アジア動向年報
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各国・地域の動向
2017年のアフガニスタン ターリバーンによる攻勢拡大と「南アジア新戦略」の発表
登利谷 正人
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2018 年 2018 巻 p. 589-610

詳細

2017年のアフガニスタン

概 況

2017年は前年から続くターリバーンや IS(「イスラーム国」)による攻勢が激化し,安全管理がきわめて厳しい施設などへの攻撃が相次いだ。1月10日のカンダハール州知事公邸爆弾テロを皮切りに,3月8日のカーブルの軍病院襲撃テロ,そしてカーブル市内でもっとも警備厳重な大使館が集まる地区において5月31日に発生した大規模自動車爆弾テロ事件は政府の治安維持能力の欠如を内外に示す事案となり,挙国一致政府の求心力は急激に低下することとなった。また,ターリバーンや ISによる軍・警察・政府関連施設を標的にした組織的攻撃が相次ぐようになり,国軍や警察関係者の間での犠牲者は増加の一途をたどっている。

アフガニスタンの不安定化がさらに進行するなかで,ロシアや上海協力機構 (SCO),イスラーム協力機構(OIC)などが主導する多様な和平協議の場が設けられた。一方,挙国一致政府の内部対立はさらに軋轢を増し,事実上トルコに亡命したドスタム第一副大統領,ヌール・バルフ州知事,モハッケク第二行政副長官の三者が合同で「アフガニスタン救済連合」の結成を宣言し,ガニー大統領との対決姿勢を鮮明にした。6月22日には長期間延期されてきた国会・地方議会の選挙が2018年7月7日に実施されることが独立選挙委員会(IEC)によって発表されたが,予定どおりに選挙を実施することはきわめて困難な情勢である。

8月21日にはアメリカのトランプ政権が「南アジア新戦略」を発表した。その内容は,駐留米軍増派,およびパキスタンに対して自国領内に存在するテロリストへの断固とした姿勢を強く促すものであった。また,パキスタンやイランからの難民の大量帰還が続くとともに,2017年は社会と経済の不安定化により全土でケシ栽培が急増した。対外関係においては,治安・国境・テロなどあらゆる側面からパキスタンとの相互の敵対感情はピークに達しつつあるが,両国間,および周辺国の仲介による緊張緩和の動きもみられた。

国内政治

強まるターリバーンの攻勢とテロ被害の拡大

2014年末の国際治安支援部隊(ISAF)撤退以後,とくに顕著となっているターリバーンやISの攻勢とその脅威は2017年に入りより強まった。すでに1月10日にはターリバーンはカーブルで議会事務局を標的とした自爆テロ攻撃を敢行し37人の犠牲者を出した。同日カンダハール州知事公邸内部での爆弾テロ事件も発生し11人以上が死亡する事態となった。このテロではアラブ首長国連邦(UAE)大使を含む外交官と州知事なども負傷し,翌月16日に大使はこの時の負傷により死亡した。1月18日にターリバーンはUAE政府に対して関与を否定する声明を発しているため,犯人は不明である。ISによるテロも多発し,2月7日には最高裁近くで20人以上が死亡するテロ事件を引き起こした。3月8日のカーブル中心部に位置するサルダール・ダーウード・ハーン軍病院に対する襲撃事件はとくに安全対策に万全を期していた軍病院施設に対して,武装勢力が病院関係者による内部手引きを得るなど周到に計画された可能性が高く,49人以上が死亡し63人が負傷する甚大な被害をもたらした。さらに4月11日には国防省付近でも自爆テロを実行するなど,セキュリティの厳しい政府や軍,外国関連施設などに対するテロを容易に実行するほど攻撃手段の高度化が顕著となっている。さらに衝撃的な事件が,5月31日のカーブル市内の大使館が集中するもっともセキュリティの厳しい地区における車両を用いた大規模爆弾テロの発生である。このテロは150人以上死亡,430人以上負傷の大惨事をもたらし,日本大使館やドイツ大使館など付近の大使館にも被害が出た。IS,ターリバーンともに犯行声明は出しておらず,犯人は不明であるが,政府の治安維持能力に対して不満が爆発する結果を招き,6月2日には1000人規模の反政府デモが発生し,警察との衝突で市民8人が犠牲となった。この8人には政府高官の息子が含まれていたが,翌日アブドゥッラー行政長官やラッバーニー外相代理も参列する葬列に対して連続爆弾テロが発生し,参列者10人以上が死亡するという事件まで発生した。このように,テロが連鎖的に発生するほどに治安悪化は深刻化している。

ISに対しては,政府や米軍・NATO軍を中核とする「確固たる支援任務」(Resolute Support Mission)に従事する駐留外国部隊が連携しつつ対処にあたり,東部ナンガルハール州のIS拠点に対する空爆を含めた攻勢が強化された。4月12日には米軍機が通常兵器では最大級の破壊力を有する大規模爆風爆弾兵器(MOAB)を投下し,IS戦闘員94人以上を殺害したが,大量破壊兵器を自国領内で使用したアメリカに対してはカルザイ前大統領などからも強い反発が見られた。アフガニスタン・パキスタン地域を含むIS「ホラーサーン州」最初の指導者であったハーフェズ・サイィド・ハーンは2016年7月に殺害され,2017年には4月と7月に次々と後継となった指導者らも殺害されており,ISが軍事的圧力を多大に受けていることは疑いない。ただ,シリア・イラク方面から流入したとみられるIS戦闘員も確認されており,東部や北部を中心にISは一定の勢力を保ち続けている。12月には国家安全保障局(NDS)に対する2件のテロ攻撃を実行し,同月28日にはカーブルのシーア派文化センターの入るビルに爆弾テロ攻撃を実行し,41人以上死亡,80人以上が負傷するという事態を引き起こしていることからも,ISの脅威は無視できないといえる。

和平に向けた国際的協議枠組みの多様化とアメリカの「南アジア新戦略」

ターリバーンへの対応をめぐってさまざまな変化がみられた。2016年5月のターリバーンの前指導者アフタル・マンスール殺害以降,和平協議のための枠組みであったアメリカ・アフガニスタン・パキスタン・中国による4者調整協議は中断を余儀なくされたが,約1年半ぶりとなる10月16日にオマーンで再度開催された。その一方で,他の枠組みによる和平プロセスの模索も始まっている。すでに2016年12月27日にはロシア主導によるアフガニスタン和平協議がモスクワで開催された(以下,「モスクワ和平協議」)。年が明けて2017年2月15日には第2回モスクワ和平協議が開催され,前回の参加国であったロシア,中国,パキスタンの3カ国に加え当事者であるアフガニスタン,インド,イランを加えた計6カ国が参加した。さらに,4月14日には第3回モスクワ和平協議が開催され,前回出席の6カ国に加えて中央アジア諸国の外交担当者も出席した。しかし,一連のロシアによるターリバーンとの和平交渉仲介の積極的な姿勢はロシアの影響力拡大を懸念するアメリカ側の疑念を招くこととなり,4月24日にトランプ政権閣僚として初めてマティス米国防長官がアフガニスタンを訪問した際にはニコルソン駐留米軍司令官がロシアによるターリバーンへの武器供与疑惑について公言する事態も生じている。このため,アメリカは前述の第3回モスクワ和平協議を欠席した。

2017年に入ってからの新たな枠組みとして,OIC主催によって2月27日にサウジアラビアのジェッダで開催された会合とSCOによる協議枠組み再開が挙げられる。6月8日と9日にカザフスタンのアスタナで開催された第17回SCO首脳会合では7年ぶりにアフガニスタン問題の協議枠組み再開で合意し,10月11日にロシア外務省主催によりモスクワでSCOアフガニスタン和平に関する国際会合が開催された。参加国はSCO加盟国に加えて,オブザーバーの地位にあるアフガニスタンからも代表団が参加した。すでに次回会合が2018年に中国主催で開催される予定で,今後のSCOによる関与のあり方についても注目される。12月1日にはアゼルバイジャンのバクーで第7回「イスタンブール・プロセス・アジア中核国会議」首脳級会合も開催され,アフガニスタン問題について議論が交わされた。このような新たな国際的協議枠組みの多角化は,アフガニスタン情勢の悪化に歯止めをかけようとする各国の危機感の表れともいえる。

国内に目を転じると,前年政府との和平協定に合意したイスラーム党のヘクマティヤールが5月4日,約20年ぶりにカーブルに帰還したが,彼は一貫してターリバーンと政府との仲介役を担う考えを公言している。12月10日にホースト州で開催した数千人を集めての政治集会においては,テロ組織と認識されているハッカーニー・ネットワークも含めた和平協議実施と,ターリバーンへの投票権付与についても言及している。さらに年の瀬の迫る12月27日には高等和平協議会(HPC)主催により,全34州から700人以上の宗教関係者を招集した会議が開催され,ターリバーンへ和平協議に参画するように強く求める決議が発表された。

2017年にはターリバーンはもともとの地盤である南部のみならず北部,中部,東部など全土の政府関連施設や軍基地,警察施設などへ組織的攻撃を繰り返し,戦闘は恒常的なものとなっていった。このようななか,8月21日アメリカによる「南アジア新戦略」がトランプ大統領により発表された。その骨子はアメリカによるアフガニスタンへの関与継続と駐留部隊の増派,さらにはパキスタンに対し厳しい対応を迫るものであったが,この直後ターリバーン報道官がアメリカとの対決姿勢を鮮明にした。従来からターリバーンは和平交渉の前提条件として駐留外国部隊の完全撤退を要求する一方,アメリカはターリバーンの武装解除を求めているため,両者の主張は平行線をたどり状況は変化していない。9月18日にマティス米国防長官が3000人の兵員増派を明言し11月17日にこの増派兵員の配備が完了したことで,駐留米軍兵員数は合計で約1万4000人となった。NATOも11月8・9日に国防相会合を実施し,3000人の増派を決定し合計1万6000人のNATO軍駐留が決定された。

挙国一致政府内の対立激化と危ぶまれる選挙実施

アメリカの仲介の下,ガニー大統領とアブドゥッラー行政長官との政治的合意に基づいて成立した現在の挙国一致政府であるが,2016年9月末に合意期限切れとなり,すでに2015年6月の段階で国会議員,および地方議会議員の任期切れとなっており,統治の正統性に重大な疑義が生じるなかで2017年を迎えることとなった。大統領と行政長官,さらには議会や他の政治勢力などの間での権力闘争が表面化する状況が継続している。2017年1月第1週目にはマザーリ・シャリーフを州都とするバルフ州を地盤とし,同州の知事職にあったアター・モハンマド・ヌールとガニー大統領が会談した。ヌールはタジク人主体のイスラーム協会指導部の一員であることから,ガニー大統領はアブドゥッラー行政長官も所属する同協会の影響力削減を意図しヌールに代わる新バルフ州知事の任命を企図したが,ヌールは知事職に留まり続けたため両者の間で対立関係が生じていた。しかし,年頭の会談以降ヌールはこれまでの態度を一変させガニー大統領に急速に接近していった。州知事は大統領により任命されるが,ヌールは長期間知事職を務めたため,その政治的権力が中央にとって無視できないものであった。そのため,州知事としての公認を取り消されたが,その後も事実上州知事職に留まり続けていた。しかし,大統領との関係改善により,2月20日の大統領令によりヌールがバルフ州知事に正式任命されたと地方行政独立局が発表した。

一方,ガニー大統領当選に貢献し第一副大統領に起用されたウズベク人が主体であるイスラーム国民運動党の指導者ドスタムは,2016年11月のアフマド・イシュチー元ジョウズジャーン州知事に対する暴行容疑がかけられて以降執務を放棄していた。本事件の取り調べのためとして1月24日に検事総長が護衛官数人の逮捕を指令し,2月21日には治安部隊がカーブルのドスタム邸とその周辺を包囲・封鎖するとともに,容疑者とされたドスタムの護衛官数人を連行した。最終的に5月19日,ドスタムは病気治療を理由にトルコへと出国するに至った。

各地でターリバーンなどによる攻勢激化と政府の内部対立が深刻化するなか,6月22日に独立選挙委員会(IEC)は2018年7月7日に国会・地方議会選挙を実施すると発表した。ただ,そのわずか1週間後の29日にトルコのアンカラにヌール,ドスタム,さらにはハザーラ人主体の政党であるイスラーム統一党党首にして第二行政副長官を務めるモハッケクの3人が集まり,3勢力の連携と「アフガニスタン救済連合」の結成を発表した。もともと,ヌールとドスタムは地盤とする地域が隣接し,タジク・ウズベクと民族的に異なる軍閥を率いていたために激しく対立していた過去をもつ。しかし,5月末のカーブルでの大規模テロ事件発生により,ガニー政権が治安維持すらも満足に実施できないことが明らかになると,双方が反大統領という点で一致し協力関係締結に至った。これより,多数派民族であるパシュトゥーンを支持基盤とするガニー大統領と,タジク,ウズベク,ハザーラの主要な少数民族を支持基盤とする「救済連合」は政敵となり,民族間対立感情の縮図ともいえる状況が生まれることとなった。一連の政治的混乱は,挙国一致政府内の分裂と求心力低下を如実に示すこととなった。

このような状況下,7月12日に検事総長事務局はドスタムの護衛官の起訴状を裁判所に送付したが,14日にドスタム自らは出廷しない意思を明確にした。結局11月1日の第一審判決において,護衛官7人に対し暴行容疑により禁錮5年の判決が下された。8月1日に「救済連合」の初会合がマザーリ・シャリーフで行われ,ガニー大統領による権力独占への批判とドスタムの無条件での帰国を求める議決草案が発せられた。そして10月29日にヌールは政府を批判すると同時に,次回大統領選挙に立候補する意思を明確にした。活動を活発化させたヌールは11月29日にドスタムの子息を伴いマザーリ・シャリーフの空港からカンダハールでの会合に参加するために航空機に搭乗したが,離陸許可を得られず出発を断念するという事態が生じた。これに関連して12月1日にヌールはSNS上にビデオメッセージを投稿し,政府の不当な介入により離陸が不許可になったとして大統領府を厳しく非難した。

対立関係が激化するなかの12月18日,ついにガニー大統領がヌールのバルフ州知事職「辞任」を承認したと発表した。これは当然事実上の更迭であるが,20日にはイスラーム協会首脳評議会がヌールの州知事「解任」を撤回するように政府に要請する声明を発した。12月30日,ヌールは州知事として州政府高官を集めた会合を実施し,自らが知事の地位にあることを誇示した。これは州知事が中央政府の統制から離れ,自律的に行動することを意味し,内戦時の軍閥統治時代に逆戻りする危険をはらんでいるといえよう。このような情勢下,11月15日にはガニー大統領がIECのアフマドザイ委員長を解任する判断を行い,2018年に予定されている選挙実施に早くも暗雲が漂いはじめている。

経 済

全土で急増するケシ栽培

アフガニスタンは世界有数のケシ生産地として知られ全世界の生産量の約8割を占めている。薬物対策省と国連薬物・犯罪事務所が共同作成した「アフガニスタン・ケシ栽培報告2017」が11月15日に公表されたが,それによると,作付面積は32万8000ヘクタールで前年比63%増(図1),推定生産量は9000トンと前年比87%の大幅増となった。もっとも生産量の多いヘルマンド州では全耕作地の3分の1でケシ栽培が行われ,国全体の作付面積のおよそ半分を占めている。ナンガルハール州やウルズガーン州でも全耕作地の4分の1でケシ栽培が行われているという結果も公表された。また,これまで栽培が行われていなかった北部諸州においては飛躍的な栽培拡大が確認できる。たとえばバルフ州では作付面積が前年比約5倍となっている。このように,全土でケシ栽培の急速な拡大が確認できる。このうち,ターリバーンがとくに攻勢を強める南部ヘルマンド州のケシ収入は彼らの資金源と考えらえていることから,ニコルソン駐留米軍司令官は11月20日に米軍によるケシ畑を標的にした初めての空爆を実行したと発表した。しかし,経済の低迷と高い失業率,治安悪化に汚職の蔓延など,政治と社会の不安定が原因となっているケシ栽培拡大という問題の決定的解決策とはなりえないと考えられる。

図1  ケシ耕作地面積の変遷1994~2017年

(出所)Afghanistan Opium Survey 2017から筆者作成。

チャーバハール港の運用開始とインフラ事業の進展,鉱物資源をめぐる問題

前年アフガニスタン・イラン・インドの3カ国によりイラン・チャーバハール港開発協定が調印されたが,2017年10月29日にインドからの輸入小麦1万5000トンがグジャラート州カンドラ港を発し,11月1日にチャーバハール港を経由し,11月11日にニームローズ州の州都ザランジへと到着した。インド製品の自国領内通過を認めていないパキスタンを迂回した初めての物資到達事例となった。この新輸送路開拓を受け,11月15日にはアブドゥッラー行政長官がもはやパキスタンに依存する必要がなくなった点を強調する発言をするなど,大きな期待が寄せられた。

治安悪化が深刻化するなかでも,主に首都カーブルを中心としたインフラ整備事業には一定の進展がみられた。恒常的渋滞緩和のため,1月8日に中国道路・橋会社副社長と公共事業相がカーブル中心部の道路建設工事契約で合意し,大統領宮殿で記念式典が挙行された。また,7月30日にはUSAID・ドイツ開発銀行・フランス開発機構の三者が共同出資者となり,全体で7200万ドルの資金が投じられ,1万人以上がその恩恵に浴することになるカーブルでの水道整備事業についての契約もガニー大統領臨席の下で交わされている。電力供給分野についても,4月以降エネルギー部門連携協定に基づきタジキスタンからの電力輸入が急増し,11月26日にはアジア開発銀行(ADB)出資による太陽光発電施設建設を経済省が発表するなど進展がみられる。世界銀行は6月13日にこれらのインフラ整備に加え,経済支援,さらにはパキスタンからの大量の帰還難民対策資金として5億2000万ドルの拠出を決定した。その一方で,大きな国庫収入源となることが期待されている鉱山資源開発についてはほとんど進展が見られない。アフガニスタンにはラピス・ラズリをはじめリチウム,石炭,銅,レアアースなどの有望な鉱床が存在しているが,それらの多くはターリバーンの地盤となっている地域に位置しているため,現在の不安定な治安状況は鉱物資源採掘にとって大きな壁として立ちはだかっている。逆に,多くの鉱山が位置するバダフシャーン州当局からはラピス・ラズリや金鉱床がターリバーンの資金源になっているという指摘もある。

対外関係

対パキスタン関係

すでに2016年より関係悪化が顕著にみられた対パキスタン関係は2017年に入っても悪化の一途をたどり,相互非難の応酬が繰り返された。対立の主な原因として,ターリバーンやハッカーニー・ネットワークをパキスタンが支援しているという疑惑,国境線をめぐる対立関係,そして難民の大量帰還問題の3つが挙げられる。2017年年明け早々の1月10日に起きたカンダハール州知事公邸爆弾テロに関して,アフガニスタン当局は事件直後からパキスタン三軍統合情報局(ISI)の関与について言及したため,2016年末にパキスタン軍トップに就任したカマル・ジャーヴェード・バジュワ陸軍参謀長は1月15日にガニー大統領と電話で会談し,両国間の情報部門での協力を打診している。ただこの事件の実行犯については,2月25日にパキスタン南部のクエッタのイスラーム神学校(マドラサ)で教育を受けていた点を内務省報道官が明らかにし,アフガニスタン側の不信感を印象づけた。

一方,2月に入るとパキスタン領内でテロ事件が立て続けに発生した。とくに16日にパキスタン・ターリバーン運動(TTP)の分派がシンド州の聖者廟に対して実行したテロ事件は90人以上が死亡,300人以上が負傷するという大惨事となった。この事件を受けてパキスタンはアフガニスタンからのテロリスト侵入を防ぐとの理由で両国間の国境を閉鎖した。この後,パキスタン軍は国境沿いで武装勢力との交戦を繰り返し,2月23日にはアフガニスタン領内における自国軍による作戦実施を要請している。国境閉鎖は3月3日からの2日間の一時的な解放期間をはさんで同月7日に解除されたが,翌日8日にカーブルで発生した軍病院襲撃テロ事件を受けて9日に再度国境は閉鎖された。国境閉鎖が長期化しつつあった3月16日,イギリスの仲介によりロンドンにおいてアフガニスタンのアトマル国家安全保障評議会議長とパキスタンのアジーズ外交問題首相顧問が国境閉鎖の解除について会談を行った。その結果,20日にパキスタンのシャリーフ首相がアフガニスタンに対して万全のテロ対策を要求しつつ,国境閉鎖の解除を発表した。このように,武装勢力の越境をめぐる問題への対処としてパキスタンはより厳格な国境管理徹底を行うことを決定し,3月25日にバジュワ陸軍参謀長が両国国境線沿いにフェンス構築を開始したと発表を行った。この国境線はイギリス領インドとアフガニスタンとの間で交わされた「デュアランド・ライン」合意と呼称される合意によって取り決められたが,アフガニスン側はこの国境線を承認していない。したがって,アフガニスタンにとってパキスタン側の主張する国境線に沿う形でのフェンス設置は両国間の「領土問題」に関わる重要案件に関する一方的主張に基づく行動にほかならず,両国間の緊張をさらに高めることとなった。しかし,パキスタン軍は4月26日にアフガニスタン国軍とNDSがインドの情報機関・調査分析局(RAW)と協力し越境攻撃を実行していると証言するTTP関係者の映像を公開し,自らの国境管理方針の正当化に努めた。

関係改善の糸口が見えないなか,4月30日にはパキスタン国会議員代表団が,5月2日にはモフタールISI長官がそれぞれカーブルを訪問し,緊張緩和のための働き掛けを開始した。ところが,その直後の5月5日にはチャマン国境において両国警備部隊間で戦闘が生じ,15人死亡,80人以上負傷という事態が生じた。この事件を受けて,チャマン国境は同月27日まで再度閉鎖された。加えて,対立感情を決定的に高めた事件が5月31日のカーブル大使館地区における大規模テロである。背後関係が不明ななかの事件直後,NDSはこのテロ事件はハッカーニー・ネットワークがISIの協力を得て実行したとして,パキスタンを強く非難する声明を発した。パキスタン首相官邸は6月7日にこのテロ事件を強く非難すると同時に,自国に対する根拠のない責任転嫁を批判する声明を発している。

7月28日にパキスタン最高裁はパナマ文書に関連する税金逃れの問題関与により,シャリーフ首相の議員資格を剥奪する裁定を下しシャリーフ首相は即日首相を辞任した。このような情勢下,8月21日に発表されたアメリカの「南アジア新戦略」により,パキスタンはアフガニスタンで活動する武装勢力の拠点と処断され,テロ対策に取り組むようアメリカからの圧力が高まった。実は,「新戦略」発表以前からアメリカはパキスタン領内における武装勢力拠点の存在に懸念を示し,その対策を要求していた。年頭1月12日の段階でマティス米国防長官がこの点に懸念を表明しており,4月17日にはアメリカのマクマスター国家安全保障担当大統領補佐官が初めてパキスタンを訪問し,シャリーフ首相やバジュワ陸軍参謀長に対しテロ対策の拡充を強く要請している。いずれにしても「新戦略」発表を受けて,8月24日にはアバーシー首相がアメリカによる疑惑を強く否定する声明を発し,30日にはパキスタン国会がアメリカの「新戦略」を非難するとともに,トランプ大統領とニコルソン駐留米軍司令官によるパキスタンに対する発言を「敵意と脅し」とみなす決議を採択した。パキスタン側からの反発を受けてもアメリカの強圧的姿勢は変化することなく,翌31日にアメリカ国務省はパキスタンがテロ根絶になんらかの成果を上げるまで,援助金2億5500万ドルの拠出を留保する発表を行った。このように対米関係が悪化するなかの9月21日にアバーシー首相は国連総会の場で演説し,改めてアメリカの「新戦略」を批判しつつ,地域における中国の経済的役割拡大を賞賛する発言を行った。

対米関係が冷え込むなか,10月1日にバジュワ陸軍参謀長とモフタールISI長官が5カ月ぶりにカーブルを訪問し,ガニー大統領と関係改善のための協議を行った。この時の協議に基づき,11月25日にパキスタンは両国関係改善に向けて「建設的かつ意義ある」関与のための「アフガニスタン・パキスタン団結のための行動計画」を提案した。さらに,12月14日にパキスタン外務省は両国間でおのおのの軍司令部に連絡将校を配置することで合意に至ったことを発表した。また中国の仲介により12月26日に北京でラッバーニー外相代理,アーセフ外相,王毅外相の3カ国外相会談が行われ,「アフガニスタン・パキスタン団結のための行動計画」に基づき政治・経済・軍事・情報共有・パキスタン国内のアフガン難民関連の5つの問題に対処するグループ形成と,ターリバーンの和平プロセス参加を求める点で合意し,2018年前半に再び3カ国会談を実施することも決定された。アフガニスタン・パキスタン関係は改善には程遠い状況であるが,緊張緩和に向けた方策に一定の進展がみられた。他方,アメリカは11月28日にニコルソン駐留米軍司令官がISIとハッカーニー・ネットワークとの関係や,パキスタン領内におけるテロ組織拠点存在に関する疑惑を国防総省へのビデオ会議で報告し,12月4日にマティス米国防長官がパキスタンを訪問しアバーシー首相・バジュワ陸軍参謀長と会談した際にも徹底したテロ対策を取るよう促すなど,パキスタン・アメリカ関係は険悪な状況が続いている。

ところで,パキスタンが受け入れていたアフガニスタン難民の大量帰還も両国関係に大きな影を落としている。2月13日にヒューマン・ライツ・ウォッチは2016年の後半だけで登録・無登録の難民合わせて56万人以上のアフガニスタン人を強制帰還させたとしてパキスタン政府を非難する声明を発表した。4月以降は1日平均1000人以上が帰還しているとの観測もあり,国際社会による支援の動きもみられるが,難民大量帰還による影響は今後も継続するものとみられる。

対イラン関係

パキスタンとの関係が悪化するなか,イランは政治的・経済的に重要な位置を占めるに至っている。政治的には1月29日に国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)の山本忠通代表とザリーフ外相がテヘランで会談し,挙国一致政府と国連の関与への支持を明言した。さらに,国際的な和平協議枠組みにおいても,ロシア主導のモスクワ和平協議,アフガニスタン主導のカーブル・プロセスのメンバーとなっている。イランは対ソ連戦争から内戦時にイスラーム教シーア派が多数を占めるハザーラ人組織を支援したが,現在もイスラーム統一党党首であるモハッケク第二行政副長官との間で密接な関係を維持している。しかし,11月26日にテヘランで開催された国際会議に招待されたモハッケクはこの際の演説で,イランがアフガニスタンを含めた各国から集めたシーア派の人々をシリアでの対IS戦争に動員したことに感謝する発言を行った。この演説の動画や音声がメディアやSNS上で拡散し,国内で批判が集中するという事態も生じた。

他方経済的には,アフガニスタン商工会議所が4月9日に発表した2016年の輸入貿易取引額において,イランは約18億ドルと前年に引き続き第1位となった。また,前述のようにチャーバハール港を経由した貿易も開始され,アフガニスタンにとっての他国・他地域との窓口としてより重要性を増すことになると考えられ,アフガニスタン側の期待も非常に高い。しかし,イランからも大量のアフガニスタン難民の帰還の動きがみられる。1月11日に国連移民局は年始からの1週間のみで数千人の不法難民が帰還したと発表したが,5月21日には年始からの帰還難民数が13万人を超えたと報道された。そのほか,両国間の懸案としてヘルマンド川の水管理問題が挙げられる。アフガニスタンでは各地で国際社会によるインフラ整備支援の一環としてダム建設事業が進められており,2016年にも西部ヘラート州でインドの支援を得てサルマー・ダムが落成した。さらに,2017年には西部ニームローズ州にてカマール・ハーン・ダムの建設が進められているが,このダムはヘルマンド川から取水することになるため,下流に位置するイラン領内の水利に多大な影響を及ぼすことが想定されている。このことを懸念するイランは,7月3日にロウハーニー大統領がダム建設事業に懸念を表明した。これを受けて,7月7日にヘルマンド州の州都ラシュカルガーフで数百人規模の反イランデモが発生した。ヘルマンド川の水利をめぐって,アフガニスタンとイランは対立した過去をもつため,今後の推移が注目される。

対インド関係

インドは政治的にも経済的にもアフガニスタンにとって最大の友好国といえる。さらに,国際的な枠組みにおいてもロシア主導によるモスクワ和平協議では2017年2月の第2回和平協議から参加国となり,2017年6月9日にインドはアスタナでのSCO首脳会合においてパキスタンとともにSCOの正式加盟国となったため,SCOによるアフガニスタン問題に関する協議でも影響力を発揮している。アメリカとの関係においても,トランプ政権発足に伴い新たなアフガニスタン政策が模索されるなかの4月17日にマクマスター国家安全保障担当大統領補佐官がインドを訪問し,アフガニスタン情勢についてモディ首相と会談を行っている。さらに,アメリカの「新戦略」発表後となる9月8日にアメリカのアリス・ウェルズ南アジア・中央アジア問題担当国務副長官代理が,インドはアフガニスタン安定に向けた適切な関心と経済的投資を行っていると評価する談話を発表し,アメリカはパキスタンとは対照的にインドによるアフガニスタンに対する積極的関与への期待感を示した。

アフガニスタンとの二国間関係では,10月24日にガニー大統領がインドを公式訪問し,モディ首相・コーヴィンド大統領と会談するなど,友好的関係は変わっていない。そして,前述のように,10月29日には初めてインドの小麦がチャーバハール港を経由してアフガニスタンへ輸入された。2016年にアフガニスタン・イラン・インド3カ国で調印されたチャーバハール港開発協定に基づきインドは港での建設事業を進めており,3月10日にインド当局は2018年中に建設の第1段階が完了する見込みである発表を行った。今後の海路を通じた貿易拡大には期待が集まっている。人的交流においては,アフガニスタン人女性将校数十人がインド・チェンナイの士官学校で軍事訓練を受けるということも実施されている。また,2016年末の第6回「イスタンブール・プロセス・アジア中核国会議」に合わせて行われた首脳会談において航空輸送便拡充について合意したが,2017年12月27日にはカーブルとムンバイとの間で航空路の運用が開始され,農産物を中心としたアフガニスタンからの輸出拡大が期待されている。

対中国関係

中国は政治・経済ともに密接な関係を有し,国際的枠組みにおいてもアフガニスタンに対して積極的関与を続けた。ロシア主導によるモスクワ和平協議,4者調整協議,カーブル・プロセス,SCOによる枠組みのすべてに参画しているため,アフガニスタン和平に向けた国際協力体制において多大な影響力を有するといえる。両国関係においては,6月8日にアスタナでのSCO首脳会合に合わせて,ガニー大統領と習近平国家主席が会談を行い,一帯一路構想に基づく形で相互協力関係を強化していくことで合意した。また,国境閉鎖やテロリストをめぐり対立が先鋭化したパキスタンとの緊張緩和に努めており,6月24日には王毅外相がアフガニスタンを訪問しガニー大統領と会談を行い,両国間の仲介役を担う意思があることを明確にしている。そのため,前述のとおり12月26日にはアフガニスタン・パキスタン関係改善のための仲介役を務め,アフガニスタン・中国・パキスタンの3カ国外相会談を実現した。

2018年の課題

ターリバーンの勢力は全土に広がり,逆に政府の支配領域は縮小の一途をたどっている。ISに対しても数百回に及ぶ空爆を含めた激しい攻撃が続けられているが,その勢力は各地に広がりつつあり,現状国土全体が戦乱状態寸前にあるといえる。その一方でターリバーンと政府間との和平交渉はまったく進展していない。治安回復と社会的・経済的安定のためには,現在の戦乱状況をいち早く収束させることが不可欠であるが,アメリカ・トランプ政権による「南アジア新戦略」は,武力により反体制派を封じ込めたうえで和平交渉に臨むということが前提となっている。これに対し,ターリバーンは外国駐留部隊の完全撤退を和平交渉開始の前提条件であることを終始主張している。さらに,ターリバーンに強い影響力を有するパキスタンとアフガニスタン間での関係悪化と「新戦略」においてアメリカがパキスタンの姿勢を厳しく糾弾したことで,このまま事態が推移しても,ターリバーンとの直接和平交渉が実現する可能性はきわめて低いといわざるをえない。UNAMAが2018年2月15日に公表した2017年の年次報告書によると2017年の民間人死傷者数は合計1万452人(死者3438人,負傷者7015人)で前年比9%減となった。しかし,2016年は死傷者数が過去最大を記録した年であった点を考慮すると民間人死傷者数の微減はターリバーンなどによる脅威が減退したことを意味するものではない。政治的安定と治安改善,さらには安定した経済成長を促すためにも,一刻も早いターリバーンとの和平交渉開始が望まれる。そのための糸口としてターリバーンに対して一定の影響力を有するパキスタンとの関係改善は急務である。

また,2018年10月20日に国会・地方双方での議会選挙が予定されているが(2018年4月1日に選挙管理委員会が選挙日程の7月7日からの変更を正式発表),現在の治安と挙国一致政府内部対立の双方に鑑みて日程どおり公正な形で選挙が実施される可能性はきわめて低いといわざるをえない。選挙実施やその結果に重大な疑義が呈されることになれば現行の政治体制維持すらも危惧されるため,2018年はアフガニスタンにとって正念場といえよう。

(上智大学グローバル・スタディーズ研究科特別研究員)

重要日誌 アフガニスタン 2017年
   1月
3日ヘラートでシーア派への攻撃に反対する約3000人による反IS(「イスラーム国」)大規模デモ発生。
8日中国道路・橋会社副社長と公共事業相がカーブル中心部の道路建設工事契約で合意し,大統領宮殿で記念式典を挙行。
9日内務省高官に対し汚職対策犯罪公正センターの第一審で懲役14年の判決。
10日カンダハール州知事公邸に爆弾テロ攻撃。UAE大使や政府高官なども死傷。
10日カーブルで議会事務局を標的とした自爆テロ発生。37人死亡,98人以上負傷。
12日前年11月にクンドゥズ州での空爆において民間人33人が死亡,27人以上が負傷したとの調査結果を米軍が公表。
12日マティス米国防長官はターリバーンがパキスタンの領域をアフガニスタン攻撃のために利用していると発言。
15日ガニー大統領とパキスタンのバジュワ陸軍参謀長が電話会談。
18日ターリバーンがUEA政府に対し,カンダハール州知事公邸でのテロ事件に関与を強く否定する声明発信。
20日ダボス会議(世界経済フォーラム)閉会式典にて国立音楽院女学生たちが演奏。
21日高等和平協議会議長ピール・サイィド・アフマド・ギーラーニーが84歳で死去。
24日検事総長がドスタム第一副大統領の護衛官9人の逮捕を指令。
24日ターリバーンがウェブサイト上でトランプ大統領宛の公開書簡発し,撤退を要求。
   2月
3日国連安全保障理事会制裁委員会がヘクマティヤールを指定テロリストから除外。
7日最高裁付近での自爆テロ攻撃により20人以上死亡。ISが犯行声明。
9日赤十字国際委員会がISによるメンバー殺害事件を受け,活動一時中止を発表。
11日ナンガルハール州で米軍と共同での対IS大規模軍事作戦開始と発表。
13日ヒューマン・ライツ・ウォッチは2016年後半だけでパキスタンが約56万人以上の難民を強制帰還させたとして懸念を表明。
15日モスクワでロシア主導による第2回アフガニスタン和平協議が開催。
16日パキスタン・シンド州の聖者廟にテロ攻撃。90人以上死亡,負傷者300人以上。
16日UAE大使が1月のカンダハールでの爆弾テロ事件での負傷により死亡。
20日大統領令により,アター・モハンマド・ヌールがバルフ州知事に正式任命。
21日治安部隊がドスタム第一副大統領邸宅を包囲・接収し,護衛官7人を連行。
27日イスラーム協力機構がアフガニスタン和平に関する会合をジェッダで開催。
   3月
3日パキスタンがトルハムとチャマンの国境を2日間のみ一時的に開放。
8日カーブルの軍病院にテロリストが侵入しテロ攻撃。49人以上死亡,63人負傷。
9日パキスタンが国境を再閉鎖。
16日ロンドンでアトマル国家安全保障評議会議長とパキスタンのアジーズ外交問題首相顧問が国境閉鎖解除について議論。
20日パキスタンがすべての国境を開放。
25日パキスタンのバジュワ陸軍参謀長が国境沿いにフェンス建設開始を発表。
26日宅地整備に関する公共事業省内大規模汚職事件の第二審公判で有罪判決。
31日マティス米国防長官がロシアによるアフガニスタンへの関与とターリバーンへの支援に懸念を表明。
   4月
3日ガニー大統領のオーストラリア訪問に合わせ,キャンベラでアフガニスタン人によるハザーラ差別に反対する大規模デモ。
5日ガニー大統領が2日間の予定でインドネシアを訪問し,ジョコ大統領と会談。
6日ガニー大統領がアフガニスタン元首としてシンガポールを初めて訪問し,リー・シェンロン首相と会談。
12日米軍がナンガルハール州のIS拠点に大規模爆風爆弾兵器(MOAB)爆弾を投下し,94人が死亡。
14日モスクワでロシア主導による第3回アフガニスタン和平協議が開催。
17日マクマスター米国家安全保障担当大統領補佐官がパキスタンを初めて訪問し,シャリーフ首相やバジュワ陸軍参謀長と会談。
21日ターリバーンがマザーリ・シャリーフの国軍基地を襲撃し,140人以上が死亡,160人以上負傷。
24日マティス米国防長官がトランプ政権閣僚として初めてアフガニスタンを訪問。
24日21日の国軍基地襲撃を受けて国防相,国軍司令官が辞任。
28日アメリカ国防総省はISホラーサーン州指導者のアブドゥル・ハスィーブを殺害と発表。
30日パキスタンの国会議員15人がカーブルを訪問し,ガニー大統領らと会談。
   5月
2日パキスタンのナビード・モフタール・パキスタン三軍統合情報局(ISI)長官がカーブル訪問。スターネクザイNDS長官と会談。
4日ヘクマティヤールがカーブルに帰還し,大統領宮殿での歓迎式典の演説でターリバーンとの和平協議を仲介する意思を明言。
5日カーブルで市民数百人が反ヘクマティヤールのデモを実施。
5日南部のチャマン国境でアフガニスタン・パキスタンの国境警備部隊間で交戦。
19日ドスタム第一副大統領が病気治療を理由にトルコへ出国。
21日初の女性向けテレビチャンネル・ザンTVが放送開始。
31日カーブルの大使館地区において車両を用いた大規模爆弾テロ事件が発生し,150人以上死亡,430人以上負傷。
   6月
2日テロ事件を受けた大規模反政府デモが発生。警察との衝突で市民8人が死亡。
3日前日のデモ犠牲者の葬列に対する爆弾テロにより10人以上が死亡。
5日ラッバーニー外相代理が記者会見において治安部門関係者の辞任を要求。
6日カーブルでアフガニスタン和平のためのカーブル・プロセス国際会議が開催。
6日イスラーム協会党がアトマル安全保障評議会議長ら治安部門担当者辞任を強く要求。
7日パキスタン首相官邸がカーブルでのテロ事件と自国への責任転嫁を非難する声明。
8日第17回上海協力機構首脳会合が2日間の日程でカザフスタンのアスタナで開催され,ガニー大統領が習近平・中国国家主席と会談。
9日ガニー大統領がパキスタンのシャリーフ首相とアスタナで会談。
11日ハッカーニー・ネットワーク指導者が5月末のカーブルでのテロ事件など3件のテロ攻撃への関与を否定する声明を発信。
11日大統領府がカーブル警察長官とカーブル防衛隊司令官の2人更迭を発表。
22日独立選挙委員会が国会議員選挙と地方議会選挙を2018年7月7日実施と発表。
23日ターリバーン指導者アーホンドザーダがアメリカの増派計画を批判する声明。
24日中国の王毅外相がアフガニスタンを訪問し,ガニー大統領と会談。
29日トルコ・アンカラに主要3政党指導者のドスタム,ヌール,モハッケクが集まり,「アフガニスタン救済連合」の結成を発表。
   7月
6日タジキスタンのドシャンベでガニー大統領,シャリーフ首相,ラフモン大統領が会談。
7日クンドゥズ州で民間自警団同士による戦闘が発生。
7日ヘルマンド州州都ラシュカルガーフで市民数百人による反イランデモ。
10日米軍の空爆でIS指導者のアブー・サイィドが死亡。
12日検事総長事務局がドスタム第一副大統領の起訴状を裁判所に送付と発表。
14日ドスタム第一副大統領の側近が副大統領は裁判所に出廷しないことを明言。
16日ヌール・バルフ州知事がガニー大統領による権力独占を批判。
22日国境なき医師団が米軍誤爆事件以来約2年ぶりにクリニック再開を発表。
22日ターリバーン報道官が最高指導者の息子が自爆テロ攻撃実行で死亡と発表。
25日ガニー大統領が一部の閣僚と重要ポストを任命。
28日パキスタン最高裁がパナマ文書に関連する疑惑に基づきシャリーフ首相の議員資格剥奪する判決を下し首相が即時辞任発表。
31日ISがカーブルのイラク大使館襲撃。
   8月
1日アフガニスタン救済連合がマザーリ・シャリーフで初会合を実施。
1日ヘラートのシーア派モスク前でテロ事件発生。33人以上死亡,60人以上負傷
5日ヘクマティヤールが記者会見で次回の議会選挙への参加などについて発表。
6日サレポル州のハザーラ人が大多数を占める集落をIS・ターリバーン混成の武装組織が襲撃し,60人以上を虐殺。
21日トランプ大統領がアメリカによる「南アジア新戦略」を発表。
25日カーブルのシーア派モスクに対するテロ攻撃で28人以上死亡,50人以上負傷。
30日アメリカ国防総省が現在の駐留米軍数について1万1000人程度と修正する発表。
30日パキスタン国会がアメリカの新戦略を自国への「敵意と脅し」とする非難決議を採択。
31日アメリカ国務省がパキスタンへの支援金2億5500万ドルの拠出留保を発表。
   9月
3日駐留米軍・NATO軍はアフガン空軍拡充のため70億ドル拠出を発表。
7日カーブルでロヒンギャに対する迫害を非難する数百人規模のデモ。
10日アメリカの研究者ナンシー・ハッチ・デュプリが90歳でカーブルにて死去。
10日アブドゥッラー行政長官がバルフ州を訪問し,ヌール州知事と会談。
12日パキスタンのアバーシー首相がアフガニスタン・パキスタン両国共同による国境警備と国境検問所設置を提案。
18日マティス米国防長官が3000人増派を正式発表。
18日空軍がアメリカ製攻撃ヘリを初めて配備。
19日ガニー大統領が国連総会で演説。
27日マティス米国防長官とストールテンベルグNATO事務総長がカーブルを電撃訪問。
27日カーブル空港をターリバーンが襲撃。
  10月
1日ガニー大統領が大統領宮殿においてパキスタンのバジュワ陸軍参謀長・モフタールISI長官と両国間関係について協議。
6日カーブルで米軍侵攻16年を前に市民が外国部隊撤退を求めるデモ行進。
10日国際赤十字委員会がアフガニスタンでの活動を大幅縮小と発表。
11日モスクワで上海協力機構によるアフガニスタン和平国際会合が開催。
15日アジアインフラ投資銀行(AIIB)の恒久メンバーの地位を獲得と経済省が発表。
16日オマーンでターリバーンとの和平協議再開に向けた4者調整協議開催。
23日ティラーソン米国務長官がアフガニスタンを電撃訪問し,ガニー大統領と会談。
24日ガニー大統領がインドを公式訪問し,モディ首相らと会談。
24日ティラーソン米国務長官がイスラマバードでアバーシー首相らと会談。
29日インドがイラン・チャーバハール港を経由してのアフガニスタンとの貿易を開始。
29日ヌール・バルフ州知事が挙国一致政府を非難し,次回大統領選挙への出馬意思を明言。
  11月
1日アフガニスタンのNGO団体がターリバーンと社会的影響力を有する民間人との会合を開催予定と発表。
1日ドスタム第一副大統領の護衛官7人に対し第一審で禁錮5年の判決。
4日政府が治安維持を理由にWhatsApp(ワッツアップ)とTelegram(テレグラム)のアプリ使用禁止を決定。市民は反発。
6日カーブルで米軍侵攻16年を前に市民が外国部隊撤退を求めるデモ行進。
9日ブリュッセルのNATO国防相会合において約3000人の増派を決定。
11日チャーバハール港経由で輸入のインドの小麦がニームローズ州ザランジに到着。
15日薬物対策省と国連薬物・犯罪事務所がケシ栽培が前年比87%急増と発表。
15日ガニー大統領が独立選挙委員会のナジーブッラー・アフマドザイ委員長を解任。
17日アメリカ国防総省が増派兵員3000配備と発表。駐留米軍総数は約1万4000人。
20日ニコルソン駐留米軍司令官が初めてケシ畑を標的とした空爆実施と発表。
20日ハーグの国際刑事裁判所がアフガニスタンにおける戦争犯罪の包括的調査を要求。
25日新たな閣僚候補者12人の名簿を議会に提出。
29日カム・エアーがウズベキスタンのタシュケントとの間で定期便運行を開始。
29日カンダハールへ向かうヌール・バルフ州知事ら搭乗する航空機の離陸が差し止め。
  12月
1日ヌール・バルフ州知事が航空機離陸の阻止に関与したとして大統領府を非難。
1日アゼルバイジャンのバクーで第7回「イスタンブール・プロセス・アジア中核国会議」閣僚級会合が開催。
4日マティス米国防長官がパキスタンを訪問し,アバーシー首相・バジュワ陸軍参謀長と会談。
8日アフガニスタン各地でエルサレムへの大使館移転に抗議する反米デモ発生。
10日ヘクマティヤールがホースト州で数千人規模の大規模政治集会を開催。
14日アフガニスタン・パキスタン両国各々の軍司令部に連絡将校配置で合意。
18日大統領府はヌール・バルフ州知事による知事職「辞任」を承認と発表。
20日イスラーム協会首脳評議会が政府に対してヌールの州知事「解任」撤回を要請。
25日NDS本部入り口付近でISがテロ攻撃。市民6人が死亡。
26日北京でアフガニスタン・中国・パキスタンの3カ国外相が会談。
27日カーブル=ムンバイ間での航空路が運用開始。
27日高等和平評議会主催で全州から700人以上の宗教指導者出席による会議開催。
28日カーブルのシーア派文化センターの入るビルにISが爆弾テロ攻撃。41人以上死亡,80人以上が負傷。
30日州知事を事実上更迭されたヌールがバルフ州知事として州政府高官たちとの会合を主催。

参考資料 アフガニスタン 2017年
①  国家機構図(2018年2月末現在)

2004年1月4日採択のアフガニスタン憲法に基づき作成,その後の推移により修正。

②  内閣閣僚(2018年2月10日現在)

(出所)各省庁のウェブサイトを参考に筆者作成。

③  州知事(2018年2月10日現在)

(注)はこの1年間に新たに着任した州知事である。この1年間にも18州で知事が交代した。

1)2017年12月18日にガニー大統領により州知事職を事実上罷免されたが,2018年2月の時点でもその職責に留まっている。

(出所)各種報道やウェブサイトを参考に筆者作成。

主要統計 アフガニスタン 2017年
1  基礎統計

(注)1)為替レートはカーブル自由市場の年平均値。

(出所)Central Statistics Organization, Afghanistan Statistical Yearbook 2016-17; CSOウェブサイト。

2  産業別国内総生産(実質価格)1)

(注)1)2002/03年度を基準とした実質価格。2)2016/17年度は一部推計値。

(出所)表1に同じ。

3  国家財政

(出所)表1に同じ。

 
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