2018 年 2018 巻 p. 389-416
2016年の後半から顕在化したイスラーム保守派の政治的影響力の高まりは,4月のジャカルタ州知事選挙で華人キリスト教徒の現職知事が敗北するという結果につながった。これに対してジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)政権は,多様な民族・宗教の共存を謳う建国5原則パンチャシラの教化でイスラーム保守派に対抗しようとしている。そのパンチャシラに反するという理由で,急進的イスラーム保守派団体の解放党が政府による解散処分を受けた。汚職のニュースには毎年事欠かないが,2017年は大物政治家の逮捕劇が世間を騒がせた。議会第2党ゴルカル党の党首で国会議長のセトヤ・ノファントの汚職容疑が明らかになってから逮捕されるまでの半年以上,汚職撲滅委員会(KPK)の活動を妨害する動きがさまざまな形で展開された。
経済は,前年に引き続き低いインフレ率と失業率,ルピアの安定など平穏な1年であった。一方で,経済成長率は5.07%にとどまり,思うように伸びない経済にいら立ちの見える1年でもあった。金利も2度引き下げられたものの,銀行貸出は目標の下限を達成したにすぎなかった。国家財政は依然として厳しいが,財政赤字は国内総生産(GDP)比2.57%に収まった。多額の投資が必要なインフラ投資には国家予算の枠外で投資を行うスキーム(PINA)を導入し,インフラ整備を加速させた。弱含む家計消費に購買力の低下が懸念されるなかで,配車アプリサービスの定着などデジタルエコノミーの広まりが見えはじめた。
対外関係においても,イスラームが重要であった。フィリピンでのマラウィ事件では,政府はフィリピン,マレーシア両国に働き掛けてイスラーム過激派の自由な行動を防ぐための海上共同警備を実施した。ミャンマーでのロヒンギャ問題では,迫害されたイスラーム教徒を支援すべく積極的な外交が展開された。
2月15日に統一地方首長選挙が行われた。2005年に導入された地方首長(州知事,県知事,市長)に対する住民の直接選挙は,これまで自治体ごとに任期満了の時期にあわせて個別に実施されてきたが,将来的には同日に選挙を行うため,順次選挙日程を統一させている。2015年に次いで2回目となる2017年の統一地方首長選は,101自治体(7州,76県,18市)が対象となった。
なかでも注目されたのは,首都ジャカルタの州知事選挙である。前回2012年の州知事選では,中ジャワ州ソロ市の改革派市長だったジョコウィが決選投票の末,現職を破って州知事に就任し,その勢いに乗って2014年の国政選挙で大統領にまで上り詰めた。この出来事によって,ジャカルタ州知事選は,大統領選に大きな影響を与える非常に重要な選挙として,政界でも重視されるようになったのである。さらに,2016年10月に選挙戦が始まると,イスラーム保守派が宗教を利用した大規模な大衆動員を行って華人キリスト教徒の現職知事バスキ・チャハヤ・プルナマ(通称アホック)を攻撃するなど,社会の分裂を煽るような動きが全面的に展開された。年が明けても宗教を利用したアホック攻撃は止まず,投票日直前の2月11日には,保守派イスラーム団体が主催した合同礼拝がジャカルタ中心部のイスティクラル・モスクで行われ,「イスラーム教徒はイスラーム教徒の候補に投票すべき」という呼び掛けがなされた。アホック以外の候補者2組4人もこの礼拝に参加した。
このような執拗な個人攻撃にもかかわらず,現職正副知事のアホックとジャロット・サイフル・ヒダヤットのペアは2月の投票で1位を獲得した(得票率42.99%)。得票2位は,アニス・バスウェダンとサンディアガ・ウノのペアである(得票率39.95%)。政治学者のアニスは,同国史上最年少の38歳でパラマディナ大学学長に就任するなど,若手有力知識人の1人である。辺境地域の学校に不足している教師を送り込む運動を先導するなど,社会活動にも積極的に取り組んでいた。2014年の大統領選ではジョコウィの選対幹部としても活躍し,新政権では文化・初中等教育相として入閣を果たしたが,2016年7月の内閣改造で更迭されていた。サンディアガは,投資会社を中心とする新興財閥を経営する若手実業家である。スシロ・バンバン・ユドヨノ前大統領の長男で,陸軍を退役して立候補したアグス・ハリムルティ・ユドヨノと州政府官僚のシルフィアナ・ムルニのペアは3位に終わった(得票率17.05%)。しかし,ジャカルタ州知事選は有効投票の過半数の得票が当選の条件となっているためアホックの当選とはならず,上位2組が決選投票へと進むことになった。1位のアホックと2位のアニスとの差はわずか3ポイント,16万票余りであった。
4月19日に実施された決選投票では,2位だったアニスが逆転で当選を果たした(得票率58%)。投票直後から各種メディアと世論調査会社が実施した出口調査や開票速報では,アニス=サンディアガ組の大勝が伝えられたため,アニスは投票が締め切られた2時間後には早々に勝利宣言を行った。一方,アホックも当日夕方には敗北を認める記者会見を開いた。
決選投票で鍵となったのは,第1回投票で3位に沈んだアグス=シルフィアナ組が獲得した約94万票を自陣営に取り込めるかであった。選挙戦では「イスラームを冒涜した」として強い批判にさらされたアホックも,決選投票で勝利するためにはイスラーム教徒の支持者を取り込む必要があると考え,アグスの擁立に加わっていたイスラーム系政党に接近した。アグス陣営に加わっていたイスラーム系政党は3政党あったが,このうちの2政党(民族覚醒党と開発統一党)が呼び掛けに応じてアホック支持を打ち出した。一方,アニス陣営は,アグス陣営とは支持基盤が基本的に共通しているとの認識に立って,イスラーム教徒からの支持を確実にするため,イスラーム教指導者を通じた支持固めを続けた。アニスは,州内のモスクでの礼拝にも顔を出し,イスラーム教徒に直接支持を訴えた。
結局,イスラーム教徒の支持を取り付けようとしたアホック陣営の戦略が実を結ぶことはなかった。アホックの得票は,州内6地区のうち5地区で第1回投票とほぼ同程度にとどまった。アグス陣営からアホック陣営に鞍替えした2つのイスラーム系政党の支持者も,ほとんどは党の方針に関係なく,アニスに投票したようである。アグス票の9割以上は,アニス陣営に流れたと思われる。
第1回投票までに作られた「アホック=反イスラーム」という流れをわずか2カ月の選挙戦期間で覆すことは難しかった。世論調査では,「アホック州政の実績を認める」と答える回答者が7割に達するにもかかわらず,投票の判断材料として重視するものは何かという問いに対しては「宗教が同じであること」と答える回答者が半数を超えた。「イスラーム教徒がイスラーム教徒の指導者を選ぶことは義務である」と書かれた張り紙が集落のあちこちに張り出され,「アホックはイスラーム教を冒涜した」という雰囲気が社会に充満した。このような環境の下では,宗教以外の争点を自ら探し出して候補者を比較する有権者は多くはならない。出口調査の結果で,高学歴の社会的上層出身の有権者だけはアホック支持が多数だったことが示されていることも,このことを裏付けている。
イスラーム保守派への対抗策として「パンチャシラ」を強調ジャカルタ州知事選が終わった後も,アホックに対する攻撃は続いた。選挙戦前に住民を前にして行った演説の内容が「イスラーム教を冒涜した」と告発されたアホックに対する裁判は,2016年11月から選挙戦と並行して進められていた。裁判の焦点は,アホックの発言が宗教冒涜罪にあたるかどうかであった。4月の決選投票後に行われた論告求刑では,検察は宗教冒涜については罪に問わず,イスラーム教指導者を誹謗したとして侮辱罪のみを適用し,禁錮1年,執行猶予2年を求刑した。ところが,北ジャカルタ地裁は,アホックの発言が宗教冒涜罪にあたると認定し,禁錮2年の実刑判決と即時収監を言い渡した。検察が該当しないと認定した罪に対して,求刑以上の刑を科した異例の判決であった。アホックの裁判は,有罪判決を求めるイスラーム保守派団体が常に動員をかけるなど,緊張した雰囲気のなかで進められた。裁判官も,イスラーム保守派によるプレッシャーに負けた形となった。当初は裁判を継続する意志を示していたアホックも,控訴を諦め,1審の有罪判決を受け入れて収監された。
このようなイスラーム保守派の影響力の伸張に対して,ジョコウィ大統領も無策だったわけではない。ジャカルタ州知事選に向けてイスラーム保守派が大衆動員をかけて大規模なデモを組織したときには,主要な穏健イスラーム組織の指導者らと次々と会談して,イスラーム教各派が保守化の流れに乗ってしまいそうな動きを押しとどめようとしたり,その集会に自らが参加してイスラーム色を薄めようとしたりした。しかし,イスラーム保守派が作り出した「ジャカルタ州知事にはイスラーム教徒が選ばれるべき」という流れを覆すことはできなかった。
ジャカルタ州知事選の結果を受け,ジョコウィ大統領はイスラーム保守派対策を本格化させた。ひとつは,国家の公定イデオロギー教化の動きである。かつて日本軍政下で独立後の国家形態を話し合っていた独立運動家たちは,多様な宗教・民族が同居する国家を運営するための原則としてパンチャシラ(「5つの理念」の意)というイデオロギーを打ち立てた。その後,このパンチャシラは建国5原則として憲法前文に書き込まれ,国民統合を象徴するものとなった。スハルト時代には,パンチャシラはすべての国民が従うべき「唯一の原則」として政府から強制され,学校や政府機関で徹底的な道徳教育が実施された。しかし,民主化後は,パンチャシラの強制が思想の自由を侵し,反体制運動弾圧の手段となったという反省から,パンチャシラ教育の義務化は廃止された。その一方で,学校での宗教教育やキャンパスでの宗教活動にイスラーム保守派が進出したために,若年世代の宗教的思考が保守化,急進化したともいわれており,パンチャシラ教育を復活する必要があるとの声も最近になって強まってきていた。
そこでジョコウィ大統領は,独立運動の指導者だったスカルノがパンチャシラを公式に発表した日である6月1日を2017年から国民の祝日とするとともに,パンチャシラ思想を広めるための特別チーム(パンチャシラ・イデオロギー指導大統領作業ユニット: UKP-PIP)を設置した。大統領が自らパンチャシラの国民的普及に乗り出したのである。実は,スハルト時代にも中学生から公務員までの国民に対してパンチャシラ研修を実施するための政府直轄機関(BP7)が設置されていた。ユディ・ラティフ同ユニット代表は「組織の規模もやり方も以前とは違う」と弁明したが,スハルト時代に逆戻りしたような動きに見えることも確かである。
そして,この国家公定イデオロギーであるパンチャシラを御旗に,イスラーム保守派を取り締まろうという動きが始まった。ジャカルタ州知事選で一連の保守派の運動を主導してきた急進団体・イスラーム防衛戦線(FPI)の代表リズィク・シハブに対しては,建国の父スカルノ初代大統領の名誉を毀損しパンチャシラを冒涜する発言をしたとして,警察が捜査を開始した。その後,メッセンジャーアプリで妻以外の女性と猥褻な画像をやり取りしていたとして反ポルノ法違反の容疑にも問われたリズィクは,4月下旬にメッカ巡礼のためサウジアラビアに渡航したまま帰国していない。
急進的イスラーム保守派団体が解散処分にさらに政府は7月,パンチャシラに反する教義を持つ組織だとして,急進的イスラーム保守派団体の解放党(ヒズブット・タフリル・インドネシア: HTI)の解散を決定した。解放党は,カリフ制イスラーム国家の樹立を目指す国際的な運動で,インドネシアでは1980年代初頭に活動が始まり,大学生を中心に支持を広げていた。2006年には政府から法人格も認められていたのだが,今回それを取り消されて解散を命じられたのである。この政府決定に対しては,結社の自由を侵害するものだとして,イスラーム保守派団体だけでなく,リベラルな市民社会組織や国際NGOからも反対や懸念の声が上がっている。
解放党の解散を決定するまでのプロセスが民主的でなかったことも問題視されている。社会団体全般を規定する既存の大衆団体法(2013年制定)でも,国家統一を脅かしたりパンチャシラに反したりするような団体を解散させるための条文があったが,政府が一方的に団体を解散できないよう,警告書の発出から一時的な活動停止,そして裁判所の決定に基づいた解散に至るまで,丁寧に手順を踏むことが規定されていた。しかし,今回ジョコウィ政権は,「緊急の事態において」大統領が独自の権限で制定できる,法律と同等の効力を持つ「法律代行政令」で大衆団体法の改正を一方的に決定し,1年以上かかるとみられる団体解散の手続きに関する条項をすべて削除したのである。大統領が議会での審議を経ることなく法律の改正を政令として制定しなければならない緊急事態だったかどうかは疑わしく,解放党の解散ありきの決定だったと言わざるをえない。また,この大衆団体法は,反政府運動の取り締まりを可能にするものだとして,制定された当時から批判する声もあったが,政府の一存で団体の解散が決定できるようになったことで,さらに強権的な性格が増したことも問題である。
イスラーム保守派が勢力を伸張させているのは,社会のイスラーム化が進みつつあるという現象とともに,民主化によって思想,信条,結社などの自由が認められるようになったためでもある。民主主義の下で影響力を増したイスラーム保守派が,民主主義と国家統一を脅かすようになった事態に対して,世俗派のジョコウィ大統領は非民主的な手段で対抗しようとしている。ジョコウィの政敵は,ここがチャンスとばかりに,「ジョコウィは独裁者である」というレッテルを貼って,「庶民派のジョコウィ」という看板を攻撃しはじめている。社会的分断を煽って他者の権利を侵害する反民主的な行動に対して,民主主義がどう対処すべきかという,現代世界が頭を悩ませている問題にインドネシアも直面している。
ゴルカル党党首が汚職容疑で逮捕される国会第2党のゴルカル党党首で国会議長も務めるセトヤ・ノファントが,11月に汚職撲滅委員会によって逮捕された。容疑は,電子住民票(e-KTP)の導入にあたってセトヤ(当時国会ゴルカル党会派代表)の知人の経営する企業が事業を落札するように便宜を図り,その見返りに662億ルピアを受け取るとともに,国会での予算審議がスムーズに進められるように関係する国会議員や内務省高官に賄賂を贈る手配で主導的な役割を果たしていた,というものである。総事業費5兆9000億ルピアのうち2兆3000億ルピアが不正に流用されたと推計されており,過去最大規模の汚職事件になる可能性がある。
汚職撲滅委員会は,2014年からこの事件の捜査を進めてきており,2016年10月には当時の内務省人口・住民登録総局長と同総局の住民情報管理・行政局長を逮捕している。しかし,事件の中心的人物とみられているセトヤの逮捕は容易ではなかった。セトヤは,過去にも少なくとも5つの汚職事件への関与が疑われていたにもかかわらず,捜査の網を巧みにくぐり抜けてきた。ジョコウィ政権下でも,パプアで金・銅鉱山を経営するアメリカ系鉱山会社フリーポート社の事業契約延長をめぐる政府との交渉で,セトヤは同社幹部と密かに接触し,同社株式の譲渡を含む便宜供与を依頼するなど,政府には何の断りもなく裏交渉を行っていたことが暴露された。この時セトヤは責任の追及を逃れるため国会議長の座は降りたが,捜査当局の追及を逃れることには成功している。
汚職撲滅委員会は,内務省高官に対する捜査からセトヤの容疑を固め,7月17日に初めてセトヤを容疑者に指名し,事情聴取のための出頭を求めた。しかしセトヤは,出頭要請に応じるどころか,容疑者指名を不当だとして予審に訴え,9月に容疑者指名取り消しの判決を勝ち取った。
さらにセトヤは,汚職撲滅委員会の地位や権限を根本的に弱めることを画策する。これまで多くの議員が汚職事件で摘発を受けてきた国会は,汚職撲滅委員会にやりたい放題されてきたという意識が強く,セトヤの考えを共有していた。そこで,国会は汚職撲滅委員会の組織的問題を調査するという名目で国政調査権の行使を決め,同委員会を弱体化させるための法改正案を準備する作業を進めた。一方,たびたび高官が汚職疑惑で摘発される警察も,同じ捜査当局にもかかわらずより強い権限を与えられている汚職撲滅委員会に対して不満を抱いていた。そこで,汚職撲滅委員会包囲網が強まった機に乗じて,警察内部に汚職対策特別部隊を設置することを提案し,汚職事件の捜査権限を奪うことを目論んだ。この間,電子住民票汚職事件を主任捜査官として指揮していたノフェル・バスウェダンが何者かによって襲撃され,片眼を失明するという事件も発生している。
このように汚職撲滅の努力に抗する動きがこれまでになく強まったが,汚職撲滅委員会も捜査の手を緩めることはなかった。同委員会は,11月10日にあらためてセトヤを容疑者に指名するとともに出頭を求めた。それでも出頭要請に応じないセトヤに対して強制的な出頭命令が下ろうとしたとき,セトヤは自発的に出頭するふりをして自作自演の交通事故を起こして入院し,逮捕を逃れようとした。しかし,セトヤの必死の抵抗も今回は実を結ぶことはなく,汚職撲滅委員会は,医療機関からの許可を取ったうえで,11月17日にセトヤを逮捕した。
セトヤの逮捕で,ゴルカル党をめぐる政治力学も大きく変化した。セトヤは,ゴルカル党首の座を退き,党首就任とともに返り咲いていた国会議長職の座も失った。党内では,2014年に政権への参加か否かをめぐって生じた対立が再び表面化した。ジョコウィ大統領は,ようやく固めたゴルカル党との関係を維持するため,内閣の一員として政権との関係も良好なアイルランガ・ハルタルト工業相を次期党首候補として推すことにした。12月18日に実施された臨時党首選では,セトヤの後任としてアイルランガが選出され,ゴルカル党とジョコウィ政権の関係も維持されることになった。
(川村)
2017年のインドネシアのGDPは13兆5888億ルピアであった。米ドルベース(1ドル=1万3534ルピア換算)では1兆40億ドルと,1兆ドルを超えた。このニュースは大きく報じられたものの高揚感はなく,成長率は目標の5.2%を下回る5.07%で終わった。2017年の家計消費は名目GDPの56.1%で前年とほぼ同水準であったが,伸び率は4.95%と5%を下回った。寄与度は2.7%で前年と変わらずであった。労働組合,政党,宗教団体,私立学校などを含む「対家計民間非営利団体」(NPISH)の割合は1.2%を占め,前年比6.9%増であった。政府支出の割合は9.1%で前年比2.1%増,寄与度は0.2%と前年に比べて経済成長への貢献度は増加した。投資(総固定資本形成)の割合は32.2%で前年比6.2%増と改善し,寄与度も2.0%と高かった。とくに年後半の伸びが大きく,第3四半期と第4四半期の前年同期比の成長率はそれぞれ7.1%,7.3%であった。同時期の機械・設備投資はそれぞれ15.2%,22.3%と大幅に伸びた。そのほか輸送機器投資は第1四半期で25.3%,第2四半期で12.5%,通年でも8.9%,その他設備投資も通年で9.3%の伸びとなり,経済成長の下支えとなった。外国直接投資の流入額がもっとも多かったのは製造業であった(中央銀行統計)。他方,鉱業では資本の引き揚げが目立った。国別の外国直接投資では前年同様シンガポールの107億2800万ドルが1位で,2位は日本の40億6000万ドル,3位はオランダの39億9300万ドル,中国は4位で18億4100万ドルであった。アメリカは鉱業部門の引き揚げが影響し24億6900万ドルの資本回収となった。輸出がGDPに占める割合は20.4%(前年比9.1%増)と健闘したが,GDPの19.2%を占める輸入の伸びも8.1%と大きかったため,純輸出(輸出マイナス輸入)の成長への寄与度は0.35%となった。
国際収支では,経常収支は172億9000万ドルの赤字となり,赤字幅は前年の169億5000万ドルから若干拡大した。輸出は1688億9000万ドル,輸入は1499億9000万ドルとどちらも前年より増加し,貿易収支は188億9000万ドルの黒字(前年は153億2000万ドルの黒字)となった。非石油・ガスの輸出は1514億ドル,輸入は1261億ドルとそれぞれ前年より微増した。石油・ガス輸出も156億ドルと前年から伸びたものの輸入が229億ドルと前年の177億ドルから拡大したため,石油・ガスの貿易収支は赤字幅が広がり73億ドルの赤字となった。
輸出額でもっとも多いのは,前年同様石炭(全輸出の12.1%)とパーム油(同11.0%)で,それぞれ前年比40.6%,28.9%と大幅な増加となった。未加工鉱石の輸出禁止が条件付きで解除されたことにより,ニッケルは1億5519万ドル,ボーキサイトは6643万ドルが輸出されたが,輸出禁止前である2013年の輸出額のそれぞれ9%,5%の水準にとどまった。全輸出(石油・ガス含む)に占める鉱物資源の割合は22.3%と前年の20.6%より増えた。2017年の全輸出(石油・ガスを含む)相手国の1位は中国で輸出額は234億ドル,2位はアメリカの177億ドル,3位は日本の169億ドルであった。輸入の1位は343億ドルの中国,2位はシンガポールの182億ドル,3位は日本の154億ドルであった。対中国では109億ドルの貿易赤字となったが,赤字幅は前年の136億ドルより縮小した。
アメリカの金融緩和政策が見直され,新興国からの資本流出が懸念されるなか金融収支は,前年とほぼ同水準の298億ドルの純流入となった。ポートフォリオ投資は政府部門では継続的に資本流入が続く一方,民間部門ではアメリカの2度目の金利引き上げ後,第3四半期に13億4500万ドル,第4四半期に15億3825万ドルが流出した。通年のポートフォリオ投資は前年より17億ドル増の207億ドルの純流入となった。その他投資のうち,政府部門では第2四半期に9億2347万ドル,第4四半期に5億9743万ドルの流出となり,通年で13億5281万ドルが政府部門から流出した。一方,その他の投資ではインドネシアからの対外投資が年間で132億4242万ドルとこれまででもっとも高い水準となった。
低い成長率,購買力低下の懸念GDPの低い伸び率の要因として家計消費の低迷が指摘され,購買力の低下が懸念された。とくに中所得層以下の所得層での購買力低下が問題視された。2017年の家計消費の伸び率は4.95%と前年の5.01%からわずかに低いものの,GDPに占める割合は56.1%と,前年の56.6%,一昨年の56.3%とほとんど変わっていない。家計消費の内訳をみると,「食品・飲料品」は前年比5.2%増,「健康・教育」は5.6%増,「交通・通信」は5.3%増,「外食・宿泊」は5.5%増であった。一方,「衣料品・靴・修理」および「住居・住居関連」がそれぞれ3.1%,4.3%と家計消費全体の伸び率を下回った。とくに2015年には4.4%の成長率であった「衣料品・靴・修理」は2016年には3.3%と低くなり,2017年はさらに伸びが鈍化した。加えて,家計消費のメルクマールとなる二輪車の国内販売台数は,前年比0.8%減の588万6103台と伸び悩み,自動車も前年比1.6%増の107万9534台と微増に終わった。また,百貨店などの小売業の売り上げも低迷し,2017年の卸売・小売業のGDP成長率は4.4%と低く,購買力低下の懸念に拍車をかけた。その一方で,これらの統計には急速に拡大するインターネット販売などの電子商取引(eコマース)が考慮されておらず,購買行動の変化が十分に反映されていないため,購買力の低下を心配する必要はないという意見もあった。実際,インドネシアでのeコマースの売上高は年々拡大し,2017年は215兆ルピアと前年の197兆ルピアから増加している。
いずれにせよ大幅な成長が見込めない家計消費であるが,伸び率および寄与度ともここ数年間に大きな変化はなく,GDPの伸び悩みのもっとも大きな要因は,輸出の低迷といえる。国際商品価格の高騰が続いた2011年の輸出の寄与度6.3%あったが,2017年は1.9%であった(図1)。2014年からの3年間の輸出の寄与度はマイナスであったため,2017年は回復基調にあるといえるものの,いまだ力不足である。しかも主要輸出品目は依然として石炭,パーム油,石油,天然ガスといった天然資源産品である。繊維・繊維製品,卑金属製品などの製造業の輸出も輸出全体の7.4%,5.6%を占めるが,2011年から2017年の6年間の輸出額の伸び率はそれぞれ4.5%減,11.9%減と減少しており,2000年代後半からの天然資源頼みの経済成長が鮮明になった。
(出所)インドネシア中央統計庁。
2017年の消費者物価指数(CPI)は前年比3.61%増,食料品・燃料をのぞいたコアインフレ率は2.95%であった。年前半では一時,生活必需品のひとつである唐辛子が前年比71%に高騰する時期もあったものの,インフレ率は3.3~4.4%の幅で推移し,歴史的な低い水準が続いている。貧困率は10.1%と前年の10.7%から低下し,ジニ係数は0.391と前年とほとんど変わらなかったが,失業率は5.5%と前年の5.6%から改善した。安定した物価に支えられて,金利も緩やかな低下傾向であった。指標金利(7日物レポレート)は,2017年に入っても前年の4.75%が維持されていたが,8月に4.5%,9月に4.25%と2カ月続けて引き下げられた。為替レートも1ドル=1万3300ルピアから1万3570ルピアという非常に狭い範囲で,安定的に推移した。銀行貸出残高は4782兆ルピアと前年の4413兆ルピアから8.4%増加したが,中銀が想定する8~10%の下限に張り付き,貸出残高のGDPに対する割合は前年から微減の35.2%であった。その一方で,対外債務残高は2013年以降増加傾向にある。2017年の債務残高は3億5225万ドル(4700兆ルピア)と国内銀行貸出残高とほぼ同水準となった。内訳は公的部門(政府および中央銀行)が1億8062万ドル(2420兆ルピア),民間部門(国営企業含む)が1億7163万ドル(2300兆ルピア)であった。
2015年後半から14本が発表された経済政策パッケージは,2017年も引き続き発表されたが2本にとどまった。6月の第15弾経済政策パッケージは,物流業者のコストを削減し,物流の競争力向上を目指すものであり,8月の第16弾は中央・地方の許認可の迅速化についてであった。
税恩赦の恩恵は少ないが,財政赤字は抑制2016年7月から開始された租税恩赦プログラム(『アジア動向年報2017』参照)が3月末で終了した。最終的な恩赦税の納税額は114兆ルピアとなり,目標の165兆ルピアの69.1%にとどまった。追加資産申告は4855兆ルピアで,目標申告額4000兆ルピアに対して121.4%の達成率となった一方,国外からの還流資金は1000兆ルピアの目標に対して147兆ルピアと,14.7%の低い達成率に終わった。成功裏に終了したというのが政府の評価であるものの,申告のほとんどは税の割引率のもっとも高い第1期(2016年7月1日~9月30日)に集中し,租税恩赦プログラムの2017年度の税収への貢献は多くなかった。
しかしながら,2017年の税収は1339兆8000億ルピアとなり,予算額の1436兆7000億ルピアの93.3%を達成した。財政は引き続き赤字となっているものの,赤字額は345兆8000億ルピア,GDP比2.57%であった。1735兆ルピアの歳入予算に対して達成率は95.4%(1655兆8000億ルピア)であり,歳出は予算額2133兆ルピアに対して93.8%の執行率(2001兆6000億ルピア)となった。
鉱物輸出とフリーポート株式譲渡未加工鉱石の輸出を禁止した2009年新鉱業法は2014年から施行されたが,未加工鉱石の純度に応じて輸出規制の緩和措置がとられていた。緩和措置の期限であった1月11日に,政府は政令2017年第1号を制定し,条件付きで引き続き鉱物の一部の輸出を認めることにした結果,従来の鉱業事業契約(Kontrak Karya: KK)の保有者は,鉱業事業許可(Izin Usaha Petambanan: IUP),特別鉱業事業許可(Izin Usaha Petambanan Khusus: IUPK)に切り替えることが条件となった。さらにIUPもしくはIUPKを保有する外国企業は,生産開始から6年目までに株式の最低20%を,7年目までに30%を,8年目までに37%を,9年目までに44%を,10年目までに51%を中央・地方政府,民間企業も含めたインドネシア資本に売却することも定められた。
インドネシアの銅鉱山は,パプア州にある世界第2位の規模のグラスベルグ鉱山と西ヌサトゥンガラ州にあるバツ・ヒジャウ鉱山の2つが主要なものであるが,前者はアメリカのフリーポート・マクモラン社,後者はアメリカのニューモント社と日系企業連合4社(住友商事,住友金属鉱山,三菱マテリアル,古河機械金属)が所有していた。しかし,バツ・ヒジャウ鉱山のニューモント社と日系企業連合4社の持ち株を含めた82.2%は,2016年7月にインドネシア資源企業大手のメドコ・エネルギー社が保有するアマン・ミネラル社に売却された。
フリーポート・マクモラン社の子会社として1967年にグラスベルグ鉱山で操業を開始したフリーポート・インドネシア社(PT Freeport Indonesia: PTFI)は,1991年にインドネシア政府と鉱業事業契約(KK)を締結し,同鉱山の採掘権を2021年まで獲得していた。そのため1月の政令はこの契約に違反するとして政府と対立した。交渉の結果,PTFIの採掘権を2041年まで20年間延長する一方,同社の株式の51%をインドネシア側に売却することが合意された。12月に入ってから決着をみた株式売却については,11月29日に国営鉱業持ち株会社として再編されたインドネシア・アサハン・アルミニウム(イナルム)社に41.64%を売却し,10%はパプア州ミミカ県が保有することが合意された。イナルム社はすでに9.36%を保有しているため,フリーポート・インドネシア社の株式の51%を保有することになる。これによりインドネシアの主要銅鉱山はインドネシア企業の手に渡ることになる。
インフラ投資の進捗インフラの整備は,ジョコウィ政権の最重要課題である。2015年1月に「国家中期開発計画2015~2019年」が策定され,2019年までに必要なインフラ投資は5519兆4000億ルピアと見積もられた。問題はこの多額の資金をいかに調達するかである。2017年度国家予算案のうち,インフラ予算は346兆4000億ルピアと前年度補正予算における317兆1000億ルピアより約30兆ルピア増額されたが,これだけでは十分ではないため,国家開発企画省は国家予算外投資資金調達スキーム(Pembiayaan Investasi Non Anggaran Pemerintah: PINA)を用いることを2月に決定した。PINAは,国営企業や民間企業が協力して政府の支援なしにインフラ投資を行う,官民連携方式(Public Private Partnership: PPP)とは別の新しいスキームである。このスキームを使って,2017年は34案件(投資総額348兆2000億ルピア)のインフラ事業が着手された。3月には,世界銀行がインドネシアの民間によるインフラ投資を促進するためにインフラ投資公社(PT Indonesia Infrastructure Finance: IIF)に対して,2009年の1億ドルに続き2億ドルの融資を決定した。また,インフラ投資のうち16兆7600億ルピアはイスラーム国債の発行によってまかなわれるなど,調達の手法も多様化している。
こうした各方面からの資金調達もあって,インフラ整備は進みつつある。国家中期開発計画のなかでは,高速道路1000キロ,新規の道路2650キロ,新規橋梁30キロ,65基のダム建設,15の空港の新設が目標とされた。高速道路は2017年に392キロが新たに追加され,総延長は568キロとなった。道路は778キロが新規に建設され,累積で2623キロとなり目標をほぼ達成した。橋梁は8つの橋と4つの吊り橋が建設され,720メートルが追加された。新規のダムは30基が建設され,累積で39基が建設された。空港は建設済みの7空港と建設中の8空港を合わせると目標の15空港建設は達成可能とみられている。公共事業省の2017年度予算は,106兆2500億ルピアのうち80.59%が消化された。
ジャカルタ首都圏でのインフラ整備も進んだ。ジャカルタ・スカルノハッタ国際空港では拡張事業が進められ,第3ターミナルが建設された。2016年8月に国内線の運航など一部が開業していたが,5月に国営ガルーダ・インドネシア航空が国際線を移し,本格的な運用が開始された。他社の国際線も順次移行し,年間2500万人の利用が見込まれる。9月にはターミナル間を結ぶ全自動無人運転のスカイトレインが開業,12月には空港とジャカルタ中心部を結ぶ初の鉄道路線が開通した。
これらはインフラ開発促進に注力するジョコウィ政権の3年間の成果といえるが,インフラ開発を加速させるための障害となっているのは依然として土地収用の問題である。土地収用プロセスに時間がかかりすぎることが,その間に土地ブローカーの介在を許し,対象の土地の価格を上昇させ,ますます土地収用の問題解決を困難なものにするという悪循環も生まれている。資金不足解消には民間の資本参加が欠かせないが,土地収用に時間がかかることがわかっているため,民間資本も投資にすぐには動かない状況になっている。土地収用の問題だけではなく,投資計画には関係省庁や機関,地方政府,自治体,村レベルでのコミュニティなど多くの関係者が存在することが計画の円滑な実行を困難にさせている。とくに投資計画担当者と地方政府との調整がスムーズでないため,配分済みの予算が手つかずのままとなるなど,投資計画の効率化も重要な課題となっている。
デジタル経済の波前年に発表された第14弾経済政策パッケージでは,eコマースの発展が目標となった。eコマースは,一般にインターネットを利用した商取引を意味するが,世界ではeコマースより広義のデジタル技術を利用した取引全般を指すデジタルコマースが拡大している。インドネシアも例外ではなく,そのもっとも顕著な例が配車アプリサービスの定着である。バイクタクシーがGo-Jek(ゴジェック)と書かれた緑のヘルメットをかぶりはじめたのはつい2年ほど前のことだが,今や配車アプリを使ったバイク・自動車の輸送サービスは,インドネシア企業のゴジェック,マレーシア企業のグラブ,アメリカ企業のウーバーなどが熾烈な競争を繰り広げている。
2017年は配車アプリサービスが急速に普及し,市民の生活に定着した年といえる。その一方で,既存のタクシー業界との軋轢も大きくなり,配車アプリサービスは従来の規則(交通と道路輸送に関する法律2009年第2号と道路輸送に関する政令2014年第74号)に違反しているとして,規制を求める声が強まった。運輸省は,2016年1月と3月に運輸大臣令(2016年第3号および32号)で,配車アプリサービスは法人の形態をとること,さらに自家用車を利用して営業する運転手は公共交通機関用の運転免許証(SIM)および車検(KIR)を取得することを定めた。さらに,車両の待機場所の確保や車両登録証(STNK)を法人名義に変更することなどを義務付けた(2017年10月1日から)。
配車アプリサービス業者への風当たりが強まる一方で,規制しようとする動きと性急な規制をけん制する動きが相まって混乱をきたした。2016年の運輸大臣令は2017年3月に改正されたが(運輸大臣令2017年第26号),8月に最高裁判所によって,車検の取得,運賃価格に上限と下限を設ける制限,法人としての車両登録などが上位法違反に当たるとの判決が下された。これを受け,11月に再び規則が改正され(運輸大臣令2017年第108号),配車アプリで運行する車両台数を制限するほか,運賃の上限下限については州知事が決定すること,保有台数も5台以上と規定され,5台以下の場合は協同組合を作ることなどが定められた。また,登録に際しては法人登録,法人納税者番号などの提出が必要となる。この改正に対して,2018年2月1日の申請開始を前に今度は配車アプリドライバーによる継続的なデモが繰り広げられるなど,混乱は2018年に入っても続いている。
広がるフィンテックオンラインで決済するデジタルバンキングやIT技術,AI(人工知能)を駆使して融資などの金融サービスを提供するフィンテックは,2016年から拡大しはじめた。インターネット上で貸し手と借り手をマッチングさせるピア・ツー・ピア(P2P)の2017年の貸出し額は前年の10倍を超える2兆2600億ルピアに急拡大した。電子マネーカードは27社が9000万枚を発行し,電子マネーの取引額も前年比70%増の12兆ルピアと勢いを増している。電子マネーの拡大で,高速道路の料金所のキャッシュレス化も急速に進み,10月31日からの完全移行を中銀が発表した。
制度の整備も始まっている。2016年11月に中銀はフィンテックを利用した決済に関する監視を行うフィンテック・オフィスを開設するとともに,レギュラトリー・サンドボックス(革新的なサービスや製品の企業に現行法を適用せず,試験的な環境を提供する仕組み)も創設して,2018年1月1日から実施した。金融サービス庁(OJK)も2016年末にP2P貸し出しに関する規則(POJK No.77/2016)を策定し,OJKに登録するための要件として資本金10億ルピアを保有すること,ライセンス取得には25億ルピアまで増資することを定めた。電子マネーに関しては,9月に中銀が国家決済ゲートウェイに関する規則2017年第19/10号PADGを策定し,消費者保護の観点から電子マネーにチャージする際の手数料は1回当たり1500ルピアを上限とし,2万ルピア以下の場合は無料と定めた。フィンテックの要ともいえる仮想通貨に関しては,中銀は12月7日に仮想通貨の使用を国内で禁じる新たな規制を公布し,2018年1月1日から施行した。一方,サリム・グループは5月にイナ・プルダナ銀行を買収して約20年ぶりの銀行業復帰を果たし,IT事業に注力し,決済や融資でフィンテック事業の展開を目指すなど,銀行業界もフィンテックの拡大に取り組み始めている。
(濱田)
中東におけるIS(「イスラーム国」)の影響はインドネシアにも及んでいる。2015年頃からISを支持する団体やISに加わろうとシリアに渡るインドネシア人が現れた。2016年1月には,ISとつながりのあるグループによるテロ事件がジャカルタ中心部で発生し,社会に衝撃を与えた。その後は警察当局による取り締まりが厳しくなりテロ組織の摘発が進んだが,過激派を一掃することは不可能で,小規模なテロ事件が散発的に続いた。2017年にも,2月にバンドンで,5月に東ジャカルタで爆弾テロ事件が発生している。
ISの脅威はインドネシア一国にとどまらず,地域的な問題としても浮上した。それが,IS系の過激派組織マウテ・グループによるフィリピン南部ミンダナオ島のマラウィの武装占拠である。警察によると,このマウテ・グループにはインドネシア人が少なくとも38人加わっていることが分かっている。フィリピン政府によるマラウィ奪還作戦が激しさを増すなか,インドネシアに帰国する者も出てきたことから,インドネシア政府はこれをきっかけに国内でIS系過激派組織が勢力を増すのではないかと警戒を強めた。
ミンダナオ沖の海域では,2016年頃からフィリピン南部を活動拠点とするイスラーム過激派組織アブ・サヤフによる身代金目的の民間人誘拐事件が多発していたため,2016年5月にジョコウィ大統領の呼び掛けでインドネシア,フィリピン,マレーシア3カ国がスールー海域で共同パトロールを実施することに合意していた。今回,マラウィでの事件発生とともに,同海域における過激派戦闘員の密航取り締まりが緊急の課題として浮上したことを受け,インドネシア政府はあらためて3カ国による協議開催を呼び掛けた。その結果,6月からは3カ国による空と海からの共同パトロールが開始された。7月にはインドネシア政府とオーストラリア政府の呼び掛けで周辺6カ国による対テロ対策協議も開催された。
ロヒンギャ問題に素早く対応8月にミャンマー西部ラカイン(ヤカイン)州でイスラーム系少数民族ロヒンギャと同国治安部隊の衝突と,それに伴って大量の難民が発生した問題に対して,インドネシア政府は難民の支援と紛争の解決に向けて素早く対応した。ジョコウィ大統領は,「暴力と人道危機をすぐに止めなければならない」と述べて,9月4日にはレトノ・マルスディ外相をミャンマーに派遣し,外国の閣僚としてはもっとも早くアウンサンスーチー国家顧問兼外相のほか軍・政府高官らと会談させている。この会談でレトノ外相は,安定と安全の回復,最大限の自制と暴力の否定,民族・宗教を問わないラカイン州全住民の保護,人道支援の窓口の早急な開設,そしてコフィ・アナン元国連事務総長を中心とした政府の諮問委員会の最終報告書で示された勧告の実行という「4+1原則」を提示し,人道危機と治安の悪化を食い止めるようミャンマー政府に求めた。
さらにレトノ外相は,その足で大量のロヒンギャ難民が流入しているバングラデシュに向かった。シェイク・ハシナ首相らバングラデシュ政府首脳との会談では,難民支援の方法などが話し合われた。9月13日には,食料や衣料品などの人道支援物資をバングラデシュに届ける空軍輸送機の出発をジョコウィ大統領自ら見送っている。現地では,ナフダトゥール・ウラマ(NU),ムハマディヤといったイスラーム組織やインドネシア仏教徒協会(Walubi)などインドネシアの社会組織が2016年からラカイン州での支援活動を行っていたことから,政府が資金を拠出する形で市民社会レベルでの支援も始められた。
インドネシア政府は,国際社会に対してもロヒンギャ問題への対処を働き掛けるため積極的に行動した。アントニオ・グテレス国連総長や国連の諸機関,国際赤十字社などと緊密に連携をとるとともに,9月に開催されたイスラーム協力機構や国連総会の場では各国首脳に協力を呼び掛けた。ジョコウィ大統領は,11月の東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議でも「ミャンマーが孤立しないよう共に行動すべき」と述べ,ASEANとしての取り組みを主導した。
このように政府がロヒンギャ問題に素早く積極的に行動を起こした背景には,国内におけるイスラーム保守派の発言力拡大という要因もある。ミャンマーのイスラーム教徒に対する非人道的行為が明らかになると,ジャカルタのミャンマー大使館前や世界遺産に指定されている仏教遺跡ボロブドゥールでイスラーム防衛戦線などが呼び掛けたデモが開かれた。イスラーム防衛戦線は,ロヒンギャを保護するために国軍と警察をミャンマーに送るよう政府に要求したり,義勇軍としてミャンマーに渡る準備があると発言したりするなど,過激な主張を繰り返した。ジャカルタでのデモにはイスラーム系政党の幹部や野党第1党グリンドラ党の党首プラボウォ・スビアントも参加し,政府によるロヒンギャ支援を「やっているふりをしているだけ」と批判した。対応を誤れば批判の矛先が政権に向かってくる。ジョコウィ大統領は,「反イスラーム」というレッテルを貼られないようロヒンギャ問題の解決に積極的に取り組まざるをえないのである。
(川村)
2018年は「政治の年」であるといわれている。次の国政選挙は2019年4月だが,そこに向けてのスケジュールが目白押しである。まず6月には,171の地方自治体で首長選挙が一斉に実施される。各政党とも,この地方首長選を2019年の選挙の前哨戦と位置付けており,選挙での勝敗だけでなく,党組織がどれだけ機能するか,選挙戦略がどれだけ有効かが問われるものとなる。大統領選の立候補届出は8月,選挙管理委員会による資格審査を経て立候補者が正式に決まり選挙戦が始まるのが9月である。これと並行して,各議会議員選挙に参加する政党の登録,審査,立候補届出などの手続きが進められる。これら一連のスケジュールを社会的な分断を深めることなく平穏に進められるか,注視する必要がある。
2018年前半の経済は,2017年後半に増加した設備投資の効果が期待できると思われる。輸出に関しては国際商品価格の上昇が予想されているため,資源輸出を中心に回復する可能性はあるものの,あくまでも外部要因によるものであるため,前年に進めたインフラ整備をさらに加速させ,経済の効率性と競争力を向上させることがもっとも重要で確実な政策である。他方で,国営企業を含む民間企業の対外債務が増加しており,アメリカの金融緩和政策の終了によるドル高を受けて,対外債務利払いなど企業の財政面への影響が懸念される。
(川村:地域研究センター研究グループ長代理)(濱田:開発研究センター主任調査研究員)
1月 | |
1日 | 政府,900VAの世帯を対象として電力料金を引き上げ。 |
15日 | 日本の安倍晋三首相が来訪し,大統領と会談。 |
18日 | 大統領,海軍参謀長にハディ・チャフヤントを任命。 |
25日 | 財務省職員とその家族がIS(「イスラーム国」)に加わるためシリアへの入国を試みたが,トルコ政府が拘束,強制送還。 |
26日 | 汚職撲滅委員会,パトリアリス・アクバル憲法裁判事を収賄容疑で逮捕。贈賄側の東南スラウェシ州ブトン県知事は25日に逮捕。 |
30日 | 西ジャワ州警察,イスラーム防衛戦線代表リズィク・シハブを建国5原則パンチャシラ冒涜とスカルノ初代大統領名誉毀損の容疑者に指名。 |
2月 | |
15日 | 統一地方首長選挙の投票日。ジャカルタ州知事選をはじめ全国101の地方自治体の首長選挙が行われる。 |
16日 | マレーシア・クアラルンプールで発生した北朝鮮の朝鮮労働党委員長金正恩の兄・金正男の殺害事件で,実行犯としてインドネシア人女性が逮捕される。 |
17日 | 国家開発企画省,国家予算外投資資金調達スキーム(PINA)導入を発表。 |
18日 | 政府とアメリカ系鉱山会社フリーポート・インドネシア社との契約見直し交渉のもつれから,同社社長が辞任。 |
20日 | ジャカルタ汚職裁,イルマン・グスマン前地方代表議会議長に対して収賄罪で禁錮4年半の実刑判決を下す。 |
25日 | 大統領,オーストラリアを訪問(~26日)。 |
27日 | バンドンで爆弾テロ事件が発生し,実行犯1人が死亡。 |
3月 | |
1日 | サウジアラビアのサルマン国王が1500人の訪問団を伴って公式来訪。 |
5日 | ジャカルタで環インド洋連合(IORA)初の首脳会議開催。7日にジャカルタ協定を採択。 |
16日 | 大統領,2月3日に解任した国営石油会社プルタミナ社長ドゥウィ・スジプトの後任にエリア・マッサ・マニクを任命。 |
16日 | ジャカルタ行政裁,環境破壊を理由にジャカルタ湾埋立事業の一部差し止めを命令。 |
16日 | ナフダトゥール・ウラマ元議長で,大統領諮問会議委員のハシム・ムザディが死去。 |
23日 | 汚職裁,南スマトラ州バニュアシン県知事のヤン・アントン・フェルディアンに対して収賄罪で禁錮6年の実刑判決。 |
29日 | フランスのオランド大統領が来訪。仏大統領としては31年ぶりの公式訪問。 |
30日 | 最高裁,地方代表議会議長団の任期を2年半と規定した議員内規が上位法に違反するとの判断を示す。 |
31日 | 2016年7月1日に始まった政府の租税恩赦プログラムが終了。 |
31日 | ジャカルタ州知事の辞任と逮捕を求める大衆行動がジャカルタ中心部で行われる。警察は治安攪乱・国家転覆容疑で5人を逮捕。 |
31日 | 政府,フリーポート社に対して8カ月間の暫定特別採鉱許可を与え,輸出再開を認める決定。 |
31日 | 汚職撲滅委員会,フィリピンへの軍艦売却契約での収賄容疑で国営造船会社PAL社長を逮捕。 |
4月 | |
5日 | 憲法裁,地方行政法の違憲審査で,内相に与えられている地方条例の取り消し権限を違憲と判断。 |
5日 | アフガニスタンのアシュラフ・ガニー大統領,来訪。 |
7日 | 警察,イスラーム過激派組織ジャマア・アンシャルト・ダウラー(JAD)の3人を逮捕。9日にはJADの6人が警察を報復攻撃,銃撃戦の末,全員が死亡。 |
10日 | 最高裁,ジャカルタ州の水道事業を民営化する政策を違法と判断。 |
11日 | 大統領,新しく7人の総選挙委員会(KPU)委員と5人の総選挙監視庁(Bawaslu)委員を任命。 |
11日 | 汚職撲滅委員会の主任捜査官ノフェル・バスウェダンが何者かに襲撃され,目に重傷。 |
18日 | ジャカルタでアジア・アフリカ会議62周年記念式典開催。 |
19日 | ジャカルタ州知事選の決選投票が行われ,アニス・バスウェダンが当選。 |
19日 | アメリカの格付機関S&P,インドネシアの長期国債格付けを「BB+」から一段階引き上げ「BBB-」とし,投資適格に。 |
28日 | 国会,汚職撲滅委員会の組織的問題をあぶり出すための国政調査権行使を決定。 |
5月 | |
1日 | 警察,電子住民票汚職事件の公判における偽証罪の容疑でハヌラ党の国会議員ムルヤム・ハルヤニを逮捕。 |
1日 | ジャカルタのスカルノ・ハッタ国際空港第3ターミナルの本格的運用が開始。 |
8日 | 大統領,税務金融情報へのアクセスに関する法律代行政令を制定。 |
9日 | 北ジャカルタ地裁,ジャカルタ州知事バスキ・チャハヤ・プルナマの発言が宗教冒涜罪にあたるとして禁錮2年の実刑判決。 |
13日 | バンテン,西ジャワ,中ジャワなどの各地で「多様性の中の統一」の維持を呼び掛ける市民集会が開催される。16日には,大統領が各宗派代表を官邸に集めて会談し,国民の統一を呼び掛ける。 |
13日 | 大統領,北京で開催される一帯一路国際フォーラムに出席するため,中国を訪問。 |
14日 | スハルト体制下で工業相を務めたハルタルトが死去。 |
21日 | 大統領,サウジアラビアで開催された米アラブ・イスラーム・サミットに出席。 |
24日 | 東ジャカルタのバスターミナルで爆弾テロ事件が発生,実行犯2人と警察官3人が死亡。 |
6月 | |
1日 | 2017年から「パンチャシラの日」として国民の祝日に。 |
3日 | シンガポールでのシャングリラ・ダイアローグにあわせてインドネシア,マレーシア,フィリピンの国防相会談が行われ,スールー海域での共同パトロールに合意。 |
7日 | 大統領,パンチャシラ・イデオロギー指導大統領作業ユニットを設置。 |
10日 | サウジアラビア,バーレーン,アラブ首長国連邦,エジプトなどがカタールとの断交を発表したことについて,大統領が仲介のためカタールのタミム首長と電話で会談。 |
12日 | 文化・初中等教育相が学校1日8時間週5日制を発表すると,宗教教育界などから強い反発が出る。政府は1週間後に撤回。 |
12日 | 開発統一党の分裂で正統な執行部の認定をめぐって争われていた最高裁における裁判で,ロマフルムジ派が勝利。 |
15日 | 政府,物流の競争力向上を目指す経済政策パッケージ第15弾を発表。 |
16日 | ジャカルタ汚職裁,保健省汚職事件の裁判でシティ・ファディラー・スパルニ元保健相に禁錮4年の実刑判決。 |
17日 | 汚職撲滅委員会,モジョクルト市議会議長らを収賄の現行犯で逮捕。 |
22日 | フィリピン,インドネシア,マレーシア3カ国の外相,東南アジア海洋地域におけるテロ撲滅で協力するとの共同声明を発表。 |
25日 | ISに影響を受けた2人の男が北スマトラ州警察本部を襲撃,警官1人を刺殺。 |
30日 | 国家警察本部近くのモスクで警官2人が刃物で襲われる事件が発生。 |
30日 | 国会,汚職撲滅委員会に関する国政調査権特別委員会での審議を開始。 |
7月 | |
3日 | パプア州プンチャック・ジャヤ県で,県知事選の結果をめぐって支持者間で衝突が発生し,1人が死亡,4人がけが。 |
5日 | 汚職撲滅委員会,ヌル・アラム東南スラウェシ州知事を収賄容疑で逮捕。 |
6日 | 大統領,トルコを訪問しエルドアン大統領と会談。 |
7日 | 大統領,ドイツのハンブルグで開幕したG20首脳会議に出席。8日にはアメリカのドナルド・トランプ大統領と会談。 |
10日 | 大統領,大衆団体に関する法律代行政令を制定。 |
13日 | 警察,バンテン州のホテルで過去最大となる覚醒剤1トン(2兆ルピア相当)を押収。密売人の台湾人2人を逮捕,1人を射殺。 |
14日 | 憲法裁長官にアリフ・ヒダヤットが再任される。任期は2020年まで。 |
17日 | 汚職撲滅委員会,セトヤ・ノファント国会議長を電子住民票導入事業に関わる汚職事件の容疑者に指名。 |
21日 | 国会で総選挙法案が可決成立。 |
27日 | 政府,オーストラリアとの共催で,周辺6カ国によるテロ対策を協議する会合を北スラウェシ州マナドで開催。 |
31日 | 国家警察,汚職対策特別部隊の設置に向けた検討を開始。 |
8月 | |
2日 | 汚職撲滅委員会,東ジャワ州パムカサン県知事を検察に対する贈賄容疑で逮捕。 |
10日 | 警察対テロ部隊,フィリピン・マラウィの過激派組織にインドネシア人を送り込んでいた容疑で4人を逮捕。 |
16日 | 大統領,独立記念日演説を行うとともに,2018年度予算案を国会に提出。 |
17日 | 大統領官邸で開かれた独立記念式典で,参加者全員が民族衣装を着て出席。 |
17日 | テロ活動への関与で有罪となり服役していたアマン・アブドゥルラフマンが独立記念日の恩赦で刑期を短縮され出所するものの,警察対テロ部隊が2016年のジャカルタ爆弾事件への関与の疑いですぐに拘束。 |
22日 | 中銀,政策金利(7日物リバースレポ金利)を25ベーシスポイント引き下げ4.5%へ。 |
25日 | 汚職撲滅委員会,運輸省海上交通総局長を収賄容疑で逮捕。 |
28日 | 政府が初めて韓国と共同開発した潜水艦がスラバヤ軍港に到着。 |
29日 | 国会の汚職撲滅委員会に対する国政調査特別委員会,警察出身の汚職撲滅委員会の捜査局長を召喚して意見聴取を行う。 |
29日 | 汚職撲滅委員会,中ジャワ州テガル市長を収賄の現行犯で逮捕。 |
31日 | 憲法裁,ジョグジャカルタ特別州法に対する違憲審査で,同州の正副知事に女性も就任できるとの判断を示す。 |
31日 | 政府,ロヒンギャ難民を支援する人道支援プログラムをNGOの協力で開始。 |
31日 | 政府,中央・地方の許認可の迅速化に関する経済政策パッケージ第16弾を発表。 |
9月 | |
1日 | 警察,フェイクニュースを作成・拡散させたシンジケートを摘発。 |
3日 | ジャカルタ汚職裁,パトリアリス・アクバル前憲法裁長官に対して収賄罪で禁錮8年の実刑判決。 |
4日 | 外相,ロヒンギャ問題を話し合うためミャンマーを訪問し,アウンサンスーチー国家顧問らと会談。5日にはバングラデシュを訪問し,ロヒンギャ難民支援についてシェイク・ハシナ首相と会談。 |
5日 | スラバヤ高裁,ダーラン・イスカン元国営企業相に対する汚職裁判で,1審の有罪判決を覆す無罪判決を下す。 |
13日 | 政府,ロヒンギャ難民への支援物資第1弾をバングラデシュへ向けて輸送。 |
14日 | 汚職撲滅委員会,北スマトラ州バトゥバラ県知事を収賄の現行犯で逮捕。 |
15日 | 汚職撲滅委員会,南カリマンタン州バンジャルマシン県議会議長らを収賄の現行犯で逮捕。 |
16日 | 汚職撲滅委員会,東ジャワ州バトゥ市長を収賄の現行犯で逮捕。 |
21日 | 副大統領,国連総会で演説し,ロヒンギャ問題への支援を呼び掛け。 |
22日 | 中銀,政策金利を25ベーシスポイント引き下げ4.25%へ。 |
24日 | 国軍司令官,警察が国家情報庁(BIN)を通じて武器を不正に購入しているとの情報を暴露。 |
25日 | 国会,汚職撲滅委員会に対する国政調査権特別委員会の任期を延長。 |
28日 | 中国から初めてパンダ2頭がやってくる。 |
29日 | 南ジャカルタ地裁,セトヤを汚職事件の容疑者に指名した汚職撲滅委員会の決定を無効と判断。 |
10月 | |
2日 | 政府,ジャカルタ湾埋立事業の一時中断措置を一部の工区について解除。 |
7日 | 汚職撲滅委員会,北スラウェシ高裁長官とアディトヤ・アヌグラ・モハ国会議員を贈収賄の現行犯で逮捕。 |
16日 | 4月の知事選で当選したアニス・バスウェダンがジャカルタ州知事に就任。就任演説でマレー系原住民を指す「プリブミ」に言及して物議を醸す。 |
24日 | 国会,大衆団体に関する法律代行政令を法律化する法案を可決。 |
25日 | 汚職撲滅委員会,ンガンジュック県知事を収賄の現行犯で逮捕。 |
27日 | 運輸省,タクシー配車アプリに関する大臣令を制定。 |
11月 | |
7日 | 憲法裁,住民管理法の違憲審査で,住民票に国家公認6大宗教しか記せないのは違憲との判決。 |
8日 | 韓国大統領の文在寅,来訪。 |
10日 | 汚職撲滅委員会,セトヤをあらためて汚職事件の容疑者に指名。17日に逮捕。 |
27日 | デンマークのラース・ロッケ・ラムスセン首相が来訪。 |
28日 | バリ島のアグン山が噴火。同島のングラ・ライ国際空港が閉鎖される。 |
28日 | 汚職撲滅委員会,ジャンビ州政府高官3人と州議会議員1人を汚職容疑で逮捕。 |
30日 | 中銀,中銀規則2017年第19/12号を制定,仮想通貨を用いた決済を禁止。 |
12月 | |
7日 | 第10回バリ民主主義フォーラム開催。バリ島での火山噴火の影響で,開催場所をバンテン州タンゲランに変更。 |
8日 | アメリカのトランプ大統領のエルサレム首都認定発言を受け,アメリカ大使館前でデモ。12日には,この問題を協議するためインドネシアの呼び掛けで開催されるイスラーム協力機構臨時首脳会議に出席するため大統領がトルコを訪問。17日にもジャカルタ中心部で「パレスチナ擁護行動」と称する大規模デモが行われる。 |
8日 | 大統領,ハディ・チャフヤント海軍参謀長を新国軍司令官に任命。 |
18日 | ゴルカル党,臨時党大会を開催。アイルランガ・ハルタルトを新党首に選出。 |
21日 | サヒッド・グループの創始者スカムダニ・サヒッド・ギトサルジョノが死去。 |
21日 | 汚職撲滅委員会,シャフルディン・トゥムングン元銀行再建庁(BPPN)長官を収賄の容疑で逮捕。 |
(注) 1)国家行政院(LAN),国家公文書館(ANRI),国家人事院(BKN),国立図書館,中央統計庁(BPS),国家標準化庁(BSN),原子力監視庁(Bapeten),国家原子力庁(Batan),国家情報庁(BIN),国家コード院,国家家族計画調整庁(BKKBN),国家宇宙航空庁(LAPAN),国土地理院,財政開発監 督庁(BPKP),国家科学院(LIPI),技術評価応用庁(BPPT),食品・薬品監視庁(BPOM),国家情報院(LIN),国家防衛研修所(Lemhanas),文化観光振興庁(Budpar)などを含む。
2)ジョコ・ウィドド政権の発足に伴い,省庁の再編が行われた。新設されたのが,海事担当調整大臣府,農地・空間計画省である。他省と分離・統合されて再編されたのは,観光省(創造経済省が分離し省として発足),公共事業・国民住宅省(2つの省が統合),環境・林業省(2つの省が統合),文 化・初中等教育省(高等教育部門が分離),研究・技術・高等教育省(研究・技術国務大臣府と教育・文化省の高等教育部門が統合),村落・後進地域開発・移住省(後進地域開発国務大臣府と労働力・移住省の移住部門が統合)である。
(注)1)出身組織の略称は以下のとおり。PDIP: 闘争民主党,PKB: 民族覚醒党,NasDem: ナスデム党,Hanura: ハヌラ党,PPP: 開発統一党,PAN: 国民信託党,Golkar: ゴルカル党。
2)2016年7月27日の内閣改造で新しく就任した閣僚。
3)2016年7月27日の内閣改造で他のポストから異動した閣僚。
4)2016年7月27日の内閣改造では,民間出身のArchandra Taharが任命されたが,就任直後にアメリカとの二重国籍問題が発覚したことをうけ,同年8月15日に更迭された。後任には,内閣改造で運輸大臣を更迭されたIgnasius Jonanが指名され,同年10月14日に就任した。なお,Archandraは,その後インドネシア国籍を回復し,同省副大臣に就任した。
(注)1)Setya Novantoが汚職容疑で逮捕されて辞任したことを受け,12月11日にグリンドラ党のFadli Zonが議長代行に就任した。新しい議長には,ゴルカル党のBambang Seosatyoが2018年1月15日に正式に就任している。
2)Hadi Tjahjantoは12月8日に国軍司令官に就任し,その後任にYuyu Sutisnaが2018年1月17日に任命された。
(注)1)2018年1月22日,内閣改造による入閣で幹事長を辞任したIdrus Marhamの後任にLodewijk Frederich Paulusが就任した。
(注)1)人口は中央統計庁(BPS)による推計値。
2)労働力人口は,15歳以上の労働可能人口を指す。労働力人口と失業率は8月時点の調査結果。
3)消費者物価上昇率は12月時点での前年比。
(出所)BPSのウェブ資料,Bank Indonesia, Statistik Ekonomi dan Keuangan Indonesia, ウェブ版。
(注)ASEANは10カ国の合計。輸出額・輸入額とも本船渡条件(FOB)価格での表示。
(出所)Bank Indonesia, Statistik Ekonomi dan Keuangan Indonesia, ウェブ版。
(注)デットサービス比率(債務償還比率[DSR])は,対外債務返済額を財サービス輸出額で除した比率。
(出所)Bank Indonesia, Statistik Ekonomi dan Keuangan Indonesia, Statistik Utang Luar Negri Indonesia, ウェブ版。
(注)小数点以下を四捨五入したため,合計数値が合わないものがある。2010年から2008SNA適用。1)暫定値。2)速報値。
(出所)BPSのウェブ資料。
(注)小数点以下を四捨五入したため,合計数値が合わないものがある。1)暫定値。2)速報値。
(出所)表2に同じ。