アジア動向年報
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各国・地域の動向
2020年のベトナム 感染症拡大抑制,経済社会への影響最小化に成功
石塚 二葉(いしづか ふたば)藤田 麻衣(ふじた まい)
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2021 年 2021 巻 p. 191-218

詳細

2020年のベトナム

概 況

2020年のベトナムは,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の抑制において世界でも有数の成果を収めた。12月末時点での累計感染者数は1457人,死者は35人にとどまっている。政府は,厳格な水際対策をとる一方,市中感染発生の場合の感染源囲い込みを徹底して行い,人命の損失を最小限に抑えることができた。社会生活への影響も比較的軽微であり,各級党支部大会の開催など,2021年初頭に控えた第13回党大会の準備も滞りなく進んだ。他方,9月半ばから11月半ばにかけて中部一帯は台風・豪雨に襲われ,甚大な人的・物的損害を被った。

経済も,新型コロナウイルス感染症の抑制による経済活動の早期再開,公共投資の支出促進による成長下支えなどにより,2.91%のプラス成長という突出した実績を上げた。世界貿易の縮小にもかかわらず,米中貿易摩擦の激化に伴う中国からの生産移転の動きなどを受けて輸出が拡大したが,アメリカの保護主義への対応に苦慮した。デジタル産業や再生可能エネルギーなどの新産業は,党・政府の振興策や企業による投資が相次ぎ活況を呈したが,新型コロナ感染症の企業活動全般への影響は避けがたく,国有企業や金融セクターの再編は停滞した。

対外関係では,ベトナムは,ASEAN議長国として新たな情勢に素早く対応し,新型コロナ対策にかかる域内協力を推進するなどリーダーシップを発揮した。感染拡大が続く欧米諸国や日本にマスクなどの医療物資を寄贈する「コロナ外交」でも成果を上げた。他方,南シナ海の実効支配を進める中国との間では,緊張が引き続き高まっている。ベトナムは,近隣諸国やアメリカ,欧州連合(EU)主要国などとも協調して中国の実力行使を抑制しようとしているが,これまでのところ十分な効果は上がっていない。

国内政治

迅速,果断な対策で新型コロナウイルスの影響を最小化

ベトナムは中国と隣接し,経済的関係も深いが,財政力や技術力で勝る多くの国々よりも新型コロナウイルスの感染拡大抑制に成功し,国際的に注目を集めた。

ベトナムで最初に新型コロナウイルスの感染者が報告されたのは1月23日であった。保健省は,武漢から来た66歳の中国人男性とその息子がホーチミン市の病院で隔離されていると発表した。30日にはハノイ市とタインホア省で初めてのベトナム人の感染が確認された。同日,首相決定によりCOVID-19予防対策国家指導委員会が設置され,ヴー・ドゥク・ダム副首相が委員長に就任した。

1月31日の首相6号指示は,中国と長い国境を接し,人の往来も多いベトナムでは大規模な感染拡大の危険性が高いという危機感を表明し,同指示に従って翌2月1日から中国との間のすべての航空便の運航が停止された。12日には,国内初のクラスターが発生したヴィンフック省ビンスエン県ソンロイ社(社は基礎レベルの行政単位)の封鎖が決定され,翌13日から20日間外部との往来が遮断された。12日時点での国内の感染者数は15人であり,うち10人がヴィンフック省で確認されていた。これらの措置により,当初の中国からの入国者による感染拡大は一旦収束した。

3月6日,イタリアなどを旅行して帰国したハノイ在住の女性の感染が確認され,その後,主としてヨーロッパ諸国からの入国者とその関係者の感染の報告が相次いだ。国内の累計感染者数が100人に迫った21日,政府は,すべての外国人の入国停止を決定した(22日から施行)。27日には感染者や接触者の追跡・隔離の徹底,多人数の集会や営業活動,移動の制限などの措置に関する首相15号指示,31日にはこれらの措置を含む「社会隔離」を4月1日から15日間全国で実施することを定めた首相16号指示が出された。

社会隔離措置は所期の効果を上げ,4月15日には,感染リスクが高いとされるハノイ,ホーチミンなど12の省市以外の地域で各種の制限が緩和された。17日以降新規の市中感染が確認されなくなったことを受けて,社会隔離は23日にはほぼ全国的に解除された。この時点での累計感染者数は268人,死者はゼロであった。以後約100日間にわたりベトナムは感染拡大を水際で食い止め,市中感染ゼロを維持することができた。学校は再開され,外国人の姿が消えた観光地にはベトナム人観光客があふれた。

感染拡大の第2波ではダナン市が焦点となった。7月24日,ダナン市の57歳の男性が3度のウイルス検査で陽性と判定されたことが伝えられた。ダナン市内では感染経路の不明な感染者がその後も次々と現れ,新規の市中感染が15人に達した27日,政府は翌28日から15日間の隔離措置を同市に適用することを決定した。また,全国各地から同市を訪れていた約8万人の観光客らを順次退避させるとともに,帰宅後14日間の自宅隔離を義務づけた。

第2波では第1波よりも感染拡大のスピードが速く,7月24日から8月31日の間にダナン市では389人の感染者が確認された。また7月31日には国内で初の死亡事例が報告され,新型コロナウイルス感染症による死者は9月3日までに全国で35人に達した(うちダナン市が31人)。しかし,政府は第1波の時と同様,感染源の囲い込みのための方策をダナン市に集中して適用することで,8月末頃までには再び感染拡大をほぼ完全に抑え込むことに成功した。以後,2021年1月末に次の感染拡大の波が訪れるまで,ベトナムではほとんど新たな市中感染の報告はなく,死者も出ていない。

ベトナムでは政府の初動が早く,適時に的確な政策をとることができたために,人命の損失を最小に抑え,経済社会活動への影響も比較的軽微な程度にとどめることができた。多くの個人に対する権利の制限を伴う措置の有効かつ速やかな実施が可能であったのは,独裁体制ならではという面もあったと思われるが,政府のコロナ禍への対応が基本的に国民の支持を得られていたことも看過できない。世界的にみても稀な成功例となったベトナムのコロナ対応は,国民に自国への誇りをもたせ,政府に対する信頼を高めることにもつながったとみられる。

第13回党大会の準備進む

2020年には,3回の党中央委員会総会において2021年1月開催予定の第13回党大会に提出する文献や人事案の調整が進められたほか,地方各級の党大会で新指導部の選出などが行われた。

とくに注目されたのは党中央委員会や党政治局の人事の行方である。4月23日に開催された全国幹部会議で,グエン・フー・チョン党書記長は,第12期指導部の任期中に多くの高級幹部が懲戒処分を受けたことを引き合いに出して適切な人事を行う責任を強調し,第13期党中央委員は道徳と才能を兼ね備えなければならず,なかでも道徳を基礎とすべきであると述べた。

5月に開催された党中央委員会第12回総会は,第13期党中央委員会の定数を,第12期と同様,正規委員180人と予備委員20人を含む200人とし,党政治局,党書記局も同様にそれぞれ17~19人と12~14人とすることを決定した。他方,党中央委員や党政治局員に就任するための年齢制限の例外となる「特別な場合」を認めるかどうか,認めるとしたら何人までかについては,適当な時期に諸般の状況を踏まえて決定することとされた。

10月の党中央委員会第13回総会では,党大会文献草案について討議されたほか,再任および新任の党中央委員候補の名簿について票決が行われたが,いわゆる四柱(党書記長,国家主席,政府首相,国会議長)を含む党政治局の人事案については,12月の第14回総会で引き続き検討されることとなった。党に関する国家機密事項のリストを定める11月3日付首相1722号決定は,四柱(および党書記局常任)人事案に関する未公開の情報を3段階の国家機密のうち最高レベルに位置づけ,最高指導部人事の密室性をいっそう強調した。

結局,第14回総会においても党大会に提出される四柱候補のリストの最終案はまとまらなかった。同総会の閉幕演説で,チョン党書記長は,総会は再任・新任の党政治局員・党書記局員候補について「高度な一致に達した」とする一方,党政治局および人事小委員会は,候補者リストを引き続き補充,完成させて党中央委員会第15回総会に提出することとなったと述べた。チョン党書記長が自らの後継に推した候補に対する党中央委員会の信任の度合いが低かったことが合意形成を阻害した主因であったとみられる。こうして,前回党大会同様,第13回党大会でも開催直前まで最高指導部人事案が確定しない情勢となった。

地方レベルでは,新型コロナウイルスの影響が懸念されたものの,社級では6月末,県級では8月末,省級では10月末という予定された期日までに全国ほぼすべての党支部の大会が完了した。省級の新指導部では幹部の若返りが進み,63の省市の党委員会(党委)書記のうち27人が50歳以下となった。最年少はドンタップ省党委のレ・クォク・フォン書記で,1978年生まれの42歳である。省級党委書記のうち他地域の出身者は34人と過半数を占めるに至った。

国会はオンライン会議を併用

国会は通常どおり年2回開催された。それぞれの会期は2部に分けられ,前半はオンライン(ハノイ在住議員のみ議場に集合),後半は議場での開催となった。

第14期第9回国会は,5月20~29日のオンライン会議と6月8~19日の議場での会議を組み合わせて行われた。実質19日間という短い会期であったが,第9回国会は,官民連携方式(PPP)による投資法など10本の法律(表1),強制労働の廃止に関する国際労働機関(ILO)第105号条約への加盟に関する決議など21本の決議を成立させた。決議の数が多いのは,通常の国会活動にかかる決議に加え,EU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)および投資保護協定(EVIPA)の批准や新型コロナウイルスによる影響軽減のための法人税減税に関する決議,2021年5月の国会議員選挙関連の決議や国家幹部人事関連の決議などが含まれているためである。国家幹部人事としては,2月にハノイ市党委書記に任命されたヴオン・ディン・フエ副首相の副首相職を解任する首相の提案が承認された。

表1 2020年の国会で可決された法律

(出所)ベトナム国会ウェブサイト(http://quochoi.vn)より筆者作成。

第14期第10回国会も,オンライン会議(10月20~27日)と議場での会議(11月2~17日)の2部構成により,実質19日間で行われ,7本の法律と13本の決議を成立させた。第10回国会で成立した法律のうち,改正環境保護法の採決は,当初11月11日に予定されていたが,会期中に国内の多くの環境団体や専門家から採決に反対する建議書が出されたことなどから,17日に延期された。同法案では,対象事業の事業主が環境影響評価を行うこととされるが,その報告書の公開についても事業主のみが責任を負い,審査機関は審査結果のみを公開するとされていることが主要な問題点として指摘されていた。しかし同法案は,この点につき修正がなされないまま,17日に91.9%の賛成で可決された。環境問題への関心は2016年の外資系企業による大規模な海洋環境汚染事件などを契機に高まっているが,今回の法改正は関係者の間に懸念を残すことになった。

第10回国会ではまた,キプロス国籍を取得していたことが8月に明らかになったホーチミン市選出のファム・フー・クォク議員を罷免する決議を採択した。9月にハノイ市人民委員会主席に就任したチュー・ゴク・アイン科学・技術相と,10月に党中央事務局局長に就任したレ・ミン・フン国家銀行総裁については,それぞれの政府閣僚の職を解任し,後任を任命する首相の提案を承認した。フン総裁の後任に任命されたグエン・ティ・ホン国家銀行副総裁は,総裁に就任する初めての女性となった。

第15期国会議員および2021~2026年任期の各級人民評議会議員選挙は2021年5月23日に行われることが決まった。

党大会前に高級幹部の処分相次ぐ

綱紀粛正・反汚職闘争では,引き続き重大事件の捜査,裁判が進められるとともに,一連の高級幹部の懲戒処分が新たに行われた。

ハノイ市党委のホアン・チュン・ハイ書記については,2019年12月に党検査委員会が,同氏が副首相在任中(2007~2016年),タイグエン鉄鋼(TISCO)第2期拡張案件を指導した際に違反があったとして,懲戒処分を提言していた。党政治局は,1月,ハイ書記に対して警告処分を決定し,翌月にはハノイ市党委書記の職を解任した。当該事案に関してはTISCOの元幹部らが逮捕されているが,ハイ元書記は刑事責任を問われてはいない。

3月,党政治局は,党検査委員会の提言を受けて,ホーチミン市のトゥティエム新都市区開発プロジェクトに関する違反により,同市党委のレ・タイン・ハイ元書記の2010~2015年の任期における党委書記の職を遡及的に解任した。ホーチミン市政界関係では,タット・タイン・カン元党委副書記も12月に逮捕されている。カン元副書記は,同市人民委員会傘下のタントゥアン工業開発における公的資産の管理使用規定違反に関与した容疑で逮捕されたが,同市の交通・運輸局長に在任中(2012~2014年),トゥティエム新都市区開発がらみの別件にも関わっていた疑いが国営メディアにも指摘されており,今後の責任追及が注目される。

異色の展開となったのが,ハノイ市人民委員会のグエン・ドゥク・チュン主席のケースである。7月半ば,チュン主席の運転手ら関係者3人が公安の事情聴取や自宅と職場の捜索を受けたという情報をメディアが伝えた。その3日後には,この3人が国家機密資料占奪の容疑で逮捕されたことが報道された。8月11日,党政治局はチュン主席の党活動の停止を決定し,同日,グエン・スアン・フック首相は同氏を90日間の職務停止とする決定に署名した。同月28日,チュン主席は,2019年5月にニャットクオンモバイルの社長が指名手配を受けた事件に関連した国家機密資料占奪の容疑で逮捕され,9月25日にはハノイ市人民評議会により罷免された。チュン元主席らの裁判は12月11日に非公開で行われ,開廷後わずか4時間で元主席には懲役5年の実刑判決が言い渡された。同月の党中央委員会第14回総会は,チュン元主席の党からの除名を決定した。

チュン元主席は,ハノイ市公安局局長を務めた後,2015年末に48歳で同市人民委員会主席に就任して頭角を現した。コロナ対策にもリーダーシップを発揮し,6月末にはハノイ市の褒賞評議会から一等労働勲章の受章候補として推薦を受けていた。次期党指導部人事においても,当初は新任党政治局員候補の筆頭ともみられており,その運命の急転は,ハノイ市民をはじめ多くの人に衝撃をもって受け止められた。懲役5年は法定刑よりも軽く,元主席らが悔恨の情を示し,捜査に進んで協力したことなどが酌量されたということであるが,元主席は複数の事案に関与しているとみられ,今後も刑事責任の追及が続くと予想される。

グエン・ヴァン・ビン党経済委員会委員長も党大会を前に処分を受けた。11月3日,党検査委員会は,同氏の国家銀行総裁在任中(2011~2016年)の民主集中原則違反や規定違反等に関し,党政治局が処分を行うことを提言した。その3日後,党政治局はビン委員長を警告処分とすることを発表した。処分理由としては,ベトナム金融界で最大の汚職事件を起こした建設銀行に対する特別融資に同意したことや,同行に対する特別監査を行わなかったことなど,さまざまな問題が挙げられている。2018年には国家銀行の元副総裁が建設銀行事件に関連して有罪判決を受けてもいるが,これまでのところ,ハノイ市のハイ元党委書記同様,ビン委員長も刑事責任を問われてはいない。ただし両者は現職の党政治局員であり,再任のための年齢要件を満たしているが,この処分により第13回党大会で再任される見込みは微妙になった。

土地収用をめぐる紛争の力による解決

ハノイ市郊外のドンタム社では,2017年に続き土地収用をめぐる衝突が起きたが,前回とは異なり,国家権力側の組織力が強く印象づけられる展開となった。

ハノイ市ミードゥク県ドンタム社では,土地収用をめぐって以前から当局と住民の間に対立があった。2017年には,ハノイ市公安局が住民の代表4人を拘束したことが端緒となり,住民側が警察官38人を人質にとる事件に発展した。その際にはハノイ市人民委員会のチュン主席が住民側との交渉にあたり,土地の権利関係の再調査を行うことなどを約束して,その場はひとまず平和的に収まった。しかし,2カ月もたたずにハノイ市公安局はこの人質事件を刑事事件として立件することを決定して住民の反発を招き,問題は振出しに戻っていた。

1月9日の午前1~3時頃,約3000人の公安勢力がドンタム社を襲撃した。彼らは住民のリーダーと目される84歳の元ドンタム社党委書記レ・ディン・キンの家を標的とし,キンを射殺した。時を移さず公安省はそのウェブサイト上で「ドンタム社の住民が公務執行中の警察官を襲撃した」という発表を行った。そして,この衝突のなかで容疑者ひとりが死亡,警察官3人が殉職したと伝えた。殉職したとされる3人の警察官は,事件の翌日,チョン党書記長兼国家主席によって烈士と認定され,一等戦功勲章を贈られた。彼らの葬儀は国家葬儀場で荘厳に営まれ,首相や公安相など要人が多数参列した。

3人の警察官の「殉職」の状況についての公安側の説明は二転三転したが,最終的な説明によれば,テロ活動を企てていたキンとその仲間を制圧しようとした際に,反撃を受けた3人がキンの家の裏の深さ4メートルの穴に転落した。そこへキンの息子たちが上からガソリンを注いで火を放ち,3人を焼死させたという。事件後,キンの家族など住民29人が殺人と公務執行妨害の容疑で逮捕された。そのうちの4人が罪を告白し謝罪する映像が,数日後,テレビで放送された。

9月に行われた公判では,29人のうち6人が殺人罪,23人が公務執行妨害罪に問われた。法廷では,公安側の説明に沿って作成されたビデオが証拠として採用された一方,3人の警察官の死亡の状況を明らかにするために弁護人が求めた再現実験は遺族の心を傷つけるという理由で認められなかった。被告人は全員が罪を認めて謝罪し,判決ではキンの2人の息子に死刑,孫のひとりに終身刑,その他12人に3年から16年の懲役が言い渡され,残り14人は保護観察となった。

なお,1月の事件の直後,その真相を国内外に伝えたいと願うジャーナリストや活動家が「ドンタム・タスクフォース」というグループを立ち上げ,3回にわたって英語とベトナム語で報告書を作成してきた。その中心メンバー7人のうち,ベトナム国内で活動してきた4人はすべて逮捕されている。そのひとりで10月に逮捕されたファム・ドアン・チャンは,国境なき記者団による2019年度の「報道の自由賞」を受賞している著名なジャーナリストである。12月に発表された同団体の年次報告書によれば,ベトナムは投獄されているジャーナリスト(ブロガーを含む)の数が世界で4番目に多い国となっている。

台風・豪雨により中部に甚大な被害

9月半ばから11月半ばにかけて,過去20年で最大級の台風を含む9つの台風と2つの熱帯低気圧がベトナム中部7省を襲い,各地で大規模な洪水や地滑りをひき起こした。12月2日の農業・農村開発相の報告によれば,この一連の災害により192人が死亡,57人が行方不明となっており,家屋1500戸以上が全壊,24万戸近くが損壊,47万戸以上が浸水した。また,5万ヘクタール近い農地で農作物が被害を受けたとされる。

この水害の被災者救済に当たって注目を浴びたのはトゥイ・ティエンという人気歌手であった。彼女はFacebookを通じて被災地のための寄付を呼びかけ,1週間で1000億ドン(約5億円)以上の義援金を集めたという。トゥイ・ティエンはさらに,自ら食料や支援物資を購入して被災地に向かい,危険を冒しながらも多くの被災者の手に直接物資や資金を届けて回った。

このような活動に対しては,個人が天災などの被害者支援のための寄付を募るのは違法ではないかという指摘があった。2008年の政府64号議定では,大衆組織などの公的に認められた団体のみが義援金や物資を集め,分配することができるとされている。しかし,トゥイ・ティエンのもとに多額の寄付が集まったこと自体,従来の公的な救援活動の非効率や不透明さに対する国民の不信を表すものであるという意見も強かった。10月23日,フック首相は,財政省に対し,個人や組織の慈善活動を奨励し,顕彰する方向で64号議定の改正を検討するよう指示した。個人の実践と世論が政策見直しを促した事例として注目される。

(石塚)

経 済

感染症の早期抑制によりプラス2.91%の成長を達成

2020年の実質国内総生産(GDP)成長率は2.91%であった。前年を4.11%下回り,数十年にわたり高成長を維持してきたベトナムにとっては記録的な低水準だが,新型コロナウイルスによりマイナス成長に陥る国が続出した2020年の実績としては突出した成果といえる。

成長達成の鍵となったのは感染症の早期抑制である。全国で社会隔離が実施された4月には経済は大きく停滞したが,経済活動が再開された翌月以降,内需向け生産が上昇に転じ,国際貿易の回復とともに輸出向け生産も拡大した。

政府の対策も新型コロナウイルスの影響の軽減と成長に貢献した。フック首相は3月4日付の11号指示において,金融,税制,公共投資,労働,情報伝達を含む包括的な緊急対策を実施する方針を示した。政府は5月29日付で84号決議を出し,各政府機関の具体的な任務や対策とともに,一部の措置について国会による審議・承認を経て実施する方針を明示した。

上記の指示・決議を受け,対策が講じられた。国家銀行は3月以降,計3回の金利引き下げを行い,年間でリファイナンス金利は2%,ディスカウント金利は1.5%引き下げられた。企業に対しては,4月8日付の政府41号議定で付加価値税,法人税,個人所得税および土地賃貸料の支払期限の延長が認められた。さらに9月25日付の政府114号議定により,2020年の売上高が2000億ドン以下の企業・事業体に対し2020年の所得に対する法人所得税の30%軽減が定められた(国会116号決議に基づく措置)。収入減や失業などの困難に直面する人々に対しては,4月9日付の政府42号決議で労働者と使用者への支援策が打ち出された。近年実施の遅れが深刻化していた公共投資についても支出促進を図るべく,2016~2020年の国家予算による投資計画の修正,PPPにより実施予定であった案件の公共投資への転換,政府およびフック首相による各省庁や地方への指導といった努力が重ねられた。

新型コロナ下で不足する物資の生産や社会の安定維持には企業も貢献した。ビングループは4月,海外企業との提携を通じて人工呼吸器の生産を行う方針を表明し,国内市場への供給および輸出を行った。縫製企業は布製マスクの増産と輸出に乗り出した。ワクチンの開発では12月初めまでに3社が動物実験による安全性確認段階に進み,同月半ばには民間医薬企業ナノゲンが臨床試験を開始した。多数の企業が資金,医療品や食料などの寄付を行ったほか,現金自動預払機(ATM)になぞらえたコメのATM,無料で食料や必需品を提供するスーパーマーケットなど,困難な状況に陥った人々に対する支援の取り組みもみられた。

早期回復を遂げた製造業と公共投資に支えられた建設が成長をけん引

新型コロナウイルスによる経済停滞から回復への推移は,四半期ごとの成長率から確かめられる。第1四半期は3.68%を維持,第2四半期に0.39%へ落ち込んだのち,第3四半期は2.69%,第4四半期は4.48%へと復調が鮮明となった。

産業別の成長率では工業・建設が3.98%と最も高かった。なかでも回復が顕著であった製造業(5.82%),公共投資の効果が波及した建設(6.76%)が経済全体の成長を主導した。近年高成長を維持していたサービスは新型コロナウイルスの打撃で2.34%の成長に落ち込んだ。とくに影響が大きかったのは輸送・倉庫(−1.88%)や宿泊・飲食(−14.68%)で,卸売・小売・車両修繕(5.53%)や金融・銀行・保険(6.87%)への影響は比較的軽微であった。農林水産業は干ばつや塩害,相次ぐ台風による水害など深刻な自然災害の影響を受け,2.68%の成長にとどまった。

マクロ経済の安定は維持された。年初には食糧・食品価格が高騰したが,以後原油価格の下落などが物価を押し下げた。通年では食糧(6.07%),外食(4.32%),教育サービス(4.15%)が上昇,交通(−11.68%)や文化・娯楽・観光(−2.43%)が下落し,消費者物価指数は前年末比0.19%増となった。対ドル為替指数は前年末比0.09%減であった。

財政は,感染症対策や景気刺激の要請に応えつつも,経常経費の節約などを通じ規律への配慮も保たれた。公共投資については,2020年計画分の支出は約390兆ドン,実行率は2016年以降で最高となる82.8%に達したと見込まれるほか,2019年以前の計画からの繰り越し分も実行率は75%と推測される。財政支出は1781兆ドンに及んだが,財政収入も経済回復や徴税の徹底などにより予算比98%の1507兆ドン(いずれも予測値)に達した。その結果,財政赤字の対GDP比率は予算(3.44%)を上回ったものの4%未満に収まり,公的債務の対GDP比率は2020年末時点で約55.8%と見込まれるなど,財政指標の大幅な悪化は回避された。

輸出は好調も,アメリカの保護主義への対応に苦慮

貿易依存度の高いベトナムは,新型コロナウイルスによる世界貿易の縮小で大きな打撃を受けるとの大方の予想に反し,対外貿易は拡大し,成長に貢献した。輸出は2815億ドル(前年比6.5%増),輸入は2624億ドル(同3.6%増),貿易黒字は191億ドルと,2016年以降連続で最高値を更新した。年末の外貨準備高は約4カ月分の輸入額に相当する1000億ドルに達したと見込まれる。

第3四半期までは国内企業が外資企業を上回る輸出の伸びを記録したが以後逆転し,年間では外資企業の輸出は2033億ドル(前年比9.7%増),国内企業の輸出は782億ドル(同1.1%減)となった。品目別では,電話および部品(509億ドル,前年比1.0%減),電子製品・コンピュータおよび部品(447億ドル,同24.4%増),繊維・縫製品(295億ドル,同10.2%減),機械・設備・工具および部品(270億ドル,同47.8%増)などが上位を占めた。国別では,第1位のアメリカ(764億ドル,同24.5%増)と第2位の中国(485億ドル,同17.1%)の増加率が突出し,EUやASEAN,日本向けの輸出は減少した。

輸出拡大のひとつの背景は,米中貿易摩擦の激化に伴って,前年から進みつつあった中国からベトナムへの対米輸出拠点の移転が加速したことである(後述「外国投資」参照)。この結果,ベトナムの対米貿易黒字は2018年の348億ドルから2019年の470億ドル,さらに2020年には627億ドルへと急増を続けた。アメリカは2019年5月にベトナムを為替操作の監視リストに加えていたが,対越貿易赤字の悪化を受けて保護主義への傾斜をいっそう強めた。米財務省は12月に為替報告書を発表し,対米貿易黒字,経常黒字,為替介入の3つの基準に基づきベトナムを為替操作国と認定した。

ベトナムはアメリカとの対話や貿易黒字削減努力を継続するとともに(「対外関係」の項参照),貿易関係の多角化に注力した。EVFTAは2月にEU議会での承認,6月に国会での批准が行われ,8月1日付で発効した。11月15日には地域的な包括的経済連携(RCEP)協定(旧日本語訳は東アジア地域包括的経済連携協定),12月29日にはイギリスとの自由貿易協定への署名が行われた。

外国投資は小幅減,誘致に向け新たな施策

外国投資は,12月20日までの登録実績で前年比25%減の285億ドルとなった。このうち直接投資は210億ドルで前年比6.7%減であったが,2019年に56.4%増を記録し外国投資総額の4割超を占めた間接投資は,不確実性の高まりに伴う大型案件の先送り傾向などのために前年比51.7%減の75億ドルとなった。実施額は前年比2%減少し,200億ドル近くに及ぶと見込まれる。

直接投資のうち,新規投資は2523件(前年比35%減)で登録資本金額146億ドル(同12.5%減),拡張投資は1140件で64億ドル(同10.6%増)であった。新規投資と拡張投資の合計額でみた上位国はシンガポール(68億ドル),韓国(29億ドル),中国(21億ドル),香港(17億ドル),台湾(17億ドル)の順となった。大型案件にはシンガポールによるバクリュウ省の液化天然ガス(LNG)発電所案件(新規,40億ドル),タイによるバリア=ヴンタウ省の石油化学プロジェクト(拡張,13億8600万ドル)などがあった。これらのほか,台湾のペガトロンによるハイフォン市での電子機器製造案件(4億8100万ドル),中国によるタイニン省でのタイヤ生産案件(3億ドル)など,中国からの生産移転とみられる案件も目立った。

米中貿易摩擦の激化や新型コロナウイルス感染症の早期抑制を背景に投資先としてのベトナムへの注目が高まったことを受け,経済発展の促進に資する投資誘致に向けた政策整備も進んだ。6月にフック首相は850号決定を公布し,外国投資・協力促進のための施策について首相に諮問を行うワーキンググループの設立を定めた。大規模な多国籍企業との柔軟な交渉や大規模で質の高い投資の誘致を狙った対応である。6月の第9回国会で採択された改正投資法には,研究開発施設などを対象とした特別な優遇および支援などについての規定が盛り込まれた。

企業の経営環境改善への取り組みを継続

企業の経営環境の改善に関しては,1月1日付の政府2号決議において,前年に示された2021年までの目標と任務の着実な執行に向けた方針が提示された。2021年以降を見据えた中期的な取り組みとしては,2007年から実施されてきた行政手続き改革の手段を踏襲し,2020~2025年の経営活動に関する規定の削減・簡素化プログラムが公布された(政府68号決議)。ここでは,経営活動にかかわる規定の数および規定遵守にかかるコストを期間中に少なくとも20%削減するとの目標が掲げられた。従来から経営環境改善の方策のひとつに掲げられてきた電子政府の発展に向けた取り組みも本格化した。6月に公布された「2025年に向けた国家デジタルトランスフォーメーション・プログラム」(首相749号決定)は,オンライン公的サービスや企業登録を含む国家データベースの整備などの方針を定め,8月末には情報・通信省により国家データポータルサイトが開設された。

企業活動の状況をみると,新規設立企業数は13万4900社で前年比2.3%減にとどまり,新規投資および既存企業による拡張投資を含む登録資本金総額は39.3%増の5577兆6000億ドンとなった。ただし,活動停止などに追い込まれた企業は前年比13.9%増の10万1700社(うち解体手続き待ちの企業は3万7700社近く,解体手続きが終了した企業は1万7500社)に及んだ。

新産業の振興策と企業の動き

新型コロナウイルスの企業への影響は一様ではない。今後の中期的発展を見据えての積極的な振興策や事業展開がみられた産業もあった。ひとつはデジタル産業である。フック首相は1月にデジタル技術企業の発展促進についての1号指示を出し,2030年までに10万社のデジタル技術企業を発展させるという目標を示した。上述の首相749号決定は,電子政府の発展のみならず,デジタル経済の発展をも掲げ,2025年までにデジタル経済の対GDP比率を20%に引き上げることや情報通信技術ランキングで世界50位以内に入ることなどの目標を定めた。

第5世代移動通信システム(5G)は,国有企業3社により整備が進められた。軍隊通信工業集団(ベトテル)は,11月末からハノイ市中心部で商用サービスの試験提供を開始し,モビフォンとベトナム郵政通信集団(VNPT)もサービス提供に向けた動きを加速させた。いずれも中国企業の通信設備は採用せず,欧州などの企業から設備導入を進めたが,ベトテルは自社技術の発展にも注力した。

コロナ下で需要が高まるデジタル製品の開発も活発に行われた。ベトナムの情報技術企業Bkavが開発した新型コロナウイルスの接触確認アプリBluezoneは情報・通信省などによって利用が奨励され,同省の発表によれば8月20日までのダウンロード数は2000万件を超えた。米半導体大手クアルコムは従来から推進してきたデジタル分野のベトナム企業の支援をさらに強化すべく,6月にハノイ市に研究開発センターを開設し,国際基準に合致した製品の開発と商業化に向けた協力方針を示した。同社との協力を通じ,ビングループ傘下のビンスマートが5G対応のスマートフォンを発表し,アメリカに輸出する計画を発表したほか,Bkavも人工知能搭載の監視カメラAI Viewを開発し,アメリカに出荷した。

画期的な政策転換による新産業の発展の兆しがみられたのがエネルギー分野である。ベトナムは国有企業を主体とする石炭火力発電に重点を置いてきたが,資金不足などによるプラント建設の遅れが深刻化し,2017年頃から振興が試みられてきた再生可能エネルギーについても,太陽光発電に対する奨励策が2019年半ばに失効したままであった。こうしたなか,党政治局は2030年に向けた国家エネルギー発展戦略について55号決議(2月11日付)を公布し,(1)石炭火力発電の比率を合理的な方法で減少させる,(2)再生可能エネルギーを含むクリーンエネルギーの開拓を優先する,(3)補助金や独占を断固として排する,という方向性を示した。ほどなく太陽光発電の新奨励策(4月6日付首相13号決定)が公布されたことを受け,同分野への投資は急増した。この決定はまた,小規模案件が多い屋上太陽光発電のみを対象としつつも,これまで送配電部門を独占してきた国有のベトナム電力集団(EVN)の電力網を用いない企業などへの電力の販売や,当事者間の合意による電力価格や購入契約の決定という新たな可能性を開くものでもあった。同決定は2020年末に失効し,2021年以降の太陽光発電に対する政策は別途定められることとなっている。今後の政策の展開が注目される。

国有企業と金融セクターの再編は停滞

2020年は2016~2020年の国有企業と金融セクター再編計画の最終年であったが,進捗は停滞した。この5カ年の国有企業再編計画では,年ごとに株式化および国家資本売却を行う企業のリストが作成されていたが,計画外の企業が再編実績を押し上げた一方で,計画対象企業の再編は大幅に遅れた。2020年は,株式化計画に農業農村開発銀行など大規模な国有企業が多く含まれたことに新型コロナウイルスの影響も加わり,財政省が年内に株式化案の承認報告を受領した企業は7社,うち計画内の企業は1社のみであった。国家所有株式の売却実績は2兆5056億ドン(うち計画内の13社で1兆7880億ドン)であった。2016年から2020年末までの累計では,178社の株式化計画が承認され(うち計画対象128社に含まれるのは37社,達成率28%),国家所有株式の売却額は27兆2750億ドン(うち計画対象105社によるものは6兆4920億ドン,達成率は企業数で30%,金額で11%)となった。新型コロナウイルス感染症の打撃によって深刻な経営難に陥ったベトナム航空に対しては,11月の第10回国会で支援策が承認された。

金融セクターでは2017年の国会42号決議施行以降,不良債権の処理が進みつつあったが,コロナ下では銀行から借入を行っていた多くの企業や人々が困難に陥った。上述の首相11号指示を受け,国家銀行は金融機関に対して新型コロナの影響で融資の返済や金利支払いが難しくなった顧客への返済期限の変更や金利などの減免を要請する1号通知(3月13日付)を出した。企業や人々の資金需要に対応すべく,多くの金融機関は低利での新規融資も拡大させた。1号通知の下で期限や金利が変更された融資残高についても債務分類は変更されないこととなっており,不良債権残高への影響はないはずである。だが,2017年末以降1%台に抑えられてきた不良債権比率は上昇に転じているとの指摘もあり,注視が必要な状況となっている。

近年,国家銀行は銀行融資,とくにリスクの高い不動産融資を抑制してきたため,規制が緩い私募社債の発行による資金調達が拡大する傾向にあった。2020年も経済活動が再開された5月以降,銀行や不動産,エネルギーなどの分野で私募社債の発行が相次いだ。政府は8月に81号議定を公布し私募社債の発行条件を厳格化したが,ハノイ証券取引所の発表によれば,年間の発行件数は2228件(前年の2.46倍),発行額は403兆4000億ドン(前年比36%増)に及んだ。年末,政府はさらなる規制強化に動き,私募社債の購入主体を専業の証券投資家および戦略投資家のみに限定するなどの規定を含む153号議定を公布した。

(藤田)

対外関係

ASEAN議長国として柔軟なリーダーシップを発揮

2020年にはASEANの諸活動も新型コロナウイルスにより大きな制約を受けたが,ベトナムは議長国として状況に柔軟に対処し,ASEANの結束を維持した。

加盟各国が国内での感染症対策に追われ,また相互の往来が制限されるなか,ベトナムは各国と協力して年間550以上に上る会議や会合をオンラインで開催することに成功した。これらの会合では,域内協力による新型コロナ対策や経済活性化への取り組みが主要な議題のひとつとなった。

ベトナムにとって遺憾であったのは南シナ海「行動規範」(COC)協議の停滞である。外務省高官によれば,COCの早期締結へのASEANと中国の決意は変わらないというが,当事国は対面での協議を望んでおり,年内には実質的な交渉の進展はなかった模様である。

南シナ海の係争海域における緊張は継続

世界が新型コロナウイルス対策に追われるなかでも南シナ海の領有権をめぐる中国の示威的な言動は収まらず,ベトナムや関係諸国は懸念を深めている。

3月30日,国連ベトナム代表部は,国連事務総長に宛てて,南シナ海におけるベトナムの主権を主張し,中国の九段線の主張を批判する口上書を提出した。これはベトナムにとって,フィリピンが提起した仲裁裁判に声明を送付した2014年以来の正式な権利の主張であるとみられ,世論は好意的に受け止めた。

ベトナムの口上書は,マレーシア(2019年12月),フィリピン(2020年3月)による同様の文書の提出に続くものであった。同様の動きはその後もインドネシア,ブルネイと続き,さらに域外のアメリカ,オーストラリア,フランス,ドイツ,イギリス,そして最近では日本も加わって,九段線の主張をめぐり中国との間で応酬を続ける「外交文書戦」と呼ばれる現象となっている。

このような動きに対し,中国は反発を強めている。4月2日,ベトナムの漁船がホアンサ(パラセル/西沙)諸島付近で操業中に中国海警局の船に衝突されて沈没した。同月17日,国連中国代表部はベトナムの口上書に反論する口上書を国連事務総長に提出し,ベトナムはチュオンサ(スプラトリー/南沙)諸島を不法占拠していると主張した。翌18日に中国政府は,ホアンサ諸島とチュオンサ諸島を管轄するとされる三沙市に2つの行政区を設置すると発表している。

ベトナムにとってとりわけ深刻な問題となっているのは,ベトナムから開発権の付与を受けて南シナ海で資源開発活動を行う外国企業が,中国当局により操業を妨害されることである。2018年にはスペインのレプソルが,再三の妨害を受けた結果,ベトナム政府との間でプロジェクト中止にかかる補償交渉を行っていることが伝えられていた。7月,『ディプロマット』誌は,ベトナム側がレプソルともう1社に対し約10億ドルの補償金を支払うことで合意したと報道した。

また,2019年には,ロシアのロスネフチが操業するバンガード堆付近で中国の海洋調査船が4カ月にわたって活動を続けた。2020年,ロスネフチから掘削を請け負ったノーブルのオイルリグは4月にヴンタウに曳航されていたが,7月,BBCベトナム語版は,同請負契約が破棄されたことを伝えた。やはり中国の圧力によるものであるという。相次ぐ妨害によりベトナムは苦境に立たされている。

対米貿易黒字拡大でトランプ政権から圧力強まる

ベトナムとアメリカは2020年に国交正常化25周年を迎え,首脳レベルの往来は行われなかったものの両国間の密接な協力関係は続いた。

4月,政府はベトナム国内で製造されたデュポン製防護服45万着のアメリカへの輸出に便宜を図り,トランプ大統領からTwitterで感謝のメッセージを送られた。アメリカは,引き続き南シナ海における「航行の自由」作戦を活発に展開し,3月には原子力空母セオドア・ルーズベルトがダナンに寄港している。10月にはポンペオ国務長官,11月にはオブライエン大統領補佐官(国家安全保障担当)が来訪し,インド太平洋の平和と繁栄のための両国関係発展の重要性を強調した。

他方,対米貿易不均衡の問題については,トランプ政権からの貿易黒字削減圧力を受けて,ベトナムは引き続きアメリカからの輸入拡大に努めた。ブルームバーグが3月に伝えたところによると,農業・農村開発省が率いる経済ミッションが訪米し,30億ドル相当のアメリカの農産品を今後2,3年の間に購入する18の協定を締結したという。10月には,ハノイでの第3回インド太平洋ビジネスフォーラムの開催に合わせ,ペトロベトナムガス社とアメリカのAESの間で投資総額28億ドルのLNG基地と発電所の建設に関する覚書が締結された。11月には,ゼネラルエレクトリックとベトナムの第3発電総公司が,総額10億ドル以上と推定されるLNG発電所建設プロジェクトに関する覚書を締結した。これらのプロジェクトは,アメリカからの継続的なLNG輸入につながると期待されている。

しかし,トランプ政権は,12月,ベトナムを為替操作国と認定した(「経済」の項参照)。ベトナム側は,12月22日にフック首相がトランプ大統領と電話会談を行うなど,アメリカ側と対話を重ね,制裁回避のための方策を探っている。

その他の主な出来事

8月1日にはEVFTAが発効した(「経済」の項参照)。1月のドンタム社の事件(「国内政治」の項参照)や,EVFTA締結に反対していたジャーナリストのファム・チ・ズンの逮捕(2019年11月)などを受けて,欧州議会による批准の前には国内外の非政府組織からその延期を求める声も上がった。しかし,EUはベトナムへの関与を深める方向を選択したものと思われる。

10月,日本の菅首相が就任後初の外遊で来訪した。フック首相との会談では,国防・安全保障,新型コロナウイルス対策,経済など多面的な協力促進について協議が行われ,防衛装備品の技術移転協定を締結することで実質合意がなされた。

(石塚)

2021年の課題

2021年初頭には第13回党大会が開催され,次期党指導部が選ばれる。5月には国会および各級人民評議会議員選挙も実施され,新しい国会で次期政府をはじめとする国家幹部の顔ぶれが決まる。第12期党指導部はチョン書記長の強いリーダーシップのもとで国家と社会に対する党の指導力を回復させ,「聖域なき」反汚職闘争を通じて国民の支持を強化してきた。しかし,汚職は広範かつ根深い問題であり,その解決には継続的・体系的な取り組みが必要となる。新指導部が第12期党指導部の反汚職闘争をどう引き継いでいくのかが注目される。

経済は第4四半期には4.48%の成長を達成するまでに回復した。感染症抑制を継続し,内需と輸出を両輪として経済を本格的な回復軌道に乗せることが肝要である。その成否は金融セクターや財政の健全性回復の展望,および国有企業改革の進捗にも影響を与えるであろう。2021年からは新たな5カ年計画および10カ年発展戦略が始動する。外国投資,デジタル経済やエネルギー分野などにおいて,2020年にみられた新たな政策や企業活動の展開がどの程度本格化するのか,企業の経営環境改善の取り組みともあわせて,成長の質の向上や持続可能な発展の実現につなげていくことができるかどうかが注目される。

対外関係では,南シナ海における対中国関係を安定させることが引き続き課題となる。そのための鍵になるのはやはりアメリカとの関係である。党・政府は,当面,バイデン政権のベトナムや中国に対する姿勢を見極め,新たな二国間関係の構築を模索していくことになるだろう。

(石塚:新領域研究センター)

(藤田:地域研究センター)

重要日誌 ベトナム 2020年
   1月
1日労働者の最低賃金,平均5.5%引き上げ。
9日ハノイ市ミードゥク県ドンタム社で,元社党委書記の住居を公安勢力が襲撃。
10日ブロガーのチャン・ティ・ガー,刑期を6年余り残して釈放,アメリカへ移送。
10日党政治局,ハノイ市のホアン・チュン・ハイ党委書記に対する警告処分。
13日ダナン市における公的資産の違法売却事件の第1審判決で,実業家のファン・ヴァン・アイン・ヴーに懲役25年。
14日ビングループ,ビンパール航空プロジェクトの停止を発表。
14日デジタル技術企業の発展促進に関する首相1号指示公布。
23日ベトナムで初の新型コロナウイルス感染者2人(中国人)を確認と保健省発表。
30日初のベトナム人の新型コロナ感染者3人を確認。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防対策国家指導委員会設置。
   2月
1日中国との間の航空便の運航を停止。
1日新型コロナウイルス感染症の流行を宣言する首相173号決定公布。
2日高級幹部の評価基準に関する党中央委員会214号規定公布。
3日ベトナム共産党創立90周年。
3日一定分野の行為に対する行政罰に関する政府15号議定公布。フェイクニュースの転載等の行為に1000万~2000万ドンの罰金。
7日党政治局,ヴオン・ディン・フエ副首相をハノイ市党委書記に任命。
11日党政治局,2030年に向けた国家エネルギー発展戦略の方向性に関する55号決議公布。
13日新型コロナウイルスの集団感染が発生したヴィンフック省ビンスエン県ソンロイ社を封鎖(~3月4日)。
   3月
2日サムスン,ハノイで2億2000万ドルのR&Dセンターの建設に着手と発表。
4日ベトナム企業が30億ドル相当のアメリカの農産品を2,3年のうちに購入する18の協定を締結と『ブルームバーグ』紙報道。
4日新型コロナによる生産・経営の困難への緊急対策に関する首相11号指示公布。
5日中国北京大学の南海戦略態勢感知計画(SCSPI),2月に311隻のベトナム船が中国の領海を侵害したとする報告書を公表。
10日ジャーナリストのチュオン・ズイ・ニャット,職務権限濫用により懲役10年。
13日国家銀行,新型コロナの影響を受けた顧客への融資返済期限などの変更に関する1号通知公布。
16日国家銀行,主要政策金利の引き下げに関する418号決定公布。
18日モン族国家建国のため政府転覆活動を行ったとして2人に終身刑。
20日党政治局,ホーチミン市のレ・タイン・ハイ元党委書記の2010~2015年の任期における党委書記の職を遡及的に解任。
23日フック首相,24日から5月下旬までのコメの輸出禁止を決定(4月10日解除)。
26日外務省報道官,チュオンサ諸島で中国科学院島礁総合研究センターの研究施設の運用が開始されたことに抗議。
27日新型コロナ対策の強化にかかる首相15号指示公布。20人以上の集会禁止など。
30日国連ベトナム代表部,南シナ海における主権を主張し,中国の主張を批判する口上書を国連事務総長に提出。
31日新型コロナ緊急対策の実施に関する首相16号指示公布。全国に4月1日から15日間の社会隔離を発令。
   4月
2日乗員8人のベトナム漁船,ホアンサ諸島近海で操業中,中国船に衝突され沈没。
6日太陽光発電の発展促進に関する首相13号決定公布。
7日政府,フランス,ドイツ,イタリア,スペイン,イギリスにマスク55万枚を寄贈。
9日新型コロナの影響を受けた人々への支援に関する政府42号決議公布。
14日中国の海洋調査船「海洋地質8号」,ベトナムの海岸から158キロの海域を航行。
16日政府,アメリカにマスク25万枚,日本にマスク5万枚および医療物資を寄贈。
19日外務省報道官,中国政府が三沙市に2つの区を設置したと発表したことに抗議。
22日ハノイ疾病管理センター(CDC)のセンター長ら7人,入札不正の容疑で逮捕。
   5月
8日死刑囚のホー・ズイ・ハイの監督審,死刑判決を支持。
11日党中央委員会第12回総会(~14日)。
12日国家銀行,主要政策金利の引き下げに関する918号決定公布。年初以来2度目。
12日2020~2025年の経営活動に関する規定の削減・簡素化に関する政府68号決議公布。
14日外務省報道官,中国がチュータップ岩礁(ファイアリークロス礁/永暑礁)に軍用機2機を展開したことに抗議。
20日第14期第9回国会(~6月19日)。
21日ホーチミン市の国防用地の管理規定違反でディン・ゴク・ヘ元上佐に懲役20年。
23日退役軍人で独立ジャーナリスト会副会長のグエン・トゥオン・トゥイ,反国家宣伝罪の容疑で逮捕。
29日新型コロナ下での生産・経営の困難軽減継続に関する政府84号決議公布。
   6月
3日2025年に向けた国家デジタルトランスフォーメーション・プログラムに関する首相749号決定公布。
5日新型コロナの影響を克服し,国内経済の回復・発展を図る政策に関する党中央委員会77号結論公布。
8日国会,EU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)を批准。
12日レプソル,南シナ海の2つの鉱区の開発権をペトロベトナムに譲渡したと発表。
12日独立ジャーナリスト会メンバーのレ・ヒュー・ミン・トゥアン,逮捕。
17日外国投資促進のためのワーキンググループ設立に関する首相850号決定公布。
24日活動家のカン・ティ・テウと2人の息子,反国家宣伝罪容疑で逮捕。
26日第36回ASEAN首脳会議,オンライン形式で開催。
   7月
1日元軍中佐のグエン・グエン・ビン,ベトナム独立労働組合の設立を宣言。
5日ラオスのトーンルン首相,来訪(~6日)。
9日掘削会社のノーブル,ロスネフチベトナムとの契約が破棄されたことを公表。
9日企業の社債発行の条件や手続きの改正に関する政府81号議定公布。
22日フック首相,ニュージーランドのアーダーン首相とのオンライン会談で,両国間の戦略的パートナーシップ締結。
24日ダナン市で57歳の男性が新型コロナウイルスに感染。99日ぶりの市中感染。
28日ダナン市で社会隔離措置適用。
31日クアンナム省ホイアン市で,新型コロナウイルス感染症による国内初の死亡例。
31日「憲法グループ」のブロガー8人に治安壊乱罪で最高8年の懲役。
   8月
1日EVFTA発効。
6日国家銀行,金融機関の法定準備預金金利等について定める1349号決定,政策金融機関などの国家銀行における預金金利について定める1350号決定および1351号決定を公布。
7日レ・カ・フュー元党書記長,死去。88歳。
10日新型コロナウイルス感染症の影響を受けた対象者に対する2020年の土地賃料減額措置に関する首相22号決定公布。
11日党政治局,ハノイ市人民委員会のグエン・ドゥク・チュン主席の党活動停止。フック首相,同主席を90日間の職務停止。
24日中国,ホアンサ諸島周辺海域で大規模軍事演習(~29日)。
24日党政治局員・書記局員の健康に関する情報を機密情報とする首相1295号決定公布。
28日ハノイ市人民委員会のチュン主席,国家機密資料占奪の容疑で逮捕。
28日独立75周年記念式典開催。
   9月
4日オーシャンバンク・ハイフォン支店における資産横領事件の裁判で,元支店長に死刑,2人に終身刑。
11日国家包括的金融指導委員会の設立に関する首相1394号決定公布。
14日1月のドンタム事件の裁判で,2人に死刑,1人に終身刑。
14日2019年10月にイギリスでベトナム人密入国者39人が死亡した事件の裁判で,不法出国斡旋の罪で7人に最高懲役7年6カ月。
20日ホーチミン市1区の一等地の違法売却事件で,同市人民委員会のグエン・タイン・タイ元副主席ら被告5人に最高懲役8年。
22日2018年6月にホーチミン市タンビン区の警察署に爆弾が投げ込まれた事件で,20人に最高懲役24年。
25日ハノイ市人民評議会,人民委員会のチュン主席の罷免とチュー・ゴク・アイン科学・技術相の新主席任命を賛成100%で可決。
25日2020年の法人所得税の軽減に関する政府議定114号公布。
30日国家銀行,主要政策金利の引き下げに関する1728号決定公布。年初以来3度目。
  10月
2日米通商代表部(USTR),ベトナムの為替政策および木材の輸入・使用について調査開始。
5日党中央委員会第13回総会(~9日)。
6日ジャーナリストのファム・ドアン・チャン,反国家宣伝罪の容疑で逮捕。
11日バクリュウ省で国内最大規模の陸上風力発電所となる第5ホアビン風力発電所,着工。
12日トゥアティエン=フエ省の建設中の水力発電所で地滑り,労働者17人が生き埋めに。
13日中国の調査船「試験1号」,クアンガイ省から70カイリの海域を航行。
15日党政治局,国家銀行のレ・ミン・フン総裁を党中央事務局局長に任命。
15日外務省報道官,フーラム島に400以上の中国企業登録という情報に関して中国に抗議。
17日グエン・ヴァン・ネン党中央事務局局長,ホーチミン市党委書記に選出。
18日菅首相,来訪(~20日)。
18日クアンチ省で地滑り,兵士22人が死亡。
19日4月9日付け政府42号決議を修正・補充する政府154号決議公布。
20日第14期第10回国会(~11月17日)。
26日ベトナム系アメリカ人のマイケル・グエン,刑期を9年8カ月余り残して釈放,カリフォルニアに帰郷と家族が報告。
28日クアンナム省で地滑り,翌29日までに3カ所で64人が生き埋めに。
29日アメリカのポンペオ国務長官,来訪(~30日)。
  11月
2日ベトナム投資開発銀行における不正融資事件で2人の元副頭取にそれぞれ懲役8年と6年6カ月。
3日党に関する国家機密事項のリストを定める首相1722号決定公布。
4日アメリカ商務省,為替操作を理由にベトナムから輸入されるタイヤに予備的相殺関税賦課を行うと公表。
4日EUのアリベルティ大使,EU諸国の大使らとともに公安省を訪れ,憲法上保証された表現の自由,言論の自由の尊重を要請。
6日党政治局,グエン・ヴァン・ビン党経済委員会委員長に対する警告処分。
10日グラブ(Grab)とラザダ(Lazada),デジタル分野での広範な連携を発表。
12日ASEAN首脳会談,オンライン開催。
13日ベトジェット航空と米貨物UPS,貨物輸送にかかわる提携を発表。
15日地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に署名。
16日証券市場における情報開示に関する財政省96号通知公布。
21日アメリカのオブライエン大統領補佐官,ハノイでフック首相と会談。
21日第3発電総公司,ゼネラルエレクトリックと液化天然ガス(LNG)発電所建設プロジェクトに関する覚書締結。
30日ホーチミン市で隔離中の入国者と接触した男性が陽性に。89日ぶりの市中感染。
30日ベトテル,ハノイ市中心部で5Gの商用サービスの試験提供を開始。
  12月
2日党書記局,商工省のホー・ティ・キム・トア元次官の党からの除名決定。
7日ハノイとホーチミンで数百人のグラブドライバーがVAT増税に抗議のデモ。
8日タントゥアン投資建設のチャン・タン・ハイ副社長,逮捕。
11日ハノイ市人民委員会のチュン元主席に国家機密資料占奪の罪で懲役5年。
12日ハノイCDCの汚職事件でグエン・ニャット・カム所長に懲役10年。
14日党中央委員会第14回総会(~18日)。
15日民主兄弟会のチャン・ドゥク・タック,反国家宣伝罪で懲役12年。
16日ホーチミン市党委のタット・タイン・カン元副書記,国家財産の管理使用に関する規定違反の容疑で逮捕。
16日サイゴンコープのジエップ・ズン元会長,職務権限濫用の容疑で逮捕。
16日米財務省,ベトナムを為替操作国と認定。
17日国産ワクチン・ナノコバックスの臨床試験開始。
17日党中央委員会,ハノイ市人民委員会のチュン元主席の党からの除名を決定。
21日フック首相,インドのモディ首相とオンライン会談。7つの協定を締結。
21日工商省,中国から輸入する一部の冷間圧延コイル・鋼板に反ダンピング関税を課す決定。12月28日から5年間施行。
22日ホーチミン=チュンルオン間高速道路における通行料徴収権の入札不正等に関し,ディン・ラ・タン元交通・運輸相に懲役10年,ディン・ゴク・ヘ元上佐に終身刑。
22日フック首相,トランプ大統領と電話会談。
23日ベトナム証券取引所の設立,組織および活動に関する首相37号決定公布。
26日旅行会社ベトトラベル傘下のベトトラベル航空,運航開始。
28日2030年までのエネルギー競争市場発展計画および2045年までのビジョンを承認する首相2233号決定公布。
29日イギリスとの自由貿易協定(FTA)に署名。2021年1月1日から暫定適用開始。
31日国内市場における私募社債の募集および取引,国際市場への社債の募集に関する政府153号議定公布。

参考資料 ベトナム 2020年
①  国家機構図(2020年12月末現在)
②  ベトナム共産党指導部(2020年12月末現在)

(注)政治局員,書記局員の記載順は,2020年8月7日に死去したLe Kha Phieu元党書記長の葬儀委員会名簿に基づく。ただし,Dinh The Huynh政治局員・書記局員は病気療養中であり同名簿に記載なし。

③  国家機関要人名簿(2020年12月末現在)
④  2021年の主な目標と主要指標(第14期第10回国会で2020年11月11日に可決された2021年の経済・社会発展計画に関する国会決議より)

(出所)ベトナム国会ウェブサイト(http://quochoi.vn/)より。

主要統計 ベトナム 2020年
1  基礎統計

(注)1)暫定値。ただし,消費者物価上昇率は前年末比,2019年は確定値。

(出所)統計総局ウェブサイト(https://www.gso.gov.vn)。

2  支出別国内総生産(名目価格)

(注)1)暫定値。

(出所)表1に同じ。

3  産業別国内総生産(実質:2010年価格)1)

(注)1)基本価格表示。2)暫定値。

(出所)表1に同じ。

4  所有形態別国内総生産(実質:2010年価格)1)

(注)1)基本価格表示。2)暫定値。

(出所)表1に同じ。

5  国・地域別貿易

(注)1)暫定値。

(出所)表1に同じ。

6  国際収支

(注)IMF国際収支マニュアル第6版に基づく。ただし,金融収支の符号については(-)は資本流出,(+)は資本流入を意味する。

(出所)ADB, Key Indicators for Asia and the Pacific 2020.

 
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