部によれば2015年の北朝鮮訪問者数(開城工業団地および離散家族再会関係者を除外)は前年比3.7倍の2035人に達した。だが,これらをもって南北関係が全面的に好転したわけではなかった。8月25日の南北合意にある南北当局者会談は12月11日から2日間にわたって次官クラスで実施されたが決裂した。同会談では,北朝鮮は金剛山観光の再会を求めたが,韓国は2008年に起きた金剛山観光の韓国民間人射殺事件の真相究明などを求めて対立した。

対日関係

日韓国交正常化50周年,終戦70周年の節目を迎えた2015年,対日関係は年後半にかけて修復に向けて動き出した。

2月27日のシャーマン米国務次官による日韓の歴史問題と関連した「過去の敵への非難で安っぽい喝采を受けるのはたやすいが進歩は生まない」との発言を契機に,北朝鮮との軍事的対峙における日米韓の協力体制の重要性が再認識され,強硬な対日姿勢を堅持してきた朴槿恵外交の在り方に対しても一定の柔軟さを求める向きが増えた。日米韓協力強化の一方で日中韓枠組みでの動きも活発化した。

3月21日には日中韓外相会談が,5月23日には副首相級の日韓財務対話がそれぞれ朴政権下で初めて開催された。日韓条約署名50周年となる6月22日には両国首脳がそれぞれ祝賀行事に参加した。7月には日本の世界遺産登録における徴用者労働の表現をめぐって日韓関係が一時悪化したものの,8月14日の安倍首相談話が「歴代内閣の立場を堅持」との表現で過去の日本による侵略,植民地支配に言及し,8月15日の光復節演説では朴大統領が対日言及のトーンを前年よりも落とし,未来志向的表現を多用した。こうして日韓両国は,国交正常化50周年,終戦70周年の節目を無難に乗り切った。

この後,日中韓首脳会談および日韓首脳会談の開催が大きな焦点となった。日韓首脳会談においては慰安婦問題をはじめとする日韓間過去史の核心的問題にどこまで切り込めるかにとくに関心が寄せられた。かくして,11月2日に前日の日中韓首脳会談に続いて朴大統領と安倍首相による初の単独会談が開かれた。慰安婦問題については交渉を加速して早期に妥結することで合意した。日韓の立場の隔たりの大きさから慰安婦問題の進展は困難というのが大方の見方であったが,局面打開に向けてまず韓国側が動きを起こした。12月17日には朴大統領への名誉棄損で起訴された加藤達也・産経新聞前ソウル支局長に無罪判決が出されたほか,同23日には日韓請求権協定のいわゆる「最終解決条項」は違憲であるとの強制連行被害者遺族の訴願を憲法裁判所が却下した。そして,28日に開かれた日韓外相会談で,慰安婦問題について両国が合意に達した。元慰安婦に対する安倍首相名義の「おわびと反省」が表明され,10億円規模の支援財団設立が決まった。また,元慰安婦への慰謝措置の実施を前提として本問題の不可逆的な解決が確認され,両国とも本件に関する非難・批判を自制することとなった。

対米関係

対米関係では防衛協力におけるアメリカ側の姿勢の冷淡さが散見されたなか,北朝鮮に対する抑止力としての韓米軍事同盟を再評価する見方が台頭し,韓国側としては対米関係の立て直しを図った。米中両属的な外交構図のなか,アメリカが韓国に対して踏み絵を迫る場面もあった。

韓国の国産戦闘機(KFX)開発で必要とされる4つの核心技術の対韓供与についてアメリカは10月18日までに3度目となる拒絶回答を寄せた。また,THAADについてはアメリカと国内保守層が韓国配備を望んできたが,朴大統領や外交関係者の間では中国に対する配慮から導入に慎重な空気が強かった。政府間の議論ではTHAAD導入が取り上げられなかったが,11月2日の韓米定例安保協議(SCM)後の記者会見でカーター国防長官は「アメリカが独自に決めることではなく,同盟が決めること」と述べ,暗にTHAAD導入に関する韓国の決断を促した。

韓国の対米関係立て直しに向けての努力は,ひとつには日韓関係の改善という形で表れた。アメリカは北朝鮮の軍事的脅威に対して日米韓の枠組みで対処することを重視しているが,上述の2月27日のシャーマン国務次官による「過去の敵」発言は歴史問題への執着から日韓関係改善に動かない朴政権への警告であったと解釈できる。もうひとつは,韓国が米中間の択一を迫られた際にアメリカ支持を打ち出すようになったことである。10月16日,韓米首脳会談後の記者会見でオバマ大統領は中国による南シナ海での人工島造成を念頭に「中国が国際規範と法を守れなければ,韓国は声を上げるべき」と発言,明確な形で同調を迫った。

これを受け,11月4日に韓民求・国防部長官はASEAN国防相会議において「南シナ海における航行の自由は保障されるべき」と発言した。これは既存の政府見解と同様だが,高官が多国間の国際会議で立場を表明するのはこれが初めてである。

このほか,懸案であった韓国による使用済み核燃料処理については,4月22日にアメリカの事前同意条項を削除することで韓米原子力協定改定交渉が妥結し,韓国による再処理の道が開けた。3月5日にはリッパート・アメリカ大使が暴漢に襲われて負傷する事件が起きたが,背後関係はなく両国関係に影響はなかった。

対中関係

対中関係は前年来の良好な関係がおおむね維持されたが,国内には対中傾斜への警戒感も台頭してきている。

2015年の韓中関係のハイライトは9月の朴大統領の訪中であろう。同月2日に6回目となる韓中首脳会談が行われたほか,3日には北京・天安門広場で開催された中国の戦勝70周年記念軍事パレードを朴大統領が参観した。習近平国家主席夫妻の近くでの参観となり,中国側の厚遇ぶりを物語る。2日の首脳会談では,日中韓首脳会談の開催について韓中首脳が合意し,3カ国首脳会談の開催が確定的となった。3カ国首脳会談に消極的であった習主席を朴大統領が説得した形となった。11月1日には日中韓首脳会談で韓中首脳は再び顔を合わせている。

このほか,韓中間の首脳・高官の往来は前年同様盛んであった。韓中間の政府間交流は経済,外交だけでなく,防衛面にも及んだ。1月5日には韓中外交・安保対話が開催されたほか,2月4日にはこれとは別に韓中国防相会談が持たれた。経済方面の協力でも大きな進展が見られた。3月27日,韓国は中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を決定した。韓中FTAについては2月25日に仮署名,6月1日に正式署名された。国会での批准過程では多少の紆余曲折はあったが,11月30日に批准同意案が通過,12月20日には発効した。

良好な関係の裏で,対中警戒感は徐々に高まっている。3月16日,ソウルを訪問した劉建超・中国外務次官補は,李京秀・外交部次官補との会談の後,記者団に向かってTHAADの韓国配備に対する懸念を表明した。中国高官が韓国に乗り込んで抗議する形となり,THAAD配備を嫌う中国の「脅し」と取った向きも少なくなかった。韓米軍事同盟への再評価が進むにつれ,韓国の対中傾斜が行きすぎたとする「中国傾斜論」がマスコミに頻繁に取り上げられるようになっている。

FTA

2015年に進展のあったFTA案件のうちもっとも大きな影響が予想されるのが上述の韓中FTAである。2月25日の仮署名で関税譲許などの詳細が明らかとなった。発効時の新規免税は金額ベースで韓国側10%,中国側5%にとどまり,FTA発効当初の痛みを緩和することを重視している。発効20年後の自由化完成時には物品貿易の開放率は韓国側91.2%,中国側85.0%にまで上がる。早期発効に向けて韓中双方が急ピッチで準備を進め,12月20日に発効した。これにより,韓国の輸出のうち約7割がFTAでカバーされることとなった。このほか,大きな焦点となったのが環太平洋パートナーシップ(TPP)の扱いであった。10月5日,TPP交渉が予想外に早く大筋合意に達し,韓国はその翌日の6日に急きょ参加の意向を表明した。10月から11月にかけての首脳会談で朴大統領はTPPで大きな影響力を持つ日米首脳に韓国の参加についての協力を要請し,前向きの反応を得ている。

このほか,1月1日には韓カナダFTAが発効,韓ニュージーランド,韓ベトナムFTAがそれぞれ12月20日に発効した。

主要交易相手とのFTAがほぼ整備されたことで,FTA政策の焦点は多国間FTAへの対応へと移っている。東アジア包括的経済連携(RCEP)については当初目標よりも交渉が遅れているが,TPPの合意を受け韓国を含め各国とも交渉を加速する意向とみられる。日中韓FTAは合計6回の首席代表交渉と実務交渉が開かれたが,商品・サービス・投資分野での隔たりは大きく,本格的交渉には至らなかった。

2016年の課題

2016年の国内政治は,4月の総選挙を中心に展開されるであろう。与野党ともに主導権争いが絡んだ候補公認をめぐる争いが演じられよう。とくに分裂劇を演じた野党では候補公認をめぐる議員の出入りが激しくなろう。総選挙で決まる新たな勢力図は2017年末の総選挙の帰趨をも左右する。各党の次期大統領候補決定に向けての党内の争いも激化するとみられる。とくに,与党主流派の親朴勢力のなかにはまだ次期大統領選の有力候補がおらず同派の動向が注目される。次期大統領選との関連では2016年末に任期満了となる潘基文・国連事務総長の動きも注目される。

韓国銀行や国内の研究機関などは2016年の経済成長率の見通しを3.0%前後としている。国際経済環境の変化から輸出の伸びは決して楽観視できないが,内外需ともに回復軌道に乗せられるかどうかが課題となる。アメリカの利上げに伴う国内金利への影響が懸念されるなか,好調な不動産市場を維持しつつも,増え続ける家計負債の不良化を抑制していくことが重要となろう。また,規制緩和や新規事業支援・育成などを通じて引き続き企業の設備投資マインドを喚起させながら,企業収益力をいかに高めていけるかもカギとなる。一方で,朴政権はファンダメンタルズの強化に向けて4大改革(労働市場,公共部門,教育,金融)を推進しており,その行方にも注目が集まる。

2015年に日米重視へと舵を切った韓国外交は,その動きをさらに進めるであろう。北朝鮮による「水爆実験」および事実上のミサイル発射などで南北関係は一気に冷却し,その動きは予断を許さない。中国の対北朝鮮抑止力が十分でなかったことや中国経済の成長鈍化などで,2016年には対中傾斜の修正は本格化するであろう。FTAについては,TPP参加とRCEP交渉の加速が課題となる。いずれにしても巨額の貿易赤字を出し続けている日本に対する市場開放は現実の問題となり,その対処に迫られるであろう。

(奥田:国内客員研究員・亜細亜大学教授)

(渡邉:地域研究センター)

重要日誌 韓国 2015年
  1月
1日 韓国産業銀行,韓国政策金融公社を統合し,KDB産業銀行を設立。
1日 韓カナダ自由貿易協定(FTA),発効。
1日 政府,たばこ関連税金を引き上げ。
5日 ソウル中央地検,青瓦台文書流出事件の中間捜査結果を発表。文書の内容は虚偽と断定。
5日 韓中外交・安保対話,開催。
6日 現代自動車,4年間にグループ全体で総額81兆㌆の投資計画を発表。
8日 ロッテホールディングス(HD),臨時株主総会で重光宏之副会長を解任。
22日 ポスコ,インド・マハラシュトラ州の自動車用冷延鋼板工場が竣工。
26日 朴大統領,2014年施行の改正所得税法と関連,低所得層への実質増税のケースが出たことに対して謝罪。
  2月
2日 セヌリ党,非主流派の劉承旼議員を院内代表に選出。
3日 金武星・セヌリ党代表,朴大統領の政権公約「増税なき福祉」は不可能と指摘。
4日 韓中国防相会談。
8日 新政治民主連合,文在寅議員を代表に選出。
10日 全国経済人連合会(全経連),第35代会長に許昌秀GSグループ会長を再選任。
17日 朴大統領,首相に李完九・前セヌリ党院内代表を任命。4閣僚を指名。統一部長官には洪容杓・大統領統一秘書官。
17日 中国の安邦保険集団,生保中堅の東洋生命保険の買収を発表。
18日 サムスン電子,アメリカのモバイル決済ベンチャーのループペイ社の買収を発表。
23日 100億㌦規模の日韓通貨交換(スワップ)協定,失効。
25日 全経連,主債務系列規制の改善を求める建議書を金融委員会などに提出。
26日 政府,韓トルコFTAの一部を構成するサービス・投資協定をトルコ政府と締結。
27日 朴大統領,秘書室長に李丙琪・国家情報院長を指名。
27日 原子力安全委員会,2012年に停止した月城原発1号機の再稼動承認を発表。
27日 シャーマン・米国務次官,日韓の歴史問題と関連して,「過去の敵への非難で安っぽい喝采を受けるのはたやすいが進歩は生まない」と発言。
  3月
5日 リッパート米大使,暴漢に遭い負傷。
12日 韓国銀行,基準金利を2.00%から1.75%に引き下げ。
12日 韓ニュージーランドFTA,正式署名。
16日 劉建超・中国外務次官補,終末高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備に懸念を表明。
21日 日中韓外相会談,3年ぶりに開催。3カ国首脳会談の早期開催で合意。
27日 政府,アジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を決定。
27日 公正取引委員会,自動車部品メーカー5社を価格談合で摘発。
29日 朴大統領,シンガポールのリー・クアンユー元首相の葬儀参列後に安倍首相と歓談。
  4月
3日 現代自動車,中国河北省滄州に第4工場の建設開始。
7日 日本,外交青書から「韓国と基本的価値を共有」との表現を削除。
9日 成完鍾・京南企業会長,自殺。金品供与先として政治家など8人の名を書いたメモを所持。
9日 金融監督院,金融機関からの信用供与額が多い主債務系列に41グループを選定。
13日 公正取引委員会,ベアリングの価格決定をめぐる談合で日独の自動車部品メーカーに対して合計75億㌆の課徴金納付命令。
21日 韓国人元徴用工ら670人,日本企業72社に対して損害賠償を求めて提訴。
22日 韓米原子力協定の改定交渉,妥結。韓国による使用済核燃料の再処理・ウラン濃縮の明示的禁止規定を削除。
24日 全国民主労働組合総連盟,労働市場の構造改革中止を求めてゼネストに突入。
27日 李完九首相,成鍾完・京南企業会長にからむ不正資金疑惑により辞任。
27日 現代自動車,取締役会にあたる理事会内に「透明経営委員会」の設置を発表。
29日 国会議員再・補欠選挙,4選挙区で実施。セヌリ党候補3人が勝利。
  5月
1日 統一部,地方自治体と民間団体の南北交流を幅広く許容すると表明。
4日 朴大統領,首席秘書官会議で日本の歴史認識問題での姿勢堅持と,経済・安全保障分野での協力強化を表明。
5日 韓ベトナムFTA,正式署名。
7日 サムスン電子,京畿道平沢市に半導体新工場を着工。
7日 新政治民主連合,院内代表に非主流派の李鐘杰議員を選出。
21日 保健福祉部,中東呼吸器症候群(MERS)の感染者を初めて確認したと発表。
22日 ソウル高裁,ナッツリターン事件の控訴審で大韓航空前副社長の趙顕娥被告に懲役10カ月・執行猶予2年の減刑判決。
23日 崔炅煥・経済副首相,東京で麻生副総理と会談(日韓財務対話)。
29日 国会,公務員年金法および国会法改正案を可決。
  6月
1日 韓中FTA,正式署名。
2日 MERSによる初の死者が発生。
10日 朴大統領, MERSへの対処のため訪米を延期。
11日 韓国銀行,基準金利を1.75%から1.50%に引き下げ。
16日 韓国電力グループの韓国水力原子力,古里原発1号機の稼動期間延長申請を行わないと発表。2017年6月に運転終了予定。
18日 朴大統領,首相に黄教安・法務部長官を任命。
21日 尹炳世・外交部長官,訪日。岸田外相と慰安婦問題などを協議。
22日 朴大統領,ソウルで日韓国交正常化50周年記念レセプションに出席。
23日 現代自動車,中国重慶に第5工場の建設開始。
25日 朴大統領,国会の政令修正権限を強化した国会法改正案に対し,拒否権行使。
27日 ソウル市,地下鉄とバスの基本料金をそれぞれ200㌆と150㌆引き上げ。
  7月
1日 現代製鉄,現代ハイスコとの合併手続きが完了。
1日 金烘均・外交部次官補,日本の産業遺産の世界遺産登録をめぐり協議(~2日)。
2日 検察特別捜査チーム,成鍾完・不正資金供与事件と関連,洪準杓・慶尚南道知事と李完九・前首相を在宅起訴。
8日 セヌリ党の劉承旼院内代表,国会法改正をめぐる党議員総会の辞職勧告を受け入れて辞職。
10日 朴大統領,統一準備委員会民間委員との集中討論会で「最近北朝鮮は対話と協力の意思を少しではあるが表している」と発言。
14日 セヌリ党,院内代表に元裕哲・前党政策委員会議長を選出。
24日 国会,MERS対応などを含む経済対策で11.6兆㌆規模の補正予算案を可決。
27日 政府,青年雇用に関する総合対策を発表。
28日 ロッテHD,重光武雄会長が代表権を外れて名誉会長に就任する人事を決定。代表権は重光昭夫副会長に付与(15日)。
30日 朴大統領の実妹である朴槿令,韓国が日本に対し慰安婦問題で謝罪要求を続けるのは不当,と発言。
  8月
4日 京畿道坡州市の非武装地帯で地雷が爆発,下士官2人が重傷。
4日 朴大統領,MERS拡大の責任を問い,文亨杓・保健福祉部長官を更迭。
5日 雇用労働部,来年度の最低賃金を時給6030㌆(前年比8.1%増)に確定。
10日 韓国軍,対北朝鮮拡声器放送を再開。
11日 現代自動車グループ,来年から「賃金ピーク制」の導入を発表。
11日 韓国,対北拡声器の周辺地域に最高レベルの警戒態勢を発令。
14日 安倍首相,戦後70周年に際し談話。歴代内閣の「侵略,植民地支配からの決別」の立場継承を確認。
15日 朴大統領,光復節演説で安倍談話と関連,歴代内閣の歴史認識を継承するとの発言を誠意をもって示すことを求める。
15日 政府,光復節特別赦免でSKグループの崔泰源会長らを含む6527人を釈放。
20日 北朝鮮軍,韓国側の京畿道漣川郡に向けて砲撃。韓国軍,砲撃にて反撃。
20日 日本政府,韓国側の日本産水産物の輸入制限をめぐって世界貿易機関(WTO)に正式提訴。
20日 金武星・セヌリ党代表,「オープンプライマリー(世論調査結果を加味する公認候補選定方式)導入に政治生命をかける」と発言。
25日 金寛鎮・国家安保室長,南北高官協議の妥結を発表。地雷爆発への北朝鮮の遺憾表明など6項目の共同発表文書を発出。
25日 SKハイニックス,半導体2工場を国内に新設する構想を発表。
26日 企画財政部,「最近の消費動向と対応方案」を発表。
  9月
1日 サムスングループの第一毛織,サムスン物産を吸収合併。
1日 ハナ金融グループ傘下のハナ銀行と韓国外換銀行が統合し,KEBハナ銀行が発足。
2日 朴大統領,訪中。習近平・中国主席と会談,6カ国協議の早期再開で一致。
3日 朴大統領,中国の戦勝70周年記念軍事パレードを参観。
13日 経済社会発展労使政委員会,政府と労使間で労働市場改革の協議を妥結。
15日 S&P,韓国の国債格付けを引き上げ。
20日 千正培議員,新党結成を宣言。
23日 現代自動車労組,賃上げなどを求めて4年連続となる部分ストライキに突入。
24日 現代重工業,保有する現代自動車株の大半を現代自動車オーナー家に売却。
28日 朴大統領,国連総会で演説。慰安婦問題,日本の集団自衛権に言及。
28日 金武星・セヌリ党代表と文在寅・新政治民主連合代表,第20代総選挙で「安心番号」(仮想電話番号)を活用したオープンプライマリーの導入に合意。
30日 ポスコ,新日鉄住金との高級鋼板の技術流出訴訟で300億円を支払い和解。
  10月
1日 流通・小売大手,合同で大規模セール「コリア・ブラックフライデー」を開催(~14日)。
6日 崔炅煥・経済副首相,環太平洋パートナーシップ(TPP)協定大筋合意を受け,韓国も参加の方向で検討,と発言。
12日 教育部,中学・高校の国史教科書を国定教科書に変更する旨,行政予告。
16日 朴大統領,ワシントンでオバマ米大統領と会談。共同声明でアメリカ,TPPをめぐる韓国の関心を歓迎。
16日 オバマ米大統領,南シナ海問題と関連し,「中国が国際規範と法を守れなければ,韓国は声を上げるべき」と発言。
19日 朴大統領,2閣僚を指名。国土交通部長官に姜鎬人・元調達庁長。
20日 韓民求・国防部長官,中谷防衛相と会談。日韓防衛協力について協議。
20日 南北離散家族の再会事業を北朝鮮の金剛山で実施(~26日)。
29日 韓国産業銀行,巨額債務を抱える大宇造船海洋の経営再建策を発表。
30日 ロッテグループ,サムスングループが持つ石油化学事業の買収を発表。
31日 朴大統領,李克強・中国首相と会談。協力拡大を議論。
  11月
1日 朴大統領,安倍首相および李克強・中国首相と会談(日中韓首脳会談)。共同宣言では,北朝鮮の核開発反対で一致。
2日 朴大統領,安倍首相と初の単独会談。慰安婦問題の早期妥結で合意。
2日 韓米定例安保協議(SCM)開催。THAADの韓国配備に関し,カーター米国防長官は「同盟が決めること」と発言。
4日 韓民求・国防部長官,ASEAN国防相会議で南シナ海における航行の自由は保障されるべき,と発言。
6日 LCC最大手の済州航空,韓国取引所に株式上場。
10日 朴大統領,労働改革法案と経済活性化法案の審議促進と,国会議員には「誠実な人」だけを選んでほしい,と発言。
14日 民主労総など53団体,ソウルで「民衆総決起集会」。6万4000人が参加。
22日 金泳三・元大統領,死去。
25日 セヌリ党,集会における覆面着用を制限する「覆面禁止法」を発議。
  12月
3日 国会,2016年度予算案を可決。
6日 企画財政部,全公共機関での「賃金ピーク制」の導入完了を発表。
9日 サムスン電子,自動車部品関連を担当する「電装事業チーム」の新設を発表。
11日 ソウル中央地裁,サムスン電子の洗濯機を破損したとしてLG電子の趙成珍社長らが在宅起訴された裁判で無罪判決。
11日 南北当局者次官級会談,開催。
13日 新政治民主連合の安哲秀・元共同代表,離党。
16日 鄭義和・国会議長,青瓦台が要請した国家非常事態条項による労働改革,経済活性化,テロ防止関連法案の職権上程を拒否。
17日 ソウル中央地裁,朴大統領への名誉棄損で起訴された加藤達也・産経新聞前ソウル支局長に無罪判決。
18日 ムーディーズ,韓国の国債格付けを引き上げ。4月に続いて今年2度目。
20日 韓中FTA,韓ニュージーランドFTA,韓ベトナムFTA,発効。
21日 朴大統領,5閣僚を指名。経済副首相兼企画財政部長官に柳一鎬議員。
21日 サムスングループ,バイオ医薬品を受託生産する新工場の建設を発表。
21日 安哲秀,新党創立の意向を表明。新政治民主連合との選挙協力は否定。
23日 憲法裁判所,日韓請求権協定の最終解決を定めた条項に対する強制連行被害者遺族の違憲訴願を却下。
24日 政府,MERSの正式終息宣言。
28日 日韓外相会談。慰安婦問題で妥結。日本政府が元慰安婦支援の財団に対し10億円を出資することなどで合意。
28日 新政治民主連合,「共に民主党」と改称。

参考資料 韓国 2015年
①  国家機構図(2015年12月31日現在)

(出所) 大統領府ウェブサイト(http://www.president.go.kr)などから筆者作成。

②  国家要人名簿(2014年12月31日現在)

主要統計 韓国 2015年
1  基礎統計
2  支出項目別国内総生産(実質:2010年固定価格)
3  産業別国内総生産(実質:2010年固定価格)
4  国(地域)別貿易
5  国際収支
6  国家財政
 
© 2016 日本貿易振興機構 アジア経済研究所
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