アジア動向年報
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各国・地域の動向
2019年の韓国 日韓関係のさらなる悪化と経済低迷
奥田 聡(おくだ さとる)渡邉 雄一(わたなべ ゆういち)
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2020 年 2020 巻 p. 25-54

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2019年の韓国

概 況

国内政治は,文在寅(ムン・ジェイン)政権の看板政策である検察改革と,2020年春の総選挙をにらんだ動きを軸に展開した。与党は群小政党の協力を得て検察改革法案と選挙法改正案を迅速処理案件としたが,これに起因する激しい与野党対立は年末まで続いた。検察改革推進のため,文政権は検事総長と法務部長官の人事を断行した。だが検事総長と政権が対立し,曺国(チョ・グク)・法務部長官が1カ月余りで辞任するなど,大荒れの展開となった。総選挙に関しては,比例区議員の選出法を変更する選挙法改正案が成立したほか,選挙準備のために閣僚が辞任するなどの動きがあった。

経済では,半導体の市況悪化に伴う対中輸出不振や国内の設備投資・建設投資の低迷によって,景気減速に歯止めがかからなかった。中国の成長鈍化に加えて米中貿易摩擦の激化も重なったことで,中国頼みと半導体依存の成長戦略は完全に裏目に出た。中国事業の比重が高い半導体大手の業績悪化も顕在化した。年後半には日本の対韓輸出管理強化を受けて,サプライチェーンの停滞による半導体メーカーへの打撃や景気後退リスクの増幅が懸念され,政府は矢継ぎ早に部品・素材関連の支援策を打ち出していった。文政権が重視する雇用対策では最低賃金の大幅引き上げに伴う副作用は緩和されたものの,雇用情勢の質的改善にはいまだ至っていない。

対外関係では日韓関係のさらなる悪化と米朝会談不調を契機とする仲介外交の頓挫が特筆される。2018年秋の徴用工判決に関し,日本が求めた請求権協定に基づく紛争解決に韓国は消極的であったが,7月に日本がフッ化水素など3品目への対韓輸出管理強化に踏み切ると韓国側が強く反発し,日韓関係は一層悪化した。南北関係では2月の米朝会談不発を機に関係が疎遠化し,北朝鮮の対南批判が激しくなった。対米関係では,北朝鮮への支援姿勢を維持し続ける韓国と,経済制裁で北朝鮮に圧力を掛けようとするアメリカとの間ですれ違いが続いた。

国内政治

ファストトラック案件で国会が大荒れ

2019年の保革対立の主軸となったのは国会における「ファストトラック」(迅速処理)案件であった。ファストトラック案件のうち,とくに注目されたのは保革間の意見対立が際立っていた検察改革および国会議員選出方法の変更にかかわる4法案に関するものであった。4月29日,国会の司法改革特別委員会と政治改革特別委員会はこれら法案をファストトラック案件に指定した。

韓国国会におけるファストトラックとは,発議された法案の長期放置を防ぎ,迅速に処理することを目的とする国会法上の制度である。全議員の5分の3あるいは所管委員会の議員の5分の3以上の賛成を得て法案がファストトラックに指定されると,所管委員会で180日,次段階の法制司法委員会で90日が経過すると自動通過となり,本会議に付議される。その後60日が経過すると本会議に自動上程となり,表決が可能となる。その場合,本会議出席議員の過半数で可決され,国会先進化法が定める議決に関する5分の3ルールは適用されない。

ファストトラック実現に必要な5分の3の賛成を獲得するため,議席占有率が4割余りの進歩系与党「共に民主党」(以下,民主党)は,立場の近い群小政党の協力を得るべく,多数派工作を行った。民主党に同調したのは,左翼系の正義党のほか,中道系の正しい未来党と民主平和党の3党であった。4月のファストトラック指定の際には正しい未来党所属議員の1人が難色を示し,4党協力は瓦解の危機に晒された。だが,同党が当該議員を所属委員会から外すという変則的便法でファストトラック指定に漕ぎ着けた。与党など4党の協力が結実したことで,与党側勢力と最大野党で保守系の自由韓国党の対立構図が鮮明化した。

与野党対立の焦点となったファストトラック案件として指定されたのは,検察改革関連が高位公職者犯罪捜査処設置法案(公捜処法)と検察・警察間の捜査権調整の2法案(刑事訴訟法と検察庁法改正案)の3法案,そして国会議員選出方法の変更については公職選挙法改正案の合計4法案であった。これらは11月末から12月初めにかけて国会本会議に自動付議され,与野党の激突が繰り広げられた。法案に一貫して反対し,4月のファストトラック指定の際に取られた議員の委員会所属変更という便法に対しても違法との立場をとる自由韓国党は,フィリバスター(無制限討議による合法的な審議妨害)を申請してファストトラック案件の処理を物理的に阻もうとしたり,党代表の黄教安(ファン・ギョアン)・元首相が断食を行ったりするなど,頑強に抵抗した。これに対して与党側は,フィリバスター申請の効力が会期内に限定される点に着目して,国会会期を数日ずつの小間切れにすることで野党によるフィリバスターの影響の極小化を狙った。

この時期でも4月時点での4党協力の枠組みは維持された。民主平和党から分立した代案新党も協力体制に入り,「1+4協議体」と呼ばれる与党・進歩系の政策連携枠組みによりファストトラック案件の成立に向けた動きが進んだ。文喜相(ムン・ヒサン)議長も法案の早期処理の意向を公言していた。これらの動きにより,公職選挙法改正案は12月27日に,公捜処法案は12月30日にそれぞれ可決された。しかし,その過程における野党の抵抗は激しく,検察・警察間の捜査権調整の2法案の採決については越年した。同時期に本会議自動付議となった幼稚園3法や,データ3法,弾力勤労制補完立法などの民生案件の処理も後回しとなった。

選挙法改正と検察改革は長期執権への布石

そもそも,進歩系の与党があえて強硬な国会運営を行ってまでファストトラック4法案の成立にこだわり,保守系の野党もこれに頑強に反対する理由はどこにあったのか。それは,これらがいずれも与党勢力が狙っている進歩系による長期執権の実現のために欠かせない条件を整備するための重要法案だからである。

与党民主党内では長期的な課題に取り組むために長期執権が不可欠との考え方が多かれ少なかれ共有されている。党内における長期執権の主唱者である李海瓚(イ・ヘチャン)代表は「執権20年論」を持論としているが,彼の議論は保守勢力との協治を想定せず,むしろその破壊をも辞さない強硬さを帯びる。保守の自由韓国党が与党に対する強い対決姿勢をとる理由はまさにこの点にある。

長期執権のための足元での課題は2020年4月の総選挙および2022年5月の大統領選での勝利である。群小政党を糾合した「1+4協議体」がファストトラック案件処理の過程で所期通り機能したことは今後の国政選挙における集票のうえで大きな意味がある。今般ファストトラックで処理された公職選挙法改正案では,小選挙区での議席獲得が難しい群小政党が比例区で現行よりも多くの議席を得るための配慮がなされている。群小政党の協力を得やすくすることで今後の政権基盤を強化する狙いがあるものとみられる。また,今回の多数派工作の成功は,今後あり得べき憲法改正の行方を占ううえでも一定の意義があると思われる。

進歩勢力が長期執権を狙ううえで中長期的に重視するのが検察改革である。これは文在寅大統領が就任前から掲げており,政権発足後も重要課題として推進してきた。文政権が検察改革を推進する目的は,国民の間に根強い検察不信に対処するとともに,検察の政治介入を防ぐことにある。このためには強すぎる検察の力を削ぐ必要があるというのが文政権をはじめとする進歩勢力の考え方である。今回のファストトラック案件では,公捜処法により政治がらみの捜査から検察を遠ざけ,検察・警察間の捜査権調整で検察が独占してきた捜査権の一部を警察に移譲させることで検察の権限を弱め,警察との力の均衡を図った。

だが,与党と文政権が一体となって進める検察改革の大義の裏には,長期執権を検察に妨害されたくないとの本心も隠されている。文大統領とその周囲は,過去の民主化闘争の過程で独裁政権の手先としての検察と対峙した経験がある。また,同労者であった盧武鉉(ノ・ムヒョン)・元大統領が退任後に検察の執拗な調査を受け,その過程の2009年5月に投身自殺したことへの報復感情が今も消えていないとされ,このことも文政権による検察改革推進の原動力となっているともいわれる。

曺国スキャンダルと新検事総長の「反乱」で政権のイメージダウン

文政権は国会でのファストトラック案件の成立によって検察改革の外形作りに注力する一方,改革の実をあげる切り札として,検事総長と法務部長官の人事を打ち出した。検察本体にメスを入れ,内部からの改革を進めようとしたのである。

権限を奪われる検察からは5月1日に文武一(ムン・ムイル)検事総長がファストトラック案件に対する懸念を表明するなど,検察改革への抵抗が表面化していた。そこへ6月17日,文大統領は次期検事総長に尹錫悦(ユン・ソギョル)・ソウル中央地検長を指名,7月24日に就任した。尹錫悦は2013年の国家情報院による世論操作事件の際,仕事熱心のあまり当時の朴槿恵(パク・クネ)政権に疎まれて平検事に降格されるという逸話があるほどで,「硬骨検事」の異名をとる。最近では崔順実(チェ・スンシル)事件の特別検事チームでの捜査に従事したほか,文政権下でも積弊清算捜査で辣腕を振るった。

検事総長の次に文政権が検察改革のために投入したのが曺国・民情首席秘書官だった。曺国はソウル大学教授在任中に執筆した著書が当時野党政治家だった文在寅の目に留まり,文政権発足と同時に民情首席秘書官に抜擢された。民情首席は大統領府と行政機関の綱紀を司るほか,法曹5大権力機関(検察,警察,国家情報院,国税庁,監査院)を統括し,要人人事における検証も担当する要職である。職責の特色上,民情首席は法曹資格者を任命するのが慣例だったが,法曹資格のない曺国を敢えて就任させたところに文大統領の法曹界から距離を置いて検察改革を貫徹させる意思と,曺に対する信認の厚さがうかがえる。文政権の政策構想は曺国に負うところが大きいとされ,検察改革も彼が推進役となっていた。

8月9日,文大統領は曺国を法務部長官に指名した。検察を直接指揮しうる法務部長官に腹心の曺国を据え,先に検事総長となった尹錫悦とともに検察改革を一気に加速させるのが文大統領の狙いだった。しかし,事態は文政権にとって思わぬ方向に展開していった。長官指名直後から曺国一族に対するさまざまな疑惑が提起されたのである。

一連の「曺国スキャンダル」の概要は,(1)妻と子供名義で74億ウォン余りの私募ファンドを設定し,当該ファンドが投資した企業が公共工事受注で利益を大きく伸ばした件,(2)高校生だった娘が医学論文の第1著者となり,これを利用して名門の高麗大に不正入学した件,(3)妻の勤務先である東洋大学の総長名義の娘宛表彰状が偽造され,これを使って娘が釜山大医学専門大学院に不正入学した件,(4)曺の父が経営していた学校法人を舞台とした不適切な相続,偽装離婚,偽装訴訟などで一族の100億ウォンの財産保全を図った件,の4つとなる。

これらの疑惑に対して曺国は釈明を繰り返すなかで,道義的責任を認めながらも手続き的な違法行為はなかったと一貫して主張した。そのうえで文政権は世論の反対を正面突破して曺国の法務部長官就任を目指し,9月9日に文大統領は国会の同意を得ないまま曺国を法務部長官に任命した。

文政権の誤算はもう1つあった。日々膨らんでいく曺国への疑惑に対し,尹錫悦総長率いる検察が文政権との対決の道を選んだのだ。8月27日,検察は曺国スキャンダルの関係先を一斉に捜索した。9月23日にはすでに法務部長官となっていた曺国の自宅を検察が家宅捜索するという異例の事態となった。10月24日には曺の妻が私募ファンドの不正投資,娘の不正入試,証拠隠滅などの容疑で逮捕された。この間,文大統領は9月27日に検察の曺国周辺への捜査を念頭に「節制された検察権の行使」に言及,検察の行き過ぎに対して事実上の警告を発した。

疑惑の渦中にありながら,曺国・法務部長官は10月8日に検察改革推進計画を発表した。その内容は,法務部による監察強化,各地の特捜部の廃止・改称などによる直接捜査の縮小,別件捜査・長時間聴取の制限,他機関への検事派遣の最小化,容疑事実の公表禁止,捜査対象者出頭の最小化などである。人権への配慮と検察の権限縮小に重点を置いた印象である。これに対し,改革される側の検察は,10日に上記改革計画に沿って組織改編を進める方針を明らかにした。

10月14日,小粒な改革案を置き土産に,曺長官は辞任を表明した。政権支持率の低下や自身の長官在任に抗議するデモが拡大したことのほか,検察が曺国スキャンダルに対して大々的な捜査を展開した結果,家族・親族が次々に逮捕・起訴されたことも辞意表明の背景となった。

文大統領が意気込んで取り組んだ検察の内部からの改革は,平凡な成果に対してエース級の側近の退場という高い授業料を払うことを余儀なくされた。端正な容貌と,明快な弁舌で保守勢力の不正を糾弾し,機会均等を説く姿とで曺国は高い支持を集めていた。しかし,大統領の最側近が不正入学や不正蓄財を働くという構図は,朴槿恵政権を失職に追い込んだ崔順実事件とほぼ同様であり,積弊清算とクリーンさを前面に掲げてきた文政権にとってはイメージダウンとなった。

攻勢を緩めなかった検察

文政権と対峙し,曺国を長官の座から追い落した形の検察は,なおも追及の手を緩めなかった。検察が俎上に載せたのは文政権周辺による蔚山市長選介入と盧元大統領の側近への監察もみ消しであり,これらにはいずれも曺国・前法務部長官が関わっているとされ,スキャンダルは広がりを見せた。

2018年6月の蔚山市長選では,人権派弁護士で文大統領の30年来の知己である宋哲鎬(ソン・チョルホ)を当選させるため,青瓦台(大統領府)が警察に対立候補となった前市長に対する「下命捜査」を行わせ落選させたという疑惑が提起された。この事件には曺前長官のほか,当時の任鍾晳(イム・ジョンソク)・秘書室長の関与が取りざたされている。また,監察もみ消し疑惑とは,文大統領の盟友であった盧武鉉・元大統領の側近で前釜山市経済副市長の柳在洙(ユ・ジェス)にまつわるものである。柳が金融委員会の金融政策局長だった当時の収賄疑惑が提起され,2017年下半期に青瓦台の監察を受けることになっていたが,民情首席秘書官だった曺国の指示でもみ消されたとされる。

これらの事件に関し,検察は12月に曺前長官本人に対する調査を3回行ったほか,4日には青瓦台への家宅捜索,23日には曺前長官への逮捕状請求(27日棄却)と,矢継ぎ早に手を打った。31日には曺前長官が家族に絡む不正をめぐり収賄などの容疑で在宅起訴された。蔚山市長選介入と監察もみ消し疑惑については起訴に向けて引き続き捜査が続けられることとなった。

第21代総選挙への準備

長期執権を狙う与党・進歩勢力にとって2020年4月15日に予定されている第21代総選挙は,2022年の次期大統領選の前哨戦と位置づけられ,絶対に負けられない戦いである。そのため,進歩系与党の民主党は早くから準備を進めてきた。上述のように,与党民主党を核とする1+4協議体を通じた汎進歩連合の取り組みや,公職選挙法改正をファストトラック案件に指定して群小政党を取り込もうとしたことなどは総選挙を意識したものと言えよう。

このほか,閣僚や大統領秘書官などの要職者を総選挙出馬に備えて交代する事例が多く見られた。1月の任鍾晳・大統領秘書室長をはじめとする青瓦台秘書陣の交代,4月の閣僚5人の交代,7月の首席秘書官3人の交代,そして8~9月には閣僚4人の交代があった。12月には李洛淵(イ・ナギョン)首相の後任として丁世均(チョン・セギュン)・前国会議長が指名された。これら要職者の交代で与党は前職者の多くを総選挙出馬に備えて温存したと考えられている。公職者の出馬予定は長官経験者に限らない。次官,青瓦台参謀,政府系機関や地方自治体の幹部などの公職経験者の与党民主党からの出馬は全候補者の3分の1にまで達する見込みとされるが,この比率は進歩系与党が総選挙に臨んだ過去の例に比べてもかなり高い。与党としては総選挙に対して高い危機感・緊張感をもって臨み,経験,知名度,実務能力に長じた人材をできる限り集めることで乗り切ることを目論んでいる。

政権・政党支持の推移と特徴

2019年11月に文政権は任期5年の折り返し地点を通過した。この年の政権支持率(図1)と政党支持率(図2)の推移と特徴を見てみよう。

   図1 政権支持率の推移(2019年)    図2 政党支持率の推移(2019年)

(出所)図1,図2とも韓国ギャラップ。

月別の政権支持率は年間を通して42~48%の範囲内で推移した。7月には検察改革進展への期待や日本の輸出管理強化に伴う反日感情の高まりが政権支持上昇につながっており,9月から10月にかけては曺国スキャンダルの噴出が政権支持を押し下げていることがわかる。その後,曺国の退場とともに政権支持率は復元していった。概して変動幅は小さく,経済悪化などで支持率が低落傾向を示した前年と違って有意なタイムトレンドは検出できない。

与党民主党の支持率はほとんど変動がなく,37~40%の狭い範囲での変動に終始した。曺国スキャンダルの影響で10月に多少支持率が落ちた程度である。

与党に不利な材料が相次いだにもかかわらず,文政権および与党への支持は底堅く推移した。曺国スキャンダルの過程での泥仕合のほか,金慶洙(キム・ギョンス)・慶尚南道知事,李在明(イ・ジェミョン)・京畿道知事,安熙正(アン・ヒジョン)・元忠清南道知事など,進歩勢力の将来を嘱望された有力人材が次々と断罪された。年末には大統領側近らによる蔚山市長選介入や監査もみ消し疑惑なども浮上した。だが,曺国の一件を除くと支持率への影響は軽微だった。「対外関係」の項で扱う日韓関係悪化や北朝鮮との関係疎遠,対北朝鮮政策をめぐるアメリカとのすれ違いなども多少の影響を与えただけで,30~40代,全羅道,ホワイトカラーなどの与党・進歩勢力のコアの部分に動きはなかった。これに加え,1+4協議体の成功で与党が群小政党との連携の実績を積んだことも与党側の強みとなった。政権担当の折り返し地点となる,政権3年目の第3四半期の支持率について,過去の各政権と比較してみると,記録が残る7人の大統領のうち文政権は金大中政権に次いで高い支持率をたたき出している。

一方,野党第1党で保守系の自由韓国党の支持率は,対日関係が悪化した7~8月には低迷したが,北朝鮮が久々に連続して飛翔体を発射した5月と,曺国スキャンダルが噴出した10月に高まりを見せた。年中の支持率の変動幅は民主党よりも大きく,やや有意なプラスのタイムトレンドを見いだせる。2016~2017年の朴槿恵元大統領の弾劾政局の過程で離散し,「シャイ保守」として息をひそめていた保守支持者が少しずつ保守本流格の自由韓国党に戻っていることを示している。しかし,与党との支持率の差はいまだ大きく,群小政党との連携も進んでいない。いまだに崔順実事件と朴槿恵政権の弾劾・退場という負のイメージは強く,高齢者・既得権益層の政党という固定観念からの脱却もできていない。こうしたことが浮動層の支持の新規獲得が進まず,保守層の結集もいまだ限定的なものにとどまっていることの主因であろう。

(奥田)

経 済

マクロ経済の概況:リーマン・ショック以来最低水準の成長率

2019年の韓国経済は,半導体をはじめとする輸出不振に設備投資や建設投資のマイナス成長が続いたことで景気減速に歯止めがかからなかった。2020年3月に韓国銀行が発表した国内総生産(GDP)の暫定値によれば,2019年の実質GDP成長率は2.0%にとどまり,リーマン・ショック以降で最低値を記録した(表1)。2.7~2.8%とされる近年の潜在GDP成長率(同行の推計)を大きく下回り,GDPギャップはマイナスが続いている。

支出項目別にみると,GDPの約半分を占める民間消費では自動車や家電製品などの耐久財消費が堅調であったものの,通年で前年比1.9%増にとどまり伸びは鈍化した。民間消費に次いで高いシェアを占める輸出は,牽引役を果たしてきた半導体が市況悪化により低迷し,米中貿易摩擦の激化も重なって前年比1.7%増と大きく失速した。半導体市況の悪化は国内企業の投資抑制にもつながり,設備投資は前年比7.7%減と大幅に落ち込んだほか,輸入も同0.4%減を記録した。政府による相次ぐ不動産市場安定化対策を受けて住宅建設を中心に減少した建設投資もまた,前年比3.1%減のマイナス成長が続いた。唯一,政府消費が前年比6.5%増と大幅な伸びを示して景気を下支えしたが,これは健康保険改革(文在寅ケア)により保険適用範囲が拡大したことで保険給付支出が増大した要因が大きい。

表1 支出項目別および経済活動別国内総生産成長率

(注) 数値はすべて暫定値。四半期別数値は季節調整後の値。在庫増減はGDPに対する成長寄与度を表す。

(出所)韓国銀行「2019年第4四半期および年間国民所得(暫定)」2020年3月3日。

経済活動別には,半導体産業を中心に不振が続いた製造業が前年比1.4%増で伸び率が鈍化したほか,建設業については建設景気の減速を受けて同3.0%減と2年連続のマイナスに陥った。サービス業は保健医療・社会福祉や情報通信といった分野で健闘したものの,前年比2.7%増と前年水準には及ばなかった。国内総所得(GDI)の成長率は,半導体価格の下落などによって交易条件が悪化したことで,GDP成長率を大幅に下回る0.4%減のマイナス成長を記録した。ただし,1人当たり名目GDPおよび1人当たり国民総所得(GNI)はともに,前年水準並みの3万ドル台を維持する見通しである。

国際収支状況:大きく落ち込んだ貿易実績

関税庁の発表によれば,2019年の輸出入総額は3年連続で1兆ドル超えこそ達成したものの,通関基準の輸出額は5423億ドル(前年比10.3%減)にとどまりリーマン・ショック以来最大の減少率となった。国内生産や設備投資の縮小,1次産品価格の下落などを受けて輸入額も5033億ドル(前年比6.0%減)に落ち込み,貿易黒字額(391億ドル)は2012年以降で最低水準を記録した。全体の輸出量は前年比でわずかに増加しているので,輸出不振は輸出単価の減少(前年比10.6%減)に起因する部分が大きい。輸出の内訳を品目別にみると,単一品目として最大を誇る半導体が前年比25.4%減と大幅に下落した影響が大きかった。一般機械(前年比1.8%減)や石油化学(同14.8%減),石油製品(同12.3%減),鉄鋼製品(同8.5%減),船舶(同5.1%減),無線通信機器(同17.6%減)などの主力品目も軒並み減少した。ただし,欧米の主力市場のほかにASEANや独立国家共同体(CIS)といった新興国市場での販売が伸びた自動車(前年比5.3%増)だけはプラスに好転した。

地域別にみると,最大の輸出先である中国向けが米中貿易摩擦や中国の景気低迷などを受けて前年比16.0%減と大きく落ち込んだことが全体の輸出不振につながった。アメリカ向け(前年比0.9%増)はやや増加したものの,ベトナムを含めて対ASEAN(同5.0%減)やEU向け(同%8.4減)も前年割れを余儀なくされた。ただし,ASEANやインドなど「新南方」と称される戦略的な輸出先が占める比重は初めて2割を超えるに至った。一方,対日貿易では輸出入がそれぞれ前年比6.9%減と同12.9%減を記録したが,貿易赤字は190億ドルに縮減して2003年以来の200億ドルを下回る規模となった。7月から実施された日本の輸出管理強化の影響は限定的とみられ,むしろ日本側の対韓輸出減による一部日本企業の業績への影響のほうが大きいとされる。

韓国銀行によれば,貿易黒字の縮小が響いて2019年の経常収支は600億ドルの黒字にとどまり,黒字幅は前年水準よりも減少した。経常収支の一部を構成するサービス収支では旅行収支の赤字幅が若干改善したものの,全体のサービス赤字は続いている。また,韓国輸出入銀行の発表によると2019年の海外直接投資額は前年実績よりも2割以上多い619億ドルに達し,金融・保険業を筆頭に製造業でも高水準を維持している。米中貿易摩擦を受けて欧米向け直接投資の増加が顕著であるが,中国を含めたアジア向けも好調である。対照的に2019年の外国人直接投資(申告基準)は,産業通商資源部の発表によると前年比13.3%減の233億ドルにとどまった。同年より法人税減免が廃止されたことが影響し,製造業とサービス業でともに減少をみた。ただし,日本による対韓輸出管理の強化を受けて国産化の機運が高まったことで,今後は部品・素材関連の分野を中心に投資誘致に向けたインセンティブ強化に乗り出すとみられる。

主要企業業績:明暗が分かれた半導体と自動車

半導体メモリーの市況悪化は,国内大手の業績を直撃した。韓国最大企業であるサムスン電子の2019年連結決算は売上高230兆4000億ウォン(前年比5.5%減),営業利益27兆7700億ウォン(同52.8%減)を記録し,前年からの反動減が大きく響いて足元では5四半期連続で減益が続いている。ただし,半導体部門の業績悪化は底を打ちつつあり,第5世代移動通信システム(5G)の商用サービス開始を受けてスマートフォン事業の本格的な再生を図れるかが復調へのカギとなる。半導体大手のSKハイニックスもまた,過去最高業績を更新した前年から一転して通年決算で大幅な減収減益に陥った。なお,半導体材料に関する日本の対韓輸出管理強化によってサプライチェーンの停滞に伴う国内メーカーへの悪影響が懸念されたが,大手2社は一部を第三国からの調達や国産材料の投入に切り替えるなどの対応をとり,生産への短期的な影響は軽微であったとされる。

自動車最大手の現代自動車は,前年までの主要市場での販売低迷などによる減益傾向から一転して業績改善を果たした。多目的スポーツ車(SUV)の販売増加に加えてウォン安・ドル高基調も手伝い,2019年連結決算は売上高105兆7900億ウォン(前年比9.3%増),営業利益3兆6850億ウォン(同52.1%増)の増収増益に転換した。同系列の起亜自動車も,通年決算で2年連続の増収増益を達成している。ただし,両社とも2017年以来の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備に伴う中国事業の不振が続いており,現代自動車は5月に北京第1工場,起亜自動車は6月に江蘇省の塩城第1工場の生産停止を余儀なくされた。両社は今後,インド市場での生産・販売に注力するとみられ,現代自動車は新たにインドネシアに生産拠点を置いてASEAN市場の開拓も目論んでいる。

2019年には,造船業や航空業界において再編・淘汰の動きがみられた。造船世界3位の大宇造船海洋の買収をめぐって,最大手の現代重工業が筆頭株主として金融支援を行う韓国産業銀行と3月に最終合意に至り,6月に新設された持ち株会社である韓国造船海洋の傘下に現代重工業と大宇造船海洋を収める計画が進められている。ただし,政府の公的支援による造船業の競争力強化に対しては日本がWTOに提訴しており,合併による寡占化の懸念について今後,関係国の審査当局による判断を仰ぐことになる。航空業界では,2019年にはウォン安の進展(前年末比3.6%のウォン安・ドル高)に加えて日韓関係の悪化などが重なり,各社軒並み営業赤字が続いている。韓国の航空業界は,2019年末現在で格安航空会社(LCC)を含めて9社がひしめき合う過当競争に陥っている。国内2位のアシアナ航空では錦湖アシアナグループの朴三求会長が不適切会計処理で引責辞任した後,グループ全体の資金繰りの悪化から同社はHDC現代産業開発に買収されるに至った。また,国内LCC最大手の済州航空は同5位のイースター航空を買収することが決まり,今後も航空業界では再編の波が続く見通しである。

景気対策と対日経済政策:積極的な金融緩和と財政出動

年初より続く輸出不振により景気の減速感が強まるなか,政府は3月と9月の2度にわたって大きな輸出対策を発表し,政策金融を活用して輸出企業向けに投資促進や貿易保険の拡充,新南方や新北方(ロシアなど)といった輸出市場の多角化強化を図る方針を打ち出した。景気後退のリスクを重くみた韓国銀行もまた,7月と10月に相次いで3年ぶりとなる政策金利の引き下げ(いずれも0.25ポイントずつ)に踏み切った。今回の利下げ判断にはアメリカの利下げ(7月末,9月,10月末)に先手を打つ目算があったとされるが,背景には長引く低インフレ傾向で物価上昇圧力が弱まっていることも関係している。9月には消費者物価上昇率が初めて前年比マイナスを記録し,生産者物価上昇率も年後半にマイナスが続くなど,景気低迷によるデフレ懸念が強まっている。通年での消費者物価および生産者物価の上昇率はそれぞれ0.4%と0.02%で,前年よりも大幅に鈍化した。

そうしたなかでタイミングが重なったのが,7~8月にかけて日本政府が実施した半導体材料3品目(レジスト,高純度フッ化水素,フッ化ポリイミド)に関する対韓輸出管理の強化および輸出管理上の優遇対象国(ホワイト国)からの韓国の除外であった(経緯の詳細は「対外関係」内の「対日関係」の項を参照)。それら日本側の措置に対して,政府は矢継ぎ早に対応策を打ち出していった。当初は失業給付や雇用創出といった景気対策などを目的に4月に編成された補正予算のうち,8月初めの成立時点において25品目の技術開発支援に投入される予算が確保された。また,8月には「素材・部品・装備競争力強化対策」と「素材・部品・装備研究開発投資戦略および革新対策」の2つの大型対策も発表された。それらのなかには6大産業分野からの戦略品目指定(100品目),対日輸入依存度の高い品目について第三国からの調達や国産化の推進を通じた早期の供給安定化の実現,研究開発支援に7年間で7兆8000億ウォン規模の財政投入,国内の大手需要家と供給メーカー間の水平的協力モデルの構築などが盛り込まれた。その他,投資促進のための税制支援や前年から大企業先行で導入された週52時間労働制の条件付き適用除外も実施されるに至った。9月には「素材・部品・装備競争力委員会」が新設され,当該特別措置法の整備が進められている。こうした一連の対策が実際に部品・素材の国産化の進展や対日輸入依存の低下に直結するかは未知数であるが,中長期的な観点から今後の動向に注目していく必要があろう。

文政権の国内経済政策の根幹をなす雇用対策は,2019年には転換点を迎えた。これまで2年連続で大幅引き上げを断行してきた最低賃金水準は,2020年度には前年比2.9%増の時給8590ウォンに決定され,2020年までの最低賃金1万ウォンという目標は達成できずに終わった。前年に大きく鈍化した就業者数の増加幅は,2019年には30万1000人と2年前の水準並みに回復した。ただし,これはサービス業を中心とした高齢層の短期雇用の増加によるところが大きく,製造業や建設業,30~40歳代の就業者数は逆に減少が続いている。失業率も前年に悪化した3.8%水準から変化がなく,雇用情勢の質的な改善が進んでいるとは言い難い。政府はとりわけ40歳代の雇用環境の悪化を問題視しており,専門のタスクフォースが構成されたことで,今後具体的な対策が講じられるとみられる。

繰り返される不動産市場対策

近年の低金利基調などを受けて銀行やノンバンクからの家計向け融資が増加し,国内の家計債務が膨張し続けていることがかねてから指摘されてきた。債務者全体のうち信用格付の高い高所得者が占める割合が増加し,延滞率は低下してきているものの,韓国銀行の発表によると足元の家計負債総額は1600兆1000億ウォン(12月末現在)まで増大している。現状で家計破綻に直結するリスクや金融システム全体への影響は少ないとみられるが,家計債務の大部分は不動産融資であるために不動産市場の動向とは隣り合わせの関係にある。

韓国では家計資産のうち不動産が占める割合が7~8割と高く,投資資金が不動産市場に流入しやすいため住宅価格の高騰が続いてきた。2017~2018年にかけて政府は相次いで住宅市場の安定化対策を打ち出したことで,2019年に入って不動産市場の過熱ぶりは沈静化するものと見込まれていた。実際,年前半にはマンションを中心とした住宅価格は全国的に落ち着きを取り戻しつつあるかにみえたが,年後半になるとソウルや一部首都圏などで再び住宅価格が高騰しはじめた。そのため,政府はまず11月にソウル市内の8区27地域(洞)を民間宅地の分譲価格上限制の適用地域に指定し,続く12月には高額住宅を担保とした融資の規制強化を骨子とする住宅市場安定化対策を再び発表した。具体的には,ソウルなどの投機地域・投機過熱地区を対象に実勢価格が9億ウォンを超過する住宅担保貸出の規制強化や分譲価格上限制の適用地域拡大,総合不動産税の引き上げによる住宅所有負担増といった施策が盛り込まれている。

こうした需要サイドの価格規制に焦点を当てた対策が果たして不動産市場の安定に寄与するのかは不透明な部分が多く,逆に投資需要が賃貸(伝貰)市場にスライドするだけであるとか,建設業者の収益性の悪化から住宅供給不足に拍車がかかるといった懸念が出ている。不動産投資や高額住宅の所有は韓国では経済格差の温床として認識されており,不動産対策は政府の経済政策のなかでも重要項目であるが,これまで目に見える成果が得られていないのが実情である。

(渡邉)

対外関係

疎遠になった南北関係

2019年を通じて韓国は北朝鮮に対して熱心に対話を呼びかけ,協力継続の意思を示してきた。しかし,北朝鮮に対する国連制裁が多数発動され,送金や物資搬入が困難な状況では北朝鮮が望むような経済支援を韓国が行えないのが現状である。韓国の呼びかけに対する北朝鮮の反応は鈍く,前年の劇的な関係改善とは対照的に2019年の南北関係は疎遠になった。

韓国は2月27~28日のハノイでの米朝会談が成功すれば対北朝鮮制裁が緩和され,南北経済交流が活発化すると期待していた。また,金正恩(キム・ジョンウン)・朝鮮労働党委員長の韓国訪問も具体化すると見ていた。しかし,ハノイでの米朝会談は不調に終わった。この後南北間の交流は細り,北朝鮮の対南批判が目立つようになった。

4月12日,北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長は,最高人民会議での施政方針演説で,文政権に対して次のように批判した。「成り行きを見ながら右顧左眄(ウコサベン)し,差し出がましく『仲裁者』,『促進者』のように振る舞うのではなく,民族の一員として自分の信念を持ち,堂々と自分の意見を述べて民族の利益を擁護する当事者となれ」。つまり,文政権による米朝交渉の仲介はもはや無用で,国連制裁や外国からの干渉に影響されず,同じ民族である北朝鮮への経済協力(「民族の利益」)の約束を果たせ,ということである。

このように北朝鮮が文政権を突き放す姿勢を見せたにもかかわらず,その直後の15日には文大統領は金委員長の施政方針演説を「歓迎」し,南北首脳会談をなおも推進する意向を表明した。北朝鮮は5月4日に18カ月ぶりとなる飛翔体発射を行い,これ以降も頻繁に飛翔体を発射するようになったが,文政権からは強い抗議表明はなかった。

だが,韓国側の南北対話推進の熱意とは裏腹に,北朝鮮の韓国に対する姿勢はさらに厳しくなっていった。6月30日には,板門店で金正恩委員長とトランプ米大統領の再会が実現し,その場に文大統領も立ち会ったが,文大統領と金委員長の接触はほとんどなかった。8月16日,北朝鮮は祖国平和統一委員会の報道官談話で,前日に文大統領が行った光復節演説を非難し,「二度と向き合う考えはない」と表明するなど,米朝交渉を優先し,南北対話を後回しにしようとする態度を示した。10月23日には,北朝鮮の金正恩・国務委員長が南北協力の象徴である金剛山の韓国側施設の撤去を指示したことを『労働新聞』が報道した。もはや南北経済協力には期待しないという北朝鮮のいら立ちを表すものと考えられる。

米朝仲介の破綻と戦作権移管をめぐり不調和の対米関係

前年来の朝鮮半島情勢の急展開に合わせて韓米合同軍事演習が縮小された。戦時作戦統制権(以下,戦作権)の韓国移管に向けた取り組みも進められたが,課題も浮上した。その一方で,南北協力,日米韓安保協力,韓米防衛協力の今後などに関して相互不信を生みかねない場面が散見された。

2月末のハノイにおける米朝首脳会談の不調は,完全非核化を対北朝鮮制裁の解除の前提とするアメリカの立場を明確にしたもので,部分的非核化でも制裁の一部解除を目論む文政権とは立場の差が明らかになった。それでも,朝鮮半島の緊張緩和の流れを維持することについては韓米が一致しており,合同軍事演習縮小の流れは引き継がれた。3月には,毎年春に行われてきたキーリゾルブ,フォーイーグルの2つの訓練を終了して「同盟19-1」に,夏に行われてきた訓練のフリーダムガーディアンは「同盟19-2」に改称して規模を縮小することになった。

4月以降は戦作権の韓国移管に向けた動きが本格化した。4月1日,鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)・国防部長官とシャナハン米国防長官代行は,韓国軍の連合防衛主導の能力,北朝鮮の核・ミサイルへの対応能力,朝鮮半島の安保情勢安定といった戦作権移管の3条件に合意した。これらのうち,韓国軍の連合防衛主導の能力証明が最大の焦点で,そのための第1段階となる作戦運用能力(IOC)検証を夏に実施する合同演習「同盟19-2」で行うことになった。連合防衛主導能力の証明のためには,IOCのほかに完全運用能力(FOC)検証,完全任務遂行能力(FMC)検証が必要となる。これら2つの検証を各1年で終えれば,文政権の任期内(2022年5月まで)の戦作権の韓国移管という選挙公約が実現する計算である。

合同演習「同盟19-2」は「後半期韓米連合指揮所訓練」と改称されて8月11日から20日までの日程で行われた。だが,この演習の過程では戦作権移管後の韓国軍による統制が骨抜きにされるとの懸念が改めて浮上した。上記演習は韓国側将官が司令官となって実施されることになっていたが,途中で演習の副司令官であったエイブラムス米韓連合司令部司令官が国連軍司令官の資格で指揮権を行使すると主張し,演習での単一指揮権が確立できなかったという。現在,韓米連合軍司令部司令官には在韓米軍将官が就任し,停戦監視を主任務とする国連軍司令官を兼ねている。戦作権移管後も国連軍を在韓米軍が統括する場合,軍事衝突を停戦違反とみなして米軍主体の国連軍が前面に出てくる可能性は否定できない。

米軍が戦作権移管後における影響力保持を目論んでいるとの見方を補強する材料はほかにもある。2018年に韓米連合司令部がソウルからより南方に位置する平沢の米軍基地内に移ったことや,米軍が国連軍の陣容強化を図っていること,12月17日に米上院が在韓米軍の兵力維持を定めた国防権限法を可決したことなどが挙げられる。自主国防を目指す文政権にとっては,戦作権移管以後の主導権確保が課題として浮上している。

米韓の考え方がすれ違い,相互不信を生みかねない場面も散見された。南北関係に関しては,2月11日,アメリカのビーガン対北朝鮮政策特別代表が「関係の発展は対北朝鮮制裁の枠組みの中で行うべき」と発言し,韓国の前のめりの南北協力事業推進の姿勢にくぎを刺した。2月末の米朝首脳会談が決裂すると,北朝鮮の立場に配慮して事あるごとに制裁解除をアメリカに働きかけてくる韓国は米朝の仲介者として不適任との見方が米政府・議会関係者の間に広がった(『中央日報』3月12日付)。日米韓協力に関しては,7月以降の日本による対韓輸出管理強化と関連して,8月22日に韓国が日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を延長しないことを決めると,米国防総省は「強い懸念と失望の意を表明する」とのコメントを出した。日米韓協力を重視せず対日批判に走る韓国の姿勢をアメリカが正面から批判した形である。GSOMIAが失効を間近に控えた11月15日には,韓米定例安保協議(SCM)終了後の記者会見でエスパー米国防長官は「協定終了で得するのは中国や北朝鮮だ」と述べ,GSOMIA延長の意義をあらためて強調した。

徴用工問題と輸出管理強化で悪化した対日関係

2019年の対日関係は,前年の徴用工判決や韓国海軍によるレーダー照射事件による悪化を引き継いで始まった。徴用工判決をめぐる問題が解決しないなか,日本政府が打ち出した輸出管理強化を契機に日韓関係は一層険悪化した。

2018年末に日本海上で起きた韓国海軍による自衛隊機へのレーダー照射事件については,年をまたいだ激しい応酬の末,日本の防衛省は1月21日に「本件事案に関する協議を韓国側と続けていくことはもはや困難であると判断する」との最終見解を発表した。こうした形での協議打ち切りは異例であり,日韓防衛当局間の信頼関係は大きく損なわれた。

戦時中の強制徴用に対し日本企業の賠償を命じた徴用工判決に関して,日本は1965年の請求権協定が定める紛争解決手続きに沿った解決を粘り強く韓国側に求めた。1月9日の協定上の二国間協議の要請を皮切りに,仲裁委員会設置,仲裁委員会委員を指名する第三国の選定を韓国に求めた。日本企業の資産差し押さえと現金化に向けた動きが進むなか,日本側からは対抗措置が取りざたされるようになった。

一方,韓国は不作為を続けた。1月10日,文大統領は「司法部の判断に政府は介入できない」と述べたうえで「日本はもっと謙虚な態度を取るべき」と批判した。6月19日に韓国は仲裁委員会設置の条件として日韓企業の拠出金を慰謝料に充てる案を提示したが,日本側の支払いを含むこの案を日本は直ちに拒絶した。

徴用工問題が膠着状況に陥るなかで飛び出したのが7月1日発表の日本政府による半導体製造用の部材等に対する対韓輸出管理強化であった。日本の経産省はフッ化水素など軍事転用の可能性がある3品目の対韓輸出を個別許可の対象とした。8月2日には輸出管理上のカテゴリーA(ホワイト国)から韓国を除外することを決定した。同省の説明では,韓国で輸出管理をめぐる「不適切な事案」が現に発生していることが輸出管理強化発動の理由である。

日本の措置に対して,韓国は基幹産業を狙い撃ちにした徴用工判決に対する報復であるとして猛反発するとともに,国内関連産業への善後策を急ぎ講じた(経済対策の詳細については「経済」の項を参照)。8月2日,文大統領は,日本による韓国のホワイト国除外決定に際し,「事態を一層悪化させる非常に無謀な決定」と批判し,「二度と日本に負けない。韓国の企業と国民は困難を克服できる」と強調した。市民の間にはビールや衣料品をはじめとする日本製品不買運動や日本への旅行自粛の動きが広がった。ビールは2018年の対日輸入額が79億円だったが,2019年10月にはゼロとなった。日本に来た韓国人旅行客は2018年の754万人から2019年には558万人と前年比25.9%減少した。

韓国政府も対抗措置を次々と実行に移した。8月22日,政府は11月に満了となる日韓GSOMIAの不延長を決めた。この決定の理由について金鉉宗(キム・ヒョンジョン)・国家安保室第2次長は8月29日に,韓国が求めた各種協議や8月15日の文大統領による光復節演説を日本が「『国家的自尊心』を喪失させるほど」無視したためだと語った。9月11日には本件について韓国がWTO提訴,18日には韓国が日本をホワイト国から除外した。

その後,事態は小康状態へと向かった。輸出管理強化の対象となった3品目に対する個別輸出許可が8月以降相次いで出され,輸出許可発給が最も遅れていた高純度液体フッ化水素について遅くとも11月17日までに個別輸出許可が出ている。11月22日,韓国は日韓GSOMIA不延長の決定を撤回するとともに,日本の輸出管理強化措置に対するWTO提訴も手続きを停止した。これは日米韓協力を重視するアメリカが韓国に対して破棄を思いとどまるよう強力な圧力を掛けた結果である(「対米関係」の項を参照)とともに,個別審査に基づく日本の輸出許可が出揃ったことも影響したと考えられる。

しかし,最近の日韓関係悪化を決定づけた徴用工問題は依然として解決の糸口が見つからない。10月24日,即位礼のため来日した李洛淵首相と安倍首相が会談,11月4日のASEAN首脳会議の際の日韓首脳の対話,12月24日の中国・成都での日韓首脳会談など,日韓間のハイレベル接触の機会は年末にかけて幾度かあったが,徴用工問題については双方の主張を繰り返すにとどまっている。12月18日に文喜相議長が元徴用工救済のための「記憶・和解・未来財団」を設立するための法案を提出した。日韓の企業・一般国民の寄付を募り,韓国政府も財団運営にかかる費用を負担するというもので,日本側には文喜相案への好意的反応もあったという。しかし,徴用工支援団体は加害者責任があいまいになるとして反対しており,これを受けて文政権と与党も文喜相案には距離を置いている。

改善は道半ばの対中関係

中国の国家主席,首相,外相などとのハイレベルな交流はかなり復活し,北朝鮮の非核化をめぐる問題における仲介者としての中国の存在が改めて注目された。しかし,韓国のTHAAD配備をめぐる韓中間の葛藤は完全に解消されず,米中貿易紛争が韓国経済にも悪影響をおよぼした。

韓中首脳会談は6月27日と12月23日の2回行われたほか,首相級の会談が3月27日と12月24日(文大統領と李克強・中国首相)が開かれた。これら会談では,北朝鮮の非核化,THAAD配備をめぐる対韓制裁の扱い,PM2.5などの環境問題などが扱われた。

2回の首脳会談では,北朝鮮の非核化と関連して米朝対話の継続への支持が表明されたほか,6月の首脳会談ではその前の中朝首脳会談の結果を踏まえて北朝鮮に非核化の意思があることが習主席から伝えられた。2019年に入って北朝鮮が韓国からの呼びかけに反応しなくなって南北対話及び仲介外交が行き詰まったことから,北朝鮮との対話チャネルを正常に稼働させている中国から北朝鮮の動向を探ることの重要性は以前よりも高まっている。

THAAD配備問題に関しては,対韓制裁の完全撤回には至らなかった。12月5日の韓中外相会談で「韓中関係を完全に正常化すべきこと」で一致し,THAAD配備問題に伴う対韓制裁についても撤回されるとの見方が広がった。しかし,24日の首脳会談では習主席がTHAAD配備について「妥当に解決されるよう願う」と述べて韓国に対して引き続き圧力を加えた。文大統領は韓中関係が「一時的にギクシャクすることがあった」ことに触れ,遠回しにTHAAD配備をめぐる対韓制裁に言及したが,習主席はこれに答えなかった。環境問題については,韓国で深刻化しているPM2.5などの微細粒子問題について中国は自国からの飛来粒子の関与を否定する傾向を強めているが,3月の首相会談での李洛淵首相からの問題提起に対して李克強首相は「意思疎通を強化し,経験を共有しよう。環境分野で韓国と協力を強化する必要があり,研究開発,環境製品,貿易・投資での協力の見通しが非常に明るい」と応じた。

米中紛争が激化している折,韓国の対米加勢への警告ともとれる発言もあった。5月から6月にかけては,中国のIT企業華為技術(ファーウェイ)の製品の採用をやめるよう求めるアメリカとそれに応じないよう求める中国との間で韓国が板挟みとなった。6月13日,ハリー米大使は「韓国が5Gネットワークにファーウェイの通信装備を使用する場合,敏感な情報を露出しない」と述べた。これに対し,6月の首脳会談で習主席は,「中韓協力は外部の圧力から影響を受けてはならない」と述べた。この種の発言は,米韓離間を望む中国の意図を表すものとしてしばしば登場してきたが,本年の文脈でいえばファーウェイ製品採用に関するアメリカの圧力を拒否するよう強く求める意味も込められていると解釈される。

米中紛争の激化は韓国経済にも影を落としている。2019年の対中輸出額は前年比16.0%減の1362億ドル,貿易黒字(通関)は前年比276億ドル減の290億ドルとなった。失われた貿易黒字の規模は対GDP比1.7%に達した。

(奥田)

2020年の課題

2020年の国内政治の最大の焦点は4月15日に予定される総選挙の行方である。保守勢力の結集が進んでおらず進歩系の与党が優勢と見られるが,2月に入って急速に広がった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を鎮圧する過程での文政権の手腕が選挙結果に影響するだろう。群小政党の議席増が現実のものとなった場合,選挙後の議会運営が困難になる局面もあり得よう。検察改革の帰趨も注目される。文政権は検察の無力化を図るが,それでも検察が現政権への調査に注力する場合,政局混乱の要因となろう。

経済では,2019年から続く景気低迷に歯止めをかけられるかが大きな課題となる。しかし,新型コロナウイルスの急速な感染拡大によって消費や生産への影響がすでに出はじめており,2月末に韓国銀行は2020年の実質経済成長率の見通しを2.3%から2.1%に下方修正した。3月には緊急の経済対策として追加利下げが決まり補正予算が成立するなど,政府は観光業や航空,自動車部品など個別産業への支援策とあわせて景気のテコ入れを急いでいる。ただし,それら対策に要する財源の調達は大部分が赤字国債の発行によるとされ,2020年度の本予算も前年比9.1%増の大型配分が続いているため,財政の悪化が懸念される。

南北関係は,北朝鮮が核・経済建設の並進路線に回帰したことで非核化の道は一層険しくなり,交流は停滞を余儀なくされるだろう。対米関係では,在韓米軍の駐留経費負担の行方が懸念される。また,戦作権移管が円滑に進むかにも注目される。対日関係では徴用工問題の抜本的な対策が望まれる。差し押さえ資産の現金化が行われると関係が一層悪化し,長期化する恐れがある。対中関係では,THAAD配備に伴う対韓制裁の解除が焦点となる。中国経済の落ち込みが韓国にどの程度影響するかも懸念されるところである。

(奥田:亜細亜大学教授)(渡邉:アジア経済研究所 地域研究センター)

重要日誌 韓国 2019年
   1月
3日大邱地裁浦項支部,徴用工訴訟に関して新日鉄住金の韓国内資産の差し押さえを認定。
4日国防部,自衛隊機へのレーダー照射事件と関連,反論画像を公表。
8日文大統領,大統領秘書室長に盧英敏・中国大使を任命。
9日LG電子,車載用システム開発でアメリカのマイクロソフト社との連携を発表。
10日文大統領,徴用工判決と関連,「日本は歴史問題に謙虚な姿勢を」「徴用工判決の政治争点化は賢明でない」と述べる。
16日公正取引委員会,日産に対して燃費や排ガス認証に関する不当表示で検察への告発と9億ウォンの課徴金納付命令を発表。
24日検察,徴用工訴訟遅延の職権乱用などの容疑で梁承泰・前大法院長を逮捕。
30日ソウル中央地裁,金慶洙・慶尚南道知事に対し,大統領選での世論操作への関与で懲役2年の実刑判決。
31日現代重工業,韓国産業銀行と大宇造船海洋株の譲渡に関する条件付きMOUを締結し,同社の買収手続き開始を発表。
31日現代自動車と光州広域市,完成車の受託生産工場の設立で投資契約を締結。
   2月
7日文喜相・国会議長,従軍慰安婦問題と関連,天皇の謝罪を要求。
8日在韓米軍の駐留経費負担交渉,妥結。2019年の経費は1兆389億ウォン。
13日韓進重工業,フィリピン子会社の経営破綻で債務超過に陥ったと発表。韓国産業銀行,同社に対する金融支援の実施を表明。
27日自由韓国党,代表に黄教安・元首相を選出。
   3月
3日韓米国防部,合同軍事演習のキーリゾルブとフォーイーグルの終了を発表。
4日産業通商資源部,「輸出活力向上対策」を発表。
4日政府消息筋,米韓合同軍事演習フリーダムガーディアンの終了を表明。
8日現代重工業,韓国産業銀行と大宇造船海洋の買収に関する本契約の締結を発表。
26日政府,2020年度予算案編成指針を決定。積極財政で民生安定を目指す。
27日韓進グループの趙亮鎬会長,大韓航空の株主総会で取締役再任を否決される。
28日文大統領,外資系企業経営者と懇談。
28日錦湖アシアナグループ,アシアナ航空での不適切会計で朴三求会長の退任を発表。
   4月
3日SKテレコムやKTなど通信3社,5Gの商用サービスの開始を発表。
8日文大統領,長官級5人を任命。統一部長官には金錬鐵・統一研究院長。
8日韓進グループの趙亮鎬会長,死去。
9日検察,警察庁情報局を保守政権時代の政治介入の疑いで家宅捜索。
11日WTO上級委員会,福島県産水産物輸入禁止措置について,韓国勝訴の最終判決。
11日文大統領,ワシントンでトランプ米大統領と会談。
12日北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長,最高人民会議での施政方針演説で文政権の米朝仲介を「差し出がましい」と批判。
13日韓国銀行,UAEと6兆1000億ウォン規模の通貨交換(スワップ)協定を再締結。
15日錦湖アシアナグループ,アシアナ航空の売却を発表。
23日産業通商資源部,「造船産業活力向上方案」補完対策を発表。
24日サムスン電子,非メモリー半導体事業の強化に2030年までの12年間で計133兆ウォンの設備投資・R&D投資を発表。
25日LG電子,スマートフォンの韓国内での生産を年内に停止すると発表。
29日国会特委,与野党4党の賛成で,公職選挙法および検察改革諸法案を迅速処理案件(ファストトラック)に指定。
30日文在寅大統領,サムスン電子華城事業所を訪問。
   5月
3日外交部,駐日大使に南官杓・前国家安保室第2次長を任命。
15日公正取引委員会,韓進グループの総帥に前会長の長男の趙源泰会長を指定。
16日SKグループ,ベトナムのビングループへの1兆ウォン規模の出資を発表。
19日日本政府,韓国政府に対し徴用工判決をめぐり日韓請求権協定に基づく仲裁委員会の開催を要請。
23日盧武鉉・元大統領の10周忌追悼式典,挙行。
25日検察,サムスンバイオロジクスの粉飾会計事件でサムスン電子副社長2人を逮捕。
27日韓国独自の「乙支太極演習」,開始(~30日)。
30日日本政府,韓国産の水産物輸入に対する検疫強化を発表(6月1日から実施)。
   6月
3日韓米国防部,未来連合軍司令官に韓国軍大将を充てることで合意。
5日韓国銀行,4月の経常収支が7年ぶりに赤字を記録したと発表。
17日文大統領,次期検事総長に尹錫悦・ソウル中央地検長を指名。
19日政府,日韓企業の拠出金で徴用被害者に慰謝料を支払う案を日本に提案。日本政府,直ちに拒絶。
19日日本政府,徴用工判決について,仲裁委員会設置を韓国政府に要求。
19日文大統領,製造業ルネサンスビジョン宣言式に出席。
21日文大統領,大統領政策室長に金尚祚・公正取引委員長を任命。
24日民主労総,文政権に全面闘争を宣言。
27日北朝鮮のキム・ジョングン外務省米国担当局長,米朝関係について「南朝鮮当局が口出しすることではない」と発言。
27日文大統領,大阪でのG20に出席。
29日トランプ米大統領,来訪。文大統領と会談(30日)。
30日トランプ米大統領,板門店で金正恩・朝鮮労働党委員長と面会。
   7月
1日日本政府,半導体材料等3品目(レジスト,高純度フッ化水素,フッ化ポリイミド)の対韓輸出管理強化を発表(7月4日発動)。
3日和解・癒やし財団,解散。
4日政府,日本輸出規制関連部品・素材・装備関係次官会議を開催。早期自立化を支援。
9日フィッチ,韓国国債格付けAAマイナスに据え置き。
10日文大統領,財閥トップらと日本の対韓輸出管理強化への対策を協議。
12日最低賃金委員会,2020年の最低賃金を前年比2.9%増の8590ウォンで議決。
15日文大統領,日本の対韓輸出管理強化と関連,「日本経済により大きな被害が及ぶこと」と警告。
18日韓国銀行,基準金利を1.75%から1.50%へ引き下げることを決定。
19日ソフトバンクグループ,アジアのスタートアップ企業に投資する新ファンドを韓国に設立。
23日ロシア軍機,竹島近辺の「韓国領空」を侵犯。
25日SKハイニックス,NAND型フラッシュメモリーの前年比15%減産を表明。
26日文大統領,民情首席など首席秘書官3人を交代。
   8月
2日日本政府,韓国をホワイト国から除外することを閣議決定(8月28日施行)。
2日文大統領,日本による韓国のホワイト国除外に対し,「事態を一層悪化させる非常に無謀な決定」と批判,「深い遺憾」を表明。
2日国会,国民の安全と民生経済支援のため5兆8000億ウォン規模の補正予算案を可決。
4日公正取引委員会,自動車部品納入に関する談合で日本企業4社に対して計92億ウォンの課徴金納付命令を発表。
5日政府,「素材・部品・装備の競争力強化対策」を発表。核心技術・部品などの国産化加速を目指す。
8日世耕経済産業相,レジストの対韓輸出許可案件を例外的に公表。
8日環境部,日本から輸入する石炭灰の放射能検査を強化すると発表。
11日韓米合同軍事演習「韓米連合指揮所訓練」,開始(~20日)。
20日大韓航空,日本路線の運航数を大幅削減すると発表。
22日政府,日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の不延長を決定。
22日産業通商資源部,韓英自由貿易協定(FTA)への正式署名を発表。
28日洪楠基・経済副首相,革新成長拡大のため2020年に4兆7000億ウォン投資の意向を明かす。
28日政府,「素材・部品・装備の研究開発投資戦略および革新対策」を発表。
29日大法院,朴槿恵・李在鎔両被告の二審判決を破棄,高裁に差し戻す。
30日国家安保会議,米軍基地早期返還の積極的推進を決定。
30日産業通商資源部,日本企業によるフッ化水素の対韓輸出許可を表明。
   9月
6日検察,曺国・法務部長官候補の妻を私文書偽造の疑いで起訴。
6日国会,曺国・法務部長官候補への人事聴聞会を実施。
9日文大統領,法務部長官に曺国・前民情首席秘書官をはじめ,長官級5人を任命。
9日韓国GM労組,全面ストに突入。
10日WTO,日本製の産業用空気圧バルブに対する韓国の輸入関税引き上げに関して韓国側の一部協定違反として是正勧告。
11日政府,日本の対韓輸出管理強化を不当としてWTOに提訴。
11日政府,「輸出市場構造の革新方案」を発表。
18日韓国,日本をホワイト国から除外。
23日検察,曺国・法務部長官宅を捜索。
23日文大統領,トランプ米大統領と会談。北朝鮮との敵対関係終息などを再確認。
23日現代自動車,自動運転技術の開発でアメリカのアプティブ社との提携を発表。
24日韓日経済人会議,ソウルで開催(~25日)。
30日産業通商資源部,日本企業によるフッ化ポリイミドの対韓輸出許可を表明。
  10月
8日曺国・法務部長官,検察改革推進計画を発表。
10日大検察庁,法務部の検察改革策に合わせ,検察の直接捜査の最小化に同意。
10日サムスン電子,テレビ向け次世代パネルの量産に13兆1000億ウォンの投資を発表。
14日曺国・法務部長官,辞任。
16日韓国銀行,基準金利を1.50%から1.25%へ引き下げることを決定。
17日大法院,辛東彬・ロッテグループ会長に崔順実事件の免税店疑惑と関連,懲役2年6カ月,執行猶予4年を宣告。
22日李洛淵首相,即位礼式典に出席。
22日文大統領,予算案めぐり施政方針演説。「革新・包容・公正・平和が目標」と述べる。
23日ソウル中央地検,ロッテグループの辛格浩・名誉会長への刑執行停止を決定。
23日金正恩・北朝鮮国務委員長,金剛山にある韓国側施設をすべてなくすよう指示。
24日検察,曺国・前法務部長官の妻のチョン・ギョンシム東洋大教授を逮捕。
24日李洛淵首相,安倍首相と会談。
25日政府,大学入試の随時選考縮小と特殊目的高校の一般校転換の方針を決定。
25日政府,WTOでの発展途上国の地位を放棄することを決定。
28日SKテレコムとカカオ,資本提携を発表。
28日検察,ライドシェアサービス「タダ」を運営するソーカーの経営者らを在宅起訴。
  11月
4日文大統領と安倍首相,ASEAN+3首脳会議の席上,11分間歓談。
12日HDC現代産業開発,アシアナ航空買収の優先交渉権を取得。
15日韓米定例安保協議(SCM)開催。
20日黄教安・自由韓国党代表,選挙法改正阻止などのためハンスト(~29日)。
22日韓国政府,GSOMIA不延長の決定を撤回。輸出管理強化措置に対するWTO提訴も手続きを停止。
22日文大統領,シリコンウエハー製造の中堅企業,MEMCコリアの工場完工式に出席。
25日政府,インドネシアとの包括的経済連携協定(CEPA)の最終妥結を宣言。
26日現代自動車,インドネシア政府と完成車工場の建設に向けた投資協約を締結。
27日国会,ファストトラック案件のうち選挙法改正案を本会議に自動付議。
  12月
3日国会,ファストトラック案件のうち検察改革関連3法案を本会議に自動付議。
4日ソウル東部地検,柳在洙・元釜山市経済副市長への監察打ち切り疑惑と関連,大統領秘書室の家宅捜索に着手。
4日現代自動車,2025年まで毎年10兆ウォン規模の成長投資を続ける方針を発表。
5日文大統領,次期法務部長官に秋美愛議員を指名。
10日国会,2020年度予算案を可決。
11日雇用労働部,中規模企業への週52時間労働の施行を事実上1年間延期。
13日サムスン電子,中国西安の半導体工場に80億ドルの投資を行うと発表。
16日政府,「住宅市場安定化方案」を発表。
17日文大統領,次期首相に丁世均・前国会議長を指名。
17日年内最後の駐韓米軍経費交渉(~18日)。結論出ず。
18日地検,蔚山市長選への青瓦台介入疑惑と関連,国務総理室を家宅捜索。
18日文喜相・国会議長,徴用工救済のための基金法案を提出。
18日済州航空,イースター航空の買収を発表。
20日経済産業省,レジストを特定包括許可の対象として対韓輸出管理を一部緩和。
23日ソウル東部地検,元釜山市経済副市長への監察打ち切り疑惑と関連し,曺国・前法務部長官の逮捕状を請求。
23日文大統領,習近平・中国国家主席と会談。
24日中国・成都で韓中日首脳会談。文大統領,安倍首相と個別会談。
27日国会,公職選挙法改正案を可決。
27日HDC現代産業開発,アシアナ航空の買収に関して錦湖産業と最終合意。
30日国会,高位公職者犯罪捜査処設置法案を可決。
31日ソウル中央地検,曺国・前法務部長官を収賄罪などで在宅起訴。

参考資料 韓国 2019年
①  国家機構図(2019年12月31日現在)

(注)*個人破産や企業倒産,民事再生などを専門的に扱う司法機関。

(出所)大統領府ウェブサイト(http://www.president.go.kr)などから筆者作成。

②  国家要人名簿(2019年12月31日現在)

(注)*職務代行。

主要統計 韓国 2019年
1  基礎統計

(注)1)求職期間4週基準の数値。2)終値の平均値。

(出所)韓国統計庁 国家統計ポータル(http://kosis.kr)。

2  支出項目別国内総生産(実質:2015年固定価格)

(出所)表1に同じ。

3  産業別国内総生産(実質:2015年固定価格)

(出所)表1に同じ。

4  国(地域)別貿易

(注)受理日基準の数値。

(出所)韓国貿易協会ウェブサイト(http://www.kita.net)。

5  国際収支

(注)1)各勘定の数値は純資産ベースでの増減を表す。

(出所)表1に同じ。

6  国家財政

(出所)韓国企画財政部ウェブサイト(http://www.mosf.go.kr)。

 
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