アジア動向年報
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各国・地域の動向
2017年の韓国 文在寅政権の発足と半導体頼みの景気回復
奥田 聡渡邉 雄一
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2018 年 2018 巻 p. 45-72

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2017年の大韓民国

概 況

国内政治は,朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾訴追による罷免,文在寅(ムン・ジェイン)大統領の当選,新政権による政策展開と,めまぐるしい動きを見せた。保守勢力の退潮と進歩勢力の台頭は著しく,5月の大統領選では進歩勢力の民主党公認の文在寅候補が大差で当選した。新政権の主要ポストの多くは進歩勢力の面々によって占められた。文政権は公共雇用の拡大や最低賃金の引き上げなど民生重視の政策を打ち出す一方,過去の保守政権のもとでの不正の摘発(積弊清算)に乗り出している。年末になっても政権支持率,与党民主党への支持率ともに高水準を保った。

経済では,市況が好調な半導体の輸出や設備投資の回復を受けて,3年ぶりに景気回復が実現した。実体経済の復調や株高の更新を受けて,6年ぶりとなる政策金利の引き上げが実施されたものの,他方でウォンの増価が進行し,家計債務残高は膨らみ続けている。2017年は韓国の終末高高度防衛ミサイル(THAAD)配備に反発する中国側の経済報復の影響によって,現代自動車やロッテグループなど業績悪化を余儀なくされた企業が一部で出た。

外交・南北関係においては,文政権が対北融和を掲げたほか,日米中との関係は北朝鮮の核・ミサイル開発と関連した不安定な朝鮮半島情勢の影響を強く受けた。対米関係では北朝鮮への制裁強化とTHAADによる防衛力強化を唱えるアメリカのトランプ政権に対する面従腹背的姿勢が見られた。対日関係では,文政権のもとで首脳間の往来が復活した。慰安婦合意については韓国側での異議が伝えられたが,現状変更はされなかった。対中関係では,韓国のTHAAD配備を強く嫌う中国による事実上の制裁が表面化した。秋以降は関係改善に向けた動きが相次いだ。

国内政治

朴槿恵に対する追及と「退場」

韓国政界は権力不在のまま2017年を迎えた。崔順実(チェ・スンシル)ゲートなどの一連の疑惑を理由として2016年12月9日に国会が朴槿恵大統領に対する弾劾訴追案を可決したことにより朴大統領の権限は停止されており,新年の恒例となっている青瓦台での新年記者会見でもその姿はなかった。

弾劾訴追に関する審理は憲法裁判所で行われた。9人の裁判官のうち6人の賛成で大統領は罷免となり,国会での訴追案可決の180日後(2017年6月6日)までに判断が下されることとなっていた。朴大統領は訴追事実を全面的に否定し,審理にも出廷しなかった。憲法裁判所の訴訟指揮は弾劾訴追の早期終結を目指したものであり,2月27日の最終弁論で結審した。弾劾訴追と並行して,朴大統領の一連の不正事案を捜査する特別検察官も捜査を進めていた。2月には特別検察官が青瓦台の家宅捜索や朴槿恵に対する事情聴取の実施を目論んだが,国家機密の存在や朴大統領本人の拒否を理由に実現しなかった。特別検察官による捜査活動の期限となっていた2月28日を前に,特別検察官チームは30日間の期限延長を求めたが,黄教安(ファン・ギョアン)・大統領権限代行首相は崔順実被告などの当事者が既に起訴されていて目的は達成されたとしてこれに応じなかった。朴大統領の不正疑惑に関する捜査は検察に引き継がれた。

3月10日,憲法裁判所は8対0の評決(欠員1)で弾劾訴追の事実を認め,朴大統領を罷免した。大統領の不訴追特権を失った朴槿恵に対し,検察はさっそく追及の手を伸ばした。崔順実が実質的に支配した2つの財団に大企業などが合計774億ウォンを拠出した過程での職権乱用,強要,第三者収賄(自分の地位を悪用して第三者の利益を図る)など13の容疑で検察は3月21日に朴前大統領を呼び出して長時間にわたる事情聴取を行った。3月30日にはソウル中央地裁での令状審査に朴槿恵本人が現れてそれまでと同様に容疑事実を否認したが,翌31日未明に逮捕状が発付され収監された。罷免・収監により政治家としての朴槿恵は完全に過去の人となった。

助走なしの大統領選:保守の致命傷と文在寅に吹いた追い風

弾劾訴追や検察の捜査などの進展により,罷免や自発的辞任などの形で朴大統領が本来の任期(2018年2月)よりも前に大統領の座から退く可能性が高まり,次期大統領選挙に向けた動きが年明けから本格化した。民間人の国政介入など重大な不祥事を起こした保守勢力への有権者の拒否感は強く,その反動で進歩勢力の代表候補で盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の重職にあった文在寅・共に民主党(以後「民主党」とする)前代表の優位は揺るがぬものとなっていった。朴槿恵の罷免確定に伴い,後任の大統領選は本来のスケジュールより7カ月早い5月9日に実施されることとなった。各会派とも十分な準備のないまま選挙戦に突入した。

保守勢力は朴政権の不名誉な途中退場により大きなダメージを受け,支持者が多く離脱した。当初,保守与党のセヌリ党は知名度の高い潘基文(バン・ギムン)・前国連事務総長を大統領候補に据えようとしていたが,ネット上の激しい批判・中傷に耐えかねた潘は2月1日に不出馬を表明した。その後,保守系候補と目された黄教安・大統領権限代行首相も朴槿恵の罷免後の3月15日に不出馬を表明した。結局,自由韓国党(セヌリ党から2月13日に改称)は有力候補と目されていなかった洪準杓(ホン・ジュンピョ)・慶尚南道知事を擁立することとなったが,苦戦を強いられた。

勢いに乗る進歩勢力第1党である民主党の候補選定においては文在寅前代表が先頭を走り,安煕正(アン・ヒジョン)・忠清南道知事,李在明(イ・ジェミョン)・城南市長が追う展開となった。2月中旬には安と李への支持率(リアルメーター調べ)の合計が3割に達し,文に肉薄したこともあった。だが,4月3日の最終予備選では反米・親北,積弊清算などの伝統的な進歩派の主張を掲げて着実に支持を伸ばした文在寅が民主党の大統領候補に選ばれた。

中道勢力では特異な動きを見せたのが国民の党の前代表で,2012年大統領選にも出馬した安哲秀(アン・チョルス)であった。保守,文在寅のどちらにも共感しない有権者がこぞって安を支持した。安は民主党の最終予備選終了後に支持を大きく伸ばし,選挙戦は文・安対決の様相を呈した。しかし,中道票を意識した文が主張を軟化させたことや,4月23日のテレビ討論会での不安定な受け答えに失望感が広がったことなどから安への支持が低下した。

開票の結果,民主党の文在寅候補は得票率41%と,2位以下に大差をつけて第19代大統領に当選した。次点は自由韓国党の洪準杓(ホン・ジュンピョ)候補であった。テレビ討論での文・安対決のあと,中道・保守票が自由韓国党の洪準杓候補へ結集する動きを見せたが及ばなかった。国民の党の安哲秀候補は3位に終わった(表1)。

表1  第19代大統領選挙結果

(出所)韓国中央選挙管理委員会。

内外の課題山積の中での政権発足と人事の難航

選挙戦を制した文大統領は感性と対話を重視した独自のスタイルでコミュニケーション不足や権威主義を批判された朴前大統領との違いを強調し,崔順実ゲートで頂点に達した民衆の政治に対する怒りを巧みにコントロールするなど,そのリーダーシップは保守層の一部からも評価された。5月29日発表の世論調査では政権支持率は84.1%(リアルメーター調べ)に達した。その後も政権支持率は年末に至るまで70%内外の高水準で推移した。

しかし,就任した文大統領の直面する内外情勢は厳しく,前任者からの引継ぎがない中での多難な政権出帆となった。

文政権が最初に着手すべき課題が主要ポストの指名であったが,市民運動や学生運動などの「運動圏」出身者や盧武鉉政権での要職経験者など,進歩系の身内を多く配した人事となった。首相には盧武鉉政権の報道官の経歴がある李洛淵(イ・ナギョン)・全羅南道知事を,大統領秘書室長には学生運動出身の任鍾晳(イム・ジョンソク)・元国会議員を任命した。また,統一・外交・安保特別補佐官に盧武鉉元大統領の側近で,同政権の大統領諮問機関「東アジア時代委員会」委員長だった文正仁(ムン・ジョンイン)・延世大名誉特任教授を任命した。

政権交代後の主要人事の遅延は今回も見られ,全ポストの任命完了までに6カ月以上かかった。就任候補者の過去の言動へのネット上での批判や国会の人事聴聞での紛糾により辞退に追い込まれる「落馬」の事例は今回も頻発した。6月16日,法務部長官に指名されていた安京煥(アン・ギョンファン)・ソウル大名誉教授は過去の婚姻届偽造などが問題とされ,指名を辞退し,この後も長官級以上の候補者脱落が相次いだ。一方,今回の人事では国会の人事聴聞報告書不採択にもかかわらず文大統領が任命を強行した例が目立った。康京和(カン・ギョンファ)・外交部長官,宋永武(ソン・ヨンム)・国防部長官,金尚祚(キム・サンジョ)・公正取引委員会委員長の例などが挙げられる。文大統領は就任前の2016年12月に兵役逃れや偽装転入などの5大不正の関連者は高位公職から排除するとの原則(5大不正排除原則)を公言した経緯があり,人事検証の過程でこの原則に抵触する事例が多発しているとの批判が少なからず出た。

国会での人事聴聞が紛糾した原因の一つが政権与党の民主党が国会で占める議席が少ないことである。大統領選が終了した時点での民主党の議席数は120で,総議席300の4割に過ぎない。このため,人事同意・聴聞だけではなく,予算案などの懸案についても国会での保守野党の抵抗に直面することになった。

文政権の政策方向:強い進歩色と積極財政

文政権は盧武鉉政権以来10年ぶりの進歩政権であることを特徴づける政策を選挙戦の段階から打ち出していた。

国防・南北関係においては金大中,盧武鉉政権の「太陽政策」を引き継いで南北対話を重視し,いわゆる「非核化出口論」の立場に立った。開城工業団地の操業や金剛山観光事業の再開に言及している。戦術核の配備には反対する一方,THAAD配備は不可避であるとし,韓米軍事協力の枠組みを受け入れた。

内政面では,「積弊清算」を掲げた。「セウォル号」沈没事故や4大河川整備,原発,国定教科書導入など保守の李・朴政権が打ち出した政策を検証・白紙化し,検察に集中した権限の警察への移管と相互牽制,防衛産業不正と関連した軍の改革も掲げた。

経済分野では,雇用面をはじめとする国民生活改善策が特徴的である。公共部門での81万人の雇用増や最低賃金の時給1万ウォンへの引き上げのほか,公共賃貸住宅17万戸の供給などを打ち出した。これら施策は法人・富裕層への増税で賄うこととしたほか,財閥による金融会社支配の制限(金産分離),原発縮小など進歩勢力の特徴的政策が打ち出されている。

福祉政策では児童手当,基礎年金など手当拡充や健康保険の保障拡大,ワークライフバランス,育児休暇などの子育て支援などのほか,認知症国家責任制などのユニークな高齢者医療対策などが盛り込まれている。

文大統領は急ピッチで選挙公約の実行を推進した。7月6日には北朝鮮との対話を通じた核問題の解決と平和共存を目指す「ベルリン構想」を文大統領が発表した。また就任後の歴訪を通じて日米中ロの4大関係国から朝鮮半島問題における韓国の役割について基本的な理解を得られた。THAADは大統領選前の4月26日に電撃配備されたが,進歩勢力の間では拒否反応が強かった。文大統領の就任後,配備の経緯調査が指示されたり,配備に関する国会承認,環境アセスメントなどの「引き延ばし策」が取り沙汰されたりなどの動きはあったが,6月末の文大統領の訪米や7月以降の北朝鮮による相次ぐミサイル発射や9月の核実験などもあってTHAAD配備は既成事実化していった。朝鮮半島における緊張の高まりから,核武装を求める声が強まった。9月に世論調査会社のギャラップが発表した調査では,核兵器保有を求める回答が60%を占めた。

経済・福祉分野では上掲の施策の多くが7月19日発表の100大国政課題あるいは7月25日発表の新政権経済政策方向に盛り込まれた。人中心の持続成長経済を目指し,経済成長は「所得主導」と「革新成長」を軸に,経済体質は「雇用中心」と「公正経済」を軸に据えた。これらの施策を実行に移す第一弾として,野党の抵抗を受けながらも7月22日に公共雇用拡大などを盛り込んだ11兆ウォン規模の補正予算案が可決された。6月19日と8月2日には完成前のアパートを用いた投機を抑制する不動産対策が発表された。8月29日に発表された2018年度予算案は福祉,国防,地方自治,雇用,4次産業などに重点を置いた。予算規模は前年比7.1%増で,名目GDP成長率見通しの4.5%を上回った。道路,鉄道などの社会資本予算は大幅に削減されており,人中心の積極財政を目指している(詳しくは「経済」の項を参照)。

国民統合と財源確保に課題

秋以降は積弊清算の動きが加速した。監査・再検証の対象となったものとしては,朴政権時代の歴史教科書の国定化,文化人ブラックリスト,日韓慰安婦合意,そして李政権時代の4大河川事業などが挙げられる。検察の捜査対象となった事案としては,李政権時代の国家情報院および軍によるネット工作事件や国家情報院の特殊活動費にまつわる裏金上納事件などが挙げられる。ネット上での世論工作事件では,11月11日に金寛鎮(キム・グァンジン)・元国防部長官が逮捕された。裏金上納事件では,11月17日に元国家情報院長の李丙琪(イ・ビョンギ)と南在俊(ナム・ジェジュン)の2人が逮捕された。本件に関しては,上納を受けた側の李元大統領の収賄容疑での逮捕まで取り沙汰された。

積弊清算についてはその民意動向が各種世論調査を通じて発表されているが,それらの結果を見るかぎりさらなる推進を求める声が大きい。ただ,文政権が進める積弊清算の対象が事実上過去の保守政権の関係者に限定されているため,保守支持者と進歩支持者の間の溝を拡げ,国民統合を阻む側面があるのは否めない。

進歩勢力が幅を利かせるなかで,保守支持者が自身の政治信条を隠して「シャイ保守」となる傾向が指摘されており,世論調査の現場でも文政権登場以後は保守支持者が調査を断ったり本来の考えを隠して応答したりする傾向が強まったともいわれている。

文政権のもとで進む急速に進む各種改革に対し,一部ではその行き過ぎを改める動きも出ている。原発政策においては,6月19日には韓国第1号の原発である古里1号機の運用が停止され,同月27日には新古里原発5,6号機の工事が一時中止された。しかし,公論化委員会は国民からの意見聴取の結果を勘案して10月20日に新古里原発5,6号機の工事再開を勧告した。また,公務員等への接待・贈答などを制限する接待規制法(「金英蘭(キム・ヨンナン)法」)の定める上限額が12月11日の国民権益委員会の議決により一部引き上げられた。同法の厳しい制限により飲食業者や農林畜産業者が苦境に陥ったと指摘されていた。

積弊清算の捜査においても行き過ぎを戒める動きがみられる。軍のネット工作事件と関連して逮捕された金寛鎮・元国防部長官は11月22日のソウル中央地裁での勾留適否審査で異例の釈放となった。同事件では李政権時代の大統領対外戦略秘書官であった金泰孝(キム・テヒョ)に対する逮捕状請求が12月13日に棄却されている。国家情報院のネット工作事件では捜査対象者が自殺する事態となっており,12月5日には積弊清算関連の捜査で多忙を極める検察のトップである文武一(ムン・ムイル)・検事総長が捜査の年内終結に言及して与党の反発を買うということも起きている。

文政権が示す経済・福祉政策の大盤振舞いへの国民の好感度は高いが,5年間で178兆ウォンと見積もられる政権公約の実行費用の財源調達の詰めが甘いとの指摘が一部の専門家からなされていた。8月に政府が発表した健康保険の保障性強化対策についての世論調査で,「共感する」は76.6%に上ったのに対し,「財源調達が困難」との回答も50.3%に達した。こうした財源問題を一般国民も意外に冷静に認識していることを示す結果と言えよう。

(奥田)

経 済

マクロ経済の概況

2017年の韓国経済は,好調な半導体輸出や半導体などを中心とする製造設備投資の回復を受けて,3年ぶりに景気回復が実現した。2018年年初に韓国銀行が発表した国内総生産(GDP)の速報値によれば,2017年の実質GDP成長率は3.1%で3年ぶりに伸び率が3%台に回復した(表2)。韓国銀行が新たに推計した潜在GDP成長率は2.8~2.9%とされるため,GDPギャップはプラスに転じたことになる。

表2  支出項目別および経済活動別国内総生産成長率

(注)数値はすべて暫定値。四半期別数値は季節調整後の値。在庫増減はGDPに対する成長寄与度を表す。

(出所)韓国銀行「2017年第4四半期および年間国内総生産(速報)」2018年1月25日。

支出項目別には,GDPの約半分を占める民間消費が家電・通信機器や自動車などの新製品の販売増加もあって,通年で前年比2.6%増の堅調な成長を示した。また,需要拡大を受けて企業の半導体や薄型パネル向け投資が増加したことで設備投資は前年比14.6%増と急伸したほか,建設投資もマンションを中心とする住宅建設が高水準に推移したことで同7.5%増と力強さを維持した。輸出は自動車関連が減少に転じる局面が続いたものの,好調な半導体や石油化学などが成長をけん引して通年では前年比2.0%増を達成したが,同時に輸入も機械類などが増えて同7.2%増となった。その他,年後半に補正予算の効果が現れた政府消費やR&D・ソフトウェア投資などの知識財産生産物投資も,それぞれ前年比3.7%増と同3.1%増で底堅く推移した。

経済活動別には,活況を呈する半導体産業などに支えられて製造業が前年比4.2%増と大きく伸びたほか,建設業も建設投資の好調ぶりを受けて同7.2%増と堅調な伸びを示した。一方,サービス業はTHAAD配備をめぐって中国人観光客が激減したことで卸・小売や飲食・宿泊業などが振るわず,通年では前年比2.1%増と伸び率は前年より鈍化した。国内総所得(GDI)の成長率は,半導体価格の上昇などによって交易条件が改善されたことで,GDP成長率を小幅に上回る3.4%を記録した。なお,1人当たり名目GDPおよび1人当たり国民総所得(GNI)はともに,前年水準を超えて2万9000ドル台に突入する見通しである。

雇用と分配・公正重視の文政権の経済政策

5月に発足した文政権は,7月に「国政運営5カ年計画」および「経済政策方向」を相次いで発表し,経済改革に向けて着手しはじめた。その内容は,進歩系政権の性格を色濃く反映して雇用対策や所得分配,弱者保護が前面に出たものとなっており,主に4つの柱で構成される。1つ目は,家計の実質可処分所得を増大させ,所得主導型成長を実現する。その主要な具体策として,2020年までに最低賃金で時給1万ウォンの達成を目標とし,2017年には次年度の最低賃金水準が7530ウォン(前年比16.4%増)に決定された。しかし,生産性の上昇を上回るような最低賃金の急激な引き上げは,中小零細企業にとっては大きな負担となり,雇用の減少や最低賃金の不遵守につながる懸念がある。政府は最低賃金の引き上げに伴う企業経営負担の軽減のため,3兆ウォン規模の雇用安定資金などによる支援策も併せて打ち出している。

2つ目は,イルチャリ(働き口)中心の経済の創造を目指し,雇用の量的拡充と質的向上を図るというものである。たとえば,2022年までに公務員を中心に公共部門での81万人の雇用創出を目標としているほか,若年層を含めて新規採用の拡充や非正規職から正規職への転換,賃金の引き上げを行った企業に対して税制・金融支援を実施する。文政権は雇用創出や庶民の生活安定支援などに重点配分する11兆ウォン規模の補正予算案を6月に発表し,翌7月に成立させている。その他,非正規職に対する差別撤廃や法定労働時間を週52時間に縮減することなども掲げており,一部の大企業では実際に労働時間の短縮を実施しはじめた。

3つ目は,企業間の不公正な取引慣行の根絶やコーポレート・ガバナンスの改善による過度な経済力集中の緩和などを通じて,公正な競争環境の整備や中小零細企業の保護強化を図り,大企業と中小企業の同伴成長を促進する。具体的には,下請け・加盟店・代理店等への不公正行為の根絶に向けた制度改善や法執行の強化を行ったり,財閥のオーナー一族による既存循環出資の段階的縮小やグループ内金融会社を通じた支配力強化の防止などが推進される。そのために公正取引委員会の専属告発権の改善や監視力強化が図られ,人事でも青瓦台政策室長や同委員会委員長に財閥改革論者が起用された。また,中小零細企業の保護支援には,大企業の協力や利益分配を促す税制パッケージが導入される見通しである。

4つ目は,雇用創出力の高い中小・ベンチャー企業を新たな成長動力として育成し,IoTやAIといった第4次産業革命に対応した生産性の高い革新的成長を達成する。文政権はまず政府組織改編で「中小ベンチャー企業部」を新設して中小企業政策の一元化を図ったり,大統領直属の「第4次産業革命委員会」を設置するなどの改革に着手した。また,10兆ウォン規模の起業支援ファンドの設立や税制面での創業支援の拡充を柱とした具体策も11月に発表している。

こうした文政権による政府主導の雇用創出や分配政策の実行には莫大な財源が必要とされよう。政府は財源確保策として,高所得者層や大企業への所得・法人課税の強化を骨子とする税制改正案を8月に急遽発表し,2018年度から適用されるに至った。

金融政策の転換,膨張する家計負債

雇用情勢は前年に引き続き,やや改善された。統計庁の発表によれば,2017年の全体の就業者数は2672万5000人で,サービス部門や建設業で大きく伸びて前年比31万6000人増加した。全体の失業率は3.7%で前年と同水準であったものの,労働力率は63.2%と前年比0.3ポイント増加した。

韓国では近年デフレを懸念する声が上がっていたが,2017年の消費者物価および生産者物価の上昇率はそれぞれ1.9%と3.5%を記録した。消費者物価上昇率は韓国銀行が目標値とする2.0%に迫るまで回復し,生産者物価上昇率も前年のマイナス1.8%を大きく上回った。復調した輸出や堅調な設備投資にけん引されて実体経済に緩やかな回復基調がみられるなか,韓国銀行は11月に2011年以来の実に6年5カ月ぶりとなる政策金利の引き上げ(1.25%から1.50%)に踏み切った。今回の金融政策の転換の背景には,アメリカの追加利上げ観測が強まっていたこともあろうが,国内の家計負債の増大ペースに一向に歯止めがかからないことが判断材料の1つになったことは間違いない。

韓国銀行によれば,足元の家計負債総額は1450兆9000億ウォン(12月末現在)まで膨れ上がり,近年は家計可処分所得の増加率を上回る勢いで増大している。その主な原因は,近年の低金利基調や不動産融資規制の緩和による副作用で,銀行やノンバンクなどからの家計向け融資が急増していることにある。家計債務の大半は不動産融資であるが,自営業者を中心に事業資金や生活資金などの借り入れも膨らみ続けている。

前年より住宅取引規制に舵を切りはじめた政府は,2017年にも相次いで住宅市場の安定化対策を発表し(6月と8月),投機過熱地域の指定や再建築・再開発規制,分譲権転売時や複数住宅保有者に対する譲渡所得課税の強化などを打ち出しているが,同時に住宅担保貸出件数の制限強化,住宅担保貸出比率(LTV)や総負債償還比率(DTI)といった住宅ローン審査基準の強化を含めた融資規制策も実施するとしている。また,10月には家計負債総合対策を発表し,より高リスクな自営業者など脆弱債務者に対するオーダーメイド型の支援強化,貸出審査・与信管理指標として新たな算定方式に基づく新DTIや総負債元利金償還比率(DSR)の導入など,政府は膨張する家計負債のリスク管理に本格的に乗り出しはじめた。

国際収支状況

2015,2016年と2年連続で前年割れを記録する厳しい状況が続いていた輸出入総額は3年ぶりに増加に転じた。関税庁の発表によれば,2017年の通関基準の輸出額は5737億ドル(前年比15.8%増),輸入額は4784億ドル(同17.8%増)となり,貿易総額は3年ぶりに1兆ドルを上回って貿易黒字は953億ドルの過去最高額を更新した。輸出の内訳を品目別にみると,単一品目としては初めて年間1000億ドルを超えた半導体が前年比60.2%増を記録して,輸出全体の好転にも大きく貢献した。また,船舶(前年比23.6%増)や鉄鋼製品(同17.4%増),石油製品(同31.9%増)などの主力品目も増加に転じたが,乗用車は同3.6%増にとどまり,自動車部品(同8.5%減)や家電製品(同15.8%減),無線通信機器(同22.7%減)などは減少が続いた。

地域別には,最大の輸出先である中国向けが前年比14.2%増と回復し,FTAの発効以降初めて増加に転じた。同じくFTA締結相手であるアメリカや欧州連合(EU)向けも,それぞれ前年比3.2%増と同15.9%増で3年ぶりに好転した。また,サムスン電子などによる現地生産の拡大が著しいベトナム(前年比46.3%増)は,いまや中国とアメリカに次ぐ第3の輸出先となった。さらに,文政権が通商戦略上「NEXT CHINA」として重要視するASEANやインド向けについても,それぞれ前年比27.8%増と同29.8%増で過去最高額を記録した。一方,対日輸出はウォン高・円安傾向にもかかわらず前年比10.2%増となったが,対日輸入も増大したために貿易赤字は約283億ドルと赤字幅が拡大した。

輸入では,家電製品などの伸びを受けて消費財が前年比9.2%増加し,IT関連機器や製造装置などの資本財も同16.2%増加した。原材料輸入も原油価格の上昇などを受けて前年比22.0%増大した結果,資源国である中東との貿易赤字は大幅に拡大した。また,韓国銀行によれば貿易収支とともに経常収支の一部を構成するサービス収支で,中国人を中心に外国人観光客の減少が響いて旅行収支の赤字が続いたことで赤字幅(344億7000万ドル)が拡大した。その結果,経常収支は784億6000万ドルの経常黒字にとどまり,2年連続で黒字幅は縮小した。

企画財政部の発表によれば,2017年の海外直接投資額(申告ベース)は494億3000万ドル(前年比0.4%減)となり,前年実績をわずかに下回ったものの引き続き高水準を維持している。業種別には製造業や金融・保険業などで海外投資は大きく増大したが,地域別ではアメリカや中国などの主要国向けで減少をみた。また,産業通商資源部の発表によれば,外国人直接投資(申告ベース)も2017年には229億4000万ドル(前年比7.7%増)と4年連続で史上最大規模を記録した。おもにアメリカやASEAN,日本からの投資増大によるところが大きく,業種別では製造業での増加が目立った。

証券市場,為替相場の動向

韓国銀行によれば,証券投資は海外投資資金の流入を受けて通年で578億5000万ドルの入超となった。それに反映されるように,証券市場では半導体などのITや化学,エネルギー,医薬品株などを中心に年初より外国人投資家の買い越しが続いた。年初の年最低値2026.16から始まった韓国総合株価指数(KOSPI)は,大統領選直前の5月あたまに6年ぶりに過去最高値を更新して以降も順調に上昇し,11月には史上最高値となる2557.97を記録した。途中,北朝鮮による相次ぐミサイル発射が株価の下押し材料となったり,THAAD配備に反発する中国側の経済報復によって化粧品や小売,旅行関連銘柄が大きく下落する場面がみられたものの,増配により株主還元を高めたサムスン電子が高値をけん引し,新政権への期待感や輸出主導の景気回復も下支えして,年末には2467.49で取引を終えた。

外国為替市場では,年初より外国人投資家によるウォン需要の増加が買いを主導し,またアメリカ・トランプ政権の保護貿易主義に対する憂慮も重なってウォン高・ドル安の展開が進んだ。年央以降も好調な輸出を背景に緩やかな景気回復が確実視されるなかでウォンの増価が進み,年末には年最高値となる1ドル=1070.5ウォンを記録して前年末比12.8%のウォン高水準となった(年平均では前年比2.6%のウォン高・ドル安)。一方,対円相場でも対ドルレートと歩調を合わせるようにウォンは漸進的な上昇基調で推移し,年末には年最高値となる100円=949.2ウォンをつけて前年末比9.1%のウォン高水準となった(年平均では前年比6.0%のウォン高・円安)。

主要企業業績

韓国最大企業で外国人選好度も高いサムスン電子は,2月に李在鎔(イ・ジェヨン)副会長が贈賄や横領などの容疑で逮捕され,また持ち株会社制への移行も断念するという経営体制の立て直しが迫られる環境下であったものの,スマートフォンやデータセンター向けの需要増と価格上昇を受けて半導体事業が大きく伸び,四半期ベースでの最高益更新が続いていた。その結果,2017年連結決算では売上高239兆5800億ウォン(前年比18.7%増),営業利益53兆6500億ウォン(同83.5%増)といずれも過去最高を記録した。ただし,サムスン電子では半導体への依存度が一段と深まっているため,今後は市場の拡大する有機ELパネルを軸にディスプレーや家電部門を新たな収益源に育てられるかが課題となろう。また,半導体大手のSKハイニックスも,過去最高額を更新する増収増益を達成している。

鉄鋼最大手のポスコは,中国企業の生産調整による市況の回復やインドネシアをはじめとする海外部門での営業増益などを受けて,2017年連結決算で売上高60兆6551億ウォン(前年比14.3%増),営業利益4兆6218億ウォン(同62.5%増)と2年連続の増益を果たした。また,白物家電事業が堅調な電機大手のLG電子,有機ELパネルの出荷が伸びたLGディスプレー,石油化学製品の需要増が追い風となったLG化学などLGグループの主力企業も軒並み増収増益を確保した。

しかし,2017年にはTHAAD配備に反発する中国側の経済報復の影響を受けて,ロッテグループをはじめ業績悪化を余儀なくされた企業が一部で出た。韓国を代表する大企業である現代自動車もその1つであった。現代自動車は中国やアメリカ市場での販売低迷に加え,相次ぐストライキに伴う国内工場の生産稼働率の低下やウォン高傾向による逆風も重なり,2017年連結決算は売上高96兆3761億ウォン(前年比2.9%増),営業利益4兆5747億ウォン(同11.9%減)で5年連続の増収減益となった。未払い賃金訴訟をめぐる引当金の計上が響いた同グループの起亜自動車もまた,減収減益に陥る不振にあえいでいる。

(渡邉)

対外関係

南北関係

2017年の南北関係のスタートは前年と同様にとげとげしいものであった。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)・朝鮮労働党委員長は北朝鮮に厳しい姿勢で臨んできた朴大統領を新年辞で「反統一売国勢力」と切り捨て,韓国の黄教安・大統領権限代行首相は安全保障関係官庁の年頭業務報告に先立って北朝鮮への制裁・圧力の可視化を強調した。その後の大統領選でも北朝鮮は「保守一味」などの呼称で保守系候補を批判した。

5月に対北融和を掲げた文大統領が就任し,南北関係の動向に注目が集まった。南北関係に対する文政権の基本目標は北朝鮮に対する国際的な制裁には同調しつつも対話・交流を通じて朝鮮半島における軍事衝突を回避することにあった。日米などが北朝鮮の核放棄を対話の前提条件とするのに対し,文政権は北朝鮮による核凍結の後の対話・交流を通じて核放棄につなげるといういわゆる「出口論」の立場を取った。北朝鮮は4月から5月にかけてミサイル発射実験を加速させ,文大統領就任後の5月には新型の火星12および北極星2号を発射して韓国側に揺さぶりをかけた。5月14日の火星12発射を受け,文大統領は国家安全保障会議常任委員会を招集して北朝鮮のミサイル発射を非難したが,対北融和の路線自体は変更しなかった。

北朝鮮が新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)の火星14を発射した直後の7月6日には文大統領がG20の席上,離散家族再会や軍事境界線での敵対行為中止,平昌五輪への北朝鮮選手団の参加などを呼び掛ける「ベルリン構想」を発表,17日には韓国側が南北軍事当局会談と離散家族再会に関する赤十字会談の開催を提案した。しかし北朝鮮はこれらを無視したうえ,8月17日に文大統領が就任100日の記者会見で核弾頭を搭載したICBMの実用化を「レッドライン」(越えてはならない一線)と指摘したことを強く非難した。

9月3日の北朝鮮による6度目の核実験を契機に国際社会が北朝鮮への制裁圧力を高めようとしていたなか,文大統領が9月21日に国連での演説で制裁と対話の並行を強調した。同日には統一部が800万ドル相当の人道援助を北朝鮮に供与することを決めている。核・ミサイルの開発を着々と進める北朝鮮への国際的な圧力の高まりとは対照的に北朝鮮への融和姿勢を崩さない文政権の対応はアメリカをはじめとする国々に違和感を与えた。11月29日に北朝鮮がアメリカ東海岸を射程に収める新型ICBMの火星15を発射した際も韓国はミサイル発射自体は非難したが,南北対話重視の姿勢を転換することはなかった。

対米関係

1月に誕生したアメリカのトランプ政権は着々と進む北朝鮮のミサイル・核開発を自国の安全保障への重大な脅威とみなし,あらゆる機会をとらえて北朝鮮への外交・軍事両面での圧力強化への同調を韓国側に求めた。2月2日にマティス米国防長官が初の外遊で訪韓し,「北朝鮮の核問題はトランプ政権の最優先課題」と述べるとともに,THAADを年内に在韓米軍に配備・運用する方針を再確認した。3~4月にはアメリカの要人が相次いで北朝鮮に対する軍事行動の可能性に言及したが,同時に韓米の安全保障担当者の往来も密となった。大統領選直前の4月26日にはTHAAD発射台2基とレーダーが慶尚北道星州に配備された。

5月に就任した文大統領はそれまでの対米自主外交の考え方を修正し,安全保障上の観点からの韓米関係重視という過去の諸政権からの路線を継承した。初訪米を控え,文大統領は首脳会談の成功と韓米関係の円滑化を重視してTHAADの追加配備を急いだ。6月30日の韓米首脳会談では,韓米の同盟関係を確認するとともに南北対話再開への支持を取り付けた。北朝鮮の相次ぐミサイル発射に加えて9月3日に北朝鮮が6度目の核実験を強行したこともあって,THAAD発射台4基の追加配備が9月7日に完了した。韓国軍への権限移譲についても進展があった。10月28日に開かれた韓米定例安保協議(SCM)では,戦時作戦統制権の早期移管に向けて2019年秋までに計画を立てることで合意した。11月7日のトランプ大統領の来訪に際しては,韓国軍の弾道ミサイルの弾頭重量制限を撤廃することで合意した。

しかし,文政権の出自が自主防衛,自主外交を標榜してきた進歩勢力であるだけに,その対米姿勢には面従腹背的な色彩が拭えなかった。THAAD配備をめぐっては政権与党となったばかりの民主党の内部から異論が相次ぎ,国会承認や環境アセスメントなどの手続きを主張する声や撤去を求める声が上がった。7月17日の北朝鮮に対する軍事会談開催提案や9月21日の北朝鮮向け人道支援の供与決定などの韓国側の対北融和策に対しては,対北朝鮮包囲網の抜け穴となりかねないと考えるアメリカが不快感を表わしている。また,韓米軍事協力への干渉ともとられかねない韓中間の「三不合意」(10月31日,後述)に対しても11月4日にアメリカのマクマスター大統領補佐官は「韓国が主権を放棄するとは思わない」と述べ,暗に批判している。同月29日には北朝鮮によるICBM火星15の発射を受け,文大統領は北朝鮮の行動を非難する一方で「アメリカの先制攻撃」に対する懸念を表明した。12月19日には韓米合同軍事演習の開始時期を平昌五輪終了後に延期するようアメリカに提案したことを文大統領が明らかにしている。

経済面ではアメリカは韓国に対してさまざまな要求を突き付けた。トランプ大統領は4月末に10億ドルに上るTHAADの費用支払いを求める発言をしたほか,6月の首脳会談では韓米FTAの見直しを迫り,11月の首脳会談ではアメリカ製兵器の販売と米軍駐留経費分担に強い関心を示した。7月12日,アメリカは韓米FTAの見直しを正式に要求し,10月4日に改定交渉を開始することで合意した。同FTA発効前の2011年には116億ドルだった対米貿易黒字がFTA発効後の2015年には258億ドルにまで増え,2017年にも179億ドルに達していることをトランプ政権は問題視している。個別品目での摩擦も増えている。鉄鋼が中心だった規制対象が化学製品,洗濯機,太陽電池などにも広がりを見せた。11月23日にはアメリカの国際貿易委員会が,韓国製が9割のシェアを占める洗濯機に対するセーフガード(最高税率50%)を勧告した。10月17日に米財務省が発表した主要貿易相手国の為替政策報告書で,韓国は為替操作国の認定を免れたが,4年連続で為替観察対象国となった。トランプ政権のアメリカ第一主義を忖度した企業の動きも出ている。6月末にサムスン電子がサウスカロライナ州に洗濯機などの家電工場建設を発表した。11月のトランプ大統領来訪の際には,韓国企業が向こう4年間にアメリカで173億ドルの投資と575億ドルの調達を行うことを表明している。

対日関係

2016年末に釜山の日本領事館前に少女像が設置されたことに対抗して,日本政府は1月9日に長嶺駐韓大使と森本釜山総領事を一時帰国させるとともに,日韓通貨スワップ協定の再開に向けた交渉を中止し,日韓ハイレベル経済協議も延期した。これにより,2015年末の日韓慰安婦合意を契機に好転しはじめていた日韓関係は再び悪化に転じた。長嶺大使らの不在は85日に及んだ。

大統領選では主要候補はいずれも日韓慰安婦合意の再交渉を主張した。選挙戦を通じて持ち前の対日批判を次第にトーンダウンさせてきた文大統領の対日姿勢が注目された。就任後の文大統領の対日関係に関する言動を総合すると,自国の安全保障のうえで日米韓の緊密な協力関係を重視する立場から,対日関係に一定の配慮をしていることがうかがえる。

当選早々の5月11日,文大統領は安倍首相との初の電話会談を行った。その中で文大統領は,韓国民の多くが慰安婦合意を受け入れていないと述べる一方で,合意の破棄や再交渉には言及せず,「歴史問題が両国関係の未来志向の発展の足を引っ張ってはならない」と強調した。つまり,対日関係において歴史問題と現在の懸案を分離して論ずるツートラック・アプローチを採用することを明らかにしたのであった。

その後,G20開催中の7月7日に開かれた日米韓3カ国首脳会談では北朝鮮に対する圧力強化で一致した。また,同日に持たれた日韓首脳会談においてはシャトル外交の復活で合意し,日韓要人の往来が朴槿恵政権以前の形を取り戻すことになった。8月には日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が1年延長された。

とはいえ,日韓関係を取り巻く環境は厳しく,両者の間の見解差は依然として大きい。日韓慰安婦合意に基づく慰安婦問題の解決は遠のいた感があるが,安倍首相をはじめ日本側はあらゆる機会に韓国側による合意の着実な履行を求めている。北朝鮮の核問題についてはアメリカのトランプ政権と同様に北朝鮮への継続的な圧力を主張する安倍首相と対話を強調する文大統領との間の温度差が浮き彫りとなった。また,日韓相互間の好感度は低いままであり,とくに日本側では政権交代に伴って慰安婦合意を再検証対象とした韓国への好感度(内閣府調べ)が低落し,3割を切る状態になっている。

12月27日には文政権発足後に外交部内に設置された再検証タスクフォースが日韓慰安婦合意に関する検証結果を出した。これによれば,合意は被害者の立場を十分酌まずに朴政権が政治主導で拙速に決着させたもので,非公開の裏合意の存在も確認されたという。日韓慰安婦合意が再検証で厳しく批判されたことにより合意そのものの行方も不透明となり,日韓関係の行方もまた予断を許さないものとなった。

対中関係

韓国に配備されたTHAADは中国の内陸部まで探査範囲を広げることができ,中国の弾道ミサイルをも無効化しかねないことから中国はTHAADの韓国配備が自国の戦略的安全保障を害するとして強く反対してきた。2017年にも中国要人が執拗なまでに韓国のTHAAD配備の中止を求める圧力をかけ続けた。

THAAD装備が韓国に搬入された直後の3月8日には王毅外相が「韓国は瀬戸際で方針を転換し,THAAD配備を中止せよ」と述べたほか,習近平主席が5月11日に文大統領に対してかけた当選祝賀の電話や同月19日に文大統領の特使として訪中した 李海瓚(イ・ヘチャン)議員との会見でTHAAD問題の解決を韓国に求めている。7月6日の初の韓中首脳会談に際して習主席はTHAAD配備の撤回を再度要求した。

韓国のTHAAD配備への報復とみられる措置も相次いだ。中国側の措置の対象が韓国の消費財やサービスに集中したことが特徴的である。大きなダメージを受けたのがTHAAD基地の敷地を提供したロッテグループであった。中国全土に展開していた100以上の店舗の撤退・売却を余儀なくされたロッテマートの事例がその代表的なものである。被害総額は12月までに生じた金銭的損失だけで2兆ウォン(『韓国経済新聞』12月14日付)とされる。その他のサービス業への影響としては,3月15日以降の中国人団体観光の渡韓禁止で中国人訪韓客が半減したほか,免税店の売り上げ減,韓流コンテンツの締め出し(「限韓令」)などがあった。このほか,現代自動車が売り上げ不振で中国の4工場の操業停止に追い込まれ,化粧品,菓子の売り上げが落ちるなどの影響が出た。

事態がこう着するなか,韓国は自国の安全保障体系にまで踏み込んだ譲歩により韓中関係を一気に修復しようとする賭けに出た。10月31日,韓中両国は共同合意文「韓中関係改善に関する両国間協議の結果」を発表した。だが,その公表文面よりも前日の康京和・外務部長官の国会答弁のほうが真の合意内容に近く,韓国は中国に対し次の3点を約束したとされる。すなわち,アメリカのミサイル防衛(MD)への不参加,THAADを追加配備しないこと,および日米韓協力を軍事同盟化しないことである(「3不合意」)。また,韓国に問題解決に向けた行動が求められる一方で,中国は「韓国の懸念に留意」するにとどまっている。

韓国の思惑に反して中国要人によるTHAAD反対の意見表明はその後も続いたが,12月14日の首脳会談で習主席がTHAAD配備への反対を表明した後は対韓制裁措置の多くが事実上解除され,韓国のTHAAD配備に対する中国側からの異論は影を潜めた。だが,今回の韓中関係修復をめぐる韓国の出方に対しては,中国優位の不平等な合意を強いられた,あるいは韓国の安全保障主権に第三国が容喙する前例を作ったとの批判も少なくない。(奥田)

2018年の課題

国内政治の面では,高い支持率を背景にして文政権がこれまで取り組んできた雇用拡大,福祉充実,積弊清算などをさらに推進するものとみられる。とくに,積弊清算については文政権の支持基盤である進歩勢力が重視しており,「本丸格」となる李明博(イ・ミョンバク)・元大統領への調査の是非や,進行中の捜査や公判の結果が注目される。また,6月の統一地方選の際には文大統領が公約していた大統領任期を4年重任制に変更することを骨子とした改憲のための国民投票が予定されている。保守・進歩間の対立や所得格差など国民統合の面での目配りも課題となる。

政府や韓国銀行は2018年の経済成長率の見通しを3.0%としているが,追加利上げが予想され,ウォン高も進むなかで輸出や内需の伸びを維持できるかが課題となる。近年は成長の源泉が半導体頼みの「一本足打法」に拍車がかかっているため,構造的な危うさは残る。また,相次ぐ住宅取引規制や家計負債対策によって,建設投資が落ち込む可能性もある。そして,文政権の重要政策である最低賃金水準の引き上げが急ピッチに進めば,企業側の負担増は甚大なものとなり,逆に採用抑制や雇用の減少につながりかねない。政府主導の雇用創出や分配政策に必要な財源確保に向けても緒についたばかりである。

外交・南北関係では,南北首脳会談が予定されるなど,南北融和のムードが急速に高まっており,これが北朝鮮の核放棄など朝鮮半島の平和定着につながるのかがまず注目される。また,これに伴う日米中との関係変化に注視する必要がある。アメリカの韓国への関与,とくに戦時作戦統制権の韓国移管とあいまって在韓米軍の在り方がどのように変わるかが注目される。対日関係では過去の政権のような対日批判的姿勢への旋回が起こりうるのか,対中関係では中国の対韓干渉がエスカレートするかを注視する必要がありそうだ。

(奥田:亜細亜大学教授)(渡邉:地域研究センター)

重要日誌 韓国 2017年
   1月
2日環境部,韓国日産やBMW社などの認証取り消しと課徴金支払いを確定。
5日外交部,邱国洪・駐韓中国大使を呼び,終末高高度防衛ミサイル(THAAD)配備をめぐる中国側の報復措置に対して抗議。
9日外務省,釜山総領事館前の少女像設置と関連し,長嶺大使と森本・釜山総領事を帰国させる。
18日クムホタイヤ,中国のタイヤ大手青島双星に株式約4割を譲渡することを発表。
18日サムスン電子,「ギャラクシーノート7」の発火事故原因を電池の問題と特定。
23日SK,半導体ウエハーを製造するLGシルトロンの買収を発表。
24日保守系の「正しい政党」が発足。
25日政府,マレーシアと締結中の通貨交換(スワップ)協定の延長契約(3年間)を締結。
   2月
1日潘基文(パン・ギムン)・前国連事務総長,大統領選への不出馬を表明。
2日マティス米国防長官,初の外遊で韓国を訪問。
6日サムスン電子,経済団体「全国経済人連合会」からの脱退を発表。
7日SKハイニックス,分社化を計画する東芝の半導体子会社への出資提案を発表。
8日韓国銀行,オーストラリアと締結している通貨スワップ協定の契約延長(3年間で100億豪ドル規模)を発表。
13日セヌリ党,自由韓国党に改称。
15日文在寅(ムン・ジェイン)・共に民主党前代表,日韓ツートラック外交に言及。
17日サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長,贈賄や横領,偽証等の容疑で逮捕。
17日ソウル中央地裁,法定管理を申請した韓進海運の破産を宣告。
21日現代自動車グループ11社,全国経済人連合会からの脱退を発表。
23日政府,「内需活性化方案」を発表。
27日黄教安(ファン・ギョアン)・大統領権限代行首相,朴槿恵(パク・クネ)大統領に対する特別検察官の捜査期限の延長要請を却下。
28日ロッテグループと国防部,THAADの配備先となる星州のゴルフ場に関する土地交換契約を締結。
28日サムスン電子,未来戦略室の廃止などの経営対応策を発表。
   3月
1日LG電子,アメリカ・テネシー州に洗濯機の新工場建設を発表。
2日中国税関,ロッテ製品に対して通関不許可。
2日サムスン電子,自社製品の品質管理強化を目的に「グローバル品質革新室」の新設を発表。
6日韓国銀行,インドネシアと締結中の通貨スワップ協定の延長契約(3年間)を締結。
10日憲法裁判所,8対0の評決で朴槿恵大統領の罷免を決定。
15日中国,韓国への団体旅行を原則として禁止。
15日黄教安・大統領権限代行首相,大統領選への不出馬を表明。
15日韓国ガス公社,日本の燃料・火力発電事業者JERA,中国海洋石油と液化天然ガス(LNG)事業での連携に関する覚書を締結。
17日政府,THAADの配備をめぐる中国の経済的な報復措置に関して世界貿易機関(WTO)に問題提起。
21日ソウル中央地検,朴前大統領を呼んで事情聴取。
22日企画財政部,「青年雇用対策の点検および補完方案」を発表。
23日政府と債権銀行団,大宇造船海洋の経営再建に関して債務の株式化を含む6兆7000億ウォン規模の金融支援策を策定。
31日朴前大統領,収賄などの容疑で逮捕。
   4月
3日韓国最高層のロッテワールドタワー,開業。
4日長嶺大使と森本・釜山総領事,帰任。
5日現代重工業,今後5年間で3兆5000億ウォンの研究開発費の投入を発表。
9日海洋水産部,2014年に沈没した旅客船「セウォル号」を陸揚げ。
23日KBS,中央選管主催の第1回大統領選テレビ討論会を放映。
26日在韓米軍,慶尚北道星州にTHAADを配備。
27日サムスン電子,持ち株会社制への移行を断念すると発表。
   5月
9日第19代大統領選挙実施。進歩系の「共に民主党」の文在寅候補が当選。
10日文大統領,任鍾晳(イム・ジョンソク)・元国会議員を大統領秘書室長に任命。
10日文大統領,トランプ米大統領と電話会談。
11日文大統領,安倍首相および習近平・中国主席とそれぞれ電話会談。
11日金融監督院,金融機関からの信用供与額が多い主債務系列に36グループを選定。
21日文大統領,文正仁(ムン・ジョンイン)・延世大学名誉特任教授を大統領統一・外交・安保特別補佐官に任命。
30日行政自治部,住民登録番号の変更制度を導入。
31日文大統領,李洛淵(イ・ナギョン)・前全羅南道知事を首相に任命。
31日新世界グループの鄭溶鎭(チョン・ヨンジン)副会長,スーパー最大手Eマートの中国市場からの完全撤退を表明。
   6月
1日サムスン電子,2次下請け企業の資金繰りを支援する「物品代金支援ファンド」を設立。
5日政府,11兆2000億ウォン規模の補正予算案を発表(7日,国会提出。7月22日,可決)。
16日文正仁・大統領府特別補佐官,「韓米合同軍事演習と戦略兵器配備が朝鮮半島の緊張と北朝鮮の挑発行動の原因」と発言。
18日文大統領,康京和(カン・ギョンファ)・国連事務総長特別補佐官を外交部長官に任命。
19日企画財政部など,「住宅市場の安定的管理のための選別的・オーダーメード型対応方案」を発表。
19日古里原発1号機,運転終了し廃炉に。
26日公正取引委員会,車両用ベアリングの価格決定をめぐる談合で日独の自動車部品メーカーに合計20億ウォン強の課徴金納付命令。
28日文大統領,訪米(~7月2日)。30日,韓米首脳会談。対北朝鮮政策での連携,戦時作戦統制権の早期移管などで合意。
28日サムスン電子,現代自動車,SKなど韓国大手企業52社,今後5年間で計128億ドルのアメリカ投資を発表。
   7月
3日文大統領,産業通商資源部,保健福祉部,放送通信委員会,金融委員会の長官候補者を発表。
4日サムスン電子,半導体事業で国内2工場へ約20兆ウォンの追加投資を発表。
6日文大統領,ベルリンで開催されたG20に出席。
6日文大統領,習近平・中国主席と会談。対話に向けた対北圧力で合意。
6日文大統領,南北平和共存に向けての「ベルリン構想」を発表。
7日日米韓首脳会談,開催。
7日文大統領,安倍首相と会談。日韓首脳間のシャトル交流で合意。
12日アメリカ,韓米FTAに関する「特別共同委員会」の開催を韓国に要求。
15日最低賃金委員会,2018年の最低賃金水準を前年比16.4%増の7530ウォンで議決。
16日企画財政部など,小規模商工業者・零細中小企業の支援対策を発表。
17日政府,南北軍事当局会談と離散家族再会に関する赤十字会談の開催を北朝鮮に提案。
19日国政企画諮問委員会,「国政運営5カ年計画」(100大国政課題)を発表。
20日改正政府組織法が成立。通商交渉本部,中小ベンチャー企業部などを新設。
25日政府,文政権の「新政権経済政策方向」を発表。「所得主導」「革新成長」「雇用中心」「公正経済」を軸とする。
25日LGディスプレー,中国・広州に有機ELパネルの合弁工場の建設を発表。
   8月
2日政府,「2017年税法改正案」および「住宅市場安定化方案」を発表。
2日大宇造船海洋,インドネシア国防省へのディーゼル潜水艦の引き渡しを発表。
8日現代モービス,燃料電池車(FCV)基幹部品の一貫生産体制を整備したと発表。
9日政府,国民健康保険の保障強化対策を発表。
10日現代自動車労組,6年連続となるストライキを部分的に実施。
11日朴基榮(パク・ヨンギ)・科学技術革新本部長,任命後4日で辞任。
17日文大統領,北朝鮮の核開発と関連して,「ICBMを完成させ,核弾頭を搭載して兵器化することがレッドライン」と指摘。
23日LG電子,アメリカ・ミシガン州に電気自動車(EV)用のバッテリーパック工場の建設を発表。
25日ソウル中央地裁,李在鎔被告に対して懲役5年の実刑判決。
28日サムスン電子,中国・西安のNAND型フラッシュメモリー工場の増設に今後3年間で70億ドルの投資計画を発表。
29日政府,2018年度予算案を提出。増加率は7.1%で,名目経済成長見込み4.5%を上回る。
30日ソウル高裁,「国家情報院書き込み事件」差し戻し審で,元世勲(ウォン・セフン)・元国家情報院院長に懲役4年の実刑判決。
   9月
6日文大統領,安倍首相と会談。北朝鮮への強い圧力で一致。
7日THAAD発射台4基の追加配備が完了。
11日国会,金二洙(キム・イス)・憲法裁判所所長代行の所長任命に関する同意案を否決。
13日国会,中小ベンチャー企業部長官候補の朴成鎮(パク・ソンジン)・浦項工科大教授について,不適格とする人事聴聞報告書を採択。
21日文大統領,国連総会で基調演説。北朝鮮に対する制裁と対話の並行戦略を表明。この後,日韓米,韓米首脳会談を実施。
21日政府,800万ドルの対北朝鮮人道支援を決定。
22日ポスコ,アメリカ・インディアナ州に自動車部品などに使う鉄鋼線材加工センターの新設を発表。
25日政府,「一般解雇指針」と「就業規則指針」の撤回を決定。
27日LG電子,約6000億ウォンを投入して2023年に韓国南部に白物家電「スマート工場」を新設すると発表。
27日SKハイニックス,「東芝メモリ」買収への参画(3950億円の拠出)を取締役会で決議。
27日流通・小売大手,合同で「コリアセールフェスタ」を開催(~10月31日)。
29日金融委員会,新規仮想通貨公開(ICO)の全面禁止を発表。
  10月
4日政府,韓米FTAの再交渉に事実上合意。
12日ロッテグループ,持ち株会社制に移行。
13日ソウル中央地裁,朴槿恵被告の勾留を最大6カ月延長。
13日金東兗(キム・ドンヨン)・経済副首相と李柱烈(イ・ジュヨル)・韓国銀行総裁,中国との通貨スワップ協定の契約延長(3年間で64兆ウォン規模)を発表。
18日政府,「雇用政策5年ロードマップ」および「社会的経済活性化方案」を発表。
20日公論化委員会,新古里原発5,6号機の工事再開を政府に勧告。
24日政府,「家計負債総合対策」を発表。
28日韓米定例安保協議(SCM)開催。戦時作戦統制権の早期移管に向けて2019年秋までに計画を立案することで合意。
31日韓中両国,共同合意文「韓中関係改善に関する両国間協議の結果」を発表。
  11月
2日政府,創業支援策として「革新創業生態系造成方案」を発表。
7日トランプ・米大統領が来訪。
11日ソウル中央地裁,軍サイバー司令部のネット工作事件と関連,金寛鎮(キム・グァンジン)・元国防部長官を逮捕(22日,釈放)。
13日北朝鮮兵士1人が板門店の軍事境界線を越えて亡命。
16日現代自動車とSKテレコムなど3社,人工知能(AI)関連のスタートアップ企業向け投資ファンドの設立を発表。
17日元国家情報院長の李丙琪(イ・ビョンギ),南在俊(ナム・ジェジュン)容疑者,裏金上納の疑いで逮捕される。
21日文大統領,洪鍾学(ホン・ジョンハク)・元国会議員を中小ベンチャー企業相に任命。
28日中国国家観光局,韓国への団体観光を一部解禁。
29日政府,北朝鮮によるICBM発射に対し「強力に糾弾する」と声明。
30日韓国銀行,基準金利を1.25%から1.50%に引き上げ。
  12月
3日グラハム・米上院議員,「在韓米軍の家族を撤収させるべき」と主張。
5日文武一(ムン・ムイル)・検事総長,積弊清算事案の年内捜査終結に言及。
6日国会,2018年度予算案を可決。
7日「強制徴用者像」,済州島に建立。
8日ソウル中央地検,軍サイバー司令部のネット工作事件と関連,金泰孝(キム・テヒョ)・元青瓦台対外戦略秘書官の逮捕状を請求(13日,棄却)。
11日国民権益委員会,接待規制法(金英蘭法)の改正発議を決定。
11日ソウル中央地検,国家情報院の裏金上納疑惑と関連,崔炅煥(チェ・ギョンファン)・元経済副総理の逮捕状を請求。
12日LGグループ,先端技術開発や生産設備への19兆ウォンの投資計画と1万人規模の新規雇用計画を発表。
13日政府,未成年による仮想通貨取引口座の開設禁止を発表。
14日文大統領,訪中。北京で習近平・中国主席と会談。朝鮮半島平和に関する4原則に合意。
19日文大統領,「平昌五輪期間中の合同演習延期をアメリカに提案する」と語る。
19日産業通商資源部,「再生可能エネルギー3020履行計画」を発表。
21日北朝鮮兵士1人が京畿道の軍事境界線を越えて亡命。
22日ソウル中央地裁,ロッテグループ創業者の辛格浩(シン・ギョクホ)被告に懲役4年の実刑判決,会長の辛東彬(シン・ドンビン)被告に懲役1年8カ月,執行猶予2年の有罪判決。
27日外交部タスクフォース,日韓慰安婦合意に関する検証結果を発表。

参考資料 韓国 2017年
①  国家機構図(2017年12月末現在)

(注)*個人破産や企業倒産,民事再生などを専門的に扱う司法機関。

(出所)大統領府ウェブサイト(http://www.president.go.kr)などから筆者作成。

②  国家要人名簿(2017年12月31日現在)

(注)*職務代行。

主要統計 韓国 2017年
1  基礎統計

(注) 1)求職期間4週基準の数値。  2)終値の平均値。

(出所)韓国統計庁国家統計ポータル(http://kosis.kr)。

2  支出項目別国内総生産(実質:2010年固定価格)

(出所)表1に同じ。

3  産業別国内総生産(実質:2010年固定価格)

(出所)表1に同じ。

4  国(地域)別貿易(名目価格)

(注)受理日基準の数値。

(出所)韓国貿易協会ウェブサイト(http://www.kita.net)。

5  国際収支(名目価格)

(注)1)各勘定の数値は純資産ベースでの増減を表す。

(出所)表1に同じ。

6  国家財政(名目価格)

(出所)韓国企画財政部ウェブサイト(http://www.mosf.go.kr)。

 
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