アジア動向年報
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各国・地域の動向
2019年のミャンマー 内憂外患を抱えつつ,総選挙へ助走
長田 紀之(おさだ のりゆき)
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2020 年 2020 巻 p. 415-438

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2019年のミャンマー

概 況

任期の4年目を迎えたアウンサンスーチー(以下,スーチー)国家顧問率いる国民民主連盟(NLD)政権は,国内では内戦状況の悪化,国外からはロヒンギャ問題に関する責任追及という内憂外患を抱えつつ,翌年の総選挙へ向けて有権者へのアピールを強め始めた。

国内政治では,政権が最優先課題として注力してきた和平プロセスが停滞するなかで,NLDは再び議会での憲法改正を模索し始め,選挙公約の実現に取り組んでいる姿勢を示した。2月に設置された憲法改正のための両院合同委員会は,諸政党の意見を集約して憲法改正法案の草案作成に着手した。また,内戦状況は各地で悪化した。とりわけ西部のヤカイン州・チン州で年初から国軍と反政府組織のアラカン軍(AA)との戦闘が激化し,深刻な事態に至っている。全国停戦協定への署名を始点に政治対話を行うという和平プロセスの基本方針は行き詰まりをみせ,NLD政権発足後初めて,年間で1度も「21世紀のパンロン」会議が開催されなかった。行政面では,地方行政の中枢を担う総務局が内務省から連邦内閣府省へと移管された。

経済では,世界的な成長失速という逆風を受けながらも,6%台の堅調な成長を維持した。対内直接投資は件数・金額ともに大幅に落ち込んだ前年から回復する傾向をみせた。貿易は輸出が増加し,輸入が減少して,貿易赤字幅が縮小した。政府はさらなる外資呼び込みのために,知的財産関連法の整備や規制緩和措置の追加を行った。7月には5年ぶりに電気料金が値上げされた。

対外関係では,2017年に国軍の苛烈な作戦行動によってヤカイン州北部からバングラデシュへと大量流出したロヒンギャ難民の帰還事業が本年も進展しなかった。ロヒンギャ問題について,ミャンマーの国際法上の責任を追及する複数の動きが起こり,12月にはスーチー国家顧問自らが国際司法裁判所に出廷して弁明した。欧米との関係が冷え込む一方で,中国との関係は緊密の度合いを強め,「一帯一路」関連事業が着々と進められた。また,インドとの軍事協力にも特段の進展がみられた。

国内政治

総務局の移管,その他の省庁再編・閣僚交代

地方行政の中枢を担う重要部局である総務局が,憲法上の規定で現役軍人が大臣を務めることになっている内務省から,文民が大臣を務める連邦内閣府省へと移管された。この移管により,今後,地方行政のあり方が変化していく可能性がある。総務局は,徴税や土地管理などの多岐にわたる業務を管掌し,管区域・州―県―郡―町区・村落区という行政機構のあらゆる階層で統括的役割を担って,部局間・階層間の調整に当たる。総務局の移管は前年末(2018年12月28日)に行われ,これに伴って年明け直後の1月2日,総務局総局長で内務省事務次官だったティンミンが連邦内閣府副大臣に就任した。本年,スーチー国家顧問やウィンミン大統領といったNLD政権の指導者は,翌年の総選挙を見据えて精力的に国内の各管区域・州を訪問し,実地視察や地域住民との対話を重ねたが,ミントゥ連邦内閣府大臣はそうした地方訪問の多くに同行し,当該地域の総務局職員に民主的な国家に相応しい組織になるよう自己改革を促す訓示を与えた。2010年代の怒涛のような諸改革のなかでも,地方行政における総務局の役割(とそれがもたらす行政機構全体の中央集権的性格)には大きな変化がなかったと指摘されてきたが,地方分権化への要請は少数民族の多く居住する地域でとりわけ強い。今回の移管が中央政府の与党指導者による地方行政の掌握を強めることになるのか,あるいは地方分権化へとつながっていくのか,今後の地方行政改革の行方が注目される。

政府人事では,NLD政権の汚職撲滅への取り組みにもかかわらず,2019年も汚職に関連した閣僚や地方政府首相の交代が続いた。3月には,タニンダーイー管区域のレーレーモー首相が反腐敗委員会による調査の後に汚職の容疑で逮捕され,罷免された。汚職による現職の政府要人の逮捕はNLD政権になって初めてである。後任には同管区域の天然資源・環境保全大臣だったミンマウンが昇格した。連邦政府でも,7月に汚職の噂が流れるなかでキンマウンチョー工業大臣が「辞任を許可」された。ソーウィン計画・財務大臣が工業大臣を兼任し,11月末には両省が合併されて計画・財務・工業省となった(大臣にはソーウィンが留任)。

憲法改正論議の再燃

総選挙が翌年に迫るなか,NLDは憲法改正に向けた動きを加速させ,議会の内外で憲法改正が争点化した。軍政下で制定された現行の2008年憲法は国軍の自律性を保障しており,国軍が立法府・執政府に影響力を及ぼすためのさまざまな規定が盛り込まれている(後掲の機構図参照)。民主化の推進を党是とするNLDは野党時代から憲法改正の必要性を強く訴えてきたが,政権奪取後の任期前半には国内和平の達成を当面の最優先課題と位置づけ,改憲については目立った動きを示してこなかった。憲法の規定では,憲法改正には連邦議会の全議員の4分の3を超える賛成が必要であり,議席の4分の1を占める国軍が実質的には改憲への拒否権を握る仕組みとなっている。NLDは憲法改正に先立って,和平の実現という共通課題への取り組みを通じて国軍と信頼関係を築くこと,そして,少数民族武装組織も含めた包括的な政治対話の場を「21世紀のパンロン」会議として立法府とは別個に設定することを優先させてきたといえる。しかし,和平プロセスが停滞したまま任期の後半を迎え,NLDは再び議会内で憲法改正に向けた積極的な動きを見せ始めた。とはいえ,改正実現の見込みは薄く,前回選挙時の公約の実現に取り組んでいるという姿勢を国民にアピールするのがねらいとみられる。

1月29日,NLD中央執行委員のアウンチーニュン上院議員が連邦議会に憲法改正のための両院合同委員会の設置を提案した。国軍議員および野党第一党で軍を後ろ盾とする連邦団結発展党(USDP)の反対があったが,連邦議会は賛成多数でこの提案を承認し,2月19日に45人からなる委員会が組織された。委員長をトゥントゥンヘイン下院副議長(NLD中央執行委員),副委員長をエーターアウン上院副議長(ヤカイン民族党[ANP])が務め,残りの43枠が議会内の議席配分に基づいて各政党に割り振られた(NLDから18人,国軍議員から8人,USDP,シャン民族民主連盟[SNLD],ANPから各2人,その他10政党と無所属議員から各1人)。この憲法改正合同委員会は,諸政党が提示した3765点の条項改正案を取りまとめた報告書を7月15日に連邦議会に提出し,議会の承認を受けて憲法改正案の策定に着手した。

このNLD主導の改憲プロセスのなかで,NLDが提示した最も重要な条項改正案は軍の政治関与の度合いを低める次の2点である。ひとつは議会内の国軍議員議席の段階的削減案で,連邦議会の全議席に占める国軍議員議席の割合を現行の25%から,2020年,2025年,2030年の選挙後にそれぞれ15%,10%,5%に減らすとする。もうひとつは憲法改正手続きの変更案で,選挙によらない国軍議員を票決から排除し,民選議員の総数の3分の2より多い賛成票で改憲法案を可決できるようにするものである。もし後者の改正が実現すれば,現議会で選挙議席の8割以上を有するNLDは,ただちにいかなる内容の憲法改正も実現できる立場を得ることになる。しかし,軍がこうした改正案を受け入れる可能性はきわめて低い。

他方で国軍は,憲法改正自体には反対しないと繰り返し述べつつも,国家の基本原則を定めた憲法第1章(国軍の自律性を保障する第20条を含む48条からなる)については改正を認めないという立場を改めて示した。また,NLD主導の合同委員会を通じての改憲プロセスには消極的であり,憲法第435条の規定――連邦議会議員総数の20%以上の署名で憲法改正法案の提出が可能――に基づいて連邦議会の場に直接,独自の憲法改正法案を持ち込んだ。国軍議員は単独で,あるいはUSDPと共同で,年間を通じて5本の憲法改正法案を連邦議会に提出した(2月に1本,5月に1本,9月に3本)。それらの法案には,現状では大統領が任命する管区域・州首相を各地方議会が選出できるようにすることや,特定の場合に国防治安評議会が大統領に対して議会の解散を助言できるようにすることなどの改正案が含まれた。NLDが多数派を占める連邦議会は,国軍・USDPの提出したこれらの法案の検討を両者の反対を押し切って憲法改正合同委員会に付託し,議会全体での議論は先送りにされた。

憲法改正合同委員会による法案策定の過程では,個々の改正案を法案に盛り込むかどうかを記名投票による多数決で決めるという方法が採られたが,この方法がNLDの意向のみを反映させるものとして一部政党からの批判を招き,9月には国民統一民主党とANPが,12月にはUSDPが合同委員会から委員を引き揚げて年内に計5人の委員が辞任することになった。憲法改正を争点とする政治対立は議場の外側でも顕在化し,NLDのイニシアティブを後押しする人々と,国軍・USDPの立場を擁護する人々とがそれぞれに何度も主要都市で大規模デモを組織した。

その他の政党政治の動向としては,前年に続き,2020年総選挙に向けて新政党の結成が相次いだ。なかでも注目すべきは,有力者シュエマンによる新党「連邦改善党」(UBP)の立ち上げである。シュエマンは,軍事政権期に序列第3位だった元軍人で,2011年から2016年までの第1期連邦議会ではUSDP所属議員として下院議長を務めた。2015年選挙で落選して第2期議会では議員資格を失い,スーチーと連携関係にあると目されてUSDPからも追放されるが,議会の法務・特別問題検討委員会の委員長に就任して立法府に影響力を残していた。2月,シュエマンの新党登録に伴って,連邦議会は同委員会の任期延長を否決して廃止した。

和平プロセスの難航

NLD政権の和平プロセスは,前USDP政権末期に締結された全国停戦協定の枠組みに則って進められてきた。一方では,全国停戦協定に署名した武装組織との政治対話の場として「21世紀のパンロン」会議が年に1度のペースで開催され,他方では,全国停戦協定に未署名の武装組織との交渉を通じて,全国停戦協定への署名と公式の和平プロセスへの参加が促されてきた。署名組織は当初の8組織からNLD政権下で10組織に増加したが,比較的弱小な組織が多く,総兵力は2万人を超えないと考えられている。未署名組織は単独で万単位の兵力を持つとされるワ州連合軍(UWSA)やカチン独立軍(KIA)を筆頭に全武装組織の兵力の大半を占める。未署名7組織は2017年,団結して政府との交渉に当たるために「連邦政治交渉協議委員会」(FPNCC)を結成し,全国停戦協定の枠組みの修正を求めてきた。しかし,政府は修正要求には応じず,既存の枠組みに固執している。加えて,FPNCCに加盟するAA,タアン民族解放軍(TNLA),ミャンマー民族民主連盟軍(MNDAA)の3組織(KIAとともに北部同盟を自称)が数年来,北部・北東部で国軍と激しい戦闘を繰り返しており,両者の反目が和平プロセス全体の阻害要因となっていた。こうしたなかで前年末に国軍が北部・北東部における一方的停戦宣言を発出し,2019年初めには和平進展への期待が高まった。しかし,結局のところ,1年の間に各地で内戦状況の悪化がみられただけでなく,NLD政権下で初めて「21世紀のパンロン」会議が年間を通じて1度も開催されず,和平プロセスは難航した。

未署名組織との関係では,早くも1月に国軍の一方的停戦宣言の範囲外である西部のヤカイン州で国軍とAAとの戦闘が激化した(次項で詳述)。また,北東部方面でも8月15日に,北部同盟3組織が対中国境貿易ルート上で比較的中央に近い要所6地点――マンダレー管区域ピンウールィンの国軍士官学校やシャン州ナウンチョーの橋梁など――に同時攻撃を仕掛け,以後2週間にわたって国軍が軍事的攻勢を強めたために緊張が高まった。このように戦闘が継続するなかでも,政府・国軍と北部同盟3組織との停戦交渉は断続的に実施され,当初4月末までであった国軍の一方的停戦宣言の期間は,3度にわたって延長された(4月末,6月末,8月末)。9月に入ると北東部での戦闘がある程度沈静化し,北部同盟3組織の側も国軍に対する停戦宣言を発したが,17日に開催された協議でも政府・国軍と3組織とは二者間停戦協定締結に向けた条件の合意に至らず,21日についに国軍の停戦宣言は失効した。今度は北部同盟3組織が一方的停戦宣言を年末まで延長したが,依然として戦闘は継続した。政府・国軍と3組織との協議の開催が遠のくなかで,12月15日には中国が仲介して雲南省昆明で協議が開かれ,さらなる交渉は翌年に持ち越された。

最大の武装組織でFPNCCの盟主でもあるUWSAは,4月17日,拠点地のパンカン(パンサン)で設立30周年を祝賀する大規模な軍事パレードを開催し,その兵力と装備を誇示した。UWSAは,設立当初に政府と停戦協定を結び,以後,隣接する中国と良好な関係を築きつつ自領の安定した支配を継続してきた。現状に満足するUWSAには,政府が要求するように急いで全国停戦協定に署名する理由がなく,政府が既存の和平プロセスの枠組みに固執するかぎり,状況の膠着が続くと思われる。

他方で,署名組織との関係も停滞ないし悪化している。署名組織のなかでも有力なカレン民族同盟(KNU)とシャン州復興評議会(RCSS)が前年に和平プロセスへの公式参加を中断しており,2019年には両組織の公式プロセスへの復帰と第4回「21世紀のパンロン」会議の開催に向けて,数度の非公式協議が開催された。10月,全国停戦協定の4周年記念式典の際に事態の進展が期待されたが,RCSSが(同組織の主張によると国軍に移動を阻まれたため)式典に出席しなかったことで政府・国軍と全署名組織の代表者が一堂に会する機会とはならず,結局,第4回「21世紀のパンロン」会議の年内開催も実現しなかった。また,11月末には,前年に全国停戦協定に署名した新モン州党(NMSP)と国軍との戦闘が,署名後初めて南東部のタイ国境付近で勃発した。

西部でアラカン軍との戦闘激化

西部のヤカイン州では,ムスリムのロヒンギャ難民の問題(対外関係の項目参照)が長期化の様相を呈するなかで,仏教徒ヤカイン人の民族自決を主張する武装組織AAと国軍との戦闘が激化してさらなる状況の悪化をみた。両者の戦闘は前年末から激しさを増していたが,年明け早々,ミャンマーの独立記念日である1月4日に,100人を超えるAAの兵士がブーディーダウン郡の国境ポスト4カ所に同時攻撃を行ったことを契機として新しい局面を迎えた。1年間を通じて,ヤカイン州北部全域とチン州南西部で襲撃や戦闘が繰り広げられ,数万人規模の国内避難民が発生するのみならず,国軍とAAの双方が民間人をも巻き込んで相手側の人員や協力者と目される人物を逮捕・拉致・拘禁したり殺害したりする状況が生まれた。行政の混乱に乗じて,AAは支配圏内で徴税を行う意向を示すなど,政治部門のアラカン統一連盟(ULA)を通じて自前の政府機構を築こうとする動きをみせている。とはいえ,AAの主張では,目標は独立国家の樹立ではなく,あくまでもミャンマー国家内での自治権の獲得にある。

内戦の激化を受けて,政府は4月にヤカイン州の北部5郡――ポウンナーヂュン,ヤテーダウン,チャウットー,ムラウウー,ミンビャー――に新たに夜間外出禁止令を敷いた(最北端のマウンドー郡とブーディーダウン郡では,2016年10月にアラカン・ロヒンギャ救世軍[ARSA]による最初の国境ポスト襲撃があったときから夜間外出禁止令が継続)。さらに,6月21日には,上記の7郡とヤカイン州ミェボウン郡およびチン州南西部のパレッワ郡の合計9郡で携帯電話回線を通じたインターネット接続を遮断した。ネットの遮断は紛争下の人々の情報源を狭め,彼らをいっそう危険な状況に置くものだとする批判が国内外から出されるなか,遮断は長期化している。2020年2月現在,9郡のうちヤカイン州の4郡――ポウンナーヂュン,チャウットー,ムラウウー,ミンビャー――では遮断が継続し,残りの5郡では2019年9月に1度接続が回復したが,2020年2月に再び遮断された。

双方による逮捕・拉致の応酬のうち,とくに大きく報道された事件としては,11月3日にチン州第11選挙区選出のフェティン上院議員をAAが拉致したことがある。これをきっかけに同月9日,チン州パレッワ郡にも夜間外出禁止令が発出された(フェティン議員は2020年1月21日に解放された)。

経 済

堅調な経済成長

2018年に会計年度の変更があり,2017/18年度までは4月~翌3月であったが,移行期間として半年間の2018年度(2018年4月~9月)を挟んで,2018/19年度からは10月~翌9月となった。

中央統計局(CSO)の年鑑によると,実質国内総生産(GDP)成長率は2017/18年度の6.8%から2018年度の6.5%へと若干低下したものの,経済成長は堅調といえる。2018/19年度も,世界的な経済成長の鈍化にもかかわらず,ミャンマーは成長を維持している。政府は2018/19年度中に基準年を従来の2010/11年度から2015/16年度へと変更したため,上記の成長率も新基準年に基づいて修正されることになるが,世界銀行(世銀)の調査チームは12月に出した報告で,新基準年と新会計年度に基づくGDP成長率は2016/17年度が6.0%,2017/18年度が6.2%であり,2018/19年度と2019/20年度はそれぞれ6.3%と6.4%になると予測している。国際通貨基金(IMF)の調査チームも同月,2017/18年度から2018/19年度でGDP成長率は6.4%から6.5%へとわずかに上昇すると予測した。

投資の回復傾向と政府による施策

投資企業管理局(DICA)によると,2019年の暦年の対内直接投資は認可ベースで291件(前年比49.2%増),45億168万ドル(同30.9%増)であった。2016年と2017年の約80億ドルという水準には遠く及ばないが,件数・金額ともに大幅に落ち込んだ前年からは回復する傾向をみせた。業種別でみると,製造業(236件,13億159万ドル)と輸送・通信(3件,11億2357万ドル)で投資総額の約半分を占める。製造業の小規模投資の件数が増えたことが,全体の投資件数を押し上げた。国別投資額でみると,第1位はシンガポールで19億6975万ドル(シェア43.8%),第2位は香港で12億5618万ドル(シェア27.9%)であり,外国企業が地域統括拠点を経由してミャンマーへ投資する傾向が続いている。なお,上記の数値はいずれも外国投資法に基づく認可に関するものであり,経済特区法に基づくティラワ経済特区への投資は含まれていない。2019年のティラワ経済特区への認可ベースでの投資額は12件,3億3295万ドルであった。

政府は,前年に引き続き外資を呼び込むためのさらなる改革を行い,知的財産関連法の整備と規制緩和で特段の進展がみられた。知的財産制度については,ミャンマーではこれまで十分に制度が整っていなかったところ,本年前半に関連法の相次ぐ成立をみた。1月に工業意匠法と商標法,3月に特許法,5月に著作権法が成立した。規制緩和については,今後の成長が見込まれる保険市場への外資参入が許可された。1月初めに外資参入を許可する旨の発表がなされ,企業からの関心表明と認可手続きを経たのち,11月末に外資系保険会社11社に営業免許が交付された。また,銀行業でも,これまでに2014年と2016年に2度にわたって外資銀行による支店設立を認める規制緩和が行われてきたが,本年11月に第3弾となる規制緩和策が打ち出された。前回までに13行に発行された支店ライセンスでは,各行による支店設立は1店舗のみ認められ,企業向け金融サービスのみ取り扱えた。今回の発表では,従来の支店ライセンスに加えて新たに子会社ライセンスも発行する方針が示された。子会社ライセンスを取得すれば支店を10店舗まで開設可能で,個人向け金融サービスも提供できるようになるという。政府は一連の改革の進展を強調して諸外国へミャンマーへの投資を呼びかけ,各地で投資誘致イベントを開催した。1月末には首都ネーピードーで,現政権で初めて政府が主催する投資会議「ミャンマー投資サミット」が開催された。

貿易赤字幅のさらなる縮小

貿易は輸出が増加した一方で,資本財輸入の落ち込みから輸入総額が減少したため,貿易赤字幅が大きく縮小した。商業省によると2018/19年度の輸出総額は170億6042万ドル,輸入総額は180億8660万ドルであり,CSO発表の前年同期値と比較するとそれぞれ3.7%増と7.0%減であった。同様に算出した貿易赤字幅の縮小率は65.8%となり,近年の貿易赤字幅の縮小傾向がいっそう強まっている。

2018/19年度も中国が最大の貿易相手国であるという状況は変わらず,対中国貿易のシェアは輸出総額の29.7%,輸入総額の35.0%であった(以下,商業省発表値)。とはいえ,輸出に占める対中国輸出の割合が3割を切るのは2014/15年度以来で,ヨーロッパ諸国やアメリカへの縫製品輸出が増加して輸出先の多角化が進んだことを示している。とくに欧州連合(EU)加盟国(イギリスを含む)への輸出額を合計すると,輸出総額に占めるシェアは19.0%に上り,第2位の輸出相手国タイのシェア19.2%に迫った。

5年ぶりの電気料金値上げ

7月,2014年以来5年ぶりに電気料金が値上げされた。値上げ幅は使用電力量によって異なり,一般家庭で月間使用量が30kWh以下の場合は,従来どおりの1kWhあたり35チャットに据え置かれたが,それ以外の場合には一般家庭用で最大3倍,業務用で最大1.8倍の値上げとなった。ミャンマーの電気料金はASEANでも最低水準で料金よりも発電コストの方が上回っており,近年の電力使用量増加にともなって膨張する巨額の赤字(2018/19年度に6300億チャット)を政府補助金で補填していた。今回の値上げによって政府財政が改善されると予測される。

発電による政府負担の増大の背景には,電力需要の増加のみならず,水力発電から火力発電への移行がある。ミャンマーでは従来,発電コストの低い水力発電が中心だったが,水力発電には最も電力需要の大きい暑季(乾季で気温の高い3月~5月)に発電量が減ってしまうという欠点があった。近年の電力需要の急激な伸びに対応して,季節に左右されずに発電が可能で,比較的短期間で建設できる天然ガス火力発電所が増加したが,発電コストが水力発電よりも大きいために赤字が膨らんだのである。電力・エネルギー省によると,全発電量(輸出分を除く)のうちの水力発電とガス火力発電の割合は,2013年には72%と23%だったが,2016年には55%と42%となっている( Myanmar Energy Statistics 2019)。

慢性的な電力不足にあるミャンマーが今後も経済発展を持続させるためには,電力の十分で安定した供給が不可欠であり,NLD政権も火力発電所の増設に取り組んできた。安価な電気料金は電力事業への投資の抑制要因ともなっていたため,今回の値上げが投資の増加につながることも期待されている。

対外関係

ロヒンギャ問題が国際司法の場へ

2017年にロヒンギャ武装勢力ARSAに対する国軍の苛烈な掃討作戦がヤカイン州北部からバングラデシュ側へのロヒンギャ難民の大量流出を招いた問題について,ミャンマーとバングラデシュの両政府は難民帰還に向けた協議を続けた。しかし,結局は本年も帰還事業の進展をみず,100万人近い難民がバングラデシュ側のキャンプなどに滞留し続けることとなった。他方で,国際社会ではミャンマーに対する批判が止まない。国連人権理事会の組織した実情調査委員会が前年にジェノサイドや人道に対する罪の容疑で軍高官を調査・訴追すべきとする報告書をまとめていたこともあって,本年はミャンマーの国際法上の責任を追及する機運が高まり,とくに11月に入ってから目立った動きが複数出てきた。

11月11日,イスラーム協力機構を代表してアフリカ西部の国家ガンビアが,ミャンマーを相手取り国際司法裁判所(ICJ)に提訴した。オランダのハーグにあるICJは,国連憲章に基づいて設立された国連の主要な司法機関であり,国家間の訴訟を取り扱う。ガンビアは,ミャンマーがジェノサイド条約の規定に反してロヒンギャに対するジェノサイドを行ったと主張するとともに,事態の緊急性に鑑みて判決を待たずに直ちに仮保全措置を取ることをICJに要求した。提訴を受けて最初の公聴会が12月10日から12日まで開かれ,ミャンマー側はスーチー国家顧問自らが弁護団を率いてハーグに赴き,政府代理人として出廷した。スーチー国家顧問は,一部軍人による過剰な武力行使があったことは認めたものの,軍の掃討作戦はテロ組織に対するものだという従来どおりの主張を繰り返し,ロヒンギャに対するジェノサイドとの見方を否定した。軍の圧政に対して長年にわたって非暴力の抵抗を示し,民主化運動の象徴としてノーベル平和賞まで受賞したスーチー国家顧問の国際社会での名声は,法廷で公然と軍のジェノサイド容疑を否認したことで大きく損なわれた。しかし,ミャンマー国内では,国の代表として国際社会の批判の矢面に立ったスーチー国家顧問を支持する声が強い。総選挙を翌年に控え,スーチー国家顧問は国際社会での評判を犠牲にして,国内での支持をいっそう固いものにするという政治的選択を行ったといえる。

11月13日には,スーチー国家顧問やミンアウンフライン国軍最高司令官を含むミャンマー政府・軍の高官たちが,ロヒンギャの迫害をめぐってアルゼンチンの裁判所で告発された。これは,戦争犯罪や人道に対する罪は国家の枠組みに囚われずにどこの法廷でも裁くことができるとする「普遍的管轄権」という考え方に基づき,在イギリスのロヒンギャ団体と南米の複数の人権団体が告発したものである。スーチー国家顧問はこの問題について,初めて個人として刑事責任を問われることとなった。

11月14日には,個人による戦争犯罪などの国際犯罪を裁く独立の常設裁判所である国際刑事裁判所(ICC,オランダのハーグに所在)が,ミャンマー軍高官たちの人道に対する罪への捜査開始を決定した。ミャンマーはICCに加盟していないが,ICCはバングラデシュが加盟国であることを理由にロヒンギャ問題に管轄権を有するとする見解を前年に示していた。本年7月のICC検察官からの捜査開始要請を受けて,同予審裁判部が精査し,「人道に対する罪があったと信じるに足るもっともな根拠がある」として捜査開始を決定した。検察官は,捜査を行って軍高官を訴追するかどうかを判断する。

しかし,これらの裁判でたとえミャンマー政府や軍の責任が認められたとしても,そうした判決が出るまでには長い時間がかかるし,判決がどれだけの実効性を持つかも不透明である。ICJの例を挙げると,ICJの判決は当事国に対する拘束力を持つものの,ICJは判決の履行を強制することはできない。判決が履行されない場合,問題を付託された安保理が何らかの勧告や決定を行うことができるが,現状では,安保理がミャンマーに対する行動を取ろうとすると中国が拒否権を発動する可能性が高い。

対中国関係:着々と進む「一帯一路」関連事業

ロヒンギャ問題が欧米諸国との関係を冷却させるなかで,ミャンマーは自国の立場への支持を表明する中国との関係を深めている。中国にとっても,ミャンマーは雲南省など西南の内陸部をインド洋へと結びつける戦略上重要な位置にあり,両国は中国の提唱する「一帯一路」構想の下で「ミャンマー・中国経済回廊」(CMEC)建設を推進することに概ね利害の一致をみている。本年も前年に引き続き,両国間で頻繁な要人往来がなされ,経済協力や治安維持面での協力を進めていくことが何度も確認された。ミャンマー側からの最高レベルの訪問としては,スーチー国家顧問が4月に訪中して第2回「一帯一路」国際協力ハイレベルフォーラムに参加し,ミンアウンフライン国軍最高司令官も4月と11月の2度訪中した。中国からは王毅国務委員兼外交部長が12月に来訪した。

CMECは,雲南省昆明から国境のムセーを経て中部の中心都市マンダレーへと至り,そこから2つに分岐して一方はヤカイン州のチャウッピューへ,もう一方はヤンゴンへとつながるY字型の経済回廊である。前年のCMEC建設に係るMoU締結を受けて,本年も着々と関連事業が進められた。まず,経済回廊の背骨をなすマンダレー=ムセー間の高速鉄道建設に関する実行可能性調査が1月から行われ,事業規模が90億ドルに上ることが明らかにされた。11月には,チャウッピューに出力135MWのガス火力発電所を建設予定の中国国有企業の中国電力建設とミャンマーのスプリーム社との合弁会社が,ミャンマー政府と電力販売契約を結んだ。チャウッピューでは,中国が経済特区と深海港の建設を進めており,この火力発電所の建設も一連の開発プロジェクトの一部になる。ミャンマー側は,これらの「一帯一路」関連事業の経済効果に高い期待を寄せる一方で,債務の罠に陥る可能性や環境へ悪影響が出る可能性に懸念を抱いてもいる。各プロジェクトの妥当性を精査して調整し,中国との交渉に当たる必要があるが,こうした目的のために前年に発足した「一帯一路関連事業遂行指導委員会」(委員長:スーチー国家顧問)の第1回会合が2月に開催された。

経済協力が着々と進む一方で,ミャンマーの治安情勢の悪化は,複数の巨大プロジェクトを遂行していくに当たっての不安要素となっている。中国は,ミャンマー政府・軍との関係を緊密化させているのみならず,全国停戦協定に未署名の武装組織にも一定の影響力を保持しており,政府・軍とFPNCCとの協議を仲介するなど,ミャンマー国内の和平プロセスへの関与を深めている。CMECの建設が予定されている地域での大規模な戦闘を防止することは,中国の経済的・戦略的な利害にも適うからである。したがって,8月半ばに北部同盟3組織が国境貿易ルートの要所を攻撃して交通に支障をきたすと,中国は3組織の行動を強く非難した。また,ヤカイン州で国軍と交戦中のAAは,これまでのところ中国関連のプロジェクトを攻撃対象にはしていない(わざわざ中国の不興を買う可能性は低い)が,情勢の悪化がプロジェクトの進捗に影響することはありうるだろう。

インドとの軍事協力

政府と軍はそれぞれに,中国への過度の依存を避けるべく,多角的な外交関係の構築を模索しているようである。近隣のASEAN諸国(とくに非イスラーム国)や,日本,韓国,インドといったアジア諸国のほか,ロシアや中東欧諸国との間で要人の往来があった(「重要日誌」参照)。そうした外交関係のなかでも際立ったのはミャンマーとインドの両軍関係の進展である。両国の国境域で活動する反政府武装勢力に対する作戦で相互の協力がみられた。

1月末,国軍はザガイン管区域北部のナガ自治地域内に位置するナガランド民族社会主義評議会カプラン派(NSCN-K)の拠点タガを制圧し,その後数カ月にわたって同組織やその友軍組織への攻勢を強めた。NSCN-Kは,インドとミャンマーに跨るナガ人の居住域を両国から分離してひとつに統合し,独立国家ナガランドとすることを目的とする武装組織だが,2010年以来,ミャンマー政府との戦闘はなく,2012年には二者間停戦協定も結んでいたため,今回の拠点制圧には国軍の大きな方針転換があったといえる。ミャンマー領内にあるNSCN-Kのキャンプには,アッサムやマニプルといったインド北東部の諸地域のインドからの独立を目指す他の武装組織も複数存在しており,しばしばそこからインド側へ越境攻撃を仕掛けていた。そのため,従来のミャンマー国軍のNSCN-Kに対する容認的態度は,インド軍のミャンマーに対する不信感を募らせることになった。2015年には,インド政府との停戦協定を一方的に破棄したNSCN-Kによる攻撃でインド軍兵士に死者が出たことをきっかけとして,インド軍はミャンマー政府への事前通告なしにミャンマー領内のNSCN-Kに対する越境攻撃を敢行するに至った。このインド軍の行動が,今回の作戦行動に至るミャンマー国軍の方針転換の原因のひとつになっているだろう。

ミャンマー国軍のNSCN-Kへの攻撃には,インド側からの見返りがあった。2月半ばから3月半ばにかけて,インド軍はミゾラム州南部(ミャンマーのチン州パレッワ郡と近接)にあるAAの複数の拠点を攻撃したのである。ミャンマーとインドがそれぞれ,相手国が問題視する自領内の武装組織を攻撃するという互酬的な行動をとったことの背景には,両国間の軍事的協力関係を促進して台頭する中国へのけん制を強めるねらいがあるとみられる。ミンアウンフライン国軍最高司令官は,7月末から8月初めにかけてインドを訪問し,ミャンマーの軍備増強へのインドの援助などに関するMoUを締結した。

2020年の課題

国内政治では,2020年に5年ぶりの総選挙が実施される。NLDが政権与党の座に留まる可能性が高いが,前回ほどの議席数を維持できるかは疑問である。紛争を抱え,少数民族の多い「州」部ではNLD支持がいっそう弱まっていると考えられる。また,選挙に向けてさまざまな新政党も生まれており,選挙後に議会内の勢力図がどのようなものになるか注目される。NLDが提案したような抜本的な憲法改正は実現が難しいだろう。憲法改正はいかに国軍との妥協点を見出すかにかかっている。停戦・和平も政府と軍が現在の路線に固執するかぎり,展望は開けない。全国停戦協定の枠組み見直しや,地方分権化や連邦制への移行を見据えた行政改革の可能性を検討する必要があるだろう。

経済は堅調な成長が予測されてはいるが,新型コロナウイルスや総選挙といった不安要素もある。中国との国交樹立70周年の機会に加速されるだろう「一帯一路」関連事業をてこに成長を実現できるかが鍵となる。とはいえ,やはり過重債務や環境負荷の問題には細心の注意が必要である。

対外関係では,ICJが2020年1月23日,ロヒンギャ迫害を防ぐあらゆる手段を講じるようミャンマー政府に指示する仮保全措置命令を出した。この命令にミャンマーがどのように対応するかが重要になる。最終的な判決が出るまでには時間がかかるが,国際社会はそこに至るまでの過程を注視している。対応を誤って諸外国から経済制裁を科せられることになれば,経済成長にブレーキがかかるかもしれない。

(地域研究センター)

重要日誌 ミャンマー 2019年
   1月
2日ティンミン総務局総局長兼内務省事務次官,連邦内閣府副大臣に異動。
2日政府,外資の保険業参入を許可する旨を発表。
4日アラカン軍(AA),ヤカイン州ブーディーダウン郡の4つの国境ポストを襲撃。
6日マンダレー=ムセー間鉄道の実行可能性調査開始。
7日「国際関係と国防に関する調整会議」開催。出席者は正副大統領,国家顧問,上下院議長,国軍正副司令官,内務大臣,国防大臣,国境大臣,国家顧問府大臣,連邦内閣府大臣,投資・対外経済関係大臣,国際協力大臣,連邦和平委員会委員長,軍保安局長。
19日ミンアウンフライン国軍最高司令官,ラオス訪問(~21日)。
28日ベトナムのグエン・クオック・ズン首相特使兼外務副大臣,来訪(当日)。
28日ミャンマー投資サミット,開催(~29日)。政府主催の投資会議は現政権で初めて。
29日国民民主連盟(NLD)のアウンチーニュン上院議員,連邦議会に憲法改正のための両院合同委員会の設置を提案。
29日セルビアのイビツァ・ダチッチ第一副首相兼外務大臣,来訪(~30日)。
29日国軍,ザガイン管区域ナガ自治地域内のナガランド民族社会主義評議会カプラン派(NSCN-K)の拠点を制圧。
30日来訪中のタイのアピラット・コンソムポン陸軍司令官,国軍最高司令官と会談。
31日カンボジアのプラック・ソコン副首相兼外務国際協力大臣,来訪(~2月1日)。
   2月
1日ロイター通信の記者2人,最高裁に上告。
1日ロイター記者の裁判で検察に不利な証言をした元警察官,釈放。
5日シュエマン,連邦改善党(UBP)を選管に登録。
5日国連のプラミラ・パッテン事務総長特別代表(紛争下の性的暴力担当),来訪(~8日)。
6日連邦議会,憲法改正合同委員会の設置を承認。
7日来訪中のタイのポンピパット・ベンヤスリー国軍最高司令官,国軍最高司令官と会談。
13日連邦団結発展党(USDP)と国軍議員,連邦議会に憲法改正法案(1本目)提出。
17日インド軍,ミゾラム州南部に展開。AAの越境防止作戦。
18日一帯一路関連事業遂行指導委員会(アウンサンスーチー[以下,スーチー]委員長),第1回会合開催。
19日連邦議会,憲法改正合同委員会を設置。45人で構成。
21日中国の昆明で第2回ミャンマー・中国経済回廊関連会議,開催(~22日)。ソーウィン計画・財務大臣が出席。
24日 ベトナムのトー・ラム公安大臣,来訪(~26日)。第3回ミャンマー・ベトナム治安協力閣僚級会議に出席。
28日連邦議会,法務・特別問題検討委員会(シュエマン委員長)の任期延長を否決。
   3月
6日ミンアウンフライン国軍最高司令官,タイ訪問(~11日)。
8日タイのドーン・ポラマットウィナイ外務大臣,来訪(当日)。
10日レーレーモー・タニンダーイー管区域首相,汚職容疑で逮捕。翌日罷免。
11日空閑地・遊休地・処女地管理法改正法,施行。複数の人権団体が,同法施行は少数民族居住地域で既存住民の大規模な強制立ち退きにつながる可能性があるとして批判。
14日政府,ヤカイン州の平和と安定に関する補助委員会を設置。
19日シットウェ郡裁判所,前年に国家反逆罪などの容疑で逮捕されたヤカイン州の政治家エーマウンに懲役22年の判決。
19日ミャワディでミャンマー・タイ第2友好橋開通式典,開催。スーチー国家顧問とタイのプラユット・チャンオーチャー首相が出席。
25日刑法改正。女性と子どもへのレイプ,無期懲役に。
25日ラオスのウィライ・ラーカムフォーン公安大臣,来訪(当日)。
26日ノルウェーのダグ・インゲ・ウルスタイン国際開発大臣,来訪(~29日)。
30日来訪中のロシアのアレクサンドル・フォミン国防次官,国軍最高司令官と会談。
   4月
2日政府,ヤカイン州北部5郡に夜間外出禁止令を発出。
7日マレーシアのサイフディン・アブドゥッラー外務大臣,来訪(~8日)。
8日ミンアウンフライン国軍最高司令官,中国訪問(~12日)。
10日スリランカのティラク・マーラパナ外務大臣,来訪(~15日)。
15日ロイター通信の報道チーム,ロヒンギャ虐殺の記事でピューリッツァー賞を受賞。
17日政府,新年の恩赦で9000人以上を釈放。
17日ワ州連合軍(UWSA),拠点地のパンカン(パンサン)で設立30周年祝賀パレードを開催。
18日セーシェルのヴィンセント・メリトン副大統領,来訪(非公式訪問,~19日)。
20日ミンアウンフライン国軍最高司令官,ロシア訪問(~27日)。
23日最高裁,ロイター記者2人の上告を棄却。
24日スーチー国家顧問,中国訪問(~29日)。第2回「一帯一路」国際協力ハイレベルフォーラムに参加。中国の習近平国家主席,李克強総理のほか,フランス外務大臣,ロシア大統領とも個別会談。
26日政府,恩赦で約7000人を釈放。
29日スーチー国家顧問,カンボジア訪問(~5月1日)。
29日欧州連合(EU),ミャンマーへの武器禁輸および軍人など14人への制裁をさらに1年延長。
30日国軍,一方的停戦宣言を6月末まで2カ月間延長。
   5月
1日アメリカのヘイル国務次官(政治担当),来訪(~3日)。
3日政府,ロヒンギャ難民帰還についてバングラデシュ政府と協議再開。
5日仏教僧ウィラトゥーと支持者,ヤンゴンで憲法改正に反対するデモ行進。
7日ロイター記者2人,釈放。大統領の恩赦で6500人以上が釈放。
10日ウィンミン大統領,ベトナム訪問(~14日)。
15日 USDPと国軍議員,連邦議会に2本目の憲法改正法案を提出。
16日ネーピードーの保育園で幼児レイプ事件,発生。
17日ヤンゴンで第1回ミャンマー・中国経済回廊投資サミット,開催。
20日国連のフィリッポ・グランディ難民高等弁務官,来訪(~24日)。
28日政府,仏教僧ウィラトゥーを5月5日のデモに関連して扇動罪で起訴。しかし,ウィラトゥーは裁判所に出頭せずに逃亡。
30日ウィンミン大統領,インド訪問(~31日)。
   6月
1日スーチー国家顧問,チェコ,ハンガリー歴訪(~7日)。
13日EUのイーモン・ギルモア人権特別代表,来訪(~14日)。
21日政府,ヤカイン州とチン州の9郡でインターネット遮断。
30日国軍,一方的停戦宣言を8月末まで再度2カ月延長。
   7月
1日電気料金の値上げ。
4日オランダ・ハーグの国際刑事裁判所(ICC)検察官,同予審裁判部にロヒンギャ問題に関する調査開始を要請。
6日ユネスコ,バガンを世界遺産に登録。
6日ヤンゴンで,5月16日のネーピードー幼児レイプ事件の捜査を問題視する抗議デモ。
11日シンガポールから国外退去処分を受け帰国したシンガポール・アラカン協会の指導者2人が,AAと接触していた疑いで逮捕される。
15日憲法改正合同委員会,連邦議会に報告書を提出。
16日アメリカ国務省,国軍高級将校4人に対する入国禁止措置を発表。
23日連邦議会,子どもの権利に関する法制定。
25日ミンアウンフライン国軍最高司令官,インド訪問(~8月2日)。
26日キンマウンチョー工業大臣,汚職の噂の流れるなかで辞職を認められる。
31日日本の河野太郎外務大臣,来訪(当日)。
   8月
5日国連人権理事会の実情調査委員会,国軍の経済権益に関する報告書を提出。
5日連邦議会,憲法改正合同委員会の報告書を承認。
9日モン州パウン郡で大雨による地滑り。72人死亡。
15日AA,タアン民族解放軍(TNLA),ミャンマー民族民主連盟軍(MNDAA)の北部同盟3組織,ピンウールィンの国軍士官学校を含む6地点を同時攻撃。
15日ミンアウンフライン国軍最高司令官,ロシア訪問(~20日)。
22日ロヒンギャ難民のヤカイン州への帰還事業で3000人強が帰国予定だったが1人も帰還せず。
31日国軍,一方的停戦宣言を9月21日まで延長。
   9月
1日政府,ヤカイン州・チン州の紛争地で遮断していたインターネットを復旧。9郡中5郡のみ。
2日国民統一民主党(NUD)の議員,憲法合同委員会の委員を辞任。
2日ミンアウンフライン国軍最高司令官,タイ訪問(~5日)。
3日韓国の文在寅大統領,来訪(~5日)。
3日ヤカイン民族党(ANP)の2議員,憲法合同委員会の委員を辞任。
9日北部同盟3組織,1カ月間の停戦を宣言。
17日政府,北部同盟3組織とシャン州チャイントンで協議。高級将校が初参加し,軍事的事柄も協議。
17日連邦議会の国軍議員,連邦議会に3本目の憲法改正法案を提出。
20日USDPと国軍議員,連邦議会に4本目の憲法改正法案を提出。また,国軍議員だけで5本目の憲法改正法案も提出。
20日北部同盟3組織,年末まで停戦宣言を延長。
21日国軍の一方的停戦宣言の期間終了。
23日国連総会のサイドラインとして,ニューヨークでロヒンギャ問題に関するミャンマー・バングラデシュ・中国の閣僚級非公式協議。
27日政府,子どもの権利条約の武力紛争における児童の関与に関する選択議定書を批准。
  10月
8日ミンアウンフライン国軍最高司令官,日本訪問(~14日)。
15日来訪中のロシアのアレクサンドル・フォミン国防次官,国軍最高司令官と会談。
16日ネパールのビディヤ・デヴィ・バンダリ大統領,来訪(~20日)。
18日政府,AA司令官トゥンミャッナインの妹夫妻をヤンゴン空港で逮捕。
20日スーチー国家顧問,日本訪問(~24日)。天皇の「即位礼正殿の儀」に参列。
28日全国停戦協定署名4周年記念式典,開催。シャン州復興評議会(RCSS)は欠席。
  11月
3日AA,チン州第11選挙区選出のフェティン上院議員を拉致。
4日チャウッピューに出力135MWのガス火力発電所を建設予定の中国国有企業の中国電力建設とミャンマーのスプリーム社との合弁会社,ミャンマー政府と電力販売契約締結。
7日中央銀行,外資銀行の参入に関する新たな規制緩和策を発表。
9日政府,チン州パレッワ郡に夜間外出禁止令発出。
11日ガンビア,ミャンマー政府のロヒンギャに対する行為がジェノサイドに当たるとして国際司法裁判所(ICJ)に提訴。
13日在イギリスのロヒンギャ団体など,ロヒンギャの迫害をめぐってミャンマー政府・軍の高官をアルゼンチンの裁判所で告発。
14日ICC,同検察官によるロヒンギャ問題の調査開始。
17日ミンアウンフライン国軍最高司令官,タイ・中国歴訪(~22日)。19日夜に中国へ移動。
24日 スーチー国家顧問,韓国訪問(~27日)。釜山でASEAN韓国サミット,メコン韓国サミットに参加。
27日タイ国境付近で国軍と新モン州党(NMSP)の戦闘が発生。全国停戦協定の署名後初。
28日政府,外資系保険会社11社に営業免許を交付。
28日政府,計画・財務省と工業省を統合して計画・財務・工業省とする。
  12月
4日タイのチェンライでAA司令官トゥンミャッナインの妻と子ども2人がタイの移民当局により拘束される。
7日中国の王毅国務委員兼外交部長,来訪(~8日)。
8日スーチー国家顧問,オランダ訪問(~14日)。政府代理人としてハーグでICJ公聴会に出廷。
10日ICJ,ロヒンギャ問題に関する最初の公聴会開催(~12日)。
10日アメリカ財務省,国軍最高司令官ほか数名の高級将校に制裁。
11日NLDのヤカイン州ブーディーダウン郡委員長,AAに拉致される。
15日和平委員会(PC),雲南省昆明で北部同盟と協議。
16日ベトナムのグエン・スアン・フック首相,来訪(~18日)。
18日ネーピードー幼児レイプ事件で被告に無罪判決。
18日ミンアウンフライン国軍最高司令官,ベトナム訪問(~21日)。
19日スーチー国家顧問,ヤカイン州マナウンの太陽光発電所開所式に出席。訪問直前に市内で3件の爆発事件が起きた。
25日AA,拘束中のNLDブーディーダウン郡委員長が国軍による攻撃で死亡したと発表。国軍はAAによる殺害だと主張。

参考資料 ミャンマー 2019年
①  国家機構図(2019年12月末現在)
②  2019年に制定された主な法律

(出所)連邦議会ウェブサイト(https://pyidaungsu.hluttaw.mm/)より作成。

③  連邦政府閣僚

(注)政党はNLD:国民民主連盟,USDP:連邦団結発展党,MNP:モン民族党。

(出所)各種報道より作成。

④  管区域・州首相

(注・出所)資料③に同じ。

主要統計 ミャンマー 2019年
1  基礎統計

(注)2018年に会計年度の変更があったため,2017/18年度までは4月~3月。2018年度は4月~9月の半年間。2018/19年度からは10月~9月。人口は,政府推定値。為替レートは12月末日の基準為替レート(2019/20年度の為替レートのみ中央銀行のウェブサイト掲載値)。

(出所)Central Statistical Organization, Statistical Yearbook 2019; Central Bank of Myanmar, Reference Exchange Rate History Website(http://forex.cbm.gov.mm/index.php/fxrate/history).

2  産業別国内総生産(実質価格,2010/11年価格)

(注)2010/11年度生産者価格に基づく。会計年度変更のため2018年度は4月~9月の半年間。

(出所)Central Statistical Organization, Statistical Yearbook 2019.

3  国家財政

(注)会計年度変更のため2018年度は4月~9月の半年間。

(出所)Central Statistical Organization, Statistical Yearbook 2019.

4  国際収支

(注)…データなし。

(出所)Asian Development Bank, Key Indicators for Asia and the Pacific, 2019.

5  国別貿易

(注)国境貿易を含む。1)2018年度は会計年度変更による移行年度のため4月~9月の6カ月間。2)2019/20年度の数値は10月~12月の3カ月間のみ。

(出所)Ministry of Commerce website(http://www.commerce.gov.mm/).

6  品目別貿易

(注)国境貿易を含む。1)2018年度は会計年度変更による移行年度のため4月~9月の6カ月間。2)2019/20年度の数値は10月~12月の3カ月間のみ。

(出所)Ministry of Commerce website(http://www.commerce.gov.mm/).

 
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