アジア動向年報
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各国・地域の動向
2019年のバングラデシュ ハシナ政権連続3期目の船出
村山 真弓(むらやま まゆみ)
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2020 年 2020 巻 p. 439-462

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2019年のバングラデシュ

概 況

2019年のバングラデシュ内政は,1月,シェイク・ハシナ首相を首班とするアワミ連盟(Awami League:AL)が連続3期目の政権運営を開始した。バングラデシュ民族主義党(Bangladesh Nationalist Party:BNP)ら野党は,2018年末の国民議会(国会)選挙に参加はしたものの,1桁台の議席を獲得したにとどまった。収賄罪で服役中のカレダ・ジア総裁不在のなか,野党の存在感は国会内外で低下した。圧倒的優位に立つ与党の課題は,党員や関連組織の汚職や権力乱用にあるとの認識から,ハシナ首相は大規模な汚職撲滅に乗り出した。

2018/19年度のバングラデシュ経済は,8.15%という過去最高の実質国内総生産(GDP)成長率を達成した。順調にいけば2024年に後発開発途上国(LDC)卒業確定というロードマップも視野に入れて,国内での投資環境整備とともに,主要貿易相手との自由貿易協定締結が外交の俎上に上がっている。

ハシナ首相は,日本,中国,インド,ドイツ,アラブ首長国連邦(UAE),サウジアラビア,ブルネイ,フィンランド,アメリカ,イギリスなど主要パートナー国を歴訪し活発な外交を展開した。首相は,すべての外遊先で,バングラデシュへの投資とロヒンギャ難民問題解決への支持を強く求めた。

国内政治

新ハシナ政権発足

2018年12月30日に実施された第11次国会総選挙(一院制)で,ハシナ首相率いるALは,300議席(うち2議席は後日投票実施)中単独で258議席,与党連合全体で289議席を獲得した。今回の総選挙によって67人(ALは,ハシナ首相の従弟ら親族2人を含む56人)の新人議員が誕生した。女性議員(女性留保議席[50議席]を除く)は過去最高の22人(新人は2人のみ)となった。

2019年1月7日,新内閣が誕生した。2009年以来連続して3期目,1996年から2001年の政権期間も含め4期目のハシナ政権の誕生である。組閣を通じてハシナ首相は,大幅な指導部の世代交代を行った。古参の幹部らを中心に34人が外され,47人から成る新内閣には27人が初入閣となった。他方,元大臣のうち10人は,国会常任委員会委員長に任命され,ハシナ首相曰く,シニアの経験を尊重する措置が取られた。また,与党連合内の他党からの入閣はなく,カデルAL幹事長は,将来的な入閣の可能性を示唆したが,2019年には実行されなかった。

ハシナ首相は,新政権の最優先事項は国民生活向上のための経済活動の継続であると述べた。また与党党員らには権力乱用を強く自制し,人々に寄り添うよう求めた。1月25日,テレビ,ラジオを通じて行った演説では,政府は全国民のために働くこと,法の支配尊重,汚職撲滅,良き統治の確立,5年間で1500万人の雇用を創出することを誓った。

国民党:エルシャド総裁の退場

前内閣では,ALとともに国民党(Jatiya Party:JP)をはじめとする与党連合内の他の政党から6人が入閣した。しかし今回JPのエルシャド総裁は,野党院内総務(Leader of the Opposition)のポストを選び入閣はしなかった。

そのエルシャドは7月14日に89歳で死亡した。1982年に陸軍参謀長・戒厳令総司令として無血クーデタで政権を掌握し,1990年の民主化運動で退陣を余儀なくされるまで権力の座にあったエルシャドは,その後もAL,BNPに次ぐ第三勢力として国政に影響を与えた。同党の新総裁には,エルシャドの弟GMカデルが就任したが,エルシャドの妻ロウシャン・エルシャドとの対立が以前からあり,党の求心力低下は免れないとみられた。9月5日には,ロウシャン支持派が,ロウシャンの党総裁就任を宣言し,それに対してカデルが党規を乱す者に対して然るべき措置を取ると警告した。双方の対立は9月9日,ロウシャンを国会における野党院内総務,カデルを副総務とすること,また党総裁はカデルが務めることで決着がついた。12月,党内では,ロウシャンのために「チーフ・パトロン」と名付けたポストが作られた。

BNPと人民フォーラム:議員宣誓をめぐる混乱

2019年をとおして,野党側の政治活動は,指導力,組織力の欠如から,小規模な集会やデモに限定された一方で,選挙後の議員宣誓をめぐり野党連合内では亀裂が生じた。

2018年2月に収賄容疑で逮捕された最大野党BNPのカレダ総裁は,選挙前に2つの裁判で合計17年の懲役判決を受けたため,2年以上の懲役刑判決を受けた場合釈放後5年を経ないと選挙に出馬できないと定めた憲法第66条に則して立候補を認められなかった。現在カレダ総裁は少なくとも36の訴追を受けている。BNP側は,訴追の背後には政府による政治的意図があると非難し,加えて同総裁の健康状態悪化を理由に保釈を求めたが,政府は応じなかった。ハシナ首相は,カレダ総裁は政治犯ではなく,収賄で有罪判決を受けたための拘留であり,政府の管轄事項ではないとの立場を取り続けた。その後,BNPのミルザ・ファクルル・イスラム・アラムギール(以下,ファクルル)幹事長は,カレダ総裁の体調不良について,刑務所で適切な対応が取られていないとメディアに訴えた。4月1日,カレダ総裁は,高血圧と持病の関節炎の悪化で,ボンゴボンドゥ・シェイク・ムジブ医科大学(BSMMU)病院に移された。

2019年1月には,欧米の政府機関や内外の有力NGOが,総選挙について,少なからぬ不正が発生し,選挙管理委員会や治安当局の対応も不十分であったとの報告を公表した。そうした動きに力を得て,野党連合の国民統一戦線(Jatiya Oikya Front:JOF)は,政府を批判する発言を繰り返したが,組織的行動にはつながらなかった。党幹部の多くは訴追されており,また政府による更なる圧力への懸念も大きく積極的な政治活動を展開することができなかったためである。結果的に国会や街頭で野党の存在感を示せないまま,BNPの若手層からは,指導部による運動が欠如しているために,カレダ総裁が釈放されないとの強い批判も出た。

選挙後の議員就任をめぐっても,JOF内で亀裂が生じた。国会総選挙でBNPは単独で6議席,JOF全体でも8議席にとどまった。総選挙の結果について当初BNPは,投票箱のすり替えや,野党側の投票エージェント(投票遂行の監視などを行う)が投票所より追い出されるなど,さまざまな不正があったとして投票結果を受け入れず,選挙のやり直しを求めるとともに,当選した議員は就任宣誓を行わないとしていた。

憲法第67条によれば,選出議員は国会開会初日から90日以内に議員宣誓を行うと定められており,その期限は4月29日となっていた。最初に人民フォーラム(Gono Forum:GF)当選議員2人が就任を主張した。かつてのALの重鎮,バングラデシュの初代法務大臣カマル・ホセインが設立したGFにとって,1999年の党結成以来,当選議員を出したのはこれが初めてである。ところが,1月6日には,JOFとして当選者全員が議員就任しないことを改めて表明するなど,野党連合内の意見対立がうかがわれた。ハシナ首相は,1月12日,野党議員に対して選挙の敗北を認め国会に参加するよう求め,野党との話し合いの場を設けることに言及した。1月25日,国民向け演説を終えた首相は,翌1月26日,選挙に参加した全政党に対して2月2日の茶話会への招待状を発出したが,JOFは,議題が設定されていないとして欠席した。

議員就任に関しては,GF党内でも意見が割れていたようである。3月7日に党規を無視して国会に参加したGF議員の1人を,党は除名処分とした。さらに4月2日,もう1人のGF議員も国会参加を選んだが,後者は除籍されなかった。一貫性に欠ける党の方針や,5月5日に新しく組織された中央委員会には,国会選挙直前に入党した党員が幹部に選ばれるなどしたために,GF内での不満や対立が表面化した。

4月半ばには,BNPとALの間で,BNP選出の6人が国会に参加することと引き換えに,74歳のカレダ総裁を治療の目的で仮出所させ,総裁の息子タレク・ラフマンが自主亡命しているイギリスに出国させるとの交渉が進行中と噂された。

4月25日,党の許可がないまま,選出議員6人のうち1人が宣誓を行った。同月27日,BNPは同党員を党の決定に背いたとして除名処分にした。その決定にはロンドンにいるタレク総裁代行がSkypeで参加したと報じられた。ところが29日,ファクルル幹事長を除く4人が宣誓を行った。彼らは,タレク総裁代行の指示に基づいて行ったと主張し,その行動について問われた幹事長は,「政治において決定は覆る。彼らは国会で民主主義とカレダ総裁の釈放を求める」と述べ,タレク総裁代行とファクルル幹事長の意思疎通に問題があることをうかがわせた。

4月30日,ファクルル幹事長が期限内に宣誓をしなかったため,その議席が空席になった。5月5日,同幹事長は,すぐに国会に参加しなかったのは誤りで,タレク総裁代行の決定は正しい,党はあらゆる方面での闘争を続けるべきとの発言を行っている。こうしたBNP指導部の迷走ぶりは,長らく連携してきた他党からの批判を招くことになった。連携を解消する党や,決別はしないにせよ,新たなプラットフォームを立ち上げる政党もでた。BNP内部では,長老幹部の脱退も相次いだ。その理由はタレク総裁代行のもとで,自らの意見が尊重されないという不満が大きかったと言われる。6月24日のボグラ6区補欠選挙では,ファクルル以外のBNP候補が,AL候補を大差で破って当選した。

イスラーム協会:分裂の兆し

イスラーム原理主義を標榜するイスラーム協会(Jamaat-e-Islami:JI)は,2013年に高等裁判所で,党綱領が憲法および選挙法に違反するとの判決を受け,2018年総選挙には,党としての選挙参加を認められなかった。そのためJOFの統一シンボル「稲穂」(元々はBNPのシンボル)で22人が出馬したが,全員が落選していた。JIについては,GF代表が選挙後,JIがJOFのシンボルで出馬することを知らなかった,これが誤りだったと述べるなど,JOF内の摩擦要因となっていた。

一方,独立戦争戦犯裁判での有罪判決および刑の執行によって,最高幹部の多くを失ったJIでは,世代間の対立が深まっていた。独立時の役割について国民に謝罪し,党の再生を図るべきと主張する若い世代に対して,それは党の最終的崩壊を招くと長老世代は反論した。2月5日には,党の改革を求める幹事長補佐が離党した。こうした事態に対し,党内部では高レベルの委員会を設置し,新党結成に関して議論を始めたと伝えられ,BNP側はこの動きを支持した。

結果は,党の実質的分裂の動きにつながった。4月27日,JIの改革派は,新党結成を目指した新しい政治イニシアティブJana Aakangkhor Bangladesh(バングラデシュ人民の願い)の開始を発表した。活動の中心になっているのは,JI学生組織の元代表モジブル・ラフマン・モンジュで,数カ月のうちに独立戦争の精神に基づいた新党を結成すると表明した。モンジュは,同党は宗教政党とはならないと述べ,またこのイニシアティブの背後にALの支援があったのではという指摘について否定した。なお,JI本体は同日,党員が新しい運動に与することを禁ずる一方で,これを新たなイスラーム運動として位置づけ歓迎するとの声明を出し,JIの完全分裂を防ごうとする姿勢を示した。

地方自治体選挙への関心低下

国会選挙後の地方自治体選挙では,BNPら主要野党は自由,公正な選挙は望めないとして,まず2月28日の北ダカ特別市・市長補欠選挙,次いで全国480のウポジラ(郡)選挙などで不参加を続けた。

前市長の死去(2017年)によって実施された北ダカ特別市の市長補欠選挙の投票率は31%と,前回2015年の37.3%を下回る低さで,野党不参加の選挙に対する有権者の関心の低下が如実に示された。下記に述べるウポジラ選挙への反応とあわせて,投票率の低い選挙の常態化が示すバングラデシュの民主主義の現状に対する懸念が,多くの識者から表明された。

3月10日,18日,24日,31日および6月18日の5日間,全国を5地域に分けて,ウポジラ選挙が実施された。1985年に導入されたウポジラの選挙は,1990年,2009年,2014年に続き今回が5回目となる。2009年ウポジラ議会法に基づき,住民が直接選ぶのはウポジラ議長,副議長,女性副議長の3つの職である。議員については選挙が行われず,当該ウポジラ管轄域内にあるユニオン(行政村)議会議長,ユニオン議会の女性留保議席選出議員の3分の1,市(ポウルショバ)議会議長がウポジラ議会議員を構成する。

ウポジラ選挙は,今回初めて政党選挙として実施された。しかしBNP,左派連合,イスラーム諸政党は不参加を決めた。ALは,2つの副議長ポストには党候補を立てず,選挙を「競争的」にするとした。しかし有権者の関心は低く,2009年,2014年選挙の投票率が約71%,61%であったのに比較して,今回の投票率は,5日間について,それぞれ43%,41%,41%,37%,39%と大幅に低下した。ウポジラ議長選挙結果は,ALが321人と7割近くのポストを獲得したが,党の公認を受けられなかったAL党員も127人当選した。残りのなかには,党の命令に従わず出馬したBNP党員も含まれている。

ウポジラ選挙の結果は,AL内の体制見直しの必要性を提起することにつながった。4月末に開催された党中央運営委員会と顧問評議会の合同会議は,党内対立の解消のため草の根レベルから組織再編を行うと決めた。5月半ばには,BNPやJIからALに鞍替えした党員の洗い出しが開始され,今後他党からの入党希望者は中央運営委員会の承認を必要とするとした。報道によれば,2009年以来,BNP,JIから,それぞれ約2万5000人,約5000人がALに入党している。11月初め,ALは,党のイメージを損なう違法な活動に従事している「潜入者」1500人のリストを作成し,全国各地の組織から除名処分にするとの指示を出した。草の根レベルでの内部抗争解消,組織強化に結実するかどうか,今後の動向が注目される。

ダカ大学中央学生ユニオン選挙

公職の選挙ではないが,多くの注目を集めたのは,3月11日に実施されたダカ大学の中央学生ユニオン(Dhaka University Central Student Union:DUCSU)の選挙である。パキスタン時代より最高学府ダカ大学の学生運動は,常に国の政治に大きな影響を及ぼしてきた。近年でも公務員職の留保政策の見直しや,道路の安全を求める声は学生を中心に大きな盛り上がりを見せた(『アジア動向年報2019』「2018年のバングラデシュ」参照)。

1991年以来28年ぶりというこの選挙は,BNPや左派戦線の学生組織も参加して行われた。選出されるのはDUCSUの委員25人と18ある学生寮の役員(寮ごとに13人)である。長らく選挙が実施されなかった背景には,過去,DUCSUでは常に時の野党系の学生が力を持っていたという事実がある。すなわちダカ大学は反体制勢力の牙城であり,1990年の民主化運動の中心となったのも学生たちである。ところが1991年の民主化以来ALとBNPの政権交代が続くなかで,大学行政側がDUCSU選挙のたびに発生する大学内の「政権交代」に伴う騒乱を恐れて選挙を延期し続け,さらに歴代の政権がそれを容認してきた。結果的に選挙が実施されず正式なDUCSU委員不在のまま,与党系の学生組織が大学を勢力下に置くという構図が出来上がっていた。2018年1月,高裁が半年以内の選挙実施を求める判決を出したことを受けて,ようやく大学が応じたというわけである。

結果は,AL学生組織である学生連盟(Bangladesh Chhatra League:BCL)による大規模な不正を批判する野党系の学生組織が,途中でボイコットを決めたことから,副会長(会長は名誉職として学長が務めるため,実質的な会長)と社会福祉担当委員以外のポスト,ならびに学生寮のほとんどの役員ポストをBCL候補者が独占することになった。それぞれに自分たちが獲得できなかったポストの再投票を求め,一時は暴力的対立も発生した。とりわけ副会長に当選したヌルール・ホック・ヌールを含む野党系学生らは再選挙を強く求めたが,ダカ大学学長はそれを拒否,一部の学生らはハンストを開始した。メディアでは,今回の選挙では,先例を見ない規模の不正があったとの批判が相次いだ。

膠着した事態を打開したのは,ハシナ首相である。3月16日,首相は当選委員全員を首相府に呼び,バングラデシュにおける健康的な政治再生への助力を求め,また選挙において生じた問題を調査すると約束した。首相じきじきの要請に対して野党系委員の2人も結果を受け入れた。3月23日,最初の執行委員会が開催された。その席上で,ハシナ首相をDUCSUの終身会員とする案が出され,副会長を除いて賛成多数で可決された。

汚職対策の強化

過去10年のALによる権力の独占は,同党の関係者による汚職の水準を大幅に引き上げたと言われている。政権への信頼を損なう汚職に対しては厳しい姿勢で臨むというのが,ハシナ首相が政権発足直後から強調していた点である。2019年9月には,与党ALの学生組織や青年組織などの有力幹部を汚職に関与していたとして罷免したほか,特殊部隊(Rapid Action Battalion:RAB)による汚職摘発,逮捕が行われた。これまで,治安当局自体が汚職の共犯あるいは与党に対して無力であるとも指摘されてきたが,ハシナ首相は,誰も特別扱いはしないと表明し,青年連合,農民連合,ボランティア連盟などのAL傘下組織幹部らも汚職など違法行為への関与で逮捕された。

テロ対策の動向

ニュージーランドで起きたイスラーム教徒を狙ったテロを受けて,4月23日,ダカ・メトロポリタン警察のテロ・越境犯罪対策班(CTTC)は,国内には組織犯罪を実行できる能力を持ったテログループは存在しないと表明した。ハシナ首相はさまざまな場で,常に警戒し,テロや軍事活動を疑わせる不穏な動きを感知したら,すぐに治安当局に知らせるよう,またモスクの導師には,金曜礼拝の説教で,テロや武力を否定しイスラームが平和の宗教であることを強調するよう訴えた。

2019年の間にもダカやクルナで小型の爆弾が爆発する事件が起きた。政府は,これらの事件は,2016年の日本人7人も含む20人が殺害されたテロ事件の犯人,非合法組織バングラデシュ・ムスリム戦士団(Jama'atul Mujahideen Bangladesh:JMB)の分派「ネオJMB」の犯行とみている。

11月27日,ダカ裁判所によって,上記2016年7月1日にダカのホーリー・アルチザン・ベーカリーで起きたテロ事件の判決が下された。起訴されていた8人のうち7人が死刑判決,1人は証拠不十分で無罪となった。

CTTCによれば,この事件以来28回のテロリスト一斉捜査が実行され,過激派79人が殺害,250人以上が逮捕されている。

人権侵害と報道の自由

治安当局による超法規的殺人や誘拐の発生については,以前より欧米のNGOなどにより指摘されてきた。パリに本拠地を置く人権国際連盟の報告によれば,2009年1月にハシナ政権が誕生してから10年の間に,少なくとも507人が失踪し,うち62人が遺体として発見され,286人が生きて戻ったが,残り159人の行方は分かっていない。また2019年1月から3月の間に12人が行方不明となっている。

2019年7月末には,国連の拷問禁止委員会(CAT)に初めて提出した政府報告書に基づく質疑で,委員会は,バングラデシュ代表団(団長:法務相)に対して,治安当局による人権侵害と同組織の刑事免責に関する強い懸念を表明した。

メディアへの圧力も問題視されている。イギリスの人権団体の報告書によれば,バングラデシュにおいて表現の自由の侵害,与党政治家,治安当局,官僚などによるジャーナリストへの攻撃が増えたという。世界経済フォーラムが発表するグローバル競争指数のなかにある報道の自由に関する指標では,2019年バングラデシュは141カ国中,前年の119位から123位に低下した。

経 済

マクロ経済概況

2018/19年度(2018年7月~2019年6月)のバングラデシュ経済は,内外需ともに好調で,GDP成長率は目標の7.8%を上回り過去最高の8.15%を記録した。これは,南アジア8カ国のなかでも最高水準である。セクター別には,工業(GDP構成比で35%)が最も高く12.7%,サービス(同51.4%)が6.8%,農業部門(同13.6%)が3.9%の成長率となった。

工業部門のなかでは,製造業の成長率が14.2%(前年度13.4%),電気・ガス・水道が9.58%(同9.19%),建設が10.25%(同9.92%)と,いずれも前年度を上回る高い成長率を維持した。大中規模製造業(従業員100人以上)が14.8%(前年度14.3%),小規模工業(従業員100人未満)が11.0%(同9.3%)と,ともに2桁台の高い伸びを示しており,製造業全体の活況がみられる。工業生産量指数でみると,電気機器,コンピューター,電子・光学製品,飲料,製薬,医療化学製品などが大きく伸びており,他方,主力輸出品である衣料品,そして自動車,家具などは前年度に比べると減少した。

2018/19年度の輸出は,前年度比10.1%増(前年度は6.7%増)の約399億ドル,他方輸入は食用穀類,砂糖,食用油の輸入が減少したことから1.8%増(同25.2%増)と抑制され約554億ドルとなり,貿易赤字幅は182億ドルから155億ドルまで縮小した。輸出全体の84%を占める衣料品は,布帛が前年度比11.8%増(前年度7.2%増),ニットが11.2%増(同10.4%増)と前年度を上回る伸びを記録した。衣料品に次ぐ輸出額(全体の2%)を占める靴(革製ほか)の輸出も前年度比8.6%増(同4.1%増)と順調に伸びている。他方,原ジュートおよびジュート製品はそれぞれ27.7%,19.1%の大幅減となった。

出稼ぎ送金は,前年度比10.2%増の161億9600万ドルと,過去最高となった。出稼ぎ先としては,サウジアラビア,UAE,アメリカの上位3カ国で送金額全体の46%を占める。送金増加の背景には,政府によるインセンティブ,送金手続きの簡素化が奏功し,公式ルートでの送金が増えたことがある。また受け取り側の便宜を図るため,銀行は自行の支店やATMだけでなく,郵便局やマイクロ・ファイナンスのネットワーク,家電店などによるエージェント・バンキングも利用し始めている。

ALは第11次総選挙のマニフェストで,2023/24年度までにGDP成長率を10%に,1人当たり国民所得を2017/18年度の1751ドルから2750ドルへ,2041年までには3倍の5479ドルまで引き上げることを目標に掲げた。2018/19年度は1909ドルであった。2019/20年度のGDP成長率目標は8.2%に設定されている。米中の貿易摩擦によるバングラデシュからの輸出増加,出稼ぎ送金増加に伴う民間支出増,民間部門への与信増加,政府のインフラ投資による公共支出増,継続的な投資環境改善などを見越しての予測である。2019/20年度のGDP成長率については,国際通貨基金(IMF)が8月末に7.6%,アジア開発銀行(ADB)は12月に8%との見通しを出している。

投資環境改善

バングラデシュ政府は,2021年までに世界銀行の投資環境ランキングで2桁入りすることを目標に,投資環境改善を喫緊の課題としている。10月に公表された“Doing Business 2020”によれば,バングラデシュの順位は前年度の176位から168位(全190カ国)に上昇した。過去5年,173位から177位の間で停滞していたことからみると大幅な改善である。しかし今なお,アフガニスタンを除く南アジアの他国よりも低い。今回の上昇では,法人設立時のコスト低減,ダカ市内での新規電力取得の効率化,信用情報へのアクセス改善が評価された。

2月には,バングラデシュ経済特区庁(Bangladesh Economic Zones Authority:BEZA)が経済特区への投資家に対して貿易許可証を発行できるようになった。従来その権限は地方自治体に付されており,取得には時間や追加的な支払いが必要になっていた。さらに10月には,経済特区に投資する際の関連許認可手続きを1カ所で進められるワンストップサービス(OSS)センターが,BEZAの内部にオープンした。政府は全国100カ所に経済特区建設を予定している。その1つとして,BEZAと住友商事が2019年5月,ナラヨンゴンジ県アライハジャルの日本専用経済特区開発について合意した。円借款事業として,2021年稼働を目指している。

不良債権問題

3月,カマル財務相は,一般国民の金融機関への信頼は急速に失われ,政府の弱点となっていると述べた。最大の懸念は,金融部門が抱える多大な不良債権である。バングラデシュ銀行法に基づき設置,運営されている銀行部門は,国有銀行6行,特殊銀行(農業銀行など)3行,民間銀行42行,外資系銀行9行から成る。バングラデシュにおける総与信額に占める不良債権比率は,独立時の1971年から上昇し続け,1999年には41.1%まで達していた。その後債務帳消しや,引当金への繰り入れ,破綻債務減少により,同比率は徐々に低下し2011年には6.1%まで改善した。しかし,その後再び上昇に転じ,中央銀行数値によれば,2019年6月現在11.7%となっている。これは,アジア太平洋地域のなかでは最も高い水準である。なかでも国有銀行(31.6%)と特殊銀行(17.8%)が際立って高い。

かねてより不良債権は,政治的コネの強い特定の企業に集中していると言われ社会問題ともなっていた。返済繰り延べによって問題解決を図ろうとする中央銀行に対する批判は強い。2019年6月現在の不良債権総額は1兆1242億タカ,同年1月から9月までに繰り延べされた債務額は,3117億5000万タカと2018年1年間の2321億タカを大幅に上回った。

対外関係

「不法移民」問題が影を落とす対印関係

バングラデシュとインドの関係は,ハシナ政権下で史上,また南アジアで最も親密な2カ国と言われるほど,良好な関係にある。2月にはモメン外相が就任後初の外遊先として訪印し,二国間関係の強さをアピールした。5月にはインド連邦議会下院選挙におけるインド人民党(Bharatiya Janata Party:BJP)の大勝判明後,ハシナ首相は直ちに電話でモディ首相に祝意を伝えた。さらに,5月30日の就任式には,ハミド大統領が列席した。インドからは,8月19日にジャイシャンカル外相が来訪した。

10月3日から6日まで,ハシナ首相はインドを公式訪問した。同国で開催された世界経済フォーラムのインド経済サミットに主賓として参加したほか,モディ首相ら主要閣僚,経済界のリーダーらと面会した。10月5日に出された共同声明では,二国間関係を「戦略的関係を超えた絆」と位置づけ,治安,経済関係,連結性,軍事,開発協力,エネルギー,若者の交流,文化など多角的な協力強化が確認された。バングラデシュのLDC卒業の見通しを踏まえて,二国間の包括的経済連携協定(CEPA)締結に向けた共同研究開始が合意されたことも注目される。現在バングラデシュは,どの国とも二国間の自由貿易協定などを結んでいないが,LDCに与えられる貿易特権の終了に備えて,今後こうした動きが加速するとみられる。なお,バングラデシュは,2011年にインド・西ベンガル州の了解が得られず合意寸前でとん挫したティスタ川の水配分問題を,経済的影響はもとより,二国間関係改善の政治的な優先事項と位置づけている。しかし今回の訪問では,可及的速やかな枠組み協定締結のためにインド側の全関係者と調整を進めているとの回答を得るにとどまった。

一方で,国民感情のなかに新たなしこりを生む事態も生じた。それは,モディ政権下でのイスラーム教徒(ムスリム)へのあからさまな差別とみられる政策である。バングラデシュとの関係においては,不法移民(実際はバングラデシュ人ムスリムが標的とされる)追放の具体策として進められていたインド・アッサム州における国民市民登録(National Register of Citizens:NRC)および市民権改正法が焦点となった。8月末にNRCの最終リストが公表されたが,登録者のうち200万人近くがリストから除外されていた。

従来インド,とくにBJPが問題視してきた不法移民について,バングラデシュ側は,インドへの不法移民は存在しないと主張してきた。在野時のBJPは,バングラデシュの主張を批判していたが,今回は,インド側がバングラデシュの姿勢を逆手に取った形で,「NRCはインドの国内問題であり,バングラデシュは心配無用」との見解をバングラデシュに示した。

二国間問題としないという公式見解に対して,バングラデシュの市民社会のなかでは,かつてないほど懸念の声が強まっている。11月になると,バングラデシュ人であると主張するインドからの越境者が増加し,国境警備隊に逮捕された。報道によれば11月の最初の10日間の逮捕者は,300人を超えた。

12月12日,インドでは市民権改正法が成立した。同法は,アフガニスタン,バングラデシュ,パキスタンからのヒンドゥー教徒,シク教徒,仏教徒,ジャイナ教徒,パールシー(拝火教徒),キリスト教徒のうち,2014年12月31日以前にインドに入国し,かつ現時点までに5年以上住んでいるものを「不法移民」とみなさないというものである。インドでは,同法をめぐって,法の下での平等やセキュラリズムといったインド憲法の原則に関する同法の違憲性や,バングラデシュからアッサム州へのヒンドゥー教徒流入をめぐって,大規模な反対運動が各地で展開された。

「バングラデシュおけるヒンドゥー教徒への迫害」に言及した12月9日のインド国会での内相発言についても,バングラデシュ政府は,直接の抗議を避けた。しかし,同月に予定されていた外相,内相の訪印や合同河川委員会の会合がキャンセルされるなど,外交関係への影響が出始めている。

インフラ開発を中心に進む対日関係

5月28日から31日まで,ハシナ首相は日本を公式訪問した。同首相にとっては,これが5回目の訪日となる。訪問の前日には,ハシナ首相が『ジャパン・タイムズ』紙に「開発のための日本・バングラデシュパートナーシップ」と題する論考を寄せた。今回の訪問では,2014年に両国間で立ち上げた「包括的パートナーシップ」の一層の推進が確認されたほか,マタバリ港開発計画,都市高速鉄道,経済特区開発などへの総額1326億5900万円の円借款が調印された。

中国訪問でプロジェクト実施迅速化要請

ハシナ首相は,7月1日から5日まで中国を公式訪問した。2016年10月の習近平国家主席の来訪時に,バングラデシュ・中国関係は,「より緊密な包括的協力パートナーシップ」から「戦略的協力パートナーシップ」に格上げされ,インフラ建設や投資など,さまざまな分野で二国間関係が強化されている。今回の訪中では,電力,水資源,文化,観光などの分野に関する9つの合意文書が結ばれた。バングラデシュ国内では,中国の借款の実施が遅れていることがたびたび報じられており,ハシナ首相は習主席に対し,2016年に締結した27の覚書に基づくプロジェクト実施を早めるよう要請した。

ロヒンギャ難民問題解決にむけて首脳外交展開

2017年8月以来,ミャンマーからバングラデシュに逃れたロヒンギャ難民の数は,2019年12月現在71万2700人,コックスバザールの難民キャンプの住民総数は92万5000人に上る(国際移住機関調べ)。

ハシナ首相は,日本,中国,インドを含む全外遊先で,問題解決への支援を求めた。日本は,難民帰還の早期実現にむけたミャンマー側での環境整備の重要性に触れたうえで,日本として,ホストコミュニティの負担軽減のためのバングラデシュの取り組みを引き続き支援していくことを約束した。7月30日には,河野太郎外相がコックスバザールのロヒンギャ難民キャンプを視察した。

7月のハシナ首相訪中のねらいのひとつは,ロヒンギャ問題解決に対する中国のより効果的な関与を引き出すことにあった。国連安保理においては中国とロシアの反対ゆえに,ミャンマーに対する非難,訴追,制裁といった具体的な措置は取られていない。バングラデシュ外務次官によれば,習主席は,ロヒンギャの速やかな帰還が両国の目的であり,ミャンマーで再度迫害が起こらぬよう中国は可能なかぎりの努力をする,中国にとってバングラデシュとミャンマーはともに親しい友人であり,中国は2人の友人を平等に扱うと語った。9月の国連総会の際に,中国の仲介でバングラデシュとミャンマーの外相級会談が持たれたとも報じられている。

インドも,安全,迅速,持続的な難民の帰還を促進すること,そしてミャンマーのラカイン州における治安並びに社会経済的状況の改善により多くの努力を振り向けることで合意する旨を,10月のハシナ首相訪印時の共同声明に明記した。

1月25日に来訪した李亮喜・国連ミャンマー人権特別報告官は,ミャンマー側では今もなおロヒンギャに対する迫害が継続しているとし,バングラデシュに対して長期的計画を立て,地元住民に現実を受け入れる準備をさせるよう提案した。4月24日には,国連人道問題調整事務所,国際移住機関,国連難民高等弁務官事務所の代表らが来訪し,難民に対する教育,技能研修,所得創出活動機会の拡大を提案した。ユニセフによれば3歳から24歳の児童・若者の数は50万に上る。難民の定住化や地元住民の反発を懸念するバングラデシュは,当初こうした対応に否定的であった。しかし,彼らが教育も未来も奪われた「失われた世代」となりかねないとの懸念や,過激思想に傾くことの危険性などに鑑み,2020年1月になって,正式に14歳までの児童にミャンマーの歴史や文化,技能研修などを含む正式な教育機会を提供することを決定した。

7月27日にはミャンマー外務省の派遣団が来訪し,難民らとの話し合いの機会を持った。ミャンマー側は,難民らに対し外国人としてミャンマーに合法的に居住できるとの提案を出したが,難民らはあくまでも市民権の保証を求めた。8月22日,ミャンマー側は照会ができた3450人の帰還受け入れを開始するとしたが,難民側は何ら要求が実現されていないとして帰還を拒否した。

12月10日,国連の国際司法裁判所(ICJ)で,ミャンマー軍によるロヒンギャに対するジェノサイド(集団虐殺)をめぐる審理が始まった。本裁判はガンビアがイスラーム協力機構(OIC)と国際弁護団の支援を受けて提訴したものである。法廷にはアウンサンスーチー国家顧問兼外相が出席し,ロヒンギャ武装集団が警察署などを襲撃したので軍が掃討作戦を行ったと説明,大量虐殺の意図はないとして訴えの棄却を求めた。ただし,軍メンバーによる過剰な武力行使や,武装集団と市民とを明確に区別しなかった可能性は認めた。2020年1月23日,ICJはミャンマーに対し,ジェノサイドを止めるための「あらゆる措置」を取るよう仮保全措置命令を出した。

以上,国際世論は早期の難民帰還を求めるバングラデシュにとって有利に進んではいるものの,ミャンマー側の姿勢に大きな変化はなく,難民も帰還に向けた法的,政治的,経済的環境が整ったとは受け止めていない。バングラデシュとしては,難民の定住化を避けつつも,人道的見地からの支援,ならびに地元の不満を抑制しつつの地域開発を援助機関とともに遂行していくことになる。

2020年の課題

2019年12月20,21日,ALは3年に1度の党中央運営委員会大会を開催した。ハシナ首相は,今期かぎりの引退を何度か口にしており,首相の息子サジーブ・ワゼド・ジョイ(現在は首相のICT顧問),娘のサイマ・ワゼド・ホセインならびに甥のラドワン・ムジブ・サディクが党の重要ポストに選出されるのではないかとの予想があったが,そうはならなかった。首相の胸ひとつと見られる後継者選びは,今後も周囲の憶測をはらんで現政権の任期満了まで続きそうである。他方,カレダ総裁,タレク総裁代行不在のBNPにとって,党勢回復の機会は当面見当たらない。

2020年は,ハシナ首相の父ムジブル・ラフマン初代大統領・首相の生誕100年を祝う1年とされている。首相としては,さまざまな行事の開催とともに,現在進行中のメガインフラの竣工を期待している。引き続き汚職撲滅や治安維持に力を注ぎつつ,着実な成果を刈り取るべく積極的な経済,外交政策を推し進めると推測される。他方,内外で指摘が重なる報道の自由の抑制や,反対勢力の超法規的弾圧といった人権侵害の問題が,強力な政府の下で等閑視されることがないよう,市民社会のなかで広く望まれている。

(日本貿易振興機構アジア経済研究所理事)

重要日誌 バングラデシュ 2019年
   1月
3日国民議会(国会)議員289人が就任宣誓。バングラデシュ民族主義党(BNP)ら国民統一戦線(JOF)の議員7人は欠席。
3日JOF,選挙の不正を指摘し再選挙を求める書簡をフダ選管委員長に手交。
3日キショルゴンジ1区選出アワミ連盟(AL)議員サイード・アシュラフル・イスラム死去。行政管理担当大臣,AL幹事長を務めた。
4日日本外務報道官談話。総選挙結果について野党参加を得て実施されたことを歓迎しつつ,死傷者が出たことを指摘。
6日JOF,議員就任せずと表明。
7日新内閣誕生。8日,ハシナ首相は新閣僚に対し,常に監視下にあると厳しく警告。
9日ブラフモンバリア2区の国会議員選挙でBNPが勝利。同党議員は6人に。
12日首相,野党との対話の意思を表明。
13日首相顧問(大臣級)5人留任。
15日茂木敏充経済再生担当大臣,ダカ訪問。ハシナ首相を表敬。
19日AL,ダカ市内スフラワルディ公園にて選挙勝利を祝う大集会開催。
25日首相,就任後初の全国民に向け演説。
27日ガイバンダ3区の国会議員選挙でAL候補者が当選。BNPはボイコット。
30日第11次国会の初会期開会。シリン国会議長,フォズル・ラビ・ミア副議長再任。
   2月
2日首相主催茶話会,JOF,左派連合以外の54政党が出席。
6日モメン外相訪印。8日,第5回バ印合同協議委員会開催。
9日首相,ドイツ国営国際放送Deutsche Welleのインタビューで,これが最後の任期になると表明。
11日米下院の超党派議員6人が,ポンペオ米国務長官に対しバングラデシュの選挙不正に何らかの措置を取るよう書簡発出。
14日サウジアラビアと軍事協力強化に関する覚書調印。政府はサウジの戦争のためにバ軍を派兵するものではないと釈明。
14日首相,ミュンヘン安全保障会議出席のため訪独。16日にアラブ首長国連邦(UAE)を訪問し,国際武器見本市視察。UAEとは港湾,工場団地設置等4つの覚書調印。20日帰国。
17日女性留保議席議員49人,無投票で当選。ALが43人,国民党(JP)4人,労働党と無所属が各1人。
17日モーダント英国際開発相,来訪。ロヒンギャ難民キャンプ視察。
18日阿部俊子外務副大臣,来訪(~20日)。
20日オーストリアのクナイスル共和国欧州・統合・外務担当大臣来訪(~21日)。
20日ダカ旧市街薬品倉庫で火災。80人死亡。
24日ダカ発ドバイ行き国営ビマン航空便ハイジャック未遂。経由地のチョットグラム(チタゴン)空港で,軍が制圧。犯人を射殺。
28日北ダカ特別市市長補欠選挙。ALのアティクル・ラフマン当選。BNPら不参加。
   3月
5日アサドゥッザマン内務相,BNPのファクルル幹事長に対し,カレダ総裁の病気に万全の対応を約束。
5日インド,アッサム州ブラフマプトラ河流域の一部で電子国境監視システム導入開始。
7日来訪中のサウジ商務投資相に対し,バングラデシュは350億ドルの投資誘致計画を提示。今後,合同作業部会で精査する。
10日ウポジラ選挙開始。18日,24日,31日,6月18日の5回に分けて実施。
10日カレダBNP総裁,政府が指定した病院(BSMMU)での治療を拒否。
11日ダカ大学中央学生ユニオン(DUCSU)選挙,28年ぶりに実施。
13日米国務省公表の2018年Human Rights Practices国別報告書,第11次国会総選挙について「偏った」選挙であると記述。
15日ニュージーランドで発生したテロ事件で,バングラデシュ人の死者は5人。
16日首相,DUCSU選出委員らと面会。
18日ランガマティ県,ウポジラ選挙で投票管理人や警備員を含む7人が射殺さる。
22日ダカ市内モハマドプールのジュネーブ・キャンプで麻薬摘発,91人逮捕さる。
23日JPエルシャド総裁,妻のロウシャンを野党院内副総務とすると発表。
28日ダカ・ボナニのビル火災26人死亡。30日にはダカ・グルシャンの市場で火災。200以上の店舗が被害を受けた。
   4月
1日カレダBNP総裁BSMMUに入院。
4日エルシャドJP総裁,弟GMカデルを再び党の共同代表に復活させる。5日に再度カデルに代えて妻ロウシャンを任命。
6日3月27日,フェニ県でマドラサ校長のセクハラを警察に訴えた女子学生ヌスラット,体に灯油をかけられ焼かれる。10日死亡。
7日国境警備隊,セント・マーティン島に配備。22年ぶり。ミャンマー政府の地図に同島が同国領とされていることへの対抗措置。
12日ブータンのツェリン首相来訪。
21日首相,ブルネイ訪問(~23日)。
24日ダカで第3回バ・英戦略対話。
25日BNP選出議員の1人,議員宣誓。
27日イスラーム協会(JI)の改革派,新党結成を目指して新たな政治イニシアティブJana Aakangkhor Bangladesh開始表明。
29日BNP選出議員の4人,議員宣誓。
30日宣誓をしなかったファクルルBNP幹事長の議席が空席になったと国会議長宣言。
   5月
1日首相,イギリス訪問(~11日)。
2日ダカで第7回バ・米安全保障対話。
4日大型サイクロン・ファニ,クルナ・ラジシャヒ管区を通過。死者は14人。
5日人民フォーラム,新中央委員会設置。総裁はカマル・ホセイン,幹事長は故AMSキブリア蔵相の息子レザ・キブリア。
7日ラマダン(断食月)開始。
8日ビマン航空,ミャンマー・ヤンゴン空港で着陸時に滑走路を外れ大破。19人負傷。
19日ハシナ首相,現内閣初の内閣改造。5人の大臣・国務大臣の所管変更。
24日国連,2018年に平和維持活動で死亡した兵士119人にメダル授与。バングラデシュからは18人。
28日ハシナ首相,訪日(~31日)。
29日ハミド大統領,訪印(~31日)。
31日首相,サウジアラビア訪問(~6月3日)。イスラーム協力機構(OIC)サミット出席。
   6月
3日首相,フィンランド訪問(~7日)。
4日断食明祭。
13日2019/20年度予算案国会上程。30日可決。歳出は過去最大の5兆2319億タカ。
18日カレダBNP総裁,2つの名誉棄損罪裁判で保釈を認められたが,収賄容疑2件で有罪判決を受けているため実行されず。
23日AL,結成70周年式典各地で開催。
24日BNPのカレダ総裁釈放を求め,野党連合は7月に全国大都市でデモ実施と発表。
24日ボグラ6区補欠選挙でBNP候補当選。全投票所で電子投票(EVMs)が用いられた。投票率は35%。
27日自由民主党(LDP)のオリ・アーメド党首,新たな政治プラットフォームJatiya Muktimancha結成を発表。LDPはBNP率いる20政党連合の一員で連合の活動も継続。
   7月
1日首相,中国訪問(~5日)。
6日マレーシア,アブドゥッラー外相来訪。ロヒンギャ問題,出稼ぎ問題を議論。
7日左派民主連合(LDA),ガス料金値上げに抗議し,半日ハルタル(ゼネスト)実施。
7日交通渋滞緩和を理由にダカの3つの主要道路が人力車運行禁止に。8日,9日,数千台の人力車が抗議して道路封鎖。
8日首相,国会で,液化天然ガスの輸入コストの高さに言及し,ガス料金値上げは国家の経済発展のために受け入れるべきと表明。
9日ファクルルBNP幹事長,ガス料金値上げは与党の一部党員の利益のためと批判。
11日北東部,北部,チタゴン丘陵地帯(CHT)の10県で洪水の被害広がる。
12日ダカ,大雨で市内各地が冠水。
13日内閣改造。国務相1人の閣内大臣昇格と新たに1人が国務相として入閣。
13日韓国の李洛淵首相来訪(~15日)。
13日デング熱予防のため,全国で1週間の蚊撲滅・清掃計画実施を決定。25日から。
14日エルシャドJP総裁死去。89歳。
18日JPの新総裁にGMカデル就任。
19日首相,イギリス訪問(~8月8日)。
24日ダカ市内2カ所で爆発物発見さる。
25日北部の洪水の死者100人を超える。
26日シンハ元最高裁長官,カナダで政治亡命を申請。司法への政治介入を拒否したために脅迫されていると主張。
29日河野太郎外相,来訪(~31日)。30日にロヒンギャ難民キャンプ視察。
30日デング熱,全国61県に拡大。
31日高裁,カレダ総裁の保釈申請却下。
   8月
3日チタゴン丘陵人民連帯委員会(PCJSS)委員長のショントゥ・ラルマ,先住民コミュニティに対する土地収用,追放,レイプ,殺害,誘拐などの攻撃が増加と訴え,また,1999年設置のCHT土地紛争解決委員会には2万2000件の訴えが寄せられているが,解決は1件もないと述べた。
6日アサドゥッザマン内相,訪印。7日,アミット・シャー印内相と会談。
12日犠牲祭。
16日ダカ,ミルプール地区のスラムで火災。1000戸以上が消失。
19日ジャイシャンカル印外相,来訪(~21日)。10月のハシナ首相訪印の地ならし。
23日ムジブノゴル政府顧問評議会メンバーの最後の生き残り,親ソ派National Awami Party(NAP)総裁を50年以上務めたムザッファール・アーメド教授死去。
30日ダカ市内で,地方自治相の車に爆発物が投下され,警察官2人が負傷。ALのカデル幹事長は,9月1日,大きな攻撃の前の試験的攻撃の可能性があると述べる。
   9月
3日イランのザリーフ外相来訪(~5日)。
5日ロウシャン,JP総裁を自称。
9日JP,正式にロウシャンを国会の野党院内総務,GMカデルを副総務と決定。党総裁はカデルが務めることで決着。
14日首相,役員ポストを金銭で売買,麻薬を使用しているなど「問題ある」行動を理由に,AL学生連盟の会長と書記長を解任。
16日エルシャドの死去で補欠選挙が行われるロングプル3区について,ALは候補を出さずJP候補を支持することを決定。
18日特殊部隊(RAB),違法カジノ摘発。182人を逮捕。なかにはAL青年連盟ダカ南部オルグ担当委員も。
20日首相,訪米(~10月1日)。
26日DUCSU,大学内において宗教に基づく学生政治を禁ずる決議採択。
27日首相,国連総会で演説。27日,モディ印首相と会談。
30日クルナAL事務所で爆発事故。
  10月
2日首相,パキスタンのイムラン・ハーン首相より電話を受け会談。
3日首相,訪印(~6日)。
5日ダカのジュネーブ・キャンプ地区で,電力の支払いと停電をめぐって住民と治安当局が衝突。50人以上が負傷。
7日AL学生連盟幹部ら,バングラデシュ工科大学(BUET)2年生のアブラールを撲殺。
9日首相,全教育機関,学生寮で暴力分子を摘発追放するよう指示。
11日BUET,大学内での政治活動禁止。
20日ボラ県で,ヒンドゥー教徒青年のFacebookアカウントでイスラームを冒とくする書き込みがあったとして騒乱。青年はアカウントがハッキングされたと警察に訴え。ヒンドゥー教徒の家屋が襲撃された。警察との衝突で4人死亡,100人以上負傷。
21日ハミド大統領,天皇の「即位礼正殿の儀」参列のため訪日。帰途シンガポール訪問。
24日首相,非同盟諸国首脳会議出席のためアゼルバイジャン訪問。
25日首相の息子でICI担当顧問サジーブ・ワゼド・ジョイ,テレビ番組でアメリカ大使館を含む在ダカ外国公館の役割を批判。
31日最高裁,JIの最高幹部の1人ATMアズハルル・イスラムに対する5年前の戦犯裁判の判決(死刑)を支持。
  11月
3日選管,ダカ南北特別市議会選挙を2020年1月に実施と発表。BNPは選挙参加を示唆。
5日BNP副総裁,元外相のモルシェド・カーン,政界引退を表明。
5日アリス・ウェルズ米国務副次官補(南・中央アジア担当)来訪。
7日チョットグラム8区のバダル議員(民族社会党:JSD)死去。
12日ブラフモンバリア県で2台の電車が衝突。死者16人以上。
12日ハミド大統領,ネパール訪問(~15日)。
12日JIの新代表(Ameer)にショフィクル・ラフマン幹事長が選出さる。
16日首相,UAE訪問(~19日)。
22日首相,インド・コルカタで西ベンガルのモモタ・バネルジー州首相と面会。
27日2016年7月1日テロ事件について起訴された8人のうち7人に死刑判決。
27日首相,2020年3月17日から2021年3月26日までをムジブ・ボルショ(ムジブ年)とし,さまざまな祝典実施と発表。
27日ジョイICT顧問,父の出身地であるロングプル県ALのナンバー1メンバーに。
28日最高裁上訴部,カレダ総裁の健康状態を検討する医療委員会設置を指示。
29日デング熱患者10万人超。死者129人。
  12月
1日首相,国連気候変動枠組条約締約国会議(COP25)出席で,スペイン訪問(~4日)。
4日AL,3年ぶりの全国委員会開催。
10日国際司法裁判所でロヒンギャ裁判。
12日カレダ総裁,健康上の理由による保釈請求却下さる。ただし裁判所は,入院中の病院に対し高度な治療を即時施すよう指示。
15日政府,独立戦争時にパキスタンに協力した1万789人のリストを公表。ただし同じ人が複数回掲載され,独立戦争参戦兵士の名が含まれる等,不備が指摘され,18日撤回。
19日NGO局,登録NGOに「先住民」を意味する語を名称から削除するよう要請。
20日AL,中央運営委員会大会(~21日)。ハシナ総裁とカデル幹事長留任。
20日世界最大のNGO,BRAC創立者,フォズル・ハサン・アベド卿死去。享年83歳。
22日選管,南北ダカ特別都市市長・市議会議員選挙を1月30日実施と発表。
30日BNPおよび左派政党,2018年総選挙1周年にちなんでの抗議デモ。警察と衝突。

参考資料 バングラデシュ 2019年
①  国家機構図(2019年12月末現在)

②  行政単位(2019年12月現在)

(出所)The Daily Star 記事などから作成。

③  要人名簿(2019年12月31日現在)

(注) 女性閣僚

主要統計 バングラデシュ 2019年
1  基礎統計

(注)1)消費者物価上昇率,為替レートは年平均値。

(出所)Bangladesh Bank, Monthly Economic Trends, February 2020より作成。

2  支出別国民総所得(名目価格)

(出所)Bangladesh Bureau of Statistics, Gross Domestic Product(GDP)2018-19 より作成。

3  産業別国内総生産(基準年2005/06年度価格)

(注)1)固定生産者価格。2)固定市場価格。

(出所)表1に同じ。

4  主要輸出品

(出所)表1に同じ。

5  国際収支

(注)1)2018/19年度は暫定値。

(出所)Bangladesh Bank, Bangladesh Bank Quarterly より作成。

6  政府財政

(出所)Ministry of Finance, Budget in Brief 2019/20 などより作成。

 
© 2020 日本貿易振興機構 アジア経済研究所
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